要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 37/代謝4
高尿酸血症・痛風



第1章 概念・定義と疫学
概念・定義と歴史

赤岡 家雄    千代田朋仁クリニック 院長

要旨
 日本人の痛風と関係が深いのは,ストレスおよび食事内容である.約 50 年の近日本の痛風の歴史がそれを示している.遺伝も無視できない.今後の治療方針の確立が待たれる.

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第1章 概念・定義と疫学
疫 学

箱田 雅之  安田女子大学家政学部管理栄養学科 教授

要旨
 男性における高尿酸血症の頻度は20%以上,痛風は約1% と考えられる.高尿酸血症の頻度は経年的に上昇傾向であったが,最近の検診結果からは減少傾向の可能性が示唆されている.しかし,これは高尿酸血症自体が減少したのではなく,尿酸降下薬の使用が増加したためと考えられる.実際に若年男性では高尿酸血症が増加していることが示唆されており,中年男性では肥満が増加している.高尿酸血症は痛風のみならず心血管リスクと関連する可能性もあり,重要な健康問題である.

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第2章 病因と病態生理
高尿酸血症の病因と病態(産生過剰型を中心に)

森谷 眞紀   徳島大学ゲノム機能研究センター遺伝情報分野
片島 るみ   アプライドバイオシステムズジャパン(株)サイエンスセンター
板倉 光夫   徳島大学ゲノム機能研究センター遺伝情報分野 教授

要旨
 プリン体(プリンヌクレオチド)は,RNA,DNAの構成単位であり,細胞機能に不可欠な成分である.プリン体はde novo経路とsalvage経路によって合成される.一方,ヒトでは,分解・異化されて最終的に尿酸となる.尿酸の産生が亢進して生じる高尿酸血症を産生過剰型といい,その成因には諸因子が関与する.産生過剰型高尿酸血症は,遺伝的背景に基づいて発症する原発性(一次性)高尿酸血症と,他の疾患や薬物などによって発症する続発性(二次性)高尿酸血症とに分類される.高尿酸血症はその患者数が非常に多く,これらの疾患がどのような機序で関連しているのかを解明することが,重要な課題である.



第2章 病因と病態生理
高尿酸血症の原因(尿酸排泄低下)

中村  徹  福井大学 名誉教授

要旨
 高尿酸血症は尿酸代謝における尿酸の排泄低下または産性過剰により生ずるが,前者が全痛風症例の85%に認められ,主要要因と考えられる.排泄低下の存在は尿酸クリアランス値の低下により証明され,尿細管における尿酸の分泌低下または再吸収亢進により生ずるが,特に分泌低下が高度である症例が高率であると推測される.最近,尿細管上皮に数種の尿酸トランスポーターの存在が推測されるようになり,特に尿酸の再吸収に関与するURAT1の作用が強力で,ベンズブロマロンやプロベネシドはこれを抑制することにより尿酸排泄を増加すると考えられている.産生過剰の診断には尿酸の産生量の増加を証明するべきであるが手技が複雑であるため尿中尿酸排泄量から産生量を推測する方法を考案した.排泄低下型と産生過剰型とは尿酸代謝動態には明瞭な差異のあることを解説した.さらに,排泄低下による二次性高尿酸血症の原因疾患に言及し,それらの血清尿酸値の臨床的意義について述べた.

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第2章 病因と病態生理
痛風性関節炎の臨床像と病態機序

赤星  透   北里大学医学部総合診療医学 教授

要旨
 痛風性関節炎は障害関節の顕著な発赤,腫脹,疼痛などを呈する急性の尿酸塩結晶誘発性関節炎である.痛風性関節炎の病態形成には,尿酸塩結晶の組織沈着と関節腔内への脱落,貪食細胞による尿酸塩結晶の認識,好中球の浸潤・活性化による急性炎症の発現,急性炎症の収束機転,そして慢性炎症による骨破壊などのプロセスが関与している.



第2章 病因と病態生理
痛風の合併症の臨床像と病態(痛風結節,尿路結石,腎不全)

森脇 優司  兵庫医科大学内科内分泌・代謝科 助教授

要旨
 痛風結節は血流の乏しい部位にみられる.内容物は白色のペースト状で,鏡検すると尿酸塩の針状結晶が認められる.痛風患者は尿路結石を高率に合併し,尿pH低下が大きく関与している.そのため,尿をアルカリ化すると良い.早期にみられる腎機能異常として尿濃縮能の低下がある.高血圧や糖尿病などの合併症を伴った痛風では種々の腎機能低下がみられるが,血清尿酸値をコントロールすることにより,腎機能の改善が望まれる.



第2章 病因と病態生理
メタボリックシンドロームにおける高尿酸血症の新しい意義とその理解

中島  弘   大阪府立成人病センター臨床検査科 部長

要旨
 内臓脂肪蓄積の結果生じる各種の代謝障害を伴う生活習慣病の集積状態は,メタボリックシンドロームとして注目される.高尿酸血症の合併が多く,それは内臓脂肪蓄積による代謝的な帰結であると考えられる.生活習慣の変化によって生じた高尿酸血症は,痛風発作の前段階としてでなく,栄養学的に注目すべき代謝障害として生活習慣改善の対象にする必要がある.このため,血清尿酸値は内臓脂肪蓄積量の良いバイオマーカーと理解し,生活習慣改善による尿酸値の管理を重視することが望まれる.



第3章 診 断
診断のポイント

笹田 昌孝   京都大学医学部保健学科 教授

要旨
 痛風・高尿酸血症は近年著増し,いまだ増加の傾向にある.したがって,患者さんにする適切な対策と治療のため,速やかかつ的確な診断を行うポイントを広く理解されることが必要である.
 痛風・高尿酸血症を持つ患者さんはしばしば高血圧,糖尿病,高脂血症など,いわゆる生活習慣病を合併することが多い.この背景には食生活を含む生活環境があると考えられる.したがって,診断にあたっては患者さんの全体像を把握することに努めることも重要である.



第3章 診 断
検査所見

上田 孝典   福井大学医学部病態制御医学講座内科学(1)教授

要旨
 痛風の基本的所見である高尿酸血症は,血清尿酸値が7.0mg/dlを超えるものと定義される.治療法・治療薬の選択には,その病型分類が重要である.病型は,尿酸排泄低下型,尿酸産生過剰型,混合型に大別される.3者の鑑別は尿酸クリアランス(CUA)および尿中尿酸排泄量(EUA)の値により行う.CUA<6.2ml/分のときを尿酸排泄低下型,EUA>0.51mg/kg/時のときを尿酸産生過剰型,両者共に認めるときを混合型とする.治療中に排泄低下型から混合型への移行を中心に,病型の変化が起ることがあるので,注意する.



第3章 診 断
画像診断

大野 岩男    東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科 助教授
要旨
 初期の痛風関節炎では単純X線検査において軟部組織の腫脹以外には骨関節にほとんど所見を認めないことから,痛風患者において画像診断が重要になるのは,痛風結節や痛風の合併症が問題になる急性間欠性痛風期の後半から慢性結節性痛風期となることが多い.痛風患者における画像診断は,主に痛風関節炎の診断,痛風結節の診断,痛風・高尿酸血症の合併症である尿路結石症,痛風腎の診断に用いられる.



第3章 診 断
鑑別診断

嶺尾 郁夫   泉大津市立病院内科 副院長
  
要旨
 痛風の代表的な病態が痛風発作と痛風結節にあることから,下肢に疼痛を来す疾患,急性関節炎を来す疾患,関節に変形を来す疾患が鑑別対象となる.一般に,関節炎の性状,臨床経過,血清尿酸値から鑑別は容易だが,無症候性高尿酸血症や女性痛風で紛らわしい場合がある.痛風同様に結晶誘発性関節炎である偽痛風は,関節炎症状が痛風に酷似するが,関節液中にピロリン酸カルシウム結晶を同定すれば診断を確定できる.

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第4章 管理・治療
生活指導

山本 徹也  兵庫医科大学内科内分泌・代謝科 教授

要旨
 高尿酸血症・痛風は遺伝要因と環境要因の組み合わせで発症する疾患であるが,戦後の生活習慣の変化により環境要因が重要性を増している.そのため食事指導,運動指導,ストレスの軽減を含めた生活指導が高尿酸血症・痛風の治療において非常に重要な治療法となっている.

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第4章 管理・治療
痛風関節炎の薬物治療方針

長瀬 満夫   長瀬クリニック 院長

要旨
 急性痛風関節炎に対して,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)および副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)が有効であるとのエビデンスは蓄積されてきている.急性痛風関節炎が治まってから,尿酸降下薬を開始する.痛風関節炎予防期には,関節炎発作の前兆がある患者にはコルヒチンを処方する.再発に不安を持っていたらNSAIDsの携帯を勧める.慢性痛風関節炎に対してはNSAIDsとステロイド薬の併用を考慮する.慢性痛風関節炎に対する薬物治療の選択肢は,近い将来増大することが期待できる.

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第4章 管理・治療
高尿酸血症の治療薬の選択
−尿酸コントロール薬と尿酸が下がる薬剤の特徴とその使用法−

久留 一郎   鳥取大学大学院医学系研究科機能再生医科学専攻
                     遺伝子再生医療学講座再生医療学分野 教授

要旨
 高尿酸血症は病型別薬剤選択を行い,排泄低下型には排泄促進薬を,産生過剰型には産生阻害薬を用いることで安全に血清尿酸値をコントロールできる.その尿酸コントロール開始基準は,生活習慣病などの合併症がない場合は9mg/dl以上から,合併症がある場合は8mg/dl以上から治療を開始し6mg/dl以下を目指す.生活習慣病が合併している場合は尿酸値が下がる薬剤を用いて原疾患の治療と血清尿酸値 0.7mg/dlの低下を期待し,その後に尿酸コントロール薬を併用する.

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第4章 管理・治療
高尿酸血症・痛風患者の尿路管理

清水  徹  医療法人祐生会みどりヶ丘病院 副院長

要旨
 痛風・高尿酸血症には腎結石や腎機能障害が合併する.原因は血清尿酸値の上昇にもあるが,尿中尿酸濃度が飽和点を超えて腎で析出することも一因である.進行の防止には尿酸を腎臓から円滑に排泄させるための配慮,すなわち「尿路管理」が必要になる.臨床的には,尿酸溶解度のpH依存性に基づいて@尿アルカリ化(pH6〜7)を図り,尿中尿酸濃度を低下させるためにA水分摂取の奨励や,B尿酸排泄量を減らす努力を要する.

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第4章 管理・治療
腎機能障害を伴う高尿酸血症・痛風患者の治療方針

上竹 大二郎   東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科
細谷 龍男    東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科 教授

要旨
 高尿酸血症により腎障害を来し,腎機能低下は高尿酸血症の原因となる.高尿酸血症・痛風による腎障害は,尿酸塩の腎組織への沈着に加え,合併する高血圧などにより修飾される.高尿酸血症による腎障害は,高尿酸血症の治療により発症,進展を抑制できる.尿酸生成抑制薬であるアロプリノールが治療の中心となるが,腎機能低下に伴い用量の調節が必要である.同時に尿路管理を行うことが重要である.中等度までの腎障害例ではアロプリノールと少量のベンズブロマロン併用も有効である.

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第4章 管理・治療
合併症の予防と治療

松本美富士  藤田保健衛生大学七栗サナトリウム内科 教授

要旨
 痛風は古典的な高尿酸血症を基礎病態とする代謝性疾患ではなく,生活習慣のひずみによる内臓脂肪蓄積を最上流の病態として,メタボリックシンドローム,睡眠時無呼吸症候群および高尿酸血症の3つの病態が密接に連鎖しながら発現し,最終的に心血管イベントを高頻度に発症する全身疾患である.その医学的管理には個々の病態ではなく,内臓脂肪型肥満の是正のための医学的管理が重要である.

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第4章 管理・治療
経過・予後策

浦野 和子   都立大塚病院リウマチ膠原病科

要旨
 痛風は高尿酸血症をもとに,その経過中に,急性関節炎・関節炎の再燃・腎障害を引き起し,さらに動脈硬化性疾患への進展の危険因子となりうる.これらの進展を予防するための治療目標となる血清尿酸値は,生物学的知見に加え最近の疫学調査の結果,明らかになりつつあり,痛風性関節炎の再燃や腎障害の予防のために血清尿酸値は6mg/dl以下にコントロールすることが推奨される.

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第4章 管理・治療
新しい治療薬

鎌谷 直之   東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長

要旨
 新しい治療薬としてfebuxostat,ポリエチレングリコール(PEG)結合ウリカーゼが開発されている.Febuxostatはキサンチン酸化/脱水素酵素阻害薬であり,アロプリノールより作用が強い.肝臓により異化されることが主たる除去経路で,腎不全患者や排泄低下型など幅広い用途が期待される.ブタウリカーゼの遺伝子組み換えタンパク質をPEGに結合した製品が開発された.腫瘍崩壊症候群(急性尿酸性腎症)の治療などに有効であろう.

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第5章 ガイドライン
治療ガイドライン

山中  寿   東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 教授

要旨
 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第1版』は,日本痛風・核酸代謝学会の治療ガイドライン作成委員会が作成し,2002年8月に発行した.約2年間の作業の後に作成されたガイドラインは,エビデンスレベルにより推奨度が明示されたもので,日常臨床で広く使われた.第1版が発行されてから3年半が経過し,新たなエビデンスの追加や他のガイドラインとの整合性を目的として,改訂作業が開始される予定である.

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第6章 トピックス
高尿酸血症と心血管リスク

小田原雅人   東京医科大学内科学第三講座 主任教授

要旨
 高尿酸血症は肥満に伴うメタボリックシンドロームの1つの表現型であり,心血管リスクとの関連性が示唆されている.特に高血圧患者を対象とした試験では高尿酸血症のリスクについて肯定的なものが多い.高尿酸血症は腎機能障害を来し,腎障害はさらに心血管リスクを高める可能性がある.しかし,高尿酸血症そのものが心血管リスクを上昇させているのか,心血管疾患の単なるマーカーに過ぎないのかは最終的な結論は得られていない.

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第6章 トピックス
低尿酸血症とその原因,対策

市田 公美   東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科 講師

要旨
 無症状の低尿酸血症は,尿酸排泄亢進型では腎性低尿酸血症を,尿酸産生低下型ではキサンチン尿症を疑う.腎性低尿酸血症の多くは尿酸のトランスポーターであるURAT1の異常により,キサンチン尿症はキサンチンデヒドロゲナーゼまたはモリブデン補酵素硫化酵素の異常により起る.腎性低尿酸血症は,尿路結石や運動後急性腎不全の予防のため,飲水量を増加させ,過激な運動の制限を行う.キサンチン尿症では,飲水量を増やす.

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第6章 トピックス
ウロモジュリン遺伝子変異による腎性高尿酸血症

谷口 敦夫   東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 助教授

要旨
 ウロモジュリン遺伝子は家族性若年性高尿酸血症性腎症,髄質D胞腎と糸球体D胞腎症の一部の原因遺伝子である.遺伝子変異はシステイン残基を巻き込むことが多く,タンパクの3次構造の変化が病態と関連している.ウロモジュリンは太いヘンレ上行脚で水の透過性に関係している可能性があり,このことが高尿酸血症の発症と関連しているのではないかと考えられる.病態は徐々に明らかにされつつあるが,治療については今後の課題である.

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第6章 トピックス
尿酸は生理的抗酸化物質か

金子希代子   帝京大学薬学部物理化学講座薬品分析学教室 教授

要旨
 尿酸は生理的抗酸化物質か.その答えはyes.尿酸は化学的性質として,還元力すなわち抗酸化能を持っている.ヒトは進化の過程で尿酸酸化酵素であるウリカーゼを失い,プリン代謝の最終産物として尿酸を生成する.尿酸は水に溶けにくく腎臓からの排泄が限られるため,体内には飽和に近い濃度の尿酸が存在する.尿酸は,痛風・高尿酸血症との関連から悪玉的印象があるが,この尿酸が血漿の抗酸化能に寄与していることを内外の報告からまとめた.

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