要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 19/血液2
骨髄異形成症候群


第1章 骨髄異形成症候群の概念・定義
概念・定義・分類

吉田弥太郎 医療法人医仁会武田総合病院 院長代理

要旨
  骨髄異形成症候群は,骨髄中の造血幹細胞の異常化のため,無効造血と呼ばれる血球産生の障害が起り,末梢の血球減少,骨髄・末梢血の血球の形態や機能の異常を呈する疾患群である.前白血病的な血球クローン性があることから一種の造血器腫瘍ないしその類縁疾患と考えられる.その考えの延長線上で,本症候群の在来の FAB 分類と最新の WHO 分類とを述べた.

目次に戻る



第1章 骨髄異形成症候群の概念・定義
疫 学

緒方 清行 日本医科大学第三内科 助教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)は,広く知られるようになってから比較的日が浅い疾患である.加えて,症例によっては診断が難しくまた高齢者 MDS の実体が把握しにくいなどの理由で,いまだ十分な疫学情報がない.欧州での調査では,MDS の発症頻度は人口 10 万人あたり約3〜12 人/年で,70 歳以上の年齢層では急激に増加し 20〜50 人/年を超す.高齢者の造血器腫瘍中最多との報告もあり,高齢化社会ではますます重要となる疾患である.

目次に戻る



第1章 骨髄異形成症候群の概念・定義
治療誘発性 MDS

谷脇 雅史京都府立医科大学大学院分子病態検査医学・血液内科 教授

要旨
 治療誘発性白血病(tMDS/sAML)には,アルキル化薬に起因するものとトポイソメラーゼU(トポU)阻害薬によるものがある.前者では 5qミ/ミ5 や 7qミ/ミ7 が認められ,潜伏期は4〜7年である.非常に予後が悪い.後者では,t(11q23),inv(11),t(8;21)などが認められ,潜伏期は1〜3年である.自家移植後の tMDS/sAML は,高用量化学療法の前にすでに存在している染色体異常クローンに由来することが示唆されている.

目次に戻る



第1章 骨髄異形成症候群の概念・定義
小児 MDS

真部  淳 東京大学医科学研究所小児細胞移植科

要旨
 小児の骨髄異形成症候群(MDS)はまれであり,その特徴は,Down 症候群や Fanconi 貧血などの先天性疾患に伴う頻度が高いことである.現在,多くの先天性骨髄不全症候群における分子異常が明らかにされているが,その知見は成人 MDS の病態の解明に役立つと考えられる.また小児の MDS では,根治的治療として同種造血幹細胞移植が多用され,予後の改善が見られてきたが,今後は合併症や晩期障害の少ない治療法が開発されるべきである.

目次に戻る



第2章 骨髄異形成症候群の病理・病態生理
血球のクローン性

三浦偉久男 秋田大学医学部第三内科 助教授

要旨
 骨髄異形成症候群は造血幹細胞に異常の起源を持つ stem cell disease である.しかし,異常の起源が造血幹細胞のどのレベルにあるかは,まだ明らかにされていない.トリソミー8を持つ症例を cell sorter と蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法で検討し,異常は多能性造血幹細胞レベルから起るが,クローン性に増加し始めるのは骨髄性幹細胞(CFUミGEMM)レベルであることが分かった.幹細胞が獲得した染色体異常により増殖と分化の方向が決定されると考えられる.

目次に戻る



第2章 骨髄異形成症候群の病理・病態生理
遺伝子異常

三谷 絹子 獨協医科大学内科学(血液)教授

要旨
 骨髄異形成症候群は,多くのがん遺伝子およびがん抑制遺伝子の変異の蓄積の結果発症する.変異の種類はさまざまで,点突然変異,exon skipping,プロモーター領域のメチル化などが観察される.染色体転座に伴い,遺伝子の発現が異所性に亢進したり,キメラ遺伝子が発現する場合もある.これらの変異に伴い正常の細胞のシグナル伝達や細胞周期の回転が破綻すると造血幹細胞が腫瘍化に向かうと考えられる.

目次に戻る



第2章 骨髄異形成症候群の病理・病態生理
染色体とテロメア

大屋敷純子 東京医科大学難治性免疫疾患研究センター 講師

要旨
 骨髄不全症候群におけるテロメアの短縮はゲノム不安定性のみならず造血幹細胞の分裂歴(mitotic history)も反映している.骨髄異形成症候群(MDS)においてはゲノム不安定性と染色体・遺伝子異常の側面が強調されているが,先天性角化不全症(DKC)などの遺伝性疾患で明らかになったテロメア/テロメラーゼ調節機構の異常は,再生不良性貧血を含めた造血障害との連続性を示唆している.

目次に戻る



第2章 骨髄異形成症候群の病理・病態生理
アポトーシス

小宅 達郎 岩手医科大学血液内科
石田 陽治 岩手医科大学血液内科 助教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)とは,末梢血中の血球減少と骨髄中の造血細胞に異形成像を認めるクロ−ナルな疾患である.臨床的には無効造血と前白血病状態という二つの観点からの加療が必要である.MDS ではこの無効造血により,骨髄が過形成もしくは正形成を示していながら末梢血中の血球は減少するという乖離を認めることが多い.MDS は造血前駆細胞の過剰なアポトーシスによって無効造血を起していると推察される.

目次に戻る



第2章 骨髄異形成症候群の病理・病態生理
サイトカインと骨髄基質

木村 昭郎 広島大学原爆放射線医科学研究所ゲノム疾患治療研究部門血液内科研究分野 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)の骨髄微小環境内では腫瘍壊死因子(TNF)a やインターフェロン(IFN)g などの造血抑制性サイトカインの産生が高まっており,造血細胞のアポトーシスの亢進が FAS 依存性あるいは非依存性に見られる.また,造血幹細胞ないし前駆細胞の接着の異常,あるいは造血因子に対する反応性の異常が見られ,MDS の生物学的異常に結びついている.

目次に戻る



第2章 骨髄異形成症候群の病理・病態生理
免疫異常

中尾 眞二 金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)患者では7〜12% に自己免疫疾患の合併が見られる.抗核抗体やリウマチ因子のような自己抗体陽性例を含めると,免疫異常を認める例の割合は半数以上になる.多くは副腎皮質ステロイドによって改善するが,一般に免疫異常を発症した例の予後は不良であるため,造血幹細胞移植を含めた強力な治療を考慮する必要がある.逆に自己免疫疾患に血球減少が見られる場合,MDS の存在を否定する必要がある.

目次に戻る



第3章 骨髄異形成症候群の診断
血球異形成の診断

栗山 一孝 長崎大学大学教育機能開発センター 教授

要旨
 骨髄異形成症候群の診断は,形態学的に細胞異形成を一定程度以上に認めることで下されることが多い.したがって,細胞形態観察に適当な末梢血および骨髄塗抹染色標本を作成することが大事である.WHO 分類では,細胞異形成を単血球系と2血球系以上に認められる病型に分け,異形成は 10% 以上の細胞について認められる場合としている.細胞異形成の種類は,多様であるが出現頻度や診断価値など十分評価して適用する必要がある.

目次に戻る



第3章 骨髄異形成症候群の診断
検査所見からみた MDS の診断

通山  薫 川崎医科大学検査診断学 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)は骨髄における無効造血の結果末梢血球減少を主体とする疾患で,加えて血球異形成像や芽球の出現など血液学検査にて重要な所見を呈する.生化学検査上は溶血を示唆する所見や鉄代謝における異常パターンを示す.さらに,芽球の細胞学的マーカー解析や細胞遺伝学的検査を加えることによって予後予測に有用な情報を得ることができる.

目次に戻る



第3章 骨髄異形成症候群の診断
骨髄細胞密度の評価

対馬 秀樹 長崎大学医学部・歯学部附属病院血液内科
朝長万左男 長崎大学医学部・歯学部附属病院血液内科 教授

要旨
 典型的な骨髄異形性症候群の症例においては骨髄が過形成であること,および血球の形態が異常であることから比較的容易に診断が可能である.しかしながら骨髄が過形成でない場合,再生不良性貧血との鑑別が問題となる場合がある.そこで本稿では骨髄細胞密度の測定法,およびその評価の仕方について述べる.

目次に戻る



第3章 骨髄異形成症候群の診断
診断基準

浦部 晶夫 NTT関東病院血液内科 部長

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)は,不応性貧血ならびに前白血病状態を包含する症候群であり,多様な病態のものが含まれている.MDS の診断に際しては FAB 分類が広く用いられてきたが,近年 WHO 分類が発表され,WHO 分類が使用されるようになってきた.MDS の診断に際しては,血球の形態の異形成の有無,芽球の比率などに留意することが必要である.

目次に戻る



第3章 骨髄異形成症候群の診断
鑑別診断

村手  隆 名古屋大学医学部保健学科検査技術科学専攻 教授

要旨
 50 歳以上の高齢者で,出血その他の明らかな原因のない貧血,白血球減少,血小板減少や大球性貧血などがあれば骨髄異形成症候群(MDS)の可能性を疑うことが肝要である.厚生省特発性造血障害調査研究班では,スクリーニングとしては末梢血球減少,正ないし過形成髄,慢性かつ不応性の経過,基礎疾患や薬剤投与の影響が除外されること,既知のほかの血液疾患が除外されることを挙げている.日常臨床では形態診断,染色体分析,フローサイトメーターなどを用い検査を進める.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
MDS 診療における感染症の管理・治療

大野 仁嗣 医療法人医仁会武田総合病院総合診療部 部長

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)では,好中球減少がさまざまな程度に認められる.好中球減少に伴う感染症の起因微生物は,歴史的にはグラム陰性桿菌が重要であったが,最近ではむしろグラム陽性球菌の頻度が高くなっている.好中球減少の患者が発熱した場合(febrile neutropenia)には,起因菌の同定を待たずに抗菌薬を投与する必要がある.MDS では好中球減少が長期にわたって持続するので,患者の感染症コントロールには主治医の慎重な診療が重要である.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
QOL を重視した補助療法

上田 恭典 財団法人倉敷中央病院血液内科・血液治療センター 主任部長

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)では,病状の進展に伴って輸血が必要となる.赤血球輸血は低酸素と心負荷を,血小板輸血は出血傾向を目安に Hb6g/dl,PLT5×103/ul がトリガーとなる.好中球減少による感染予防に,間歇的な顆粒球コロニー刺激因子(GミCSF)の投与が試みられる.唯一の根治療法である造血前駆細胞移植は,鉄過剰と輸血不応,重症感染が生じる前に考慮されるべきである.経験と知識と根拠に基づき細心の注意を払いつつ,患者の思いを尊重した診療が望まれる.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
治療薬剤:(1)免疫抑制療法

嶋本 隆司 社会保険蒲田総合病院内科

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)に対する治療としては,同種造血幹細胞移植以外に確立されたものはない.近年,再生不良性貧血に対して有効性が確立している免疫抑制療法を MDS に応用する試みがなされ,有効例が報告されている.免疫抑制療法としてはステロイド,抗胸腺細胞グロブリン(ATG),シクロスポリンなどが使用されている.ステロイドの有効性は約 20% であり,ATG の有効性は 33% と報告されている.一方,シクロスポリンに関しては,我が国の多施設共同研究の結果では 50〜60% に治療効果が見られ,特に,輸血非依存性,染色体正常核型,HLAミDR A1501 を有する症例で有効率が高い.免疫抑制療法がどのような機序で MDS の血球減少を改善するのかはいまだ明らかではないが,近年,HLAミDR との関連,T細胞レパトア解析や発作性夜間血色素尿症(PNH)クローンの解析が進んでおり,今後の進展が期待される.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
治療薬剤:(2)MDS のサイトカイン療法

別所 正美 埼玉医科大学血液内科 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)の貧血に対するエリスロポエチン(EPO)の有効性が明確になりつつある.特に低リスクの MDS に対して,EPO 単独で 20〜30%,顆粒球コロニー刺激因子(GミCSF)との併用で 40% 前後の症例に貧血改善効果が認められ,ガイドラインにも取り上げられている.一方,MDS においても抗 EPO 抗体による赤芽球癆の出現が報告されており,注意が必要である.MDS に対して現在,保険適応のある唯一のサイトカインは GミCSF であり,適切な臨床での使用が求められている.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
治療薬剤:(3)MDS 特に RA に対する在来薬物療法

泉二登志子 東京女子医科大学血液内科 助教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)に対するタンパク同化ホルモン療法は芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)では有効でないが,不応性貧血(RA)に対しては 40% の有効率を示す.副腎皮質ステロイドホルモン療法としてはメチルプレドニゾロン短期大量療法が,RA 症例の 30〜50% で血球の回復を認め有効である.特に骨髄中の CD68 が増加している症例では治療効果が期待できる.この初期治療が有効であれば,長期にわたる寛解が期待でき,患者の生存期間の延長につながるので,RA と診断がついたならば一度は試みる価値のある治療法と考える.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
抗アポトーシス療法

宮澤 啓介 東京医科大学内科学第一講座 講師
大屋敷一馬 東京医科大学第一内科 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)における血球減少は,骨髄内での血球の分化,成熟過程におけるアポトーシスを介した無効造血に原因する.よって,このアポトーシスを抑制することで血球減少症の改善が期待される.サリドマイドおよびその誘導体は TNFa産生の抑制により貧血の改善を中心とした治療効果が報告されている.活性酸素のスカベンジャーとして作用するアミフォスチンは,好中球数の増加を中心に有効例が報告されている.また,ビタミン K2 と D3 とを併用することにより,各ビタミン単独と比較して強力な分化が誘導され,これと連動して抗アポトーシス効果が発揮される可能性がある.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
化学療法:(1)標準的化学療法

金丸 昭久 近畿大学医学部血液・腎臓・膠原病内科 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)に対する標準的化学療法について概述した.高リスク MDS を対象に,少量療法から急性骨髄性白血病(AML)タイプの強力なものまで種々の化学療法レジメンが用いられ,完全寛解率が現在 50〜60% でとどまっている.日本成人白血病研究グループ(JALSG)でも減量計画に基づいた治療プロトコールを実施してきた.多様な MDS 症例に化学療法だけで適応できないことは明白で,移植療法も含めた治療目標を今後,症例ごとに考える必要がある.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
化学療法:(2)低用量化学療法

大田 雅嗣 東京都老人医療センター血液科 部長

要旨
 高リスク骨髄異形成症候群(MDS)に対する低用量化学療法の有用性についてはいまだ明確なエビデンスが示されていないのが現状である.以前頻繁に用いられた低容量 AraミC療法も治療ガイドラインでは厳しい評価となった.MDS の発症は高齢化社会を迎えますます増加傾向にある.高齢者においては,合併症を抑え,QOL を保ちながら病勢をコントロールしていく意味で,低用量療法は必要である.今後 EBM レベルの高い治療法の確立が望まれる.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
分化誘導療法

淡谷 典弘 慶應義塾大学医学部血液感染リウマチ内科
木崎 昌弘 慶應義塾大学医学部血液感染リウマチ内科 講師

要旨
 現在に至るまで 全 transミレチノイン酸(ATRA)を初めとし,さまざまな分化誘導療法が骨髄異形成症候群(MDS)に対して試みられてきたが,すぐに臨床応用が可能な薬剤は見いだされていない.ここでは臨床成績を中心に MDS に対する分化誘導療法の現状と今後の展望について述べる.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
幹細胞移植療法

下田 和哉 九州大学大学院医学研究院病態修復内科学
原田 実根 九州大学大学院医学研究院病態修復内科学 教授

要旨
 造血幹細胞レベルでの腫瘍である骨髄異形成症候群(MDS)に対して,造血幹細胞移植は治癒的治療法となりうる.現在までの同種移植の成績は,移植関連死が約 40〜50% と高く,再発率は約 20%,無病生存率は約 30〜40% である.本邦での HLA 一致の移植では,血縁,非血縁問わず3年生存率が約 70% に期待できる.移植前の寛解導入療法の必要性,移植する時期に関しては十分な検討が行われていない.同種移植においては移植関連死亡率が高いのが問題であり,最近行われるようになった骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(ミニ移植)は,移植関連死を減少できる可能性がある..

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
経過・予後

大屋敷一馬 東京医科大学第一内科 教授
伊藤 良和 東京医科大学第一内科 講師

要旨
 国際予後判定システム(IPSS)と WHO 分類との整合性を考えるために,IPSS で用いられたデータを基に骨髄異形成症候群(MDS)の白血病移行について述べる.@芽球5% 未満の群では予後を規定している染色体様式と白血病移行頻度が相関する.A芽球5〜19% では染色体異常とはおおむね関係なく 30〜40% が白血病に移行する.B芽球 20〜29% の群は白血病移行は良好核型でも 50% に認める一方,中間核型ではむしろ急性骨髄性白血病(AML)移行は例外的ですらある.さらに,IPSS で予後を論じる場合のおのおののスコアにおける不均一性に言及した.

目次に戻る



第4章 骨髄異形成症候群の管理・治療
医療経済

寺村 正尚 東京女子医科大学血液内科 講師
溝口 秀昭 東京女子医科大学血液内科 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)は高齢者に多い血液疾患で,化学療法造血幹細胞移植,感染症合併時の治療,定期的な輸血などを要し,高額な医療費がかかる疾患の一つである.当科において過去1年間に,感染症合併のため入院した MDS 患者の入院医療費は高額であり,また,それは高リスクの MDS 患者ほど,高額であった.今後,MDS に費やされる医療費は増加の一途をたどると思われ,その医療費の現状についてデータを収集し,分析的手法に基づく医療経済学的解析を行う必要がある.

目次に戻る


第5章 骨髄異形成症候群のガイドライン
骨髄異形成症候群のガイドライン作りに向けて

堀田 知光 東海大学医学部血液腫瘍内科学 教授

要旨
 骨髄異形成症候群(MDS)に対する普遍的な治療法はなく,標準的治療は確立していない.日常診療においては分化誘導療法,免疫療法,化学療法さらには造血幹細胞移植などさまざまな治療オプションが存在する.このような状況においてどのような対象にどの治療が推奨されるかについて根拠に基づいた手引きもしくは指針があることが求められる.我が国における MDS の診療ガイドライン作成に向けてたたき台となる考え方について解説する.

目次に戻る