要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 36/血液4
急性白血病



第1章 概念・分類と疫学
概念と分類

宮崎 泰司    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
                          附属原爆後障害医療研究施設原研内科 講師
朝長 万左男   長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
                          附属原爆後障害医療研究施設原研内科 教授

要旨
 急性白血病の分類は細胞形態・細胞化学を用いたFrench-American-British(FAB)分類によって世界的に統一されたものとなった.2001年のWHO分類ではFAB分類以降の細胞表面マーカー・分子生物学的解析の研究成果を取り込み,造血器腫瘍を総括する分類の一部として急性白血病分類が位置づけられている.今後,遺伝子解析の進歩により詳細な疾患単位が確立されていくと思われる.

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第1章 概念・分類と疫学
疫 学

松尾恵太郎  愛知県がんセンター研究所疫学予防部

要旨
 地域がん登録ならびに将来推計データによると白血病の年齢調整罹患率は,2020年にかけて緩やかな減少を示している.しかしながら,日本人人口の高齢化により,罹患者数は2020年までに約1.5倍まで膨れあがると推定されている.増大する高齢者白血病患者に対する治療研究のみならず,危険因子の同定を含めた予防研究も将来に向けて検討する時代に入ったと考えられる.

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第2章 病 因
染色体異常

佐藤 裕子   国立国際医療センター研究所臨床病理部超微細構造研究室 室長

要旨
急性骨髄性白血病では t(8;21)・inv(16)・t(15;17)・11q23 転座・t(6;9)・3q21q26 変異の6型,急性リンパ性白血病では t(9;22)・11q23 転座・t(8;14)・t(1;19)・t(12;21)・低2倍性 ALL・高2倍性ALLの7型の染色体異常についてFISHのデータも交えて概説した.また,正常核型の意味や最近注目されている慢性骨髄性白血病der(9) 欠失についても述べた.



第2章 病 因
病 因

清井  仁  名古屋大学医学部附属病院難治感染症部

要旨
 急性白血病は,その病態は極めて多様であるが,すべて血液細胞の増殖と分化に関係する一連の分子をコードする遺伝子群の異常に病因を求めることができる.重要な点は,細胞の増殖と生存に対して促進的に作用する遺伝子変異(ClassT遺伝子変異)と,細胞の分化阻害や自己複製に関与する遺伝子変異(ClassU遺伝子変異)を共に獲得することが急性白血病の発症において必要なことである.したがって,急性白血病の病因としての遺伝子異常を論じる際には個々の遺伝子異常のみならず,ClassT遺伝子変異と ClassU遺伝子変異の両者が協調的に関与していることを常に念頭に置くことが重要である.

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第3章 診 断
診断,検査所見,鑑別診断

竹下 明裕   浜松医科大学医学部臨床検査医学 助教授

要旨
 急性白血病のWHO分類は,形態学的な診断を中心としたFAB分類に細胞遺伝学的,予後的要素を加えた新しい分類方法である.染色体・遺伝子の情報が明らかな亜分類は白血病の新しい分子標的療法を評価していくうえでも重要である.WHO分類が汎用されるためには分子血液学的な診断手法と個別治療のさらなる発展が不可欠である.



第3章 診 断
一般病院内科医や開業医が初期の白血病を見逃さないためのポイント

松田  信  太田西ノ内病院血液疾患センター 副院長

要旨
 急性白血病を見逃さないためのポイントは,貧血症状,感染症状,出血症状などがそろっていなくても,通常の貧血や感染症とはどこか違うと感じたときは,白血病を疑うことである.末梢血液像を含む血液一般検査を行い,正球性貧血に白血球増多または減少,血小板減少などが1つ以上伴っていたら要注意である.また,血液像で芽球が1個でも出現していれば,白血病や白血病類似疾患を考えて血液専門医へ患者を紹介することが大切である.



第4章 管理・治療
急性白血病に使用される薬物

山内 高弘   福井大学医学部第一内科
上田 孝典   福井大学医学部第一内科 教授

要旨
 急性白血病は骨髄性とリンパ性に2大別され,使用薬剤がやや異なる.急性骨髄性白血病治療におけるKey drugはヌクレオシドアナログであるシタラビンとアンソラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質であるダウノルビシン,イダルビシンである.急性リンパ性白血病では抗腫瘍性抗生物質に加え,副腎皮質ステロイド,アルカロイド系抗がん剤ビンクリスチン,アルキル化薬シクロフォスファミド,葉酸代謝拮抗薬メソトレキセート,酵素阻害薬アスパラギナーゼが用いられる.また,抗腫瘍薬結合抗CD33抗体がCD33陽性白血病に,ビタミンA誘導体やヒ素が急性前骨髄性白血病に使用される.



第4章 管理・治療
急性骨髄性白血病の薬物療法

大竹 茂樹   金沢大学大学院医学系研究科病態検査学 教授

要旨
 急性骨髄性白血病は標準的な寛解導入療法により80%前後の完全寛解率が得られる.寛解後療法として化学療法のみならず,さまざまな方式の造血幹細胞移植療法を予後因子に基づいて適切に組み合わせることが治療戦略の基本である.難治例の治療成績は,寛解期間の長短によって左右される.さまざまなsalvage療法が工夫されているが,再寛解後早期に造血幹細胞移植を実施することが重要である.



第4章 管理・治療
急性前骨髄球性白血病の薬物療法

河北 敏郎   熊本大学医学部血液内科
麻生 範雄   熊本大学医学部血液内科 助教授

要旨
 急性前骨髄球性白血病の治療成績は全トランス型レチノイン酸(ATRA)により飛躍的に改善した.病初期の出血を予防すれば,化学療法との併用によりほぼ全例に寛解が得られ,約70%に治癒が得られる.最近新たに承認された亜ヒ酸,タミバロテン(Am80)およびゲムツズマブオゾガマイシン(GO)はATRA抵抗例に対しても有効で,再発・難治例に対する治療選択肢が広がった.今後,未治療例に対する新たな治療戦略の構築,さらなる予後の改善が期待される.



第4章 管理・治療
成人急性リンパ性白血病の薬物療法

陣内 逸郎    埼玉医科大学血液内科 教授

要旨
 成人急性リンパ性白血病(ALL)の長期生存率は30〜40%で,満足できる治療法はいまだ確立されていない.フィラデルフィア染色体(Ph)陽性ALLの治療はイマチニブの開発により大きく変わろうとしている.一方,Ph陰性ALLでは,寛解導入でのアントラサイクリン系薬剤の増量や地固め療法でのシトシンアラビノサイド(Ara-C)やメトトレキサート(MTX)の大量療法の意義が検討されている.また,思春期・若年成人患者では小児プロトコールによる治療も試みられている.



第4章 管理・治療
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の治療

柳田 正光   名古屋大学医学部血液内科
  
要旨
 フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病は通常の化学療法では治癒が見込めない難治性造血器腫瘍であり,新規治療法の開発が必要とされてきた.分子標的薬イマチニブは本疾患に対して単剤では効果が不十分であるものの,化学療法と併用することにより極めて高い有効性が示され,本疾患の標準的治療となっていくものと考えられる.至適レジメンや同種造血幹細胞移植の位置づけを明らかにしていくことが今後の課題である.

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第4章 管理・治療
高齢者急性白血病の治療

脇田 充史  名古屋市立東市民病院血液内科 部長

要旨
 我が国は近い将来に総人口の減少と高齢化が加速され,これに伴い高齢者白血病はますます増加すると考えられる.しかし,高齢者急性白血病に対する治癒を目指した標準療法はいまだ確立しておらず,治療成績は悪いのが現状である.これまでの欧米や我が国からの報告では50〜60歳代以上が高齢者として扱われており,その寛解率はおよそ50%で,早期死亡は10〜20%あり,長期生存は10%前後である.我々が日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)において65歳以上を対象として行ったGML200試験では,約60%の高い完全寛解率が得られたが長期生存は10%以下であった.高齢者急性白血病の治療成績向上のためには,強力な寛解導入が可能な症例を正しく層別化し,強力治療群には顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の有効な投与法などの好中球減少期の感染症を回避する方法の確立が必要である.さらに,非定型性白血病や二次性白血病などの予後不良群については,治療の標的となる新しい分子の同定による新規治療薬の開発や治療効果をモニタリング可能なマーカーを指標として患者のQOL向上を目指した治療法の選択が可能になることが望まれる.

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第4章 管理・治療
急性骨髄性白血病の造血幹細胞移植療法

坂巻  壽   東京都立駒込病院血液内科 部長

要旨
 現在移植に用いる造血幹細胞のソースとして,骨髄・末梢血・臍帯血があり,さらに自家・血縁・血縁ミスマッチ・非血縁のドナーがあり,通常の前処置・ミニ移植など移植法のバリエーションも豊富である.急性骨髄性白血病(AML)は予後の良いタイプから極めて予後不良なタイプまで含むheterogenousな疾患群であり,診断当初より造血幹細胞移植も念頭に置いた治療計画を立てる必要がある.

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第4章 管理・治療
成人急性リンパ性白血病の造血幹細胞移植療法

庄野 雄介   特定医療法人北楡会札幌北楡病院血液内科
笠井 正晴   特定医療法人北楡会札幌北楡病院血液内科 副院長

要旨
 成人急性リンパ性白血病(成人 ALL)は多剤併用化学療法により高い寛解率が得られるが,長期生存例は20〜30%程度にとどまる.成人ALLに施行しうる最強の治療法は同種造血幹細胞移植療法であり,化学療法のみでは治癒が期待しにくい疾患の特性を考えると移植療法が寛解後療法として有用である.フィラデルフィア(Ph)陽性ALLを含む高リスク群の第1寛解期や,第2以降の寛解期では同種移植は絶対適応となる.

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第4章 管理・治療
中枢神経白血病・髄外白血病

竹内  仁  日本大学医学部附属板橋病院血液・膠原病内科 科長

要旨
 中枢神経白血病は,急性リンパ性白血病(ALL)で多く認められ,その予防は不可欠で,化学療法剤の髄注が一般的である.成人 ALL の中枢神経系再発の危険因子は,FAB分類の L3,T細胞性急性リンパ性白血病,白血球数著増,白血病細胞の急激な増加,乳酸デヒドロゲナーゼ高値などであり,これらハイリスク症例には全脳照射を併用することもある.髄外白血病は,急性骨髄性白血病(AML)で多く認められ,通常のAMLと同様に化学療法で治療するのが一般的である.

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第4章 管理・治療
急性白血病治療時の感染症対策

吉田  稔   帝京大学医学部附属溝口病院第四内科 助教授

要旨
 急性白血病では好中球減少があり,敗血症や肺炎などの合併が多い.感染予防ではニューキノロン薬やフルコナゾールなどが経口投与される.発熱性好中球減少症に対しては広域抗菌薬の経験的治療を行う.これに不応性の場合は抗真菌薬の経験的治療を行う.これらに対する我が国のガイドラインが発表されている.最近は特に新規抗真菌薬の開発が活発であり,従来難治性であった深在性真菌症の予後の改善が期待される.

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第4章 管理・治療
急性白血病治療時の顆粒球コロニー刺激因子の使い方

矢野 真吾   東京慈恵会医科大学血液・腫瘍内科
薄井 紀子   東京慈恵会医科大学血液・腫瘍内科 助教授

要旨
 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は,好中球の分化増殖を特異的に促進し,末梢血に造血幹細胞を動員し,抗がん剤への感受性を増強する作用を有しており,急性白血病の治療における役割は重要である.G-CSFの主たる効果は,化学療法や造血幹細胞移植時に合併する好中球減少の期間を短縮し,重篤な感染症の発症頻度を減じて,入院期間と抗生物質の使用頻度を減少させることである.G-CSFはガイドラインに従って適正に使用することが重要である.

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第4章 管理・治療
急性白血病治療時の出血対策

柳田 正光   名古屋大学医学部血液内科
松下  正    名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学 講師

要旨
 白血病治療における出血傾向対策として,血小板輸血が頻繁に行われるが,その前に,血栓性微小血管障害症(TMA),へパリン起因性血小板減少症(HIT)など播種性血管内凝固症候群(DIC)と同様に血小板減少が顕著でありながら,場合によっては症状を悪化させるため禁忌とされている疾患を除外する必要があり,これらの疾患の見極めが必要である.今般『輸血療法の実施に関する指針』の一部改訂が行われ,輸血前後の感染症マーカー検査の必要性が盛り込まれた.今後,医療機関は患者に対して輸血前後の感染症検査を行うことができるよう,検体保存を行うことが望ましいとされ,白血病治療中など,頻回受血者の注意深いフォローアップが望まれる.一方,出血対策ではDICの存在を念頭に置き診断基準を有効に使ったマネジメントが必要である.JALSG APL症例における重篤な出血症例の解析により,死亡の危険因子として厚生労働省診断基準によるDICスコアの有意性が明らかとなった.なお,厚生労働省の診断基準においては,いわゆる注1の規定「白血病(中略)などの場合は血小板数および出血症状の項は0点とし4点を満たしたものをDICと判定する」が忘れられがちであり,注意して正確な診断にあたりたい.

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第4章 管理・治療
成人T細胞性白血病

有馬 直道   鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
            附属難治ウイルス病態制御研究センター感染宿主応答研究分野 教授

要旨
 成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞向性ウイルス(HTLV-1)感染に起因するT細胞の腫瘍性疾患である.  ATLの臨床病態は極めて多彩であり,くすぶり型,慢性型,リンパ腫型そして急性型に分類され,病型に応じた治療が行われる.特に予後不良型であるリンパ腫型と急性型に対しては,強力な多剤併用化学療法や同種造血幹細胞移植療法が行われているが,成績は他の造血器腫瘍と比べ著しく不良であり,抗体療法や免疫療法など新規治療法の開発が急務となっている.

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第4章 管理・治療
NK細胞白血病

押味 和夫   順天堂大学医学部血液内科 教授

要旨
 WHO分類のアグレッシブNK細胞白血病(aggressive NK-cell leukemia)とほぼ同じ意味で用いられる.女性にやや多く,年齢の中央値は42歳.発熱,肝脾腫,リンパ節腫脹で発症する.細胞形態は有顆粒大リンパ球(large granular lymphocytes:LGL)だが核小体を認める.表面マーカーはCD56CD2CD3CD4でCD7とCD16も陽性のことが多い.急速に進行し2ヵ月で死亡する.良い治療法はいまだ見いだされていない.

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第4章 管理・治療
形質細胞性白血病

澤村 守夫   国立病院機構西群馬病院内科(血液)
村上 博和   群馬大学医学部保健学科 教授

要旨
 形質細胞性白血病は,多発性骨髄腫の1亜型であり,まれな疾患である.発症時より白血病の病像を呈する原発性と,多発性骨髄腫の経過中に白血化した二次性に分類される.形質細胞性白血病の予後は極めて不良である.治療として多剤併用療法,特にVAD療法が推奨されている.化学療法を受けた多発性骨髄腫の生存期間中央値は約3年であるが,形質細胞性白血病のそれは7〜8ヵ月と明らかに短い.自家末梢血幹細胞移植や新規薬剤thalidomide,bortezomib,lenalidomideの効果が期待されている.

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第4章 管理・治療
急性白血病の治療効果の判定方法

稲本 賢弘   名古屋第一赤十字病院血液内科
宮村 耕一   名古屋第一赤十字病院血液内科 部長

要旨
 白血病の治療効果判定は顕微鏡による観察にて行ってきた.通常,寛解とは残存白血病細胞が5% 以下となった状態を指すが,感度は10−2にとどまる.近年FISH法,FCM法,RQ-PCR法が開発され10−3〜10−6もの感度でMRDを検出することが可能となり,治療方針の決定に役立つようになった.しかし,MRDは十分なエビデンスに基づいて解釈する必要があり,全ての検査法が保険適応を受けることが望まれる.

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第5章 治療ガイドライン
ガイドライン

塚崎 邦弘   長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
                           附属原爆後障害医療研究施設原研内科 助教授

要旨
 急性白血病を含む造血器腫瘍は,抗がん剤,放射線,造血幹細胞移植などによる治療法に高感受性の悪性腫瘍であるが,本腫瘍に対する集学的治療法の大多数には薬物療法が組み込まれている.近年,造血器腫瘍については新WHO分類などによる疾患単位ごとに治療法の臨床研究がなされ,エビデンスが蓄積されつつある.本稿では,2004年までの文献を検索して昨年作成された造血器腫瘍に対する抗がん剤適正使用ガイドラインのうち急性白血病について概説する.

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