要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 30/代謝3
糖尿病合併症



第1章 糖尿病合併症の疫学
糖尿病合併症の疫学

森本  彩    東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科
西村 理明   東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科
田嶼 尚子   東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科 教授

要旨
 糖尿病治療の目的は,合併症の発症・進展を防ぎ,健常人と同様な生活の質(QOL)を得ることにある.それら合併症の疫学を検討する意義は,発症頻度の現状や危険因子を把握するだけでなく,治療などによる介入により真に糖尿病患者のQOLや予後が改善しているのかどうかを検討し,その対策を示すことにもある.本章では糖尿病の代表的な3大合併症である網膜症,腎症,神経障害,ならびに心血管疾患について述べる.

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第2章 糖尿病合併症の病因・病態生理
糖尿病細小血管症の成因

三浦順之助   東京女子医科大学糖尿病センター内科
山本  博    金沢大学大学院医学系研究科血管分子生物学 教授

要旨
 糖尿病状態では,①終末糖化産物(AGE)の産生と蓄積,②ポリオール経路の亢進,③プロテインキナーゼC(PKC)の活性化 ④酸化ストレス亢進などの生化学的異常が起き,機能的,組織学的異常を惹起する.これらの事象はおのおの独立して起るものではなく,お互い複雑に関連していることが分かってきている.これらの系の上流における異常で一元的に説明しようとする説も出てきており,近未来に画期的な予防策ができることが期待される.

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第2章 糖尿病合併症の病因・病態生理
糖尿病大血管症の成因

柏木 厚典  滋賀医科大学内科学講座内分泌代謝内科 教授

要旨
 2型糖尿病患者の大血管症は,閉塞性病変(粥状動脈硬化)と非閉塞性動脈硬化病変によって広汎な動脈硬化病変となる.前者はメタボリックシンドロームを合併する脂質異常を伴うリスクの集積した症例に見られ,後者は高血糖や高血圧が関与していた.前者の病態形成には,内臓脂肪の蓄積,アディポサイトカイン異常,インスリン抵抗性が関連し,後者は高血糖による糖毒性による血管壁硬化病変が血流異常の原因となっている.



第2章 糖尿病合併症の病因・病態生理
メタボリックシンドロームと糖尿病大血管症

熊田 全裕   大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学
下村伊一郎   大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学 教授

要旨
 メタボリックシンドロームは,同一個人に,耐糖能障害,高脂血症,高血圧,内臓肥満を併せ持つ病態で,動脈硬化易発症病態である.また,その原因は内臓脂肪の過剰蓄積によるアディポサイトカインの分泌異常によることが,最近の研究から明らかにされている.メタボリックシンドローム患者における糖尿病の治療は,単なる血糖コントロールだけでなく,合併している高脂血症や高血圧,またその背景にある内臓肥満も考慮に入れて,総合的に治療していくことが重要である.

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第2章 糖尿病合併症の病因・病態生理
脂質代謝異常と糖尿病大血管症

及川 眞一   日本医科大学第三内科 教授

要旨
 糖尿病は動脈硬化性疾患の重要な危険因子の一つである.これに脂質代謝異常が合併することでその危険度はさらに増大する.また,脂質値代謝異常は高血糖時に出現し,糖代謝の是正とともに改善する.このとき,血中の脂質値は必ずしも異常高値とはならない.このような代謝変化を考慮して,単に血糖値を是正することにとどまらず,いわゆる重複した危険因子に対して積極的にアプローチすることが求められる.



第2章 糖尿病合併症の病因・病態生理
高血圧と糖尿病大血管合併症

佐藤 哲子   京都医療センター臨床研究センター代謝研究部臨床代謝栄養室 室長
小川 佳宏   東京医科歯科大学難治疾患研究所分子代謝医学分野 教授

要旨
 メタボリックシンドロームの構成要因である糖尿病と高血圧はインスリン抵抗性を基盤として,密接に関係している.糖尿病では血圧が上昇しやすく,高血圧を合併すると動脈硬化や心血管系疾患発症のリスクが増大する.この成因としては,従来から循環血漿量増加,血管収縮反応亢進や血管拡張反応低下などが提唱されているが,最近これらに関与する分子としてアディポサイトカインやレニン・アンジオテンシン系の役割が注目されている.



第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病網膜症:(1)成因と分類

高木  均  兵庫県立尼崎病院眼科 科長

要旨
 糖尿病網膜症(以下,網膜症)は高血糖に起因する網膜微小血管障害が発端となって,血管透過性の異常亢進による黄斑浮腫や虚血性血管新生による増殖網膜症が発症する.このような病態形成における周皮細胞変性や血管新生因子の意義を解説する.また,欧米にて多く使用される Early Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)分類,さらにこれをもとに近年発表された国際網膜症分類を詳説するとともに,分類上重要視される眼底所見や進行度を病態メカニズムの観点から解説する.



第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病網膜症:(2)発症・進展予防のための管理・治療のポイント-内科の立場から-

関根 信夫   東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 講師

要旨
 慢性高血糖状態を基盤とする糖尿病細小血管症の典型である網膜症の進展阻止には,可能な限り血糖値を正常近くまで厳格にコントロールすることが最も重要であることが,DCCTやUKPDSなど,近年の大規模スタディにより証明された.また血圧や脂質など,複合的に危険因子を軽減すべく管理することの重要性も指摘されている.一方,網膜症の発症機転について種々の説が提唱され,それらに基づく新たな治療薬の効果が検討されている.



第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病網膜症:(3)発症・進展予防のための管理・治療のポイント-眼科の立場から-

北野 滋彦  東京女子医科大学糖尿病センター眼科 教授

要旨
 糖尿病網膜症による失明を防止するうえで,糖尿病患者の内科的管理と眼科的管理の密接な連携が必要不可欠である.日本糖尿病学会では,エビデンスとなる情報源を検索して,糖尿病網膜症の治療に関する科学的根拠に基づく診療ガイドラインが作成された.この診療ガイドラインについて眼科的な見地から検証してみた.



第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病腎症:(1)成因と病期分類

羽田 勝計  旭川医科大学第二内科 教授

要旨
 糖尿病腎症は,ある種の遺伝因子(疾患感受性遺伝子)のもとに環境因子が加わって発症・進展する.腎症は糸球体に細胞外基質タンパクが蓄積する疾患であるが,高血糖に基づく細胞内代謝異常と糸球体高血圧が糸球体構成細胞の細胞外基質産生を亢進させ,腎症を惹起していると考えられている.腎症は早期腎症・顕性腎症・腎不全へと連続性の経過で進行するが,適切な治療を行うためには腎症の病期を的確に把握することが重要である.



第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病腎症:(2)発症・進展予防のための管理・治療のポイント

利根 淳仁  岡山大学大学院医歯学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学
四方 賢一  岡山大学大学院医歯学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学 講師
槇野 博史  岡山大学大学院医歯学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学 教授
  
要旨
 腎症の治療・管理の原則は,①血糖管理,②血圧管理,③レニン・アンジオテンシン系の制御,④タンパク制限食である.早期腎症では血糖・血圧管理が主体で,顕性腎症では血圧管理に加えて,最近,血糖管理の重要性が注目されている.腎不全期はタンパク制限食と血圧管理が主体となる.いずれの病期においてもレニン・アンジオテンシン系の制御は重要である.病期に応じた適切な治療を,可能な限り早期から積極的に行うことが重要である.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病腎症:(3)ARB・ACE 阻害薬の作用機序と実際の使い方

片山 茂裕  埼玉医科大学内科学(内分泌・糖尿病内科部門)教授

要旨
 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は,糸球体輸出細動脈を拡張し,糸球体内高血圧を改善して,微量アルブミン尿やタンパク尿を減少させる.point of no returnがあり非可逆的と考えられてきた糖尿病性腎病変が,厳格な血圧コントロールを維持することで可逆的である可能性(寛解や退縮)も示唆されている.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病腎症:(4)糖尿病腎不全の保存期管理と透析導入

中尾 俊之  東京医科大学腎臓内科 教授
岡田 知也  東京医科大学腎臓内科 講師

要旨
 糖尿病腎症による末期慢性腎不全患者数は年々増加の一途をたどっていることを背景に,透析導入の回避あるいは遅延するための保存療法が最近一段と注目されてきている.一方,糖尿病腎症による透析患者の予後は不良とされながらも,近年では次第に生存率の向上がみられる.本稿では,糖尿病腎不全の透析導入遅延のための保存療法および本症による透析療法の現況について概説する

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病腎症:(5)低タンパク食の意義と実際

出浦 照國  昭和大学藤が丘病院腎臓内科 教授

要旨
 糖尿病腎症における低タンパク食は,血糖値のコントロール,血圧のコントロール,腎庇護作用のある薬物療法と並んで,最も有効な治療法である.これら各治療の効果の増幅のためにも有用である.他の手段では期待できない尿タンパク量減少効果も有する.低タンパク食の実施にあたっては,0.5g/kgBW/日以下が望まれる.十分なエネルギー量の摂取が条件であり,それには治療用特殊食品,特にでんぷん製品が重要である.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病神経障害:(1)成因と分類

安田  斎  滋賀医科大学看護学科 教授

要旨
 糖尿病神経障害はポリニューロパチーを主要病型とする多彩な臨床症状を呈する.一部病型では自己免疫機序の関与も推測されている.ポリニューロパチーの成因はいまだ十分解明されていないが,ポリオール経路活性亢進に加えてプロテインキナーゼC(PKC)活性異常や酸化ストレスの関与が重要視されるようになり,特にミトコンドリア機能異常を介する酸化ストレスや脱電位,さらにアポトーシスの成因への関与について知見が集積している.さらに,神経栄養因子の作用不全による神経機能障害や再生障害を含めた諸因子が複合的に関与していると考えられる.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病神経障害:(2)発症・進展予防のための管理・治療のポイント

中村 二郎  名古屋大学大学院医学系研究科代謝病態内科学 助教授

要旨
 糖尿病神経障害の発症・進展を阻止するためには,糖尿病発症早期から厳格な血糖コントロールを維持するとともに,高血圧,高脂血症などの危険因子をも厳格にコントロールすることが重要である.加えて,現時点ではアルドース還元酵素阻害薬および抗酸化薬に限られるが,高血糖に由来する発症メカニズムに則って開発された薬剤を早期から用いることが有用であり,今後,新たな薬剤の開発されることが期待される.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病大血管症:(1)糖尿病に合併した脳血管障害の成因と特徴

山之内 博 大森赤十字病院 院長

要旨
 糖尿病は高血圧ほどではないが脳梗塞に対して独立した危険因子である.ただし,脳出血とは関連がない.糖尿病は動脈硬化の促進因子であり,高血圧が並存すると強力に作用する.動脈硬化性血栓性脳梗塞が多いとされてきたが,深部,脳幹部のラクナ梗塞も少なくない.糖尿病は脳卒中後の生命ならびに機能予後を悪くする.長期的な再発率も高いようである.血糖値だけをコントロールしても脳梗塞を予防できない.並存する高血圧治療が重要である.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病大血管症:(2)糖尿病に合併した脳血管障害の治療の進め方

内山真一郎   東京女子医科大学附属脳神経センター神経内科 教授

要旨
 糖尿病は脳梗塞の重要な危険因子である.糖尿病患者の脳卒中予防は血糖の管理のみでは達成できず,高血圧,高脂血症,喫煙などの管理が同時に必要である.糖尿病患者の脳梗塞急性期治療には高血糖や低血糖の管理,高浸透圧性非ケトン性昏睡の発症,造影剤使用の注意など,特別な配慮が必要となる.脳梗塞の再発予防には危険因子の厳格な管理と抗血栓療法が必要であり,非心原性脳梗塞には抗血小板薬,心原性脳塞栓症にはワルファリンの適応がある.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病大血管症:(3)糖尿病に合併した虚血性心疾患の成因と特徴

葛西 隆敏  順天堂大学医学部循環器内科
代田 浩之 
 順天堂大学医学部循環器内科 教授

要旨
 糖尿病における虚血性心疾患の成因としては,高血糖がもたらす動脈硬化によるものだけでなく,他の冠危険因子の影響も重要な位置を占める.また,その特徴として,疫学的には予後が不良であること,臨床像としては無症候性心筋虚血が多いこと,冠硬化病変の特徴としてはびまん性病変,多枝病変,末梢性病変,石灰化病変が多いことが挙げられ,これらの特徴を踏まえた診断,治療のアプローチが必要とされる.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病大血管症:(4)糖尿病に合併した虚血性疾患の治療の進め方-PCIかCABGか-

百村 伸一  虎の門病院循環器センター内科 部長

要旨
 糖尿病に合併する虚血性心疾患の予後は不良である.その血行再建の方法についてステント登場以前に冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)を比較する臨床試験が行われ,その結果,多枝疾患ならばCABGが良いとされてきた.ただし,ステントの普及によってPCI後の再狭窄が減少し,PCIとCABGのイベント発生率の差は以前ほどではなくなってきた.薬剤溶出ステントの普及により今後さらに両者の差が狭まる可能性がある.

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第3章 糖尿病合併症の診断・管理・治療
糖尿病大血管症:(5)糖尿病壊疽の診断と治療の実際

新城 孝道  東京女子医科大学糖尿病センター第三内科 講師

要旨
 糖尿病壊疽は四肢,皮膚,陰部その他の部位に発生する.糖尿病の血糖管理,水・電解質異常の補正や感染症の治療が重要である.病変部のデブリドメントや消毒を行い,創傷治癒促進を図る.危険因子を複数有する例は保存的治療での回復は望めず,足切断に至る例が多い.血流障害に対して各種のangioplasty,血行再建術や再生医療を検討する必要がある.治療はガイドラインを参考とし診療各科との連携治療が必要である.

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第4章 糖尿病合併症のガイドライン
糖尿病細小血管症の治療のEBMとガイドライン

水谷 正一  小沢眼科内科病院 副院長
山田 信博  筑波大学大学院人間総合科学研究科代謝内分泌・糖尿病内科 教授

要旨
 糖尿病細小血管症におけるエビデンスとしては,ランダム化比較試験として行われた米国のDCCT,英国のUKPDS,我が国のKumamoto Studyの評価が高い.いずれも厳格な血糖コントロールが細小血管症の発症・進展阻止に有効であることを示している.これらのエビデンスをもとに,『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン』が日本糖尿病学会の編集により刊行されており,多くの内科臨床医による日常診療への利用が期待される.

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第4章 糖尿病合併症のガイドライン
糖尿病大血管症のための糖尿病診療ガイドライン

野田 光彦   虎の門病院内分泌代謝科 部長

要旨
 糖尿病は動脈硬化の促進因子であり,したがって,糖尿病の診療を網膜症など細小血管合併症抑制の視点で行うと同時に,動脈硬化症(大血管合併症)抑制の観点からもこれにあたることが重要である.本稿では,糖尿病による動脈硬化促進とその意義について,また,この視点から糖尿病の診療を行うに際してのガイドラインの成り立ちと役割,およびガイドラインの実際について述べる.

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第5章 糖尿病合併症のトピックス
食後高血糖と糖尿病合併症

野出 孝一  佐賀大学医学部循環器・腎臓内科 教授

要旨
 糖尿病診療において重要なことは合併症の防止である.血糖のコントロールを行うことで網膜症,腎症などの細小血管症はある程度予防できるが,虚血性心疾患,脳血管障害を含んだ大血管症の予防は困難である.近年,大血管症の発症には,空腹時血糖値よりも食後高血糖値がより多く関与していることが,疫学的な調査により明らかにされた.糖尿病発症前の,食後のみ高血糖を示す時期から大血管症は始まっており,これを予防しようとするならば,食後高血糖のみられる段階で,それが糖尿病に進展していくのを防止するのと同時に,大血管症を防止する企てを行う必要がある.

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第5章 糖尿病合併症のトピックス
酸化ストレスと糖尿病合併症

西川 武志   熊本大学大学院医学薬学研究部代謝内科学
田口 哲也   熊本大学大学院医学薬学研究部代謝内科学
荒木 栄一   熊本大学大学院医学薬学研究部代謝内科学 教授
要旨

 酸化ストレスの亢進が糖尿病モデル動物や糖尿病患者で認められることや合併症の進展に関与していることを示唆する多数の知見が報告されている.  本稿では,高血糖による酸化ストレス増加の成因である①プロテインキナーゼC活性化,②糖化タンパク産生過剰,③グルタチオンサイクル障害,④ミトコンドリア由来活性酸素産生を概説し,さらに酸化ストレス増加と合併症の関連,酸化ストレス制御による合併症治療の可能性について述べる.

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第5章 糖尿病合併症のトピックス
アディポネクチンと糖尿病合併症

山内 敏正  東京大学大学院医学系研究科統合的分子代謝疾患科学講座 客員助教授
門脇  孝   東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 教授
要旨

 肥満ではアディポネクチンが低下し,糖尿病・メタボリックシンドロームの原因となっており,その補充がAMPキナーゼ(AMPK)や PPARαを活性化し,効果的な治療手段となることを示した.また,アディポネクチンは,抗炎症作用などにより,動脈硬化巣の形成を抑制することを示した.さらに肥満では,我々が同定したアディポネクチン受容体(AdipoR)1とR2の発現も低下しており,アディポネクチン抵抗性が存在することを示した.AdipoR発現増加剤および作動薬の開発は,糖尿病・大血管症の根本的な治療法開発の道を切り開くものと期待される.

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第5章 糖尿病合併症のトピックス
糖尿病合併症の遺伝素因

前田 士郎  理化学研究所遺伝子多型研究センター糖尿病性腎症関連遺伝子研究チーム
          チームリーダー


要旨
 腎症を始めとした糖尿病合併症の発症進展には遺伝素因の関与が想定されている.現在までに候補遺伝子解析,全ゲノムスキャンによる遺伝因子同定が試みられているが,いまだ多くの遺伝因子は不明である.一方,ヒトゲノム配列の全容が明らかとなり,一塩基多型(SNP)を用いたゲノムワイドなアプローチが注目されている.今後このような網羅的解析により糖尿病合併症の遺伝素因解明がなされ新たな治療法,予防法開発に結びつくことが期待される.

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第5章 糖尿病合併症のトピックス
糖尿病合併症の遺伝子治療

沼口  靖  名古屋大学医学部プロテアーゼ臨床応用学 助教授
室原 豊明  名古屋大学大学院医学系研究科器官制御内科 教授

要旨
 
糖尿病合併症には網膜障害,神経障害,腎障害の三大合併症以外に全身の動脈硬化症があり,生活レベルや生命予後の規定因子となっている.既存の多くの治療法が治療抵抗性を示すことが多い中,新規治療法として遺伝子治療が開発中である.導入される遺伝子として血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や肝細胞増殖因子(HGF)などがあり,血流改善・潰瘍治癒など効果を上げている.今後,最適遺伝子や遺伝子導入方法・時期の決定など課題が残る.

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