要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 11/腎1
CKD(慢性腎臓病) 慢性腎不全改訂 第2版


第1章 概念・定義と疫学
概念・定義

頼  建光   東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎臓内科・血液浄化療法部 准教授

要旨
 さまざまな原因疾患よりもたらされる腎臓の形態的,機能的障害を,腎機能(糸球体濾過量:GFR)と障害の程度(蛋白尿や解剖学的,病理学的異常)に着目し,1つの共通の症候群としてとらえ直したのが慢性腎臓病(CKD)の疾患概念である.CKD は以下のように定義される.
 @尿蛋白,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか.特に蛋白尿の存在が重要.
 AGFR<60ml/分/1.73m2
 以上@Aのいずれか,または両方が3ヵ月以上持続する.
 CKD の重症度は,原因(cause:C),腎機能(GFR:G),蛋白尿(アルブミン尿:A)の三者を組み合わせた CGA 分類で評価する.

目次に戻る



第1章 概念・定義と疫学
疫 学

井関 邦敏    琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部 部長
           琉球大学医学部 診療教授

要旨
 KDIGOのCKD重症度分類が改訂され,日本腎臓学会編の『CKD診療ガイド2012』も日本人用に修正された.全糸球体濾過量(GFR)レベルでアルブミン(蛋白)尿の程度が加えられ,ステージ G3 が2つに分割された.現在,KDIGOでは世界45コホート(約156万人)のメタ解析が進行中である.アルブミン(蛋白)尿および推算糸球体濾過量(eGFR)の低下は透析導入,全死亡,心血管障害死亡の危険因子の独立した危険因子であることが確認された.

目次に戻る



第1章 概念・定義と疫学
CKDと心血管病(CVD)

岡田 浩一   埼玉医科大学医学部腎臓内科 准教授

要旨
 多数の疫学研究の結果から,「慢性腎臓病(CKD)は心血管病(CVD)の危険因子である」ことが明らかとなった.2002年より始まったCKDの啓蒙活動は,まさしくこの概念の周知徹底の働きかけであった.2012年には近年の疫学研究の結果を取り入れて,より適確なCVDのリスク評価を可能とすべく,新たなCKDの重症度分類が発表された.この間,両者を結びつけるメカニズムに関する多くの仮説が提唱されているが,その確立には,さらなる基礎研究の成果を待たなければならない.

目次に戻る



第2章 病態生理
共通する悪化因子 1.アルブミン尿・蛋白尿

安田 宜成     名古屋大学大学院医学研究科CKD地域連携システム寄附講座 准教授
松尾 清一     名古屋大学大学院医学研究科腎臓内科学 教授

要旨
 慢性腎臓病(CKD)患者では,糸球体濾過量(GFR)とアルブミン尿・蛋白尿は独立した予後予測因子である.蛋白尿は正確には蓄尿で評価するが,日常診療では随時尿での評価が一般的である.随時尿でアルブミン尿・蛋白尿を評価する場合には,濃縮尿や希釈尿の影響を避けるため,尿中クレアチニン(Cr)濃度で補正して,蛋白尿をg/gCr,アルブミン尿はmg/gCrで評価することが推奨される.
 アルブミン尿・蛋白尿は,主に糸球体係蹄壁の透過性亢進により生じ,腎疾患のみならず,心血管疾患(CVD)の予後予測因子として重要である.さらに,アルブミン尿・蛋白尿は治療の効果判定にも有効である.CKD 患者では,アルブミン尿・蛋白尿を適切に評価することが重要である.

目次に戻る



第2章 病態生理
共通する悪化因子 2.血管内皮障害,動脈硬化

森  典子    東京女子医科大学第二内科
森本  聡    東京女子医科大学第二内科 講師
市原 淳弘   東京女子医科大学第二内科 教授

要旨
 腎は血管に富み,その内腔にある血管内皮が腎血管のトーヌス調整や血流の流動性に大きな役割を果たしている.内皮機能障害の破綻は,糸球体内圧の上昇やポドサイト・メサンギウム細胞の機能障害を引き起し,腎機能障害を悪化させる.一方,腎機能障害そのものが,シェアストレスや尿毒素物質の蓄積から内皮機能障害の悪化を進行させるという,悪循環を引き起している.また,内皮から分泌される生理物質の変化は全身の内皮機能障害,向血栓性,向炎症性をもたらし,心血管・脳血管障害のリスクを高めることから,心腎連関の一因としての内皮障害が,重要な役割を果たすと考えられる.

目次に戻る



第2章 病態生理
共通する悪化因子 3.貧血,組織低酸素

田中 真司  東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
大瀬 貴元  東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
南学 正臣  東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科 教授
要旨
 慢性腎臓病(CKD)進行の final common pathway として,尿細管間質の低酸素が重要であるとする慢性低酸素仮説を支持する知見が集積しつつある.CKD 患者は貧血を合併しやすく,貧血は腎低酸素の原因の1つでもある.低酸素誘導因子(HIF)は,細胞レベルでの低酸素への適応において中心的な役割を果たす転写因子であり,そのメカニズムの解明は,CKD 進行抑制の新たな治療法につながる可能性がある.

目次に戻る



第2章 病態生理
疾患固有の病態生理 1.糖尿病性腎症

羽田 勝計   旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野 教授

要旨
 糖尿病性腎症の疾患概念は,古くから確立していた.しかし,eGFR の登場により,問題点が生じてきたことも事実である.すなわち,正常アルブミン尿でeGFRが60ml/分/1.73m2 未満の症例をどのように考えるか,などである.一方,eGFRを用いることにより,GFRの年次推移を評価することが可能になった.その結果,顕性腎症例に fast progressor が存在することも明らかにされている.

目次に戻る



第2章 病態生理
疾患固有の病態生理 2.慢性糸球体腎炎

堀越  哲   順天堂大学医学部内科学教室腎臓内科学講座 先任准教授

要旨
 近年,免疫学の進歩により多くの糸球体腎炎の病態が,外来抗原あるいは自己抗原に対する自然・獲得免疫反応の破綻によるものとしてとらえられるようになった.IgA 腎症は,扁桃を中心とする粘膜免疫の異常ととらえられ,膜性腎症では,phospholipase A2 受容体に対する自己抗体の存在が明らかになっている.さらに,膜性増殖性糸球体腎炎では,補体活性経路の違いによる新しい分類が試みられ,C3 腎症という概念も提唱されている.
目次に戻る



第2章 病態生理
疾患固有の病態生理 3.腎硬化症

座間味 亮   聖マリアンナ医科大学病院腎臓・高血圧内科
木村健二郎   聖マリアンナ医科大学病院腎臓・高血圧内科 教授

要旨
 我が国において高血圧の有病率は高く,それに伴う腎機能障害である良性腎硬化症も増加している.良性腎硬化症とは,腎内小動脈と細動脈の硬化性病変に伴う糸球体の虚血性変化と,代償性の糸球体内圧上昇が病態の本体である.したがって,虚血に陥って機能が廃絶した糸球体と,代償性肥大で機能が亢進した糸球体が混在する.また,急激な血圧上昇に伴う急速な進行性の腎機能障害は,悪性腎硬化症と呼ばれる.急激な血圧上昇に伴う腎内小動脈と細動脈の血管内皮障害が病態の本質であり,良性腎硬化症とは異なる.すべての糸球体は虚血に陥る.

目次に戻る



第2章 病態生理
疾患固有の病態病理 4.常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)

東原 英二      杏林大学医学部泌尿器科 教授

要旨
 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)はPKD1またはPKD2遺伝子変異による遺伝性疾患である.PKD1 と PKD2 タンパクは主として繊毛に存在し,尿細管流を感知しCa2+を細胞内に流入させる.PKD タンパク機能異常により細胞質内 Ca 濃度が低下し,細胞極性,細胞増殖,溶液転送の異常が起きる.サイクリック AMP(cAMP)は嚢胞を増大させる.アルギニンバソプレッシン(AVP)はV2受容体に結合しcAMPを高めるが,V2受容体阻害薬が嚢胞増大と腎機能低下を緩和する臨床試験結果が報告されている.

目次に戻る



第3章 診 断
検査所見

堀尾  勝   大阪大学大学院医学系研究科保健学 准教授

要旨
 慢性腎臓病(CKD)の定義は,腎機能低下(糸球体濾過量:GFR<60ml/分/1.73m2)または腎障害(特に尿蛋白,尿アルブミン:Alb)が3ヵ月以上持続する場合,である.検診で尿蛋白陽性例は起立性蛋白尿を除外し,尿Alb/尿クレアチニン:Cr比,尿蛋白尿/尿Cr比がそれぞれ30mg/gCr,0.15g/gCr 以上でCKDと診断する.腎機能評価は,血清Crによる推算 GFR(eGFRcreat)を基本とし,症例に応じて,血清シスタチンC(Cys−C)による推算 GFR(eGFRcys)も併用する.GFR<60ml/分/1.73m2 でCKDと診断する.腎不全進行に伴い,電解質異常,貧血なども重要な検査所見となる.

目次に戻る



第3章 診 断
画像所見

石川  勲   浅ノ川総合病院腎臓内科 顧問

要旨
 腎障害が明らかであれば,推算糸球体濾過量(eGFR)の低下がなくても慢性腎臓病(CKD)とされる.また,腎障害の有無は,尿・血液検査,画像診断,病理所見などによって確認される.したがって,eGFR が低下しているときはもちろん,腎の形態的変化が予想されるときには,腎・尿路の画像診断を1回は施行すべきである.画像診断は,■胞,腎石灰沈着,腫瘤・瘢痕性病変,閉塞性腎障害だけでなく,機能低下をきたす原疾患を診断するうえでも必要である.

目次に戻る


第4章 管理・治療
共通する管理・治療 1.生活指導

玉垣 圭一   京都府立医科大学腎臓内科

要旨
 慢性腎臓病(CKD)の発症と進展には,生活習慣が深く関係している.特に,肥満・メタボリックシンドロームは糖尿病や高血圧などの発症基盤となるだけでなく,蛋白尿や腎機能低下の危険因子となることが示されている.肥満の改善(体重減量),定期的な運動,禁煙,適度な飲酒,といった生活習慣の改善は,CKD の治療において重要な役割を担っている.

目次に戻る


第4章 管理・治療
共通する管理・治療 2.食事指導

前田 益孝    JAとりで総合医療センター腎臓内科 副院長

要旨
 食事療法は薬物投与と異なり,患者の日常生活への介入を必要とする.単に摂取量を示しただけでは実質的な治療には結びつかない.食習慣を把握したうえで,できることから始めていくことが実践的である.たんぱく質制限の前提は十分なエネルギー摂取であり,後に制限を順に加えていくことが患者には受け入れやすい.この際,栄養学的バランス評価は必須となる.体重や血液濃度に加え,尿成分なども勘案し,新たな食事指導に反映させていくシステマティックな検討が必要である.

目次に戻る



第4章 管理・治療
共通する管理・治療 3.降圧療法

伊藤 貞嘉    東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野 教授

要旨
 高血圧は CKD に高率に合併し,腎機能障害の進展および心血管疾患の重要なリスク因子である.CKD 患者の高血圧治療の目的は,腎機能障害進行の抑制と,心血管疾患(CVD)の発症を予防することである.日本腎臓学会による『CKD診療ガイド』が2012年に改訂され,血圧の管理目標は 130/80mmHg 以下とされている.CKD ではしばしば治療抵抗性高血圧が見られるが,その中には二次性高血圧が含まれていることがあるので注意する.減塩,適正体重の維持,禁煙などの生活習慣の改善を行いつつ,降圧薬による治療を行う.治療による尿アルブミン排泄量の減少の度合いと腎予後および生命予後の改善が相関する.したがって,尿アルブミンや尿蛋白を定量的に評価し,診療の指針とするべきである.尿蛋白減少には,十分な降圧,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬の十分量の投与が必要である.

目次に戻る



第4章 管理・治療
共通する管理・治療 4.貧血

菅野 義彦     慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センター 准教授

要旨
 かつて透析患者のヘモグロビン(Hb)値は5〜6g/dlであったが,エリスロポエチン製剤の登場により,健常者と同程度に維持することができるようになった.しかし,13g/dl以上に維持した場合,梗塞性疾患のリスクがあり,そのコントロールは現在,日本腎臓学会,日本透析医学会から提唱されているガイドラインに従って,適切に行うべきである.

目次に戻る



第4章 管理・治療
共通する管理・治療 5.CKD−MBD

安藤 亮一    武蔵野赤十字病院腎臓内科 部長

要旨
 慢性腎臓病に伴うミネラル代謝異常(CKD−MBD)は保存期から透析期にわたり,心血管病の原因となり,生命予後を左右する合併症であり,管理・治療が重要である.保存期では,管理目標値のエビデンスに乏しい.一方,透析期では,生命予後の観点から,P,Ca,副甲状腺ホルモン(PTH)の管理目標値が定められた.いずれもP,Ca管理が基本である.透析期では,シナカルセトにより PTH,P,Caの管理が改善する.Ca 非含有P吸着薬は Ca 負荷とならず,Ca 高値例や異所性石灰化例では適応となる.

目次に戻る



第4章 管理・治療
疾患固有の管理・治療 1.糖尿病性腎症の治療

小川 大輔    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科糖尿病性腎症治療学 准教授
槇野 博史    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学 教授

要旨
 2型糖尿病の増加に伴い,糖尿病性腎症による透析導入は増加し続けている.早期であれば,血糖や血圧を厳格にコントロールする集約的治療により,腎症が寛解することが明らかになってきた.腎症の早期診断のために,アルブミン尿を測定することが重要である.日本人の2型糖尿病性腎症患者を対象とした大規模臨床試験により,アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)が,早期腎症から顕性腎症への移行を抑制することが証明された.
目次に戻る



第4章 管理・治療
疾患固有の管理・治療 2.慢性糸球体腎炎の治療

御手洗哲也    埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科 教授
小暮 祐太     埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科
佐野 達郎     埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科

要旨
 慢性糸球体腎炎は単一疾患ではなく,さまざまな病態が含まれるが,免疫系や補体系の関与が明らかにされた疾患もある.診断が確定した場合は,科学的根拠(EBM)に基づき適切な療法を選択することが求められ,診療ガイドラインも普及してきた.積極的な治療で尿異常が消失し,臨床的寛解に至ることもあるが,進行例では高血圧・脂質異常症・高尿酸血症,腎性貧血などの管理を行う腎保護療法が勧められる.

目次に戻る



第4章 管理・治療
疾患固有の管理・治療 3.高齢者のCKD

柏原 直樹    川崎医科大学腎臓・高血圧内科 教授

要旨
 高齢化社会の到来を迎え,診療対象の多くが高齢者となりつつある.安全な医療を実施するためには,高齢者の身体特性を熟知する必要がある.腎臓も加齢による構造的,機能的変化を免れない.高齢者は潜在的な CKD 患者であると見なしうる.高齢者においても CKD は脳卒中などの心血管病発症と連関しているが,さらに認知機能障害とも関連している.他疾患の診療現場においても,加齢に伴う腎臓の機能的,構造的変化に配慮する必要がある.

目次に戻る



第4章 管理・治療
疾患固有の管理・治療 4.小児のCKD

中西 浩一    和歌山県立医科大学小児科学 講師
吉川 徳茂    和歌山県立医科大学小児科学 教授

要旨
 小児慢性腎臓病(CKD)の診断も成人と同様にされるが,原因は先天性腎尿路疾患など,尿異常を認めにくい疾患の比率が高い.新生児の糸球体濾過量(GFR)は成人の1/5程度で,2歳前後に成人と同等になる.血清クレアチニン(Cr)は1歳を超えると成長とともに増加する.本邦小児の酵素法による血清Cr基準値が作成されている.本邦では3歳児検尿,学校検尿などの検診システムが整備され,腎疾患の早期発見に寄与している.検診陽性所見者の管理を適切に行うことが重要である.

目次に戻る



第4章 管理・治療
疾患固有の管理・治療 5.長期透析患者の合併症と治療

佐藤 隆太     自治医科大学内科学講座腎臓内科学部門
草野 英二     自治医科大学内科学講座腎臓内科学部門 教授

要旨
 長期透析患者は依然増加傾向であり,長期透析合併症の認識,診断,管理,治療は臨床的に極めて大切な事項である.長期透析合併症は多岐にわたるが,日常診療では特に生命予後に影響する合併症が重要であり,透析患者特有の合併症対策も見逃せない.透析患者の死亡原因は,頻度順では心血管障害,感染症,悪性腫瘍であり,心血管障害関連因子の把握と治療,感染症の予防と治療,そして悪性腫瘍の早期発見・適正治療などを心がける.慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD−MBD)や透析アミロイド症(DRA)の診断や治療も重要である.長期透析患者では複数の合併症がしばしば存在し,それぞれの合併症と病態に基づいた治療が必要である.

目次に戻る



第4章 管理・治療
疾患固有の管理・治療 6.腎移植

乾  政志    東京女子医科大学泌尿器科 准教授
田邉 一成    東京女子医科大学泌尿器科 教授

要旨
 腎移植は透析療法と並んで末期腎不全(ESKD)に対する有効な治療法であり,高いQOLが得られる根本的治療である.治療成績は2000年以降,飛躍的に向上しており,10年生着率は90%を超えるようになった.新規免疫抑制薬の登場に伴う急性拒絶反応の減少,抗ウイルス薬やモニタリングによる感染症コントロールの改善や内科的合併症管理などが,これらに寄与したものと思われる.

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬剤投与

神田英一郎    東京共済病院腎臓内科 部長

要旨
 一般的な薬剤の排泄経路には腎臓と肝臓がある.慢性腎臓病(CKD)患者では,腎機能が低下し,薬物動態に変化が生じているため,投与量や投与期間を調節しなくてはならず,各種データベースを参照する必要がある.腎機能評価には,体表面積補正を行っていない糸球体濾過量(GFR)を用いる.薬剤間の相互作用を生じる場合や,薬剤自体が原因で腎障害が生じている場合もあるため,病歴や投薬歴を詳細に調査する必要がある.

目次に戻る



第4章 管理・治療
医療経済

近藤 正英    筑波大学医学医療系保健医療政策学・医療経済学[MK1] 准教授

要旨
 国民医療費の増大が続く中で,臨床医も医療経済への理解を持つことが重要になってきた.本稿では経済学のアプローチによる医療研究の目的を導入したうえで,医療サービスの経済評価としての費用効果分析を簡単に解説し,我が国での慢性腎臓病(CKD)対策の費用効果分析の事例を紹介する.

目次に戻る



第5章 ガイドライン
CKDのガイドライン

今井 圓裕    中山寺いまいクリニック 院長

要旨
 2002 年に発表された慢性腎臓病(CKD)の定義と重症度分類に関するガイドラインが 10 年ぶりに改訂された.今回の改訂では,重症度分類が糸球体濾過量(GFR)とアルブミン尿による評価となった.この新しい CKD の診療ガイドラインを日本に定着させるために,日本腎臓学会は『CKD 診療ガイド 2012』を作成した.この診療ガイドは一般医家向けであったため,推奨度やエビデンスレベルは省略されていた.本稿は,推奨度とエビデンスを筆者個人の見解で示したものである.

目次に戻る


第5章 ガイドライン
透析療法のガイドライン

渡邊 有三    春日井市民病院 院長

要旨
 血液透析導入基準を推算糸球体濾過量(eGFR)の値のみから決定することは臨床的に無理がある.eGFR が 15ml/分/1.73m2 以下の者で,尿毒症症状を1つ以上示す者を対象とすべきではないか.早期導入は透析導入後の生命予後改善につながらない.導入時に,ほかの合併症などで終末期と判断される患者の導入について,日本透析医学会は初めて提言(案)を発表した.患者の QOL にも配慮した治療が実施されるべきであり,この複雑な問題について,国民全体を巻き込んだ広い議論の中で,1つの指針が醸成されることを切望する.

目次に戻る