要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 2/呼吸器2
喘息



第1章 喘息の概念・定義
喘息の定義・喘息研究(管理・治療)の進歩


泉孝英
京都大学名誉教授・滋賀文化短期大学人間福祉科 教授

要旨
 喘息は,古代ギリシャ時代から知られた病気であるが,長い間患者は,発作が起これば,嵐が過ぎ去るのを待つように,発作が治まるのを待つ以外の対応はなかった.ときには,死亡に至ることもあった.喘息の基本病態が気道の慢性炎症であることが明らかになり,吸入ステロイド薬療法によって,大部分の患者が健常人と同様な日常生活が送れるようになったのは 1990 年前後からと,ごく最近のことである.本稿においては,喘息管理・治療の進歩を中心に,喘息研究の歴史を述べた.

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第1章 喘息の概念・定義
疫 学

今井俊道* 足立満** 
*昭和大学医学部第一内科 **同 教授

要旨
 気管支喘息は近年急速に増加しており,現在の我が国における有症率は乳幼児 5.1%,小児 6.4%,成人 3.0% と報告されている.喘息は欠勤や欠席の原因疾患としては最も多く,喘息死も人口 10 万人対 4.1(1998 年)であり,欧米に比べていまだ高水準である.しかし,喘息患者の6割前後は軽症間欠型〜軽症持続型であり,中等症持続型まで入れれば8〜9割を占める.これらの重症度では,吸入ステロイド薬を中心とした抗炎症療法により十分にコントロール可能であり,適切な診断・加療が望まれる.

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第2章 喘息の病態
病 態


森晶夫
国立相模原病院臨床研究センター先端技術開発研究部 部長

要旨
 気管支喘息には,環境アレルゲンに対する IgE 抗体を有するアトピー型と非アトピー型が存在するが,気道粘膜の持続性の好酸球性炎症,変動する気流制限,気道過敏性は共通の病態である.種々のメディエーター,サイトカイン,ケモカイン,その受容体が同定され,IgE・マスト細胞を介する即時型アレルギー機序と,T細胞・好酸球を介する慢性炎症機序の役割が分子レベルで解明されてきた.

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第2章 喘息の病態
喘息の遺伝・遺伝子


棟方充
福島県立医科大学医学部呼吸器科 教授

要旨
 気管支喘息発症には遺伝的要因の関与が大きいが,近年の分子遺伝学の急速な進歩により,その遺伝要因本体への遺伝子レベルでのアプローチが可能となり注目を浴びている.これまでに,全染色体にわたる7つの連鎖解析結果が報告され,候補遺伝子検索でも喘息と関連する 30 近くの遺伝子多型が報告されている.喘息遺伝子解明には多くの困難が伴うが,ヒトゲノムプロジェクトの進展や新しい遺伝子解析手法の開発もあり,今後の急速な進展が期待されている.

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第2章 喘息の病態
気道の炎症・リモデリング


新実彰男* 三嶋理晃**
*京都大学大学院医学研究科呼吸器病態学 **同教授

要旨
 気道炎症の持続に伴って生じる気道組織のリモデリング(構造的変化)は,喘息の重症・難治化に関与する重要な病態である.呼吸機能上の不可逆的気流閉塞,気管支粘膜生検,CT などの手法を用いてリモデリングの病態解明がなされつつある.現時点では,ステップ2以上の持続型喘息患者においては,発症後なるべく早期から吸入ステロイド薬による治療を開始することが,リモデリングの発症を予防するための基本戦略である.

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第2章 喘息の病態
気道過敏性


相沢久道
久留米大学医学部第一内科 教授

要旨
 気道過敏性は気管支喘息の最も重要な病態生理異常であり,その測定は診療とともに研究にも有用である.気道過敏性発症には気道炎症が重要であることが分かっているが,気道のリモデリングや遺伝的素因なども関与している.臨床的な適応としては,喘息が疑われた場合の確定診断のため,または喘息患者の重症度の判定のためなどが挙げられる.今後,さらに普遍的な臨床検査となり,喘息の機序が完全に解明されることが望まれる.

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第2章 喘息の病態
喘息と慢性閉塞性肺疾患


山内広平
岩手医科大学医学部第三内科 助教授

要旨
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,完全に可逆的でない気流制限を特徴とし,気管支喘息とともに慢性の閉塞性肺疾患であるが,両者の病態には大きな違いがある.喘息の気道炎症は肺胞系を除く中枢から末梢気道までの好酸球,T細胞(Th2),マスト細胞の浸潤が特徴的であるが,COPD では,中枢から肺胞まで及ぶ,気道,実質,肺血管構造の全体にわたる慢性炎症が特徴であり,マクロファージ,T細胞(CD8+が優性),好中球の増加が認められる.

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第3章 喘息の診断
喘息の診断

佐野靖之
同愛記念病院アレルギー呼吸器科 部長

要旨
 典型的な症状を欠いた喘息の患者は,息苦しくても確定的な診断は得られにくく,他疾患と考えられるか,あるいは理解されずに精神科領域へまわされることがよく見られるが,喘息ほどその症状にバラエティーの多い疾患はないと言える.それゆえ,喘息の診断のポイントとなる症状(冷気,タバコの煙,夜半より朝方に多い,過労後に強くなるなど)を種々の角度より聞きだし,あるいは吸入ステロイド薬を中心とした診断的治療を行い,その効果の有無でもって診断に結びつけることも重要と言える.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の基本


工藤宏一郎
国立国際医療センター病院 副院長

要旨
 喘息は慢性気道炎症疾患で,この病態に対する徹底した治療を加えることにより根治は不可能であるが,大多数は良好なコントロールが可能となる疾患である.それには喘息の早期診断,原因・増悪因子の除去・回避,抗炎症薬を第1選択とした薬物療法,喘息の治療の理解のための患者教育が重要である.ピークフロー値でのモニターは有用性が高い.喘息治療にはこうした総合的な管理・治療が重要である.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療薬剤


大田健
帝京大学医学部内科呼吸器・アレルギー学 教授

要旨
 喘息の治療は,急性発作時の管理と長期管理からなる.前者は気道の閉塞を寛解させる薬物であるリリーバーとステロイド薬の全身投与,後者は長期的に慢性の気道炎症を含めて制御する薬物であるコントローラーが中心となる.薬剤の投与に際しては,各薬剤の特徴を考慮し,適切に使用する.今後新しい吸入ステロイド薬,ロイコトリエン拮抗薬,長時間作動性吸入 beta2 刺激薬が加わり,さらに喘息の治療が充実するものと期待される.

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第4章 喘息の管理・治療
治療薬剤:(1)ステロイド薬


石原享介
神戸市立西市民病院内科 部長

要旨
 吸入ステロイド薬は局所抗炎症効果に優れ,全身的影響が少ない薬剤であり,現時点における最も効果的な喘息治療薬である.吸入ステロイド薬の増減と,増悪時の全身ステロイド投与がガイドライン治療の基本コンセプトである.
 現在,我が国で使用可能な吸入ステロイド薬はエロゾル剤型のプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP),ドライパウダー剤型のプロピオン酸フルチカゾン(FP)の2種類である.FP は一般的に BDP の半量で同程度の効果を示すと考えられている.

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第4章 喘息の管理・治療
治療薬剤:(2)beta刺激薬・抗コリン薬


高木健三
名古屋大学医学部保健学科基礎検査学 教授

要旨
 外来診療において,定量噴霧吸入器による beta2 刺激薬吸入が増加する場合,多くは喘息の気道炎症コントロールが不十分であるので,抗炎症薬治療(吸入ステロイド薬)を新たに導入または増量する必要がある.また,救急外来において,ネブライザーによる beta2 刺激薬吸入(20 分ごとに3回)に対する反応が不十分な場合は,入院を考慮し,速やかに全身性のステロイド薬投与を中心とした併用療法を開始する必要がある.吸入抗コリン薬は吸入 beta2 刺激薬に比して,気管支拡張効果は弱く,効果の発現もやや遅いが,効果の持続は beta2 刺激薬とほぼ同じで副作用は少ない.抗コリン薬は, beta2 刺激薬と相加効果がある.

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第4章 喘息の管理・治療
治療薬剤:(3)テオフィリン薬

山下直美
帝京大学医学部内科 助教授

要旨
 テオフィリン薬は喘息の発作治療薬および長期管理薬として古くから用いられてきた薬剤であり,日本の喘息治療管理のガイドラインでも使用が推奨されている.その使用にあたっては,有効血中濃度域が狭いこと,クリアランスが種々の因子の影響を受けることなど注意が必要である.さらに低濃度でも,抗炎症効果が期待できることが示され,ステロイド薬との相加効果も示され,新たな展開が期待されている.

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第4章 喘息の管理・治療
治療薬剤:(4)ロイコトリエン拮抗薬


山田佳之* 茆原順一**
*秋田大学医学部臨床検査医学講座 **同教授

要旨
 好酸球を中心としたアレルギー性炎症の病態にロイコトリエン(LT)は重要な役割を果たしている.いまだ不明な点も多いが,その作用は気道への作用と炎症細胞への作用の2点に分けられる.いずれの作用も LT 拮抗薬で抑制される.その結果として,喘息症状や肺機能そして患者 QOL が改善する.また,吸入ステロイド薬の減量効果も認められる.LT 拮抗薬は副作用も少なく,さまざまな重症度の喘息患者に幅広く使用されるようになっていくと思われる.


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第4章 喘息の管理・治療
抗喘息薬の臨床試験の成果と今後の課題


西村浩一** 小賀徹*
*京都大学大学院医学研究科呼吸器病態学 **同講師

要旨
 我が国で発売されている多くの抗喘息薬の効果について,科学的な評価が行われているかについては疑問とされることが多い.このためには,無作為割付臨床試験が実施される必要があり,その結果としてのエビデンスが EBM へのアプローチを可能とする.さらに,診療ガイドラインおよび医療サービスの QC(quality control)または TQM(total quality management)へと進展し,これが適切な喘息治療の普及と医療の適正化へと結びつく.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(1)第一線の立場から


中島明雄
下関市・中島クリニック 院長

要旨
 喘息の治療の本質は長期管理にあり,その目的は悪化因子の排除と気道過敏性の改善である.救急患者が訴える突然の発作は,客観的検査であるピークフローをモニターすれば,2〜3日前からの漸次悪化であることが多い.したがって,症状出現の初期から適切な治療を行なえば,緊急受診は避けられる.喘息患者には,常に喘息の悪化を念頭に置き早期の対応の必要性を教育する.大量かつ強力な抗炎症薬の効果に過剰依存して,悪化因子の排除・軽減を怠たると,有効な薬物治療も一時的に症状を隠蔽する治療に過ぎなくなる可能性がある.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(2)咳喘息・慢性咳嗽


藤村政樹
金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学 助教授

要旨
 本邦における慢性咳嗽の三大原因疾患は,咳喘息,アトピー咳嗽および副鼻腔気管支症候群であり,前二者は乾性咳嗽,後者は湿性咳嗽を来す.欧米において重要と報告されている胃食道逆流,慢性気管支炎,後鼻漏は少ない.すべての原因の中で咳喘息のみが,気管支拡張薬が有効である.咳喘息では気管支拡張薬とステロイド薬,アトピー咳嗽ではヒスタミン H1 拮抗薬とステロイド薬,副鼻腔気管支症候群では長期少量 14 員環マクロライド療法が有効である.これら3疾患は頻度の高い疾患であり,それぞれが併発していることも少なくないため,それぞれの疾患を念頭に置いて診断と治療を進める必要がある.まれには,気管支結核,気管支がん,気管支内異物などが慢性咳嗽の原因であることもあるので,種々の治療によっても咳嗽が軽快しない場合には,気管支鏡検査の絶対適応となる.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(3)小児喘息


片村憲司
京都大学大学院医学研究科発達小児科学 講師

要旨
 小児気管支喘息の定義,診断,治療について「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」に準拠して概説した.小児では成長発達過程にあることを考慮し,気管支喘息を成人期に持ち越さないよう,薬物療法を始めとして多方面より治療や指導を行うことが重要である.乳児喘息についてはまだ病態が明らかになっていない面も多いが,この時期に将来の喘息発症を予知し予防するさまざまな試みがなされるべきである.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(4)アスピリン喘息


谷口正実** 東憲孝* 秋山一男***
*国立相模原病院臨床研究センター **気管支喘息研究室長 ***副センター長

要旨
 アスピリン喘息は成人喘息の 10% を占め,決してまれでない.通常のアレルギー学的検査は陰性で,問診と負荷試験により診断する.問診のコツと臨床像から疑うポイントについて述べた.負荷試験は内服法が gold standard であり,患者の状態の良いときに行うことが大切である.アスピリン誘発発作時はエピネフリンが著効する.ステロイド薬の急速静注とビソルボン吸入は禁忌であり,慢性期にはクロモグリク酸ナトリウム,ロイコトリエン拮抗薬,金が有用であることも述べた.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(5)アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss 症候群)


宗田良
国立療養所南岡山病院 副院長

要旨
 アレルギー性肉芽腫性血管炎について自験例を提示し概説した.また,近年関連を疑念されているロイコトリエン拮抗薬とアレルギー性肉芽腫血管炎の発症について,主に関連病院で経験した自験例 16 例で検討した.ロイコトリエン拮抗薬が使用されていたのは3例でうち2例は経口ステロイド薬の減量中であり,また 16 例のうち7例が経口ステロイド薬の使用者で,そのうち5例が経口ステロイド薬減量中にアレルギー性肉芽腫性血管炎を発症していたことから,本症の発症にはロイコトリエン拮抗薬の使用より,経口ステロイド薬の減量が影響することが考えられた.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(6)職業性喘息


土橋邦生

群馬大学医学部第一内科 講師

要旨
 職業性喘息とは,職業に関連して特定の物質に暴露され,これが抗原となって惹起される喘息であると定義される.従来は,動物や植物性の高分子物質が抗原として報告されていたが,産業の進歩により,最近は化学物質などの低分子量の物質が抗原となっている症例が増えている.診断するうえで最も重要なことはその存在を疑うことであり,詳細な問診により抗原と思われる物質を推定することである.職業性喘息の病理や臨床症状などは通常の喘息と同様であり,治療のうえで重要なことは抗原を特定し,その抗原への暴露を回避することである.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(7)難治性喘息


一ノ瀬正和
東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座 講師

要旨
 難治性喘息とは,ステロイドを通常量投与してもコントロールが困難な喘息である.ステロイドそのものの作用が転写レベルで働かない患者も存在するが極めてまれで,大部分は胃・食道逆流や声帯機能障害といった他疾患の合併か,遷延する炎症の結果起こった気道の構築変化による.また,同じ閉塞性障害を来すがステロイドの無効な慢性閉塞性肺疾患を気管支喘息と誤診する場合も多いと考えられる.

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第4章 喘息の管理・治療
管理・治療の実際:(8)喘息の救急治療


境田康二
船橋市立医療センター救命救急センター麻酔科・集中治療科 科長

要旨
 喘息死を予防するためには,普段からの患者教育,地域での吸入ステロイド薬の普及などが必要である.一方,救急の現場で喘息患者を診た場合,迅速にそして適確に喘息の重症度を把握し,重篤と判断されれば,いかにして低酸素血症を回避するかが鍵となる.薬剤や器具がすぐに使用可能であれば良いが,そうでない場合,高流量高濃度酸素投与と胸郭外胸部圧迫法を併用することにより低酸素血症を回避することが可能であり,少なくとも,低酸素血症からの心停止は防がなければならない.

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第4章 喘息の管理・治療
喘息の長期予後


釣木澤尚実* 秋山一男**
*国立相模原病院臨床研究センター **同 副センター長

要旨
 小児の気管支喘息は 50〜70% が成人に達する前に治癒するか,ほとんど無症状になり,natural outgrow,すなわち自然治癒傾向が高いと考えられている.一方,成人気管支喘息は小児喘息と異なり寛解する率は低く再発率も高い.小児のような自然治癒傾向もときとして見られるが,その率は低く 20% 未満と報告されている.しかし,成人喘息においても,長期寛解症例が存在することが当院におけるアンケート調査から明らかとなった.成人喘息における長期寛解症例は非寛解症例と比較して,初診時の臨床症状が軽症であり,初診時の肺機能(FEV1.0%)が比較的保たれており,アセチルコリン気道過敏性閾値が寛解群の約 30% で 10,000 mu g/ml 以上と,過敏性軽度の症例が多いことが明らかとなった.

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第4章 喘息の管理・治療
喘息の医療経済


泉 孝英
京都大学名誉教授・滋賀文化短期大学人間福祉科 教授

要旨
 我が国の喘息の総患者数は 109 万 6,000 人(1999 年),年間医療費(1999 年)は 4,517 億円に達している.大部分は外来医療費(3,284 億円:72.7%)である.1980 年以降,喘息医療費は外来薬剤費を中心に増加している.問題となることは,喘息ガイドラインのすべてにおいて第1選択薬として推奨されている吸入ステロイド薬, beta2 刺激薬以外の薬剤に,薬剤費の 86% が用いられていることである.しかし,「適切な医療と適正な医療費」を目指したガイドライン治療が普及していない大きな要因は,我が国の医療制度,医療費支払制度,医療行政のあり方によるところが大きい.

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第5章 喘息のガイドライン
喘息のガイドライン


渡邉直人* 福田健** 
*獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科 **同 教授

要旨
 近年,欧米,アジアの各国において喘息のガイドラインが作成され,1995 年には「GINA:喘息管理国際指針」が発表された.我が国では,1993 年に日本アレルギー学会において「アレルギー疾患治療ガイドライン」が提唱され,1998 年には厚生省の免疫・アレルギー研究班が加わり,「喘息予防・管理ガイドライン 1998」が完成し,2000 年にはその改訂版が発行された.
 喘息のガイドライン作成の背景には,1)世界的に喘息患者が増加していること.2)喘息の病態が気道の炎症性疾患であると解明されたこと.3)新しい喘息治療薬が導入され,薬物によるコントロールが可能になったこと.4)喘息死が減少していないこと.5)喘息がもたらす社会・経済的負担を軽減できることなどが挙げられる.各国における喘息ガイドラインは,その社会的・経済的状況により多少なりとも異なる点がある.
 我が国の「喘息予防・管理ガイドライン 1998 改訂版」は,喘息の管理・治療の目標,定義,診断,病型,重症度分類,疫学,喘息の危険因子,病態生理,予防,患者教育,薬物治療,QOL,種々の側面などの各章から成る.
 ガイドラインにおける第一の問題点はガイドラインが提唱されて以来喘息発作による入院は減少したが,有病率が増加していることである.また喘息死がなくならないことである.喘息はもはやコントロールできる疾患になってきたが,その発症予防(1次予防)に関してはいまだ解決されていない.ガイドライン作成の目的は,実際の臨床の場で診断や治療の選択を行うための指針を提供することである.そして,作成されたガイドラインの質を評価し,ガイドラインの結果の評価も行われるべきである.ガイドラインが臨床現場で広く用いられるためには,その評価された結果が,またガイドラインの改訂にフィードバックされるような体制を確立することが大切であり,そのうえで,多くの先生方に利用されるよう努力していくことが重要と考えられる.

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