要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 38/腎4
透析合併症
 改訂第2版


第1章 概 念
慢性腎不全における臓器相関

秋葉  隆   東京女子医科大学腎臓病総合医療センター血液浄化療法科 教授

要旨
 慢性腎不全患者では,腎不全の病態に加えて,多数の臓器障害が合併し複雑で重篤な病態を形作っている.例えば,腎不全に伴う慢性炎症が動脈硬化や悪液質の原因となり,さらに慢性炎症状態を増悪するという悪循環が存在する(MIA 症候群),また腎不全からリン(P)貯留,副甲状腺ホルモン(PTH)分泌亢進,骨からのP遊離,異所性石灰化,動脈硬化などの病態も知られている.これらの臓器相関の仕組みを解き明らかし,病態の根幹を明らかにすることで,治療の方針も確立していくものと期待される.

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第2章 予後・決定因子
透析患者の予後と決定因子

中井  滋  藤田保健衛生大学医療科学部臨床工学科 教授

要旨
 日本透析医学会統計(JSDT)調査資料に基づいた解析によって現在までに明らかにされた透析患者の主な死亡危険因子は,以下のようなものである:1.8 未満の標準化透析量(Kt/V),5時間未満の透析時間,高いβ2−ミクログロブリン(β2−MG)濃度,低いタンパク異化率,低い%クレアチニン産生速度,低い血清アルブミン濃度,血清総コレステロール濃度:180mg/dl 未満と 240mg/dl 以上,低い体格指数(BMI),低いヘマトクリット値,など.

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第3章 診断・管理・治療
糖尿病 1.慢性透析患者の糖尿病管理

馬場園哲也   東京女子医科大学糖尿病センター内科 講師
花井  豪    東京女子医科大学糖尿病センター内科

要旨
・腎不全環境では,インスリン抵抗性に伴う耐糖能障害があるにもかかわらず,容易に低血糖を起しやすい.
・透析導入後においても,高血糖は生命予後悪化の予測因子である.
・血糖コントロールの指標として,ヘモグロビン A1c(HbA1c)ではなく糖化アルブミン(GA)を用いる.
・経口血糖降下薬のうち最近上市されたジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害薬は,透析患者においても比較的安全に使用可能と思われるが,1型糖尿病患者に対しては禁忌である.

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第3章 診断・管理・治療
糖尿病 2.糖尿病透析患者の虚血肢の治療と予後

米川 元樹   社会医療法人北楡会札幌北楡病院外科 理事長
堀江  卓    社会医療法人北楡会札幌北楡病院外科 外科部長

要旨
 糖尿病を合併した透析例の末梢動脈疾患(PAD)の治療は,困難でその予後は不良である.新たな戦略として血管再生治療を行った.糖尿病合併透析例では,末梢神経障害のために無症候に虚血が進行する.そこで,早期発見のため予防のフットケアが重要となる.間欠性跛行(IC)例では,動脈の強度の石灰化により症状が増悪する場合があるが,再生治療とフットケアによりその進行をくい止めることができる.一方,慢性重症下肢虚血(CLI)例では壊疽が広がり,病態進行例に対する再生治療効果は限定的で,血行再建術の適応を検討すべきである.

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第3章 診断・管理・治療
腎性貧血 1.腎性貧血治療のターゲット決定のエビデンス

本田 浩一  昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門 講師
濱田 透眞  昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門
秋澤 忠男  昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門 教授

要旨
 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が臨床に広く普及し,貧血の管理は容易となった.一方,保存期腎不全および血液透析(HD)患者を対象とした大規模比較臨床試験では,ESA による過度の貧血補正[ヘモグロビン(Hb)値正常化]や高用量の ESA を用いた貧血管理が心血管疾患(CVD)発症のリスクや腎死抑制効果の減少に関係する可能性が示唆されている1〜4).本稿では,腎性貧血治療における貧血管理のエビデンスについて解説する.

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第3章 診断・管理・治療
腎性貧血 2.腎性貧血治療と鉄代謝

中西  健   兵庫医科大学内科学腎・透析科 主任教授
要旨
 多くの血液透析患者では,エリスロポエチン製剤の反応性を改善するために鉄剤が使用され,比較的血清フェリチン値が高く維持されている.鉄代謝調節の中心的ホルモンであるヘプシジンは,鉄の輸送担体の発現を抑制することにより,消化管での鉄吸収や網内系における傷んだ赤血球からの鉄の再利用を抑制する.ヘプシジン発現は鉄貯蔵と強い相関関係があり,鉄の過剰投与に伴うヘプシジンの上昇は鉄の囲い込みにより利用を妨げることになるので,注意が必要である.

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第3章 診断・管理・治療
腎性貧血 3.保存期腎性貧血治療

栗山  哲    東京都済生会中央病院腎臓内科 部長
大塚 泰史   東京都済生会中央病院腎臓内科 医長
小林 賛光   東京都済生会中央病院腎臓内科
吉澤 威勇   東京都済生会中央病院腎臓内科

要旨
 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療の目標ヘモグロビン(Hb)値に関してはいまだ議論のあるところだが,QOL 改善や左室肥大退縮,腎機能低下遅延化,あるいは透析導入遅延化を surrogate marker とした多くの臨床研究からは積極的な早期使用が推奨される.
 本邦の『慢性腎臓病患者における腎性貧血治療ガイドライン』において,ESA の開始基準は Hb 値 11g/dl 以下が,減量・中止基準としては Hb 値 13g/dl を超える場合とされており,世界レベルのガイドラインとしても妥当であろう.しかし,この推奨値をすべての患者で一律とせず,重篤な心血管系合併症のある患者や医学的に支障のある場合には,低めの目標値も考慮すべきである.

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第3章 診断・管理・治療
腎性骨症と異所性石灰化 1.二次性副甲状腺(上皮小体)機能亢進症の制御

金井 厳太   東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科
角田 隆俊   東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科 准教授
深川 雅史   東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科 教授

要旨
 腎性骨症は異所性石灰化による血管障害を惹起することで生命予後にかかわる重大な疾患であり,慢性腎臓病(CKD)におけるミネラル骨代謝異常(CKD−MBD)としての概念が確立された.二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)はその病態の中心に座するものであり,この制御は CKD−MBD の管理にとって極めて重要である.リン(P)吸着薬,ビタミンD,シナカルセトは SHPT 治療薬としてその制御を容易にしてきた.今日までの数々の研究は,これらの薬剤による血管石灰化へ新たな治療の可能性をも明らかにしつつある.

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第3章 診断・管理・治療
腎性骨症と異所性石灰化 2.維持透析患者における異所性石灰化とそのコントロール

田原 英樹   大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学 講師

要旨
 透析患者では若年者であっても血管石灰化を始めとする異所性石灰化が進行しており,その誘因として高リン(P)血症が注目されるようになった.その後 in vitro の実験系が確立され,血管石灰化の機序について飛躍的に明らかになってきた.その中で血清Pコントロールの重要性が再認識されるようになってきたが,カルシウム(Ca)非含有P吸着薬やシナカルセトの登場により,Pのコントロールのみならず石灰化予防の可能性も見えてきた.

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第3章 診断・管理・治療
血圧管理 1.我が国の慢性透析患者における予後決定因子としての高血圧

井関 邦敏     琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部 部長

要旨
 透析患者の死因の約半数を占める心血管障害の基本病態として,高血圧のコントロールは重要である.2002 年に発表された英国のガイドラインでは,透析前の血圧 140/90mmHg 以下,透析後 130/80mmHg を降圧目標としていたが,その後のガイドラインからは降圧目標値が削除されている.我が国のガイドラインでも,「目標値は心機能低下例などを除く安定した慢性維持透析患者で定められる値である」と注釈している.

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第3章 診断・管理・治療
血圧管理 2.透析患者の循環器合併症と高血圧,低血圧

田部井 薫   自治医科大学附属さいたま医療センター腎臓科 教授

要旨
 透析患者では,高血圧も透析中の血圧低下も予後不良要因である.高血圧は,体液量の適正な管理により 60% 以上の患者で血圧を正常化できる.降圧目標値は,週初めの透析前血圧で 140/90mmHg 未満である.透析間体重増加は,中1日でドライウエイト(DW)の3%,中2日では5% を限度とするように指導する.これ以上の体重増加がある場合でも,除水速度は 15ml/kg/時以下にすることが望まれる.最近急に透析中の血圧が低下するようになった症例では,心機能の評価を行い,循環器内科へのコンサルトを行うべきである.循環血液量の低下を伴わない血圧低下では,心機能低下,自律神経機能異常,酢酸不耐症,低血糖などを検討する.

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第3章 診断・管理・治療
心血管病変 1.慢性腎臓病における心血管病変発症

横山啓太郎  東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科 准教授

要旨
 慢性腎臓病(CKD)の血管石灰化の機序については,以下の6つが有力視されている.@血清リン(P)値あるいは血清カルシウム(Ca)値の上昇および Ca 過負荷によるミネラル代謝異常,A石灰化抑制因子の欠如,B石灰化促進因子の関与,C血管平滑筋細胞のアポトーシス,D血管平滑筋細胞の骨芽細胞様細胞への形質転換,Eエラスチンの変性・断片化である.この一連の反応は,ミネラル代謝異常に対する適応反応と考えられている.

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第3章 診断・管理・治療
心血管病変 2.維持透析患者の冠動脈疾患

長谷 弘記  東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科 教授

要旨
 維持透析患者に合併する虚血性心筋症は,冠動脈疾患(CAD)を中心として,左室肥大や大動脈硬度の亢進が複合して発症する.虚血性心疾患(IHD)の診断にあたって解剖学的冠動脈狭窄を評価するには冠動脈造影や冠動脈 CT が有用であり,機能的心筋虚血を評価するには運動負荷試験や薬物負荷心筋血流シンチグラフィーが有用である.治療の原則は積極的薬物介入療法であるが,急性冠症候群(ICS)を発症した場合には,躊躇することなくカテーテル治療を選択する.

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第3章 診断・管理・治療
脳・神経障害 1.意識障害・脳卒中

佐藤  滋   秋田大学医学部腎置換医療学講座 教授
要旨
 透析患者の脳・神経障害はさまざまの原因から生じ,多様な症状を呈する.特に意識障害は重篤な疾患に起因する可能性が高く,迅速な処置と診断が要求される.意識障害には清明度の低下と質的変化に大別され,清明度は Japan Coma Scale で程度判定する.疾患としては,脳梗塞,脳出血など,脳卒中の頻度が高い.ほかに意識障害が生ずる疾患,尿毒症性脳症,透析脳症,薬剤性脳症や食品摂取が原因と考えられる脳症についても解説した.

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第3章 診断・管理・治療
脳・神経障害 2.高齢化と認知機能障害

田中 元子    松下会あけぼのクリニック腎臓内科
高松 淳一    国立病院機構菊池病院神経科

要旨
 透析患者においては,アルミニウム(Al)の脳内蓄積による Al 脳症が“透析痴呆”として重視されてきた.しかし,1978 年,Al 脳症の報告以来,“透析痴呆”は激減した.一方,透析患者においては動脈硬化性病変合併の頻度が高いことが報告されており,血管性認知症(VD)が増加している可能性が高い.さらに透析患者では,透析や腎不全に起因する代謝性因子,体液動態,血管性因子,尿毒症物質など,脳の機能障害を起す因子が存在すると推測される.本稿では,透析患者における認知機能障害の特徴,スクリーニング・診断法および治療について,最近の知見を含め概説する.

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第3章 診断・管理・治療
消化器疾患 1.上部消化管障害

池辺宗三人   高知高須病院胃腸科外科 部長

要旨
 透析患者にも非透析患者と同様,種々の上部消化管障害が生ずる.透析患者では,その特殊な病態により消化管障害も修飾されており,対応も非透析患者とは異なる部分が多い.これらを十分に理解し,その病態に即した診断と治療が求められる.ここでは透析患者の上部消化管障害の特徴と診断・治療の実際について概説する.

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第3章 診断・管理・治療
消化器疾患 2.被?性腹膜硬化症の早期診断と治療

川西 秀樹   あかね会土谷総合病院 副院長

要旨
 被?性腹膜硬化症(EPS)は腹腔内の炎症に伴い腸管が癒着・炎症性被膜によって覆われ腸閉塞症を来すイレウス症候群であり,腹膜透析(PD)の普及に伴い,腹膜劣化の致死的合併症として症例数が増加した.本邦での発症率は全 PD 患者の2.5%であり,PD 期間とともに増加する.発症後の治療はステロイドが有効であるが,腸閉塞症状を繰り返す場合には積極的な開腹癒着剥離術が必要となる.予防は腹膜劣化の防止であり,生体適合性の良い腹膜透析液の使用が重要である.

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第3章 診断・管理・治療
肝疾患 1.C型肝炎

菊地  勘    医療法人社団豊済会下落合クリニック 院長
          東京女子医科大学血液浄化療法科 非常勤講師

要旨
 透析患者のC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性率は 9.8% で,一般人口と比較し非常に高率である.そして,透析患者においても HCV 感染により生命予後が低下することが明らかとなっている.しかし,HCV 感染透析患者に対するインターフェロン(IFN)治療は約2%にとどまっており,ほとんどの患者は無治療で経過している.このような現状,2011 年に日本透析医学会より『透析患者のC型ウイルス肝炎治療ガイドライン』が発表されている.このガイドラインの発表により,HCV 感染透析患者の治療が普及することを期待している.

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第3章 診断・管理・治療
肝疾患 2.常染色体優性多発性?胞腎(ADPKD)

諏訪部達也    虎の門病院腎センター
住田 圭一     虎の門病院腎センター
早見 典子     虎の門病院腎センター
星野 純一     虎の門病院腎センター
乳原 善文     虎の門病院腎センター 部長

要旨
 常染色体優性多発性?胞腎(ADPKD)患者は,腎臓や肝臓の?胞が増大し,腎腫大や肝腫大を呈する.肝腎が著明に腫大すると,腹部膨満症状が強くなるばかりでなく,?胞出血や?胞感染を起すこともある.著明な腫大腎または腫大肝に対しては,腎動脈または肝動脈塞栓術(TAE)が,サイズ縮小に有効である.TAE は,腫大腎に対しては極めて効果的であるが,腫大肝においては効果が限定的であり,課題が残されている.

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第3章 診断・管理・治療
皮膚疾患 1.皮膚掻痒症とその疫学

木全 直樹    東京女子医科大学腎臓病総合医療センター血液浄化療法科 講師

要旨
 皮膚掻痒症は透析者に高頻度に認められる合併症の1つであり,掻痒に伴う精神的ストレスは QOL にも影響を与え,透析者にとっては大きな問題である.臨床では毎日のように患者からの訴え・相談がある疾病ではあるが,皮膚掻痒は自覚的症状であり,客観的に定量化し評価することが非常に難しいこともあり,皮膚掻痒症を取り上げた大規模研究の報告は少ない.本稿では,日本人または日本人データを含む,最近の主な大規模研究を中心に解説した.

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第3章 診断・管理・治療
皮膚疾患 2.血液透析患者のかゆみの治療

熊谷 裕生    防衛医科大学校腎臓内分泌内科 教授
丸山 資郎    高田駅前クリニック丸山内科医院 院長
江畑 俊哉    ちとふな皮膚科クリニック 院長
森 建二    順天堂大学附属浦安病院皮膚科学 院長
中元 秀友    埼玉医科大学総合診療内科 教授
鈴木 洋通    埼玉医科大学腎臓内科 教授

要旨
 維持血液透析患者や保存期慢性腎不全患者のかゆみの成因として,内因性オピオイド系が注目されている.私どもの臨床研究の結果から,「μ(ミュー)オピオイド・ペプチドと受容体はかゆみを誘発し,κ(カッパ)受容体活性化はかゆみを抑制すること」が示唆された.そこで,全国 337 例のかゆみの強い血液透析患者を対象とするランダム化した前向き二重盲検試験を行い,東レ(株)が開発したκ受容体作動薬ナルフラフィン(2.5μg および5μg)を 14 日間内服させた. Visual analogue scale(VAS)で表されるかゆみの強さは,プラセボでも 13mm 低下したが,ナルフラフィンによりプラセボと比較して有意に低下した.13 年以上にわたる臨床試験の結果が評価されて,ナルフラフィン(レミッチR 2.5μg ソフトカプセル)は 2009 年1月に厚生労働省により認可され,3月から発売されている.2012 年2月において,ほかのかゆみ止め薬の効かない患者 20,000 人に投与されており,70% の患者においてナルフラフィンは著明にかゆみを抑制している.

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第3章 診断・管理・治療
透析アミロイド症 1.診断

山本  卓     新潟大学大学院医歯学総合研究科腎医学医療センター 特任助教
風間順一郎    新潟大学医歯学総合病院血液浄化療法部 准教授
成田 一衛    新潟大学大学院医歯学総合研究科腎・膠原病内科学(第二内科)教授

要旨
 透析アミロイド症は,長期透析患者に高頻度に発症し,手根管症候群,アミロイド関節症,破壊性脊椎関節症などの特徴的な臨床症状,画像検査,および病理学的所見から総合的に診断される.

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第3章 診断・管理・治療
透析アミロイド症 2.治療

北村  謙    神戸大学大学院医学研究科内科学講座腎臓内科学
西  慎一    神戸大学大学院医学研究科内科学講座腎臓内科学 教授

要旨
 透析アミロイド症を完治させる治療法はない.前駆タンパクβ2−ミクログロブリン(β2−MG)の血中濃度上昇を防ぎ,かつ慢性炎症を抑制する透析治療法が,この透析アミロイド症の発症予防につながると考えられている.また,一度発症した透析アミロイド症は,内科的治療と外科的治療により,症状の緩和あるいは症状の悪化を防ぐ必要がある.近年では,β2−MG 吸着カラムの有用性も再認識されている.

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第4章 臓器相関からみた適正透析
透析液の水質基準および水質管理:ultra-pure 透析液の意義とその evidence level

中村 雅将    医療法人社団清水会矢吹嶋クリニック腎臓内科
政金 生人    医療法人社団清水会矢吹嶋クリニック 院長

要旨
 近年の透析膜の性能向上に伴い,透析治療中にエンドトキシン(ET)などのパイロジェンが透析液から血液中へ流入し生体に悪影響を与える危険性が増大している.透析液の細菌学的汚染は,透析治療の生体適合性を損なう最も重大な因子の1つであり,透析液の清浄化により,種々の臨床的効果が期待される.ET,細菌数測定を定期的に実施しJSDT2008 基準に対応するような,ultra−pure 透析液を使用することが望まれる.

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第4章 臓器相関からみた適正透析
各種血液浄化療法に適した浄化器の開発:適正な血液浄化を行うために

峰島三千男    東京女子医科大学臨床工学科 教授

要旨
 血液透析(HD)に始まった膜型腎不全治療は,限外濾過を積極的に取り入れることによって多様化の様相を呈し,拡大してきた.特に 2010 年に,オンライン HDF(血液透析濾過)が実質的に保険収載され,HD に代わる汎用治療としておおいに期待されている.HDF には前希釈法と後希釈法とがあり,専用 HDF フィルタの開発が不可欠である.また,従来の維持透析(週3回,1回4時間)とは異なる,さまざまなスケジュールによる治療が一部の先進的な施設で実施され,その臨床的有用性が注目されている.これらの治療では,血流量,透析液流量,濾液流量といった操作条件も維持透析と異なり,それらに使用されるべき浄化器の選択も重要となってくる.

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第5章 ガイドライン
腎性貧血治療ガイドライン

鶴屋 和彦    九州大学大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学 准教授
平方 秀樹    福岡赤十字病院腎臓内科

要旨
 近年の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の開発・進歩により腎性貧血管理が容易になったが,目標ヘモグロビン(Hb)値の問題が生じ,近年の大規模臨床研究の結果より高 Hb 値のリスクが叫ばれている.各国でガイドラインが作成され,目標 Hb 値に関してはおおむね 11〜12g/dl で,13g/dl を超えないよう推奨されている.ESA 療法の際には鉄欠乏に対する治療も重要であるが,鉄過剰にならないよう,注意が必要である.

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第5章 ガイドライン
バスキュラーアクセスガイドライン

春口 洋昭    飯田橋春口クリニック 院長

要旨
 2011 年に日本透析医学会(JSDT)より『慢性腎不全患者のバスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン』が改訂された.バスキュラーアクセス(VA)はエビデンスレベルの高い論文が少なく,経験に基づく診療が行われている.また,国や地域によって VA の考え方も異なる.本稿では JSDT の改訂ガイドラインの特徴を解説し,さまざまなガイドラインとの比較を行った.そのうえで,今後 VA 診療においてどのようにガイドラインを活用するか考察した.

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第5章 ガイドライン
カルシウム・リン・副甲状腺ホルモンガイドライン

奥野 仙二    白鷺診療所内科
石村 栄治    大阪市立大学医学部附属病院腎臓内科 病院教授

要旨
 透析患者のカルシウム(Ca)・リン(P)・副甲状腺ホルモン(PTH)に関するガイドラインは,種々のものがあり,2003 年には米国の KDOQI ガイドラインが,2006 年に日本透析医学会(JSDT)から JSDT ガイドラインが出されている.その後,2009 年に KDIGO より慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD−MBD)に関するガイドラインが発表され,2012 年には改訂版 JSDT ガイドラインが発表される予定である.これら新しいガイドラインは,日常診療に重要な役目を果たしていくものと思われる.

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