要旨


最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 27/消化器3
ウイルス性肝炎



第1章 ウイルス性肝炎の概論・疫学
肝炎ウイルスとは

三代 俊治  東芝病院 研究部 部長

要旨
  既知肝炎ウイルスは5種類存在するが,大きく分ければ血清肝炎型(B型とC型とD型)と流行性肝炎型(A型とE型)の二種類であって,かつ両者は極めて対照的である.すなわち,前者は enveloped virus であり血行性ルートで感染し持続し慢性肝病変をもたらす能力を有するが,後者は non-enveloped virus であって主に経口ルートで感染し一過性の肝炎を惹起するのみである.ワクチンはA型とB型(したがってD型にも)に対するものがすでに開発済みである.

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第1章 ウイルス性肝炎の概論・疫学
ウイルス肝炎の疫学

小宮  裕  広島大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・疫病制御学
田中 純子 広島大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・疫病制御学 助教授
吉澤 浩司 広島大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・疫病制御学 教授

要旨
 我が国では,1970 年代半ばから今日に至るまで肝癌による死亡数が増加の一途をたどっており,2002 年における死亡数は 34,637 人と肺癌(56,405 人),胃癌(49,213 人)に次いで第3位となっている.しかし,我が国の肝癌死亡の増加に寄与してきたC型肝炎ウイルス(HCV)キャリアは肝癌の好発年齢である 60 歳以上に偏在することから,肝癌による死亡数の増加は間もなくプラトーに達し,2010 年頃を境に自然減少に転じるものと予測される.

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第2章 ウイルス性肝炎の病態生理
B型肝炎の発症機序と HBV 持続感染

石川 哲也 愛知医科大学消化器内科 講師
各務 伸一 愛知医科大学消化器内科 教授

要旨
 B型肝炎の発症には,自然免疫や細胞性免疫など獲得免疫が,ともに重要な役割を果たし,自然免疫は早期のウイルス制御を,獲得免疫は感染肝細胞の排除を含めた,最終的なウイルス制御を行っている.この獲得免疫による感染肝細胞排除が肝障害の発現をもたらす.持続感染は,ウイルス排除機構が十分に機能しない状態で成立する.細胞性免疫の抑制が主な原因と考えられるが,自然免疫,さらにはウイルス側の因子も関与する.



第2章 ウイルス性肝炎の病態生理
C型肝炎の発症機序と HCV 持続感染

広石 和正 昭和大学医学部消化器内科 講師
平出 綾子 昭和大学医学部消化器内科
坂木  理  昭和大学医学部消化器内科
井廻 道夫  昭和大学医学部消化器内科 教授

要旨
 C型肝炎ウイルス(HCV)を特異的に認識する細胞障害性T細胞は,HCV 感染を終息させようとする生体防御にかかわる反面,肝細胞を破壊して肝炎の発症や重症化の原因となる.HCV は抗原性が低く,さらに HCV 自体も宿主の免疫抑制作用を有するため,HCV 感染は持続化すると考えられる.生体での HCV に対する免疫応答を詳細に検討することは,HCV の排除や肝炎の沈静化を目指した治療法の発展や,HCV 予防ワクチンの開発に有用である.

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第3章 ウイルス性肝炎の病態把握に必要な検査
肝機能検査

仁科 惣冶 山口大学医学部消化器病態内科学
日野 啓輔 山口大学医学部保健学科病態検査学 助教授
沖田  極  山口大学医学部消化器病態内科学 教授

要旨
 我が国では,肝炎の主な原因は肝炎ウイルス(特にB型,C型肝炎ウイルス)である.臨床で肝炎患者をみた場合,どのような病態なのかを素早く把握する必要がある.つまり,急性肝炎,劇症肝炎,あるいは慢性肝炎,肝硬変の鑑別が重要となってくる.これらの病態把握には身体所見のみでは困難であり,肝機能検査の補助は必須である.今回,ウイルス性肝炎の各病態に応じた肝機能検査の要点を述べることとする.



第3章 ウイルス性肝炎の病態把握に必要な検査
肝炎ウイルスマーカー

奥瀬 千晃  聖マリアンナ医科大学消化器肝臓内科
四柳  宏  聖マリアンナ医科大学消化器肝臓内科 講師

要旨
 ウイルス性肝炎の原因ウイルスとして現在までにA型,B型,C型,D型およびE型肝炎ウイルスが同定されている.これら肝炎ウイルスに対するウイルスマーカーはウイルス抗原,抗原に対する抗体,ウイルス遺伝子に大別される.近年,各種肝炎ウイルスにおける分子生物学的の進歩に伴い,あらたな肝炎ウイルスマーカーが開発され,臨床の場で応用されている.これら肝炎ウイルスマーカーはその多種多様性から一見複雑にも思えるが,それぞれのマーカーの意義を十分理解することで,各疾患の病態を正確に把握することが可能である.



第3章 ウイルス性肝炎の病態把握に必要な検査
肝組織検査

山田剛太郎 川崎医科大学附属川崎病院肝臓・消化器病センター 副院長

要旨
 ウイルス性肝炎の診断や病態把握にあたっては,炎症の現場である肝臓の生検組織を直接観察することは大変有用である.通常の病理診断による慢性肝炎の線維化ステージや壊死炎症のグレード診断は長期予後,特に肝硬変への進展や肝癌発生のリスクを考慮した治療指針を立てるうえで非常に参考となる.さらに各種手法を用いて,肝組織レベルから細胞,タンパク,遺伝子レベルまで,ウイルス肝炎の幅広い病態解析が進められている.



第4章 急性肝炎,劇症肝炎の診断と治療
急性肝炎の診断と治療(総論)

持田  智 埼玉医科大学消化器・肝臓内科 教授

要旨
 急性肝炎の大部分は無治療でも軽快するが,一部には劇症肝炎に移行して,死の転帰をとる場合がある.劇症化を阻止するためには,急性肝炎の段階で,副腎皮質ステロイド剤のパルス投与などの肝庇護療法および抗ウイルス療法や抗凝固療法など成因に対する治療を開始することが必須である.したがって,急性肝炎では成因を正確に診断し,肝不全の重症度を肝壊死の持続性との関連で評価することが重要である



第4章 急性肝炎,劇症肝炎の診断と治療
急性肝炎の診断と治療(各論):
(1)A型肝炎

飯野 四郎 医療法人社団静山会清川病院 院長

要旨
 A型肝炎の診断は発熱で発症した急性肝炎例で IgM・HA 抗体が陽性であれば,確定でき容易である.また,治療は対症療法のみであり,まれにみられる劇症化例には血漿交換および人工肝補助装置などの特殊療法が施行され,比較的予後は良い.しかし,日本の社会はA型肝炎ウイルス(HAV)感受性者が多数を占め,HAV 感染が急速に拡大する要因を多くはらんでいる.ワクチン接種の普及が望まれる



第4章 急性肝炎,劇症肝炎の診断と治療
急性肝炎の診断と治療(各論):
(2)B型急性肝炎とB型慢性肝炎急性増悪

伊与田賢也 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター消化器科
結城 暢一  独立行政法人国立病院機構大阪医療センター消化器科 医長
山本 佳司  独立行政法人国立病院機構大阪医療センター消化器科 医長
加藤 道夫  独立行政法人国立病院機構大阪医療センター消化器科 部長

要旨
 B型急性肝炎やB型慢性肝炎急性増悪は,その重症度によって,適切な治療方針を立てなければならない.抗原抗体系やウイルス量などの血清学的検査を中心に診断を行う.急性感染は多くが一過性で軽快する.急性増悪ではインターフェロンやラミブジンによる治療を行う.重症化や劇症化時には肝移植を含めての治療を考慮する.劇症化の有無を的確に判断し,早期に適当な治療を行うことが重要である.



第4章 急性肝炎,劇症肝炎の診断と治療
急性肝炎の診断と治療(各論):
(3)C型急性肝炎

緒方  啓  久留米大学医学部第二内科
井出 達也  久留米大学医学部第二内科 講師
佐田 通夫  久留米大学医学部第二内科 教授
  
要旨
 本邦のC型急性肝炎の感染経路として,我々が経験した範囲では医療原性と針刺し事故で約半数を占めた.さらに新たな感染経路として,近年は覚醒剤常用が台頭してきている.治療に関しては,適切な時期にインターフェロン(IFN)療法を行えば,大多数の症例を治癒に導けることが分かった.したがって,慢性肝炎への移行が懸念される例では時期を逸することなくIFN療法を開始することが重要である.

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第4章 急性肝炎,劇症肝炎の診断と治療
急性肝炎の診断と治療(各論):
(4)E型肝炎

矢野 公士  独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター
                                            国際医療協力室 室長
八橋  弘  独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター
                                            治療研究部 部長

要旨
 かつて,専ら輸入感染症ととらえられてきたE型肝炎は,先進国においてE型肝炎ウイルス(HEV)固有株が存在することが明らかとなり近年注目されている.また,一部の獣類が HEV を保有していることも明らかとなり,さらにこれらを食することによってヒトに感染を引き起した事例が発生し,E型肝炎は人獣共通感染症であることが判明した.HEV は感染後2〜9週の潜伏期を経て急性肝炎を引き起すが,慢性化することはない.劇症化率は2〜3% とされる.現時点の診断法としては,IgM 型と IgG 型の HEV 抗体価陽性,および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法による HEV-RNA 陽性を確認することが望ましい.

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第4章 急性肝炎,劇症肝炎の診断と治療
急性肝炎の診断と治療(各論):
(5)その他のウイルス性急性肝炎

田中 榮司  信州大学医学部消化器内科 助教授

要旨
 現在,本邦でのウイルス性急性肝炎の多くはA型からE型のいずれかの肝炎として診断可能である.しかし,臨床的にウイルス肝炎であることが予測されながら,いずれの型とも判定されない症例が存在することも事実である.このような肝炎を「非A-E型肝炎」としてとらえ病因・病態の解明が進められている.非AミE型急性肝炎の診断は未知の肝炎ウイルスを想定したものであり,基本的に除外診断による.除外する必要のある疾患では,肝炎ウイルスによる肝炎,肝炎ウイルス以外の肝炎,薬剤性肝障害,自己免疫性肝炎などが重要である.また,肝組織学的検索は非A-E型肝炎の診断に有用性が高い.非A-E型肝炎は散発性急性肝炎の 20〜30% を占める.A型肝炎やB型急性肝炎に比較し軽症例が多いが,劇症化する症例や慢性化する症例もあるので注意が必要である.  新しい肝炎ウイルスの候補として GBV-C/HGV,TTV,SENV などが報告されたが,現在これらは肝炎ウイルスではないと考えられている.

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第4章 急性肝炎,劇症肝炎の診断と治療
肝炎ウイルスによる劇症肝炎

内木 隆文  岐阜大学医学部消化器病態学
内藤 智雄  岐阜大学医学部消化器病態学
森脇 久隆  岐阜大学医学部消化器病態学 教授

要旨
 劇症肝炎は肝性脳症U度およびプロトロンビン時間 40% 以下を示す重篤な肝炎と定義される.現在年間 1,000 例ほど発症し,成因はウイルスが 50% 近くを占め,中でも HBV がその 80% 近くを占めている.治療は抗ウイルス薬の適切な使用などで速やかな肝炎の鎮静化を図り,十分な肝再生が得られるまで合併症の予防を集学的に行う必要がある.また,常に移植を念頭に置き移植外科との連携も重要である.

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第5章 B型慢性肝炎の診断と治療
B型慢性肝炎の自然経過

横須賀 收 千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科学 講師
住   一  千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科学

要旨
 B型慢性肝炎の病期は免疫寛容期,慢性肝炎期,無症候性キャリア期の3期に分けられる.セロコンバージョンを契機に大部分の症例は無症候性キャリア期に入るが,一部肝炎が持続するB型肝炎ウイルスe(HBe)抗体陽性慢性肝炎症例が存在する.また肝硬変,HBe 抗原陽性など肝発がんの危険因子が報告されているが,それらの因子を持たなくても発がんする症例が存在する.このように多彩なB型慢性肝炎の経過を理解し,適切な経過観察,治療を行う必要がある.

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第5章 B型慢性肝炎の診断と治療
B型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法:
(1) インターフェロン療法

八橋  弘  独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター 治療研究部 部長

要旨
 B型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法としてのインターフェロン(IFN)療法は,15年以上の歴史があるも,諸外国に比較して,我が国では投与量,投与期間が短いことから欧米と比較できる治療成績は少ない.B型肝炎ウイルスe(HBe)抗原陽性B型慢性肝炎に対する6ヵ月のIFN投与では,我が国では 20〜30% において治療効果が得られると考えられる.

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第5章 B型慢性肝炎の診断と治療
B型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法:
(2) ラミブジン治療

保坂 哲也 虎の門病院消化器科
熊田 博光 虎の門病院消化器科 副院長

要旨
 近年ラミブジン治療はB型慢性肝炎に対する最も代表的な治療の一つとなってきており,その有効性が国内外を問わず多数報告されている.ラミブジン治療は長期間良好な経過が得られている症例があり組織学的にも改善が見られる反面,ラミブジン耐性ウイルスによる肝炎再燃の問題を抱えている.しかしながら,最近になり耐性ウイルスに対して有効なアデホビルピボキシルなどの次世代核酸アナログが登場しその有効性が報告されている.ラミブジン耐性ウイルスの問題は解決されようとしている.

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第5章 B型慢性肝炎の診断と治療
B型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法:
(3) ラミブジン・インターフェロン併用療法

南  祐仁 京都府立医科大学大学院医学研究科消化器病態制御学
岡上  武 
京都府立医科大学大学院医学研究科消化器病態制御学 教授

要旨
 ラミブジン治療には,耐性ウイルスの出現と投与終了後の再燃が高頻度という問題点がある.インターフェロンは有効例での効果の持続に優れており,ラミブジンの抗ウイルス作用とインターフェロンによる免疫賦活作用の相乗効果を期待して,両者の併用療法が試みられている.併用療法には,治療期間が限定でき,耐性ウイルスの出現が防止できるといった利点があり,治療の長期化を避けたい若年例などで考慮に入れるべき方法である.

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第5章 B型慢性肝炎の診断と治療
B型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法:
(4) 新たな抗ウイルス療法

加藤 直也 東京大学大学院医学系研究科消化器内科
小俣 政男 
東京大学大学院医学系研究科消化器内科 教授

要旨
 B型肝炎の抗ウイルス療法として,インターフェロン,ラミブジンが使われており,また,最近になりアデホビルが認可された.ラミブジンは,慢性肝炎の治療のみならず,重症肝炎や非代償性肝硬変患者においても画期的な有効性を示し,B型肝炎の治療を大きく変えつつある.しかしながら,耐性株の出現はこの薬剤を投与するうえでの大きな問題となっており,新たな抗ウイルス療法の確立が必要である.

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第5章 B型慢性肝炎の診断と治療
B型慢性肝炎に対する免疫療法

堀池 典生 愛媛大学医学部第三内科 助教授
恩地 森一 愛媛大学医学部第三内科 教授

要旨
 B型慢性肝炎における宿主の不十分な免疫応答を改善し,B型肝炎ウイルス(HBV)を排除することを目的として,免疫療法が行われている.
 HBペプチドワクチン療法により樹状細胞の機能は増強する.最近,B型肝炎ウイルス表面(HBs)抗原パルス樹状細胞によるワクチンを開発した.HBV非特異的免疫療法として,サイモシン-α1,プロパゲルマニウム,ステロイド離脱療法は,免疫賦活作用を有している.抗ウイルス薬との併用療法も含めて,今後の発展が期待される.

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第5章 B型慢性肝炎の診断と治療
B型慢性肝炎の予後(治療による発癌抑止)

松本 晶博 信州大学医学部消化器内科
田中 榮司 
信州大学医学部消化器内科 助教授
清澤 研道 
信州大学医学部消化器内科 教授

要旨
 B型慢性肝炎では,インターフェロンの長期投与によって肝細胞癌発生のリスクを減らせることが報告されているが,ラミブジンではその効果は分かっていなかった.Liaw らの代償性肝硬変症の患者 651例に対する二重盲検法や,2004 年の犬山シンポジウムにおける 754例の症例を用いた matched case-control study により,ラミブジン投与により有意に肝細胞癌の発生が抑制されることが分かった.

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第6章 C型慢性肝炎の診断と治療
C型慢性肝炎の自然経過

小橋 春彦  岡山大学大学院医歯学総合研究科消化器・肝臓・感染症内科
高木章乃夫 
岡山大学大学院医歯学総合研究科消化器・肝臓・感染症内科
白鳥 康史 
岡山大学大学院医歯学総合研究科消化器・肝臓・感染症内科 教授

要旨
 C型慢性肝炎では肝線維化が緩徐に進行し,20年から30年を経て肝硬変に至る.肝線維化のステージは F0(線維化なし)から F4(肝硬変)の5段階で表わされ,平均して0.10 線維化単位/年の速度で進行する.進行に関与する因子として,年齢が高いこと,飲酒,男性であることが挙げられる.肝硬変からは年率8% という高頻度で肝細胞癌が発生する.C型慢性肝炎の治療目標は肝硬変への進行,肝細胞癌の発生を防止して生命予後を改善することであり,治療戦略を立てるうえで自然経過を理解することが不可欠である.

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第6章 C型慢性肝炎の診断と治療
C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法:
(1)インターフェロン単独療法

茶山 一彰  広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病態制御内科学 教授

要旨
 PEG-インターフェロン(IFN)とリバビリン併用療法の出現により,C型慢性肝炎の IFN治療は大きく様変わりした.今後,特に難治例であるgenotype 1b,高ウイルス量の症例に対してはリバビリン併用が第一選択となる.しかし,催奇形性,貧血の問題があり,これらにより使用できない症例に対しては単独投与が行われる.単独投与に期待される効果としては,治癒が見込まれなくても肝炎の沈静化,線維化進行の予防,肝癌予防などがある.

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第6章 C型慢性肝炎の診断と治療
C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法:
(2)ぺグインターフェロン単独療法

吉岡健太郎  藤田保健衛生大学内科(消化器)助教授

要旨
 ぺグインターフェロン単独療法,リバビリン・IFNα2b 併用療法,リバビリン・PEG-IFNα2b 併用療法がC型慢性肝炎の主たる治療法となってきた.ペグインターフェロン単独療法は,リバビリンを使わないため貧血,食欲不振などの副作用が少なく,週1回投与で,発熱がほとんどない.1型高ウイルス量症例では,リバビリン併用療法に比べて治療効果は劣るが,それ以外の症例では,リバビリン併用療法に匹敵する治療効果が期待できる

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第6章 C型慢性肝炎の診断と治療
C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法:
(3)インターフェロン(ペグインターフェロン)・リバビリン併用療法

泉  並木  武蔵野赤十字病院消化器科 部長

要旨
 ジェノタイプ 1b型かつ高 HCV-RNA量の症例に,リバビリン併用でインターフェロン(IFN)α2b あるいはペグ IFNα2b 併用による 48 週間の治療が行えるようになった.いずれの治療でも登録症例全体で 44〜48% の高い治癒率が得られた.特に初回の IFN 治療で再燃例ではペグ IFN の併用治療効果が顕著であった.ペグ IFN では自覚症状の副作用が少なく,血球系有害事象も軽度であった.体重別のペグ IFN 投与量に留意することが大切である.

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第6章 C型慢性肝炎の診断と治療
C型慢性肝炎に対する瀉血療法

大竹 孝明   旭川医科大学第三内科
高後  裕   旭川医科大学第三内科 教授

要旨
 C型慢性肝炎の肝細胞では高頻度に鉄の過剰蓄積を認め,増加した自由鉄による酸化ストレスが肝細胞を障害する要因となっている.瀉血療法には直接的な抗ウイルス効果はないが,肝細胞から過剰蓄積した鉄を汲み出し,酸化ストレスを軽減して,血清トランスアミナーゼ値を改善させる.長期成績では肝線維化の進行を阻止し,肝発がんを予防することから,インターフェロン無効例・適応外症例において瀉血療法は有効な治療法と言える.

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第6章 C型慢性肝炎の診断と治療
C型慢性肝炎に対する肝庇護療法

荒瀬 康司 虎の門病院内科消化器科 医長

要旨
 C型肝炎ウイルス陽性の慢性肝疾患で抗ウイルス療法無効症例,副作用などの関係で抗ウイルス療法が行えなかった症例では経過中の肝発癌が重要な問題となる.このような症例に対してはグリチルリチン製剤,ウルソデオキシコール酸,除鉄療法などにて肝炎の鎮静化を目指す必要がある.特に肝のStageがF2以上,55歳以上,男性では肝発癌率が高率であり肝発癌を抑制するためにはトランスアミナーゼの正常化を目指す必要があると考えられた.

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第6章 C型慢性肝炎の診断と治療
C型慢性肝炎の予後(治療による発がん抑止効果)

笠原 彰紀 大阪大学大学院医学系研究科生体機能調節医学(総合診療部)助教授
林  紀夫 
大阪大学大学院医学系研究科分子制御治療学 教授


要旨
 C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療では,未治療例に比し肝細胞癌の発生および肝臓病死が抑制され長期予後が改善し,その効果は線維化進展例でも期待される.さらに,ウイルスの持続的な排除または一時的にでも肝機能の正常化をIFN治療にて来すことができれば,無効例に比し肝細胞癌の発生・肝臓病死は有意に抑制される.

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第7章 ウイルス性肝炎治療のガイドライン
B型肝炎治療のガイドライン

岡上  武 京都府立医科大学大学院医学研究科消化器病態制御学 教授

要旨
 B型慢性肝炎は自然にウイルス増殖が低下し肝炎が沈静化することがあり,抗ウイルス療法の適応にはこのことの認識が大切である.治療の基本は抗ウイルス療法(IFN と核酸誘導体のラミブジンやアデホビル)で,IFNは比較的ウイルス量が少ない活動性慢性肝炎患者に投与する.核酸誘導体は長期投与で本剤抵抗性のウイルスが出現するため,重症化・劇症化や肝硬変への進展が懸念される患者に投与する.

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第7章 ウイルス性肝炎治療のガイドライン
C型肝炎治療のガイドライン

平松 直樹 大阪大学大学院医学系研究科分子制御治療学
林  紀夫 
大阪大学大学院医学系研究科分子制御治療学 教授

要旨
 2004年12月,ペグインターフェロン/リバビリン併用療法(48 週投与)が難治性であるgenotype1型高ウイルス量症例に認可され,約半数に著効が期待できるようになった.それ以外の群に対する併用療法はインターフェロン/リバビリン併用24週投与であるが,これでも約80%の症例を著効に導ける.さらなる著効率の向上のためには,ウイルス陰性化時期を考慮に入れた個々の症例に対する治療法を考える必要がある.

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