要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 17/呼吸器4
肺炎 改訂第2版


第1章 肺炎について
歴 史

松本 慶蔵  長崎大学 名誉教授

要旨
 肺炎の歴史はすでにヒポクラテスの時代の記載に始まったが,現代医学の目から見れば,スペインかぜの時代以降かも知れない.第二次世界大戦前と戦後では,ペニシリンを始めとする抗菌薬の導入と衛生学の進歩により急変し,次いで,ウイルス学の進歩や新病原体の発見は,病原体と宿主による変化とともに著しく変貌した.抗菌薬の進展と病原体の耐性獲得は車の両輪であり,一方,飛行機などの発達は世界の中の肺炎をも近似させている.

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第1章 肺炎について
定義,分類,疫学

齊藤  厚   佐世保同仁会病院 院長

要旨
 種々の微生物による肺炎は大きく,細菌性肺炎と非細菌性肺炎に分けられる.また,発生場所によって,市中肺炎(CAP),院内肺炎(HAP),医療・介護関連肺炎(NHCAP)などと分類され,これらは宿主の年齢や免疫状態や感染微生物に相違がみられる.
 肺炎は我が国の死因順位では,悪性新生物,心疾患,脳血管障害に次いで第4位であり,高齢者ほど罹患率,死亡率共に高くなり,90 歳以上では死因の第1位である.
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第2章 病理・病態生理
病態生理

工藤 大介    東北大学大学院医学系研究科救急医学分野
久志本 成樹   東北大学大学院医学系研究科救急医学分野 教授
川上 和義    東北大学大学院医学系研究科感染分子病態解析学分野 教授

要旨
 微生物は生存戦略として,宿主に侵入し防御機構から逃れるシステムを発達させてきた.一方,宿主であるヒトも微生物感染に対する生体防御機構を発達させてきた.肺炎は,微生物因子と生体防御機構のバランスが崩れたときに発症する.本稿では,肺炎の発症病態を宿主因子と微生物因子,それぞれの視点から概説する.

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第2章 病理・病態生理
肺炎に対する防御因子

迎   寛    産業医科大学医学部呼吸器内科学 教授

要旨
 気道・肺は直接外気と接しているために,絶えず病原微生物に曝露されている.そのため,呼吸器系には生理的な防御機構に加え,自然免疫,獲得免疫などのさまざまな防御機構が備わっている.肺においては,初期の防御機構である自然免疫が特に発達しており,肺炎の病態において重要な役割を果たしている.本稿では,呼吸器系の免疫機構,特に自然免疫を中心に概説する.

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第2章 病理・病態生理
起炎微生物

石田  直  財団法人倉敷中央病院呼吸器内科 主任部長

要旨
 肺炎の起炎微生物を検出することは,適切な抗菌薬選択,効果的な薬物動態学−薬力学(PK−PD)を考慮した治療,耐性菌出現抑制,医療コスト削減に有用である.菌検出がない場合でも,原因を推定してエンピリック治療を行うことが必要である.現在,肺炎のカテゴリーは市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎に分類されているが,それぞれにおいて起炎微生物(特に薬剤耐性菌)の頻度が異なるため,その傾向を知ることが重要である.

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第2章 病理・病態生理
肺炎の病理

堤   寛   藤田保健衛生大学医学部病理学 教授
要旨
 肺炎(肺感染症)を病理学的な視点からアトラス風に概説した.原因病原体別に,気管支肺炎,大葉性肺炎,肺膿瘍,非定型肺炎,感染性間質性肺炎,肉芽腫性肺感染症,無反応性肺感染症,肺寄生虫症などを提示した.また,感染防御のメカニズムを解説するとともに,市中肺炎と日和見肺炎(院内肺炎)の識別の重要性を提示した.病理所見から原因菌を推定するための方法論(免疫染色,細胞診)の有用性を強調した.
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第3章 診 断
臨床診断(問診,身体所見,検査所見から,比較的徐脈も)

喜舎場朝雄    沖縄県立中部病院呼吸器内科 部長

要旨
 肺炎は感染症の中でも最も頻度が高く,日常診療の中でも大変重要な分野である.その診断過程において,本人のみならず家族も含めた詳細な情報収集が出発点となる.現病歴において臨床経過をきちんと把握することで,感染症と非感染症,さらには感染症の原因微生物の想定も可能となる.また,五感を働かせて全身状態を把握し,丹念な理学所見をとることで生理学的な状況も予測して,治療管理に結びつけることが可能となる.
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第3章 診 断
グラム染色

山城  信   沖縄県立中部病院呼吸器内科

要旨
 グラム染色は細胞や菌を直接確認することにより,肺炎の診断,起炎菌の推定,抗菌薬の選択などを迅速に行うことができる.良質な検体から適切に塗沫標本を作成することが重要である.所見の解釈は臨床的な情報も十分に加味して行われるべきである.グラム染色は感染症を疑う患者において,illness script を完成させる“最後のワンピース”と成りうる.

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第3章 診 断
画像診断

岡田 文人   大分大学医学部附属病院放射線科 講師
安藤ゆみ子   独立行政法人国立病院機構 西別府病院放射線科 医長
松下彰一郎   大分大学医学部附属病院放射線科
森   宣   大分大学医学部放射線医学講座 教授

要旨
 感染症と非感染症との鑑別は臨床の現場において重要であり,さらに,感染症であれば適切な抗菌薬投与によって治療効果が得られる.その際,起炎菌を推定することが重要であり,臨床的背景,血液検査,および画像所見などから推定することになる.本稿では,市中肺炎の代表的な起炎菌について,その CT 所見を中心に解説する.

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第3章 診 断
診断法

蛹エ 克紀    長崎大学病院検査部 准教授

要旨
 病原微生物を検出して適切な抗菌薬を投与することは,肺炎治療の基本である.肺炎のガイドラインでは,原因微生物の検索を推奨し,可能な限り pathogen directed な治療を勧めている.原因菌が判明すれば,それにあった狭域の抗菌薬を使用しても十分な効果が得られ,治療の短縮,薬剤費の抑制につながる.肺炎球菌やレジオネラは呼吸器感染症で重要な微生物であり,尿中抗原検出による診断が有用である.肺炎球菌の検出感度を向上させた喀痰抗原検出法が開発された.遺伝子診断は,迅速診断,分離菌株の同定ならびに薬剤耐性遺伝子の検出に貢献でき,今後の発展が期待されている.
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第4章 ガイドライン
市中肺炎

前田 光一   奈良県立医科大学感染症センター 准教授
三笠 桂一   奈良県立医科大学感染症センター 教授
  
要旨
 我が国の市中肺炎ガイドラインのポイントとして,A−DROP システムによる重症度判定,尿中抗原検査を用いた原因菌の検索,細菌性肺炎と非定型肺炎との鑑別,耐性菌抑止の観点も含めた抗菌薬の選択と薬物動態/薬力学(PK/PD)を考慮した投与法などが挙げられ,実際の医療現場で使いやすいように,肺炎診断から抗菌薬選択までの流れがフローチャートで示されている.

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第4章 ガイドライン
院内肺炎

三木  誠  仙台赤十字病院第一呼吸器内科 部長
渡辺  彰  東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門 教授

要旨
 院内肺炎は,原因菌や宿主の免疫状態・基礎疾患の違い,死亡率の高さなどの点から,市中肺炎や医療・介護関連肺炎と区別して診療を行う必要がある.初診時迅速検査で原因微生物を同定できない場合には,ガイドラインに従って重症度判定を行い,エンピリック治療を開始すると治療成功率が高い.また,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染は独立したリスク因子であり,適宜抗 MRSA 薬を適用すべきである.臨床パラメータの推移と微生物検査の結果を参考に,エンピリック治療からターゲット治療への軌道修正を行い,随時抗菌薬の追加・変更や de−escalation を検討しなければならない.


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第4章 ガイドライン
ナーシングホーム関連肺炎

梅木 健二   大分大学医学部総合内科学第二講座呼吸器内科
門田 淳一   大分大学医学部総合内科学第二講座呼吸器内科 教授

要旨
 医療ケア関連肺炎(HCAP)は,死亡率や耐性菌のリスクから,市中肺炎(CAP)と院内肺炎(HAP)の中間に位置すると考えられ,より総合的な治療戦略を立てることが必要である.米国の HCAP と比較し,ナーシングホーム関連肺炎(NHAP)を含む医療・介護関連肺炎(NHCAP)として,介護をより強調したガイドラインが日本呼吸器学会で策定されている.自宅で生活する介護を要する症例も含むなど,より日本の医療情勢を反映したガイドラインとなっている.
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第5章 治療方針
市中肺炎の治療指針

新里  敬    中頭病院感染症内科・総合内科 部長

要旨
 感染症診療においては,患者の病歴や状態の把握とそれに基づく重症度評価,適切な初期治療と原因微生物に対する標的治療,そして,正しい効果判定がなされなければならない.市中肺炎はその重症度に応じて,治療の場所(外来,入院,集中治療室:ICU)により,想定する原因微生物や治療が異なる.重症例では死に至ることもあり,その治療方針を理解し実践することが予後の改善につながる.
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第5章 治療方針
院内肺炎の治療

古川 恵一   聖路加国際病院内科感染症科 部長

要旨
 院内肺炎は入院患者の予後を左右する重要な感染症である.院内肺炎に対して,速やかに痰の塗抹培養検査や血液培養検査を行なって,起因菌検出に努める.患者の病棟の分離菌の状況を把握し,その患者の状況と過去の培養検査データなどから起因菌を推定し,適切な初期抗菌薬治療を速やかに行うことが重要である.起因菌判明後は,その菌による感染に対して適切な抗菌薬治療を行う.抗菌薬投与期間は,起因菌や患者の重症度などにより8〜21日間である.

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第5章 治療方針
コラム PK-PD理論に基づいた抗菌薬の使い方

三鴨 廣繁  愛知医科大学大学院医学研究科感染制御学 教授
山岸 由佳  愛知医科大学病院感染制御部


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第5章 治療方針
コラム De-escalation の昨今の話題

健山 正男  琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学 准教授


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第6章 起炎菌ごとの診断と治療
インフルエンザウイルス感染症に合併する肺炎

関  雅文  大阪大学大学院医学系研究科感染制御学 講師
朝野 和典  大阪大学大学院医学系研究科感染制御学 教授


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第6章 起炎菌ごとの診断と治療
肺真菌症

泉川 公一  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座 講師


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第6章 起炎菌ごとの診断と治療
ニューモシスチス肺炎

徳田  均  社会保険中央総合病院呼吸器内科 部長


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第6章 起炎菌ごとの診断と治療
レジオネラ肺炎

比嘉  太  琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学 講師


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第6章 起炎菌ごとの診断と治療
クラミジア肺炎

宮下 修行  川崎医科大学総合内科学1 准教授


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第6章 起炎菌ごとの診断と治療
マイコプラズマ肺炎

田中 裕士  札幌医科大学医学部内科学第三講座 准教授


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第6章 起炎菌ごとの診断と治療
寄生虫性肺炎

平田 哲生  琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学


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第7章 特殊病態の診断と治療
人工呼吸器関連肺炎(VAP)

藤島清太郎  慶應義塾大学医学部救急医学 准教授


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第7章 特殊病態の診断と治療
慢性閉塞性肺疾患

是枝 快泉  鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学
川端 隆史  鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学
井上 博雅  鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学 教授


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第7章 特殊病態の診断と治療
誤嚥性肺炎(高齢者肺炎)

山谷 睦雄  東北大学大学院医学系研究科先進感染症予防学寄附講座 教授


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第7章 特殊病態の診断と治療
HIV感染者に見られる肺炎

照屋 勝治  独立行政法人国立国際医療研究センターエイズ・治療・研究開発センター 病棟医長


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第7章 特殊病態の診断と治療
MRSA肺炎

詫間 隆博  昭和大学医学部臨床感染症学講座
二木 芳人  昭和大学医学部臨床感染症学講座 教授


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第7章 特殊病態の診断と治療
日和見感染による肺炎

時松 一成  大分大学医学部総合内科学第二講座 講師


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第7章 特殊病態の診断と治療
がん患者の呼吸器感染症

大曲 貴夫  独立行政法人国立国際医療研究センター感染症内科 科長


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第7章 特殊病態の診断と治療
薬剤耐性菌による肺炎

舘田 一博  東邦大学医学部 微生物・感染症学講座 教授


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第7章 特殊病態の診断と治療
肺膿瘍

當山 真人  与那原中央病院呼吸器内科 部長


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第7章 特殊病態の診断と治療
胸膜炎・膿胸

原永 修作  琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学


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第8章 予防・リハビリテーション
呼吸リハビリテーションによる感染増悪(肺炎)の予防

力富 直人  長崎呼吸器リハビリクリニック 院長


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第8章 予防・リハビリテーション
Infection controlによる肺炎の予防

宮良 高維  関西医科大学感染症科 教授


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第8章 予防・リハビリテーション
人工呼吸器関連肺炎の予防

伊木田良子  帝京大学ちば総合医療センター救急・集中治療センター


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第8章 予防・リハビリテーション
ワクチン(肺炎球菌ワクチン,インフルエンザワクチン)

永井 英明  独立行政法人国立病院機構 東京病院呼吸器疾患科 外来診療部長


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第8章 予防・リハビリテーション
PEG

金城  渚  琉球大学医学部附属病院光学医療診療部


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