要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 20/循環器3
高血圧 (改訂第2版)



第1章 疫学
日本人の高血圧と高血圧合併症の疫学

三浦 克之 滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門 准教授
上島 弘嗣 滋賀医科大学生活習慣病予防センター 特任教授


要旨
 人間集団の血圧値はほぼ正規分布し,高血圧の定義は人為的なものである.高血圧あるいは正常血圧のカット値はより低い方向にシフトしてきた.日本人の血圧は過去数十年で低下傾向にあるが,なお高血圧有病率は高く,有病者数は約 4,000 万人と試算されている.高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり,脳卒中・冠動脈疾患との関係は連続的・直線的である.循環器疾患リスク予測においては収縮期血圧と共に拡張期血圧も重要である.

目次に戻る



第2章 血圧測定をめぐる諸問題
診察室血圧の意義と今後の課題

松岡 博昭  獨協医科大学 名誉教授
          宇都宮中央病院 病院長

要旨
 疫学研究や臨床試験のエビデンスでは診察室血圧が基本となっており,現時点では高血圧の診断も診察室血圧に基づいて行われている.一方,家庭血圧や自由行動下血圧(24 時間血圧)のほうが診察室血圧よりも心血管イベントの優れた予測因子であるとの報告がなされてきている.個々の患者の診療に際しては白衣高血圧や仮面高血圧も想定して,診察室血圧に加えて,診察室以外の血圧も測定し,治療効果の判定にも参考とすべきである.

目次に戻る



第2章 血圧測定をめぐる諸問題
家庭血圧に基づく高血圧治療

吉田 愛琴 東北大学大学院薬学研究科臨床薬学
小原  拓  東北大学病院薬剤部
今井  潤  東北大学大学院薬学研究科臨床薬学 教授

要旨
 家庭血圧(HBP)測定は一定条件下での連日測定が可能なため,再現性が極めて良好であり,優れた予後予測能を示す.また,仮面高血圧や白衣高血圧の同定が可能であると同時に,薬効評価にも最適であり,高血圧診療において欠かせないツールである.一方,HBP における降圧目標値に関するエビデンスは存在しないため,今後 HBP における至適降圧レベルが確立されることが望まれる.

目次に戻る



第2章 血圧測定をめぐる諸問題
ABPMの上手な使用法

福冨 基城 下関市立角島診療所
苅尾 七臣 自治医科大学循環器内科学 主任教授

要旨
 自動行動下 24 時間血圧(ABPM)はすべての高血圧患者に施行することは困難であるため,適応を選んで上手に活用することが肝要である.高血圧の初期診断時では白衣高血圧,仮面高血圧を疑う場合や早朝高血圧を認めた場合,また治療慢性期においては血圧低下が疑われる場合や家庭血圧測定が不可能な場合,治療抵抗性高血圧を認めた場合などに積極的に ABPM を行うことが望ましい.ABPM を上手に用いた高血圧診療は理想的な個別診療につながると考える.

目次に戻る



第3章 高血圧の成因をめぐる諸問題
二次性高血圧の現状

宮森  勇 福井大学医学部第三内科 教授

要旨
 二次性高血圧は高血圧の約 10% を占めるが,本態性高血圧として見逃されている例がある.二次性高血圧が疑わしい場合には積極的に原因精査を行い,原因に応じた治療法を選択する.特に,原発性アルドステロン症は最も頻度が高く,血清カリウムは半数以上が正常値であることを念頭に置く.本稿では,二次性高血圧のうち内分泌性高血圧を中心にその現状と診断上のポイントを述べる.

目次に戻る



第3章 高血圧の成因をめぐる諸問題
本態性高血圧と遺伝子

檜垣 實男 愛媛大学大学院医学系研究科病態情報内科学 教授

要旨
 本態性高血圧の遺伝子解析は,近年大きな進展がみられている.候補遺伝子の研究ではレニン・アンジオテンシン系遺伝子や食塩貯留にかかわるナトリウム利尿ペプチド系の遺伝子など多くの遺伝子の関与が明らかにされ,その高血圧発症機序が研究されている.また,網羅的なゲノム解析では 17α 水酸化酵素遺伝子や膜に存在するアデノシン 5'−三リン酸(ATP)依存性膜局在型カルシウムポンプ遺伝子など,数多くの新機遺伝子が発見されている.また,胎児期の環境によって高血圧体質とでも言うべき一種の獲得形質が遺伝する可能性を示唆するエピジェネティクスの関与も報告されている.

目次に戻る



第3章 高血圧の成因をめぐる諸問題
中枢神経系の活動亢進が高血圧をもたらす

熊谷 裕生   防衛医科大学校腎臓内科 准教授
飯ヶ谷嘉門   慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科
佐方 克史   慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科
松浦 友一   慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科
猿田 享男   慶應義塾大学 名誉教授
          医療研修推進財団 理事長

要旨
 中枢神経系は,外界の環境や感情,ストレスに応じて末梢交感神経活動を亢進させることにより,細動脈を収縮させ心拍数を増加させレニン・アンジオテンシン系を賦活化させて,血圧を上昇させる.それゆえ,中枢神経系は高血圧を発症させ長期に維持させるために,最も重要な器官である.正常では食塩摂取に対して交感神経活動は抑制されるはずであるが,血清 Na 濃度の増加により終末板および視床下部の室傍核が刺激されて末梢交感神経活動を亢進させてしまう体質の者は,食塩感受性が高いタイプの本態性高血圧患者とみなされる.

目次に戻る



第3章 高血圧の成因をめぐる諸問題
本態性高血圧の成因としての腎の役割

櫻井 典子  名古屋市立大学大学医学部
木村玄次郎  名古屋市立大学大学院医学研究科 心臓・腎高血圧内科学 教授

要旨
 高血圧の9割以上を占める本態性高血圧は,その原因がいまだ明確でない.しかし,腎は血圧調節における中枢であり,圧−利尿曲線に異常が存在することや本態性高血圧症で腎不全に陥った患者に腎移植をすると血圧が正常化する事実から,高血圧の原因が腎に局在することはもはや明らかである.問題は,腎のどのような機能異常が本態性高血圧を発症させるのか,さらにはその機能異常を引き起す原因遺伝子は何なのか,というレベルに研究が集約されつつある.

目次に戻る



第3章 高血圧の成因をめぐる諸問題
本態性高血圧の成因としてのアディポネクチンなど内分泌因子の役割

古橋 眞人 札幌医科大学内科学第二講座
島本 和明 札幌医科大学内科学第二講座 教授

要旨
 本態性高血圧患者の約半数でインスリン抵抗性が存在し,代償性高インスリン血症が高血圧の成因に重要な役割を果たしている.インスリン抵抗性の成因として,腫瘍壊死因子(TNF)α,レプチン,アディポネクチン,レジスチンといった脂肪細胞由来の内分泌因子(アディポサイトカイン)の役割が注目されている.また最近,脂肪細胞に高発現している脂肪細胞由来脂肪酸結合タンパク aP2(A−FABP/FABP4)が脂肪細胞から分泌され,肥満やインスリン抵抗性と関連することが示唆されており,今後の詳細な検討が期待される.

目次に戻る



第3章 高血圧の成因をめぐる諸問題
本態性高血圧の成因としての血管内皮の役割

川辺 淳一 旭川医科大学循環呼吸神経病態内科講座・心血管再生先端医療開発講座 特任准教授

要旨
 血管内皮は末梢血管抵抗を調整する臓器であり,その機能異常が本態性高血圧の成因として働く可能性はあるが,血管内皮機能に影響する高血圧を含む心血管病リスク因子が相互作用している複雑な病態下,血管内皮機能異常が高血圧の成因か結果かという大命題の結論には至っていない.今後,本態性高血圧と血管内皮機能障害の連関性に関する研究は,本態性高血圧の病態の解明とともに,新しい動脈硬化性疾患の治療開発につながるものとして期待される.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
生活習慣修正のポイント

松浦 秀夫 済生会呉病院 院長

要旨
 生活習慣の修正は高血圧治療の基本であるが,降圧薬ほどの大きな降圧効果が短時間に得られるものではない.しかし,高血圧以外の生活習慣病の予防・治療のためにも継続していくことが求められる治療法である.具体的な指導と適切な評価により医療者と患者,家族との共同作業で進めることが重要である.減塩や禁煙の推進のように患者個人の問題だけではなく,社会環境の整備への取組みが必要な事項も多く存在する.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
新しいガイドラインに基づく降圧薬の使用法

荻原 俊男  大阪府立急性期・総合医療センター 院長

要旨
 降圧薬の心血管病阻止効果は,その種類よりも降圧度によって規定される.第1選択薬とは Ca 拮抗薬,アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB),アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,利尿薬,β遮断薬の5種類薬剤とする.積極的な適応や合併症の有無に応じて,適切な降圧薬を選択する.降圧目標を達成するためには,多くの場合2,3剤の併用が必要であり,この場合,少量の利尿薬を積極的に併用する.2剤併用の組合わせとして,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬(ARB,ACE 阻害薬)+Ca 拮抗薬または利尿薬,Ca 拮抗薬+利尿薬またはβ遮断薬を推奨する.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
併用療法のコツ

石光 俊彦 獨協医科大学循環器内科 教授

要旨
 心血管疾患のリスクを十分抑制するには,厳格な血圧コントロールが必要であり,そのためには複数の降圧薬が必要とされる場合が多い.併用療法においてはそれぞれの降圧薬の作用機序を理解し,降圧効果が増強されるとともに副作用のリスクが相殺されるような組み合わせを選択することが望ましい.併用療法による長期的な治療成績を比較した大規模臨床試験の結果も示されており,そのようなエビデンスやガイドラインを参照して患者の病態に合った併用療法を進めることが,治療効果を高め予後改善を図るうえで肝要である.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
新しい降圧薬 1.鉱質コルチコイド受容体拮抗薬

福田 誠一 国際医療福祉大学三田病院内科
佐藤 敦久 国際医療福祉大学三田病院内科 教授

要旨
 従来からの鉱質コルチコイド受容体拮抗薬であるスピロノラクトン,ならびに最近開発された選択的鉱質コルチコイド受容体拮抗薬であるエプレレノンは降圧効果だけでなく,臓器保護効果が期待できる薬剤である.スピロノラクトンは副作用として高カリウム血症や内分泌性副作用があるが,エプレレノンでは内分泌性副作用はほとんど認めない.両薬剤とも腎機能に注意しながら,適正に使用すれば非常に有用な薬剤と考えられる.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
新しい降圧薬 2.利尿薬とARBの合剤

齊藤 郁夫 慶應義塾大学保健管理センター 所長

要旨
 早期に降圧目標に到達するためにしばしば併用療法が必要となる.薬理作用が補い合い,大規模臨床研究で使用された2薬の併用としてアンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)と Ca 拮抗薬,ARB と利尿薬を使用する頻度が高い.ARB と利尿薬の合剤は併用療法を単純化し,服薬アドヒアランスを高めるのに有用であり,合剤を積極的に用いることで降圧目標達成率が向上する.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
特殊な高血圧の対応 1.早朝高血圧

河野 雄平 国立循環器病センター高血圧腎臓内科 部長

要旨
 血圧は一般に早朝に上昇し,早朝高血圧は未治療および治療中の高血圧患者に多く認められる.早朝高血圧はまた,仮面高血圧の主な部分を占めており,早朝に多発する心血管イベントに関連している.早朝高血圧の要因として,アルコールやストレスなどの生活習慣,睡眠時無呼吸,降圧薬の薬効減弱などがある.家庭血圧や 24 時間血圧測定による早朝高血圧の診断と適切な治療は,心血管疾患の発症予防のために重要と考えられる.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
特殊な高血圧の対応 2.後期高齢者の血圧

大石  充  大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 講師
楽木 宏実  大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 教授

要旨
 後期高齢者の血圧に関しては,明確なエビデンスに基づく治療がなされていなかった.HYVET と呼ばれる 80 歳以上の高齢高血圧患者を対象とした大規模臨床試験の結果より,降圧治療を行ったほうが脳・心血管イベント抑制効果が高いことが示された.これにより後期高齢者に対しても積極的な降圧療法を行うことがエビデンスに基づいていることが示された.また,75 歳以上で収縮期血圧 160mmHg 以上の場合,150mmHg 未満を暫定目標とする JSH2004 での記載は,降圧スピードを緩徐にするための1つの方法であるという認識のもと,降圧スピードの項における中間目標として記載されている.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
特殊な高血圧の対応 3.脳血管障害急性期の高血圧

棚橋 紀夫 埼玉医科大学国際医療センター神経内科 教授

要旨
 脳梗塞超急性期で血栓溶解療法予定患者では 180/105mmHg 未満にコントロールする.血栓溶解療法の適応とならない脳梗塞では,収縮期血圧>220mmHg,拡張期血圧>120mmHg の場合,脳出血では,収縮期血圧>180mmHg,または平均血圧>130mmHg の場合に降圧対象となる.降圧の程度は,脳梗塞では前値の 85〜90%,脳出血では前値の 80% を目安とする.脳血管障害急性期で推奨される降圧薬は,ニカルジピン,ジルチアゼム,ニトログリセリンやニトロプルシドの微量点滴静注などである.ただし,頭蓋内圧を上昇させる危険性に注意する.ニフェジピンの舌下投与は急激な血圧低下を引き起す危険があるので用いない.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
特殊な高血圧の対応 4.冠動脈疾患・不整脈を有する高血圧

甲斐 久史  久留米大学医学部内科(心臓・血管内科部門)准教授
今泉  勉  久留米大学医学部内科(心臓・血管内科部門)教授

要旨
 高血圧は冠動脈疾患の主要な危険因子の1つである.冠動脈疾患では,降圧目標を 140/90mmHg 未満として注意深く降圧する.狭心症では,高度冠動脈狭窄が原因の場合にはβ遮断薬を,冠攣縮が関与する場合には Ca 拮抗薬を主体とした降圧治療を行う.心筋梗塞の既往は極めて高リスクであることから,さらに厳格に 130/80mmHg 未満まで降圧することが推奨される.心筋梗塞後には血圧レベルにかかわらず,心リモデリング予防と予後改善を目的として,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬およびβ遮断薬を投与することが望ましい.心筋梗塞後低心機能例では,RA 系阻害薬とβ遮断薬の併用に抗アルドステロン薬を追加することで,さらなる予後改善効果が得られる.心房細動や重症心室性不整脈の upstream approach として十分な降圧治療,特に RA 系阻害薬を用いた高血圧治療の重要性が注目されている.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
特殊な高血圧の対応 5.進行した腎障害に合併する高血圧

伊藤 貞嘉 東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野 教授

要旨
 進行した腎障害を伴う高血圧患者は,末期腎不全のみならず,脳・心血管疾患の発症のリスクが高い.高血圧治療の目的は腎機悪化の速度を抑制するとともに,脳・心血管病の発症や再発を抑制することである.そのためには降圧目標(130/80mmHg未満)の達成,レニン・アンジオテンシン系の抑制,尿アルブミンの減少を図ることが重要である.腎機能や電解質のモニターをしながら,減塩とともに多剤併用療法を行う.

目次に戻る



第4章 高血圧治療の現況
特殊な高血圧の対応 6.妊娠高血圧

鈴木 洋通  埼玉医科大学腎臓内科 教授

要旨
 妊娠に伴って生じる高血圧は,通常の高血圧とは異なっていると理解する必要がある.最近は妊娠高血圧症候群として,「妊娠 20 週以降に血圧が収縮期血圧 140mmHg もしくは拡張期血圧 90mmHg 以上となった場合」と定義される.多くは妊娠の終了後,12 週以内に通常の血圧に復する.本邦では,結婚年齢の高齢化,女性の社会進出,30 歳代女性の肥満の問題など幾つかの社会現象が,妊娠に伴う血圧の変動に複雑な影響を与えている.

目次に戻る



第5章 高血圧治療に関する今後の課題
各種Ca拮抗薬の使い方

林  晃一 慶應義塾大学医学部内科 准教授

要旨
 近年の薬剤開発により,交感神経刺激作用が少なく,心不全や狭心症への使用が可能となった.さらに,従来の Ca 拮抗薬はL型 Ca チャネルを抑制するが,それに加えてN型 Ca チャネルをもブロックするものが市販された.一方,腎臓に対する作用では,従来の Ca 拮抗薬は輸入細動脈を選択的に拡張させるが,近年開発されたT型 Ca 拮抗薬は輸出細動脈も拡張を起す Ca 拮抗薬があり,今後腎保護作用への関与の面で検討される.

目次に戻る



第5章 高血圧治療に関する今後の課題
ARBとACE阻害薬の使い分け

三橋  洋 横浜市立大学医学部循環器・腎臓高血圧内科
梅村  敏 横浜市立大学医学部循環器・腎臓高血圧内科 教授

要旨
 レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンU(AU)受容体拮抗薬(ARB)は共に臓器保護作用を持つ優れた降圧薬である.ACE 阻害薬と ARB は薬理作用点が異なり,両者の臓器保護作用に相違がある可能性がある.本稿では今までの基礎・臨床研究結果を参考に,両者の使い分けの必要性や両者の併用療法の意義について解説する.

目次に戻る



第5章 高血圧治療に関する今後の課題
各種利尿薬の使い分け

土橋 卓也  国立病院機構九州医療センター 高血圧内科 科長

要旨
 利尿薬にはサイアザイド系,ループ,カリウム保持性があり,降圧目的にはサイアザイド系が適している.使用に際しては1/2〜1/4錠の少量を用い,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬など降圧効果の増強と副作用の相殺が得られる薬剤を併用する.諸種アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)/利尿薬合剤が登場し,病態に合った組合わせの薬剤が選択可能となった.低カリウム血症,耐糖能悪化,高尿酸血症など,代謝性副作用が生じないよう注意しながら降圧目標の達成を目指すことが重要である.

目次に戻る



第5章 高血圧治療に関する今後の課題
β遮断薬およびα遮断薬の使い方

田中 秀一  北海道循環器病院循環器科 医長
堀田 大介  北海道循環器病院 副院長
菊池健次郎  北海道循環器病院 理事
          旭川医科大学 名誉教授

要旨
 JSH2009 では,β遮断薬は第1選択の降圧薬に含められたが,最近の大規模臨床試験(ほとんどがアテノロール)の成績から合併症のない高齢者や糖・脂質代謝異常合併例では,その使用に制約が加えられた.一方,カルベジロール,ビソプロロール,セリプロロールなどでは糖・脂質代謝改善効果が報告されている.他方,α遮断薬は大規模試験による有用性のエビデンスがなく,第1選択薬から除外され,治療抵抗性高血圧に対する併用薬とされた.

目次に戻る