要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 13改/代謝1
脂質異常症(高脂血症)



第1章 概念・定義
概念と病型分類:(1)原発性高脂血症

木原 進士 大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学 講師

要旨
 原発性高脂血症は単一遺伝子疾患ばかりでなく,多因子で規定されるものや遺伝因子に環境因子が加わって発症するものも含まれる疾患群である.生活習慣病としての脂質異常症の増加が著しいが,それらの病態を把握して動脈硬化性疾患に対する適切な予防・治療法を選択するためにも,原発性高脂血症における脂質を制御する因子の働きとその機能異常,血液中における脂質粒子の流れをイメージすることが重要である.

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第1章 概念・定義
概念と病型分類:(2) 二次性脂質異常症

神崎 恒一 杏林大学医学部高齢医学 准教授

要旨
 二次性脂質異常症は,ある疾患に続発して起る脂質代謝異常である.二次性脂質異常症発症の機序はよく分かっていないが,臨床的に表1に示すような疾患で,それぞれの表現型を呈することが知られている.重要な点は,脂質異常症をみた際,表にある疾患を疑うこと,もし二次性脂質異常症であれば,まず原疾患を治療し,一般にこれによって脂質異常症も改善することを認識しておくことである.ただし,一部の原疾患は治療しても脂質異常症が十分改善しない場合もあり,その際は薬物などを用いて治療を行う.

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第1章 概念・定義
臨床疫学:(1)高LDLコレステロール血症と動脈硬化性疾患

三浦 克之 滋賀医科大学社会医学講座 福祉保健医学部門 准教授

要旨
 集団の総コレステロール分布は時代や地域によって大きく変動し,集団レベルでの栄養問題と言える.多くのコホート研究が総コレステロールまたは低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)が将来の虚血性心疾患リスクの強力な危険因子であることを示している.一方,脳卒中とコレステロールの関連は複雑であり,脳梗塞リスクを上昇させる可能性がある.スタチンによる臨床試験では LDL−C 低下により虚血性心疾患および脳梗塞リスクが明らかに低下している.



第1章 概念・定義
臨床疫学:(2)高トリグリセリド血症と動脈硬化性疾患

江草 玄士 江草玄士クリニック 院長

要旨
 最近の疫学研究は,欧米人のみならず日本人においても,高トリグリセリド(TG)血症(空腹時,非空腹時とも)が動脈硬化性疾患,特に冠動脈疾患の独立した危険因子であることを支持するものが多い.脳卒中の危険因子であることも示唆されるが,まだ十分な成績がない.高 TG 血症自体が動脈硬化促進に強く影響するのか,高TG血症に関連した背景因子が重要なのかもまだ明らかではない.

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第1章 概念・定義
臨床疫学:(3)低HDLコレステロール血症・ 高HDLコレステロール血症と動脈硬化性疾患

酒井 尚彦 さかいクリニック 院長

要旨
 高比重リポタンパク(HDL)による動脈硬化防御機構はコレステロール逆転送を介している.我が国においても低 HDL−C 血症は動脈硬化性疾患の独立した危険因子であるが,コレステロールエステル転送タンパク(CETP)欠損症に代表される高 HDL−C 血症も生体にとって必ずしも好ましい変化ではない.したがって, HDL−C 値の異常を認めた場合,その値の高低のみでなくそこに至るメカニズムを考慮して,動脈硬化性疾患を合併する可能性を念頭に置きながら慎重に診療にあたるべきである.現在,選択的に HDL−C 値を上昇させる薬剤はなく,HDL 代謝異常の治療は生活習慣の改善を中心に,その原因を取り除くことが第一となる.



第2章 病理・病態生理
コレステロールの吸収メカニズム

吉田 雅幸  東京医科歯科大学生命倫理研究センター 教授

要旨
 これまであまり知られていなかった小腸におけるコレステロール吸収機構であるが,近年の分子生物学的研究によって小腸コレステロールトランスポーター NPC1L1 が同定され,またその阻害薬が臨床で利用されるようになり,臨床的な治療の選択肢が拡大したというだけでなく,コレステロール代謝とインスリン抵抗性など代謝異常との相互作用など新たな研究領域の展開が期待される極めて興味深い分野となった.



第2章 病理・病態生理
小腸と肝臓におけるリポタンパク合成

増田 大作 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学

要旨
 小腸で吸収あるいは肝臓で生合成された脂質を末梢の組織へと運搬するためにカイロミクロンあるいは超低密度リポタンパク粒子が形成される.まず,核となるアポタンパクB(小腸では ApoB−48,肝臓では ApoB−100)が産生され,コレステロールエステル,リン脂質,トリグリセリドが会合(assembly)する.血中へと分泌された後血管壁に存在するリパーゼにより加水分解され最終的に肝臓へ回収される.



第2章 病理・病態生理
病理:動脈硬化病変,黄色腫(皮膚,腱)の組織像

伊倉 義弘  大阪市立大学大学院医学研究科病理病態学
北林千津子 大阪市立大学大学院医学研究科病理病態学
上田真喜子 大阪市立大学大学院医学研究科病理病態学 教授

要旨
 脂質異常症(高脂血症)の合併症として最も重要なものは,アテローム性動脈硬化症である.動脈硬化性プラークには酸化低比重リポタンパク(LDL)の局在を伴う泡沫化マクロファージの集積がしばしば認められ,その成り立ちに炎症反応に基づく酸化ストレスの関与が示唆される.皮膚や腱の黄色腫も,多くが高脂血症を基盤に発生する.病巣内に集積する泡沫化マクロファージには,動脈硬化症同様,酸化 LDL が局在し,酸化ストレスは両者に共通した要因と見なしうる.



第2章 病理・病態生理
病態生理:(1)リポタンパク質代謝とリポタンパク質受容体・酵素

高橋 昭光 筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科 講師
山田 信博 筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科 教授

要旨
 肝臓が中心となって行われる脂質代謝では,脂質が血中を運搬されるために,リポタンパク質という脂質とタンパク質が複合したコロイド粒子が活躍する.その代謝には@食事中の外因性脂質を腸管から肝臓へカイロミクロンを介する経路,A肝臓で合成・再構成された脂質を超低比重リポタンパク質(VLDL)として分泌し,末梢組織へ脂肪酸やグリセロールを供給しながら低比重リポタンパク質(LDL)となってコレステロールも供給する経路,B末梢組織で余剰となったコレステロールを高比重リポタンパク質(HDL)で肝臓へ逆転送する経路に分けられる.



第2章 病理・病態生理
病態生理:(2)核内受容体・転写因子とリポタンパク調節機構

酒井 寿郎 東京大学先端科学技術研究センター代謝・内分泌システム医学分野 教授

要旨
 ステロール調整エレメント結合タンパク質(SREBPs)ファミリーは脂質のホメオスタシスを維持する転写因子である.サブタイプの1つである SREBP−2 はコレステロール生合成,および血中の主要コレステロール運搬体である低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)を細胞表面より取り込む LDL 受容体を制御するかたわら,別のサブタイプである SREBP−1c はグルコース,インスリンに核内受容体 Liver X Receptor 反応し主に脂肪酸合成を制御する.本稿では SREBP の分子メカニズムそして核内受容体 LXR との関連,さらに生活習慣病との関連について概説する.



第2章 病理・病態生理
病態生理:(3)ARH,PCSK9とリポタンパク代謝

杉沢 貴子  国立循環器病センター動脈硬化代謝内科
斯波真理子 国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部免疫応答研究室 室長

要旨
  低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)の増加をもたらす原発性脂質代謝異常疾患として,LDL 受容体遺伝子変異に起因する家族性高コレステロール血症(FH)とApoB−100 遺伝子変異に起因する家族性欠陥アポリポタンパク B−100 血症(FDB)が知られていたが,新たな常染色体優性高コレステロール血症の原因遺伝子として PCSK9 遺伝子が同定された.また,遺伝型式が異なる常染色体劣性遺伝性高コレステロール血症(ARH)の原因遺伝子として ARH タンパクが同定され,さらなる機能や臨床症状との関連の検討が期待されている.

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第2章 病理・病態生理
病態生理:(4)コレステロール逆転送と脂質転送タンパク

大濱  透 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 特任研究員

要旨
 血中高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)には,末梢細胞から余剰コレステロールを引き抜き,肝臓に転送,異化するコレステロール逆転送という基本的な機能がある.このコレステロール逆転送系において HDL−C はさまざまな因子によって調節されているが,その中にコレステロールエステル転送タンパク(CETP),リン脂質転送タンパク(PLTP)などの脂質転送タンパクがある.
 CETP は本邦で欠損症が発見され,欠損症に伴う著しい高 HDL−C 血症が,抗動脈硬化的に作用するのか議論されてきた.そのような中で,CETP 阻害薬の臨床試験が行われたが,結果は阻害薬を含む群で阻害薬を含まない群より心血管死亡率,全死亡率が共に高かった.
 一方,PLTP も HDL 代謝に大きな影響を与えるが,生体内での詳細な役割については不明な点も多い.HDL−C 濃度を単独で上昇させ,逆転送系を賦活化させる薬剤がない中,濃度のみならず,HDL の構成タンパク,脂質内容などの質的な側面からの検討も重要であろう.


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第2章 病理・病態生理
病態生理:(5)ABCトランスポーターとCholesterol Efflux

松浦 文彦 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 特任研究員

要旨
 近年の我が国における虚血性心疾患や脳卒中など動脈硬化を基盤とする重篤な血管病の急激な増加は,社会的にも極めて深刻な問題である.これまでのさまざまな臨床研究により,血清高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)値と冠動脈疾患罹患率との間には負の相関関係があることが証明され,HDL は抗動脈硬化作用を有する重要なリポタンパクであることが明らかとなった.HDL やその主要構成アポタンパクであるアポタンパク ATによる ATP 結合カセット(ABC)トランスポーター(ABCA1,ABCG1)を介した粥状動脈硬化巣からのコレステロールの引き抜き,いわゆる cholesterol efflux 機構は,最も重要な動脈硬化防御機構の1つである.この cholesterol efflux を賦活化させる臨床的に有効な治療法はいまだ確立されておらず,この治療法の開発は現代循環器病学,代謝学の最大の命題であると思われる.

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第2章 病理・病態生理
主要病態における遺伝子異常

原   眞純 帝京大学医学部附属溝口病院第四内科
塚本 和久 東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科 講師

要旨
 脂質異常症の原因にはリポタンパク代謝の各段階での異常がかかわっており,関与するアポタンパクや代謝酵素の遺伝子異常に加え,糖代謝やホルモンの影響,食事や運動といった環境因子などのさまざまな因子がかかわっている.本稿では,低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C),トリグリセリド,高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)の値の異常に分け,それぞれの病態と原因となる遺伝子異常について述べる.

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第2章 病理・病態生理
粥状動脈硬化の血管生物学

横出 正之 京都大学医学部附属病院探索医療センター探索医療臨床部 教授

要旨
 粥状動脈硬化症は種々の要因により発症するが,その本態は近年の血管生物学的検索により単なる脂質の血管への蓄積ではなく,傷害に対する連鎖反応の結果生じることが明らかになってきた.さらに,重要な動脈硬化惹起因子とされる高 LDL コレステロール血症の果たす役割についても,低比重リポタンパク(LDL)の血管壁での酸化変性が重要な役割を演じることが解明された.本稿ではこれらの粥状動脈硬化症の血管生物学的解析の最近の成果を含めて論述する.

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第2章 病理・病態生理
Atherogenic lipoproteinsの重要性:(1)酸化LDL

久米 典昭 京都大学大学院医学研究科循環器内科学 講師

要旨
 心筋梗塞,狭心症などの虚血性心疾患の基盤となる病変は粥状動脈硬化であるが,高脂血症,中でも血中低比重リポタンパク(LDL)の増加が,その極めて強力な危険因子となる.増加した LDL が粥状動脈硬化を惹起する分子機構として,酸化変性を受けた LDL(酸化 LDL)の果たす役割の重要性が示されている.急性冠症候群の発症の成因となるプラークの破綻にも酸化 LDL とその受容体が関与する.

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第2章 病理・病態生理
Atherogenic lipoproteinsの重要性:(2)レムナントリポタンパク

藤岡 由夫  神戸学院大学栄養学部栄養学科栄養生理学研究室 教授

要旨
 レムナントはトリグリセリドに富むリポタンパクがリポタンパクリパーゼにより脂肪分解されたもので,耐糖能異常や複合型高脂血症,メタボリックシンドロームなどで空腹時や食後に高値を呈する.動脈硬化発症においてレムナントは脂質の供給だけでなく炎症などさまざまな機序に関連することが分かってきた.RLP−C や RemL−C,ApoB−48 濃度の測定など簡便な測定法が開発され,今後の診断と治療法の確立が望まれる.

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第2章 病理・病態生理
Atherogenic lipoproteinsの重要性:(3)small dense LDL

芳野  原 東邦大学医学部内科学(大森)糖尿病代謝内分泌科 教授
平野  勉 昭和大学医学部糖尿病代謝内分泌内科 教授
鹿住  敏 武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科 教授

要旨
 疫学的には高 LDL コレステロール血症が最も重要な冠動脈疾患の危険因子とされているが,最近では,LDL以外のリポタンパクの動脈硬化との関連も大きくクローズアップされている.中でも最近注目されているのはレムナント分画と small dense LDL である.特に small dense LDL はその動脈硬化惹起性,糖尿病性腎症,あるいはインスリン抵抗性との関連について多くの報告がなされている.また,small dense LDL は“超悪玉コレステロール”とも名づけられており,非古典的な冠動脈疾患の危険因子の筆頭として大いに注目されている.

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第2章 病理・病態生理
Atherogenic lipoproteinsの重要性:(4)Lp(a),糖化LDL,その他のAtherogenic lipoproteins

張   偉光 山形大学医学部器官病態統御学講座血液・循環分子病態学分野
一瀬 白帝 山形大学医学部器官病態統御学講座血液・循環分子病態学分野 教授

要旨
 リポタンパク(a):Lp(a)は,動脈硬化とそれに基づく心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化血栓症を引き起すことが知られている.また,Apo(a)のクリングル4の繰り返し回数の個人差に基づくフェノタイプは,より低分子量のものほど動脈硬化との相関が高い.Lp(a)や低比重リポタンパク(LDL)の酸化や糖化によって動脈硬化との相関が強くなると言う.血管内皮細胞の障害,マクロファージの泡沫化,平滑筋細胞の増殖などを介して動脈硬化促進作用を増強するものと考えられる.

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第3章 鑑別診断・病態解析のための検査とその解釈
診断の進め方

武城 英明  千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学 教授
要旨
 脂質異常症の診断を進めるにあたり,現病歴,既往歴,身体所見と共に,血清所見が多くの情報を与える.さらに,病態を理解するには電気泳動法,超遠心法などのリポタンパク分画法による血清脂質異常の表現型に基づいた鑑別が有用である.病因解析には,リポタンパク代謝にかかわる酵素などのタンパク,活性の測定,また,動脈硬化との関連を調べることが重要である.最近,酵素タンパクの新たなアッセイ系や遺伝子解析が可能となってきた.

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第4章 管理・治療
管理:(1)食事療法

近藤 和雄 お茶の水女子大学生活環境研究センター 教授
谷 真理子 お茶の水女子大学生活環境研究センター

要旨
 高脂血症の治療の基本は食事療法で,総コレステロール(TC)で 10〜20%,トリグリセリド(TG)で 50% 以上の低下が期待できる.TC の高い場合,エネルギー制限,脂肪エネルギー比 25% 以下(P:M:S=3:4:3,n−3:n−6=1:4),コレステロール 300mg 以上,食物繊維 25g 以上とする.TG の高い場合,エネルギー制限とともにアルコール制限が重要である.カイロミクロンが出現するときには中鎖脂肪酸を使用する.また,ビタミンE,ビタミンC,カロテノイド,ポリフェノールなどの抗酸化物の摂取も重要である.

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第4章 管理・治療
管理:(2)運動療法

佐々木 淳 国際医療福祉大学大学院創薬育薬医療分野 教授

要旨
 日常身体活動度の低下は過食とともに動脈硬化性疾患の主な原因であり,身体活動度を高め運動習慣つけることが動脈硬化性疾患の根本的な治療となる.運動処方としては効果と安全性を考慮し,運動強度は運動中“楽である”から“ややきつい”と感じる程度で脈拍数はおよそ110〜130/分程度の有酸素運動が適している.運動の種類としては歩行,水泳,サイクリングなど大きな筋肉を律動的に動かす運動が勧められる.運動量と頻度は毎日 30 分以上,週 180 分以上を目標にする.初めて運動療法を取り入れる際は,運動負荷試験を含む循環器系に重点を置いたメディカルチェックが必要である.

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第4章 管理・治療
管理:(3)禁煙指導

飯田 真美 JA岐阜厚生連中濃厚生病院 総合内科 部長

要旨
 喫煙はトリグリセリドを増加,高比重リポタンパク(HDL)コレステロールを減少させ,酸化ストレスを亢進させ脂質の酸化を引き起す.また,アディポネクチン減少,インスリン抵抗性惹起を通して,メタボリックシンドローム発症リスクを増加させ,動脈硬化性疾患発症に関与している.そのため,脂質異常症の予防や管理において禁煙は重要であり,喫煙者への積極的な働きかけが求められている.喫煙の本質であるニコチン依存症の治療には保険適用がされており,『禁煙治療のための標準手順書』に基づいて,薬物療法と行動療法を行うことによって禁煙成功率は上がる.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(1)HMGーCoA還元酵素阻害薬

山村  卓  大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体情報科学講座 教授
石神 眞人 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体情報科学講座 准教授

要旨
 生体内コレステロール生合成の律速酵素である 3−hydroxy−3−methylglutaryl−CoA(HMG−CoA)還元酵素の阻害によって血清コレステロールを低下させる高脂血症治療薬(スタチンと総称)が開発され,高コレステロール血症の治療薬として広く使用されている.コレステロール低下作用は,生合成の抑制よりも,肝細胞におけるコレステロール・プールの減少に伴う低比重リポタンパク(LDL)レセプターの発現亢進によるものとされる.副作用は少なく,スタチンによる LDL コレステロール低下療法により,冠動脈疾患の1次予防・2次予防の有効性が大規模臨床試験によって証明されている.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(2)フィブラート系薬剤

多田 紀夫 東京慈恵会医科大学附属柏病院総合診療部 部長
         東京慈恵会医科大学大学院医学研究科代謝・栄養内科学 教授

要旨
 フィブラート系薬剤はペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)αを活性化し,血清コレステロール,血清トリグリセリド,低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C),レムナントを低下させ,高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)を増加させる.そのためUb型,V型高脂血症,ならびにメタボリックシンドロームや2型糖尿病に合併する脂質異常症に適用となる.忍容性は高く大規模臨床試験からは有用性を示す成績が得られているが,筋障害,肝機能障害,胆石などの副作用もみられ,腎機能に配慮した処方が望まれる.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(3)プロブコール

番   典子 東邦大学医療センター佐倉病院内科講座
白井 厚治 東邦大学医療センター佐倉病院内科講座 教授

要旨
 プロブコールは高コレステロール血症に使用される脂質低下薬であるが抗酸化作用も合わせ持つ特徴がある.
 低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)と共に,高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)も下げることから敬遠されがちであったが,後者はコレステロールエステル転送タンパク発現の亢進作用によることが明らかにされ,いわゆるインスリン抵抗性亢進による低 HDL−C 血症と区別すべきとの意見が出されていた.
 これまで知られていた特異的な黄色腫退縮作用,冠動脈再狭窄予防作用に加えて,近年糖尿病性腎症進展抑制作用も報告された.
 また,家族性高コレステロール血症のイベント発症の報告も我が国でなされ,抗動脈硬化薬としての見直しがされている.
 通常,1錠 250mg を1日2〜4錠服用する.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(4)陰イオン交換樹脂

木下  誠 帝京大学医学部内科学 教授

要旨
 陰イオン交換樹脂は,胆汁酸の腸肝循環を阻害することにより血清低比重リポタンパク(LDL)低下を来す薬剤である.本薬剤を投与することにより虚血性心疾患が予防できることは,さまざまな予防試験の結果により確認されている.また,本剤は血糖降下作用や体重減少作用も有することが知られている.本剤は腸管内で作用する非吸収性の薬剤であるため,主たる副作用は消化管症状であり安全性の高い薬剤である.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(5)小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

山下 静也 大阪大学医学部附属病院循環器内科 病院教授

要旨
 小腸におけるコレステロールの吸収の分子機構は長らく不明であったが,最近小腸,特に空腸の絨毛に発現するニーマンピック C1Like1(NPC1L1)がコレステロール吸収に関与することが,ノックアウトマウスを用いた研究から明らかにされた.この NPC1L1 の阻害薬であるエゼチミブは,NPC1L1 との結合により,食事由来および胆汁由来のコレステロールの吸収を阻害し,血中低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)を低下させる.本稿では小腸におけるコレステロール吸収の分子機構とコレステロール吸収阻害薬エゼチミブの臨床効果について紹介する.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(6)ニコチン酸誘導体

野崎 秀一 市立川西病院内科 副院長

要旨
 ニコチン酸誘導体は古くから使われている脂質異常症治療薬であり,トリグリセリド,低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)を低下させるだけでなく,高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)を上昇させる働きを持つ.さらに,臨床的にも動脈硬化進展予防作用があることが確認されている.ニコチン酸の脂質低下機序は複数の作用点が想定されている.末梢脂肪組織における脂肪分解が抑制され,遊離脂肪酸の肝臓への流入が減少した結果,超低比重リポタンパクコレステロール(VLDL)が抑制される.また,リポタンパクリパーゼ(LPL)を活性化して VLDL などのリポタンパクの異化も促進される.さらに,抗動脈硬化作用としてはコレステロール逆転送にも影響を及ぼす可能性が示唆されている.リポタンパク(a):Lp(a)低下作用を有する唯一の治療薬でもある.最近,ニコチン酸受容体が明らかにされ,副作用の皮膚紅潮へのメカニズムも明らかにされてきている.近年,低 HDL−C の冠血管危険因子の重要性がますます強調されてきており,ニコチン酸およびその誘導体の有用性が再評価されつつある.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(7)EPA(イコサペント酸エチル)

安田 知行  神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野
平田 健一   神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野 教授

要旨
 魚油の成分であるイコサペント酸エチル(EPA)は,高純度 EPA 製剤を用いた大規模臨床試験JELISにより,日本人において心血管イベント抑制効果があることが立証された.EPA の抗動脈硬化作用は,トリグリセリド(TG)低下に加えて,抗血栓作用,抗炎症作用,膜安定化作用といった多面的作用により成り立っている.EPA は,今後抗動脈硬化性疾患薬として広く使用されるであろう.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(8)他疾患の治療薬で脂質異常症を改善させる薬剤(PPARγアゴニストなど)

本城  聡   千葉大学大学院医学研究院細胞治療学
横手幸太郎 千葉大学大学院医学研究院細胞治療学 講師

要旨
 本来の脂質異常症治療薬とは異なり,他疾患の治療薬で脂質異常症を改善させる作用を持つ薬剤が存在する.1つは糖尿病治療薬であるチアゾリジン系薬で,トリグリセリドの低下,高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)の上昇などの作用を有し,これは同薬の抗動脈硬化作用の一翼を担っている可能性がある.また,ホルモン補充療法,肥満治療薬などにも同様の作用がある.薬物の投与において,これらの作用にも十分な知識を持つことが望ましい.

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第4章 管理・治療
治療薬剤:(9)開発中の治療薬ン

上田 之彦 国家公務員共済組合連合会枚方公済病院内科 部長

要旨
 動脈硬化性疾患の危険因子としての脂質異常症で高 LDL コレステロール血症と低 HDL コレステロール血症が主に治療対象とされている.
 現在,脂質異常症,特に高 LDL コレステロール血症治療の主流となっているスタチン以外に,低比重リポタンパク(LDL)代謝経路に働く薬剤の開発が進められている.さらに,ようやくその全容が明らかになってきた高比重リポタンパク(HDL)代謝経路に働く薬剤の開発も進められている.

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第4章 管理・治療
治療薬のプラーク退縮効果

倉林 正彦 群馬大学大学院医学系研究科臓器病態内科学 教授

要旨
 動脈硬化性疾患は糖尿病や肥満の増加とともにますます増加し,低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)の厳格な管理の重要性が提唱されている.強力なスタチンによってLDL−Cを大幅に低下させることは困難ではなくなった.最近,血管内超音波(IVUS)を用いた研究によって LDL−C の低下とともに高比重リポタンパクコレステロール(HDL−C)を上昇させることが,プラークの退縮をもたらすことが示された. HDL−C はこれからの脂質管理のうえで,重要な標的であろう.

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第4章 管理・治療
治療薬のpleiotropic effects

石橋 敏幸 福島県立医科大学医学部内科学第一講座 准教授

要旨
 スタチンのコレステロール低下作用による心血管イベントの抑制に加えて,コレステロール非依存性の臨床効果が示されている.スタチンの pleiotropic effects の機序はメバロン酸下流のイソプレノイドを介する低分子量Gタンパクの不活性化と PI3K/Akt 系の活性化が主なものである.速効性の pleiotropic effects は非ゲラニルゲラニル化分子からの迅速な活性化を阻止することが重要な役割を果たしている.

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第4章 管理・治療
治療薬の代謝と薬物相互作用

前田真貴子 大阪大学大学院薬学研究科臨床薬効解析学分野
         兵庫医療大学薬学部 講師
藤尾  慈  大阪大学大学院薬学研究科臨床薬効解析学分野 准教授
東  純一  大阪大学大学院薬学研究科臨床薬効解析学分野 教授

要旨
 脂質異常症は common disease であり,その多くはさまざまな疾患を合併している.本稿では,脂質異常症治療薬の薬物代謝を中心に,薬物動態学的観点から脂質異常症治療薬の薬物相互作用とそのメカニズムを概説した.大規模臨床試験によるエビデンスに加え薬物の薬物動態学的特性を考慮し,薬物相互作用を回避することは,脂質異常症治療の最適化のみならず,合併疾患に対する治療の質の維持に重要である.

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第4章 管理・治療
薬物治療の選択基準と副作用

岡島 史宜 日本医科大学内科学講座血液・消化器・内分泌代謝部門
及川 眞一 日本医科大学内科学講座血液・消化器・内分泌代謝部門 教授

要旨
 脂質代謝異常症の治療は,まず食事療法と運動療法により開始される.これらの効果が不十分であれば,薬物療法の導入が考慮される.治療薬はそれぞれ作用機序,治療効果,安全性などの面で特徴を有しており,それらを充分理解したうえで薬剤を選択することにより,より有効で安全性の高い治療が可能となる.また,薬剤を投与される患者側の要因も十分に留意すべきであり,特に腎機能低下例などでは,注意深い経過観察が必要となる.

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第4章 管理・治療
LDL−アフェレシス

斯波真理子 国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部免疫応答研究室 室長
南雲 彩子  国立循環器病センター動脈硬化・代謝内科

要旨
 家族性高コレステロール血症(FH)ホモおよび冠動脈疾患を有する重症ヘテロ接合体に対して LDL−アフェレシス療法が行われている.我が国では,LDL 吸着法,二重膜濾過法が施行できる.LDL−アフェレシスは,動脈硬化に関連のあるリポタンパクである低比重リポタンパク(LDL),超低比重リポタンパク(VLDL),リポタンパク(a):Lp(a)のみならず,動脈硬化巣の進展に関連があるとされるフィブリノーゲンやアンチトロンビンVなどの除去効果もあり,粥状硬化の進展予防や退縮に有用であると考えられる.

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第4章 管理・治療
大規模臨床試験のエビデンス:(1)1次予防

高梨 幹生 東京大学医学部附属病院糖尿病代謝内科
石橋  俊  自治医科大学内科学講座内分泌代謝部門 教授

要旨
 スタチンを用いた大規模臨床試験の結果によって,脂質低下療法の冠動脈疾患予防効果が証明され,非冠動脈疾患死の増加に対する懸念が払拭された.冠動脈疾患低リスクの日本人においても,通常用量の脂質低下療法により冠動脈疾患予防に効果があることが証明された.1次予防試験における統計的に有意な総死亡率減少の確認が今後に残された課題である.

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第4章 管理・治療
大規模臨床試験のエビデンス:(2)2次予防

梅本 誠治 山口大学医学部附属病院臨床試験支援センター 准教授
吉野 敬子 山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学
松田  晋  山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学
松ア 益徳 山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学 教授

要旨
 動脈硬化性疾患に対する2次予防試験の結果,スタチンによる積極的脂質低下療法は患者背景や病態に関係なく,総死亡や心血管イベントの再発抑制が可能であり,LDLコレステロール値をより早期からより低く管理することが重要であることが証明された.また,スタチン以外の高脂血症薬にも心血管イベント抑制効果があることから,患者の脂質プロフィールに合わせて適切な薬剤を選択することが動脈硬化性疾患の2次予防に有用である.

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第4章 管理・治療
脂質異常症(高脂血症)治療と脳卒中

今村  剛 九州大学大学院医学研究院環境医学分野
清原  裕 九州大学大学院医学研究院環境医学分野 教授

要旨
 一連の介入試験の成績により,高(LDL)コレステロール血症に対するスタチン療法は脳卒中(脳梗塞)発症・再発を有意に抑制することが実証されている.しかし,非スタチン系薬剤や食事療法には脳卒中の予防効果は見いだされていない.スタチンの予防効果は脂質低下作用とともに多面的作用によってもたらされると考えられる.一方,高トリグリセリド血症,低 HDL コレステロール血症に対する介入試験では,脳卒中の予防効果は明らかではない.

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第4章 管理・治療
メタボリックシンドロームと脂質異常症

西田  誠 大阪大学保健センター 准教授

要旨
 危険因子が集積するマルチプルリスクファクター症候群の一種であるメタボリックシンドロームは,虚血性心疾患を予防するためのコレステロールの次の疫学的ターゲットであり,内臓脂肪の蓄積を基盤にするため内臓脂肪症候群とも呼ばれる.内臓脂肪蓄積に伴い動脈硬化惹起性リポタンパクが増加し,動脈硬化進展に大きく関与することから,メタボリックシンドロームにおける脂質異常症の管理は非常に重要である.

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第4章 管理・治療
低コレステロール血症と死亡率−LDLコレステロールの下げ過ぎは問題か?

久保田直純 順天堂大学医学部循環器内科
代田 浩之  順天堂大学医学部循環器内科 教授

要旨
 欧米を中心に実施されたスタチンを用いた多数の臨床介入試験の結果から,低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)低下療法による冠動脈疾患の1次・2次予防効果は確立されている.我が国においても,MEGA の結果から1次予防における LDL−C 低下療法の効果が確認された.本稿では LDL−C 下げ過ぎによる問題点(がんと肝機能障害,脳出血についての検討)を今までのエビデンスをもとに概説する.

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第4章 管理・治療
若年者における脂質異常症の治療指針

太田 孝男 琉球大学医学部育成医学分野 教授

要旨
 脂質異常症は生活習慣病に含まれているが,若年者では成人に比べ原発性の頻度が高いのが特徴である.しかし,若年者の脂質異常症の多くは,肥満を伴う2次性のものである.原発性では家族性高コレステロ−ル血症および家族性複合型高脂血症は若年者でも注目すべきであり,早期の確定診断と治療介入が必要である.また,原発性でも2次性でも生活習慣の乱れは動脈硬化の進展を促進させるため,幼小児期からの適切な生活習慣の確立が望まれる.

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第4章 管理・治療
女性における脂質異常症の治療

若槻 明彦 愛知医科大学医学部産婦人科学講座 教授

要旨
 閉経後,心血管疾患(CVD)のリスクが増加することが知られている.エストロゲン濃度の減少は血中低比重リポタンパク(LDL)とトリグリセリド(TG)濃度を上昇させる.上昇した TG は LDL を酸化変性しやすい小型LDL粒子に変化させ,CVDリスクを上昇させる.閉経後脂質異常症の管理にはスタチンやフィブラート製剤が有用であることが分かっている一方,ホルモン療法(HT)は従来,積極的に使用されてきたが,大規模臨床試験により,CVD リスクを増加させると報告され,現在では適応外となっている.しかし最近,HT の開始年齢や投与ルートにより,CVD リスクに差異があることも分かっており,女性のトータルヘルスケアに有用である可能性がある.

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第4章 管理・治療
高齢者の脂質異常症の治療指針

荒井 秀典 京都大学大学院医学系研究科加齢医学 講師

要旨
 加齢とともに動脈硬化性疾患の発症頻度は増加し,その重要な危険因子である脂質異常症の頻度も増加する.したがって,高齢者の 日常生活活動度(ADL)および生活の質(QOL)を維持するためには,虚血性心疾患や脳血管障害の発症を抑制することが重要となる.心血管イベント予防のための脂質管理は重要であり,前期高齢者においては成人と同じ治療指針で望むべきであり,後期高齢者においては主治医の総合的な判断が必要である.

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第4章 管理・治療
脂質異常症治療薬の医療経済

横山 信治 名古屋市立大学大学院医学研究科基礎医科学講座生物化学分野 教授

要旨
 我が国における虚血性心疾患の発症率は,死亡統計や最近のスタチン系薬剤使用患者に対する大規模前向き調査によっても,欧米の1/3から1/4,年間総死亡数では人口 2.5 億のアメリカで46万人,同じ人口の EU 諸国でも 50 万人を超えているのに比べて,1.25 億の我が国では7万人に過ぎない.この予防に消費されている抗高脂血症薬は,世界2 兆円の市場の中で 3,000 億円以上を占める.こうした背景にある我が国の虚血性心疾患を低比重リポタンパクコレステロール(LDL−C)管理でどれほど予防できるかをシミュレーションすると,大規模予防試験の結果とよく一致する.

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第5章 ガイドライン
欧米の脂質異常症治療ガイドライン

寺本 民生 帝京大学医学部内科 教授

要旨
 脂質異常症の治療目標は,虚血性心疾患の予防にある.その多発地区である欧米ではかなり早い時期からその対策がなされてきた.そのまとめがガイドラインである.我が国のガイドラインもそれに近いものであることから,その歴史を知ることは大切である.アメリカでは国民コレステロール教育プログラム(NCEP)が 1988 年に発表され,その後 2.5 回の改訂を行っている.ヨーロッパでも3回の改訂を行っている.エビデンスに基づくガイドラインの形である.

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第5章 ガイドライン
動脈硬化性疾患予防ガイドライン−日本動脈硬化学会2007

及川 眞一 日本医科大学内科学講座血液・消化器・内分泌代謝部門 教授

要旨
 動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは脂質異常症として高脂血症や低 HDL−C 血症を含めて認識することとした.1次予防,2次予防の考えを明確にし,LDL−C 値から症例の把握を行うものとした.これは症例の危険度を理解することに対し,より明快にすることを可能とした.危険因子の改善は単に薬剤を投与することではなく,生活習慣を改善することが最も重要なツールであることを改めて示した.

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第6章 低脂血症の病因,診断と管理
低脂血症の病因,診断と管理

山村  卓  大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体情報科学講座 教授
石神 眞人 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体情報科学講座 准教授
山下 静也 大阪大学医学部附属病院循環器内科 病院教授

要旨
 最近の定期健診項目には血清脂質が含まれており,低脂血症に遭遇する機会が増えている.一般に,安定した軽度の低脂血症は臨床的に問題とはならず,抗動脈硬化的な場合もある.しかし,乳児期の極端な低脂血症には早期診断,早期治療が必要なことがあり,急激に進行する低脂血症には重大な原疾患が潜在することがある.したがって,このような低脂血症に遭遇した場合,原因を積極的に検索し,適切な時期に適切な治療を開始すべきである.

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