要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 42/循環器6
大動脈瘤・大動脈解離 改訂第2版
 


第1章 疫 学
国内外のレジストリー研究

鈴木 亨   東京大学大学院医学系研究科循環器内科・ユビキタス予防医学講座 准教授

要旨
 大動脈疾患の症例数は少ないため,その臨床像や診療実態を知るためには,多施設で症例を集積して解析することが必要である.世界に先駈けて大動脈解離のレジストリー IRAD が開始され,臨床像や診療実態さらに新規病態などを多く発表し,当分野に貢献してきた.国内でも外科手術データベース JACVSD を用いたデータベースの構築も開始されている.ガイドライン作成において,データベースの解析は参考になることから,今後も臨床研究の発展が期待される.

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第1章 疫 学
急性大動脈スーパーネットワーク

高山 守正    東京都CCU連絡協議会 会長
           榊原記念病院 副院長・循環器内科部長
吉野 秀朗    杏林大学医学部循環器内科 教授
小山 信彌    東邦大学医療センター大森病院心臓血管外科 教授

要旨
 東京都では,急性大動脈スーパーネットワークを2010年秋より組織し,急性大動脈症に対する緊急心血管診療のシステム化・効率化を高める取組みの稼働を開始した.119番コールにて緊急心血管外科治療実施可能施設への搬送は容易になり,覚知−病院到着時間は平均44分であった.東京都で発生し診療を受ける急性大動脈症は12ヵ月で1,626例あり,78%が急性大動脈解離(AAD)で,発生頻度は従来の報告を大きく更新し,8.8人/10万人/年であった.多数の発生頻度を考慮し,各地域での緊急診療体制構築が望まれる.

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第2章 病理・病態生理
大動脈瘤・大動脈解離の病理

中島 豊     福岡赤十字病院検査部・病理診断科 検査部長
中川 和憲   九州大学大学院医学研究院病理病態学 講師

要旨
 正常の大動脈の中膜は,弾性線維や平滑筋細胞などが何層にも層状に重なった構造をしており,大動脈の構造の保持と機能に重要な役割を果たしている.大動脈瘤と大動脈解離の発症には,いずれも中膜の障害が関与している.大動脈瘤では,アテローム性動脈硬化や炎症によって中膜が破壊されて菲薄化し,拡張する.一方,大動脈解離においては,嚢胞状中膜壊死(CMN)や中膜の層と層との間の結合性の脆弱化が,解離の原因となっている可能性がある.

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第2章 病理・病態生理
大動脈解離の病因・病態

青木 浩樹   久留米大学循環器病研究所 教授

要旨
 大動脈解離は重篤な成人大動脈疾患である.ヒト遺伝性疾患および動物モデルの研究から病因・病態の解明が進められており,マルファン症候群では,新たな病態の理解に基づいた治療戦略の開発が進められている.一般的な大動脈解離の病態には今なお不明な点が多く,その解明による新たな診断・治療法の開発が期待される.

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第2章 病理・病態生理
胸部大動脈瘤(病因・病態生理)

圷 宏一    日本医科大学付属病院集中治療室 講師

要旨
 腹部大動脈瘤が動脈硬化の影響を非常に強く受けているのに対し,胸部大動脈瘤は部位によって異なり,上行は遺伝的要因の影響が強く,下行では動脈硬化の影響が強い.胸部上行大動脈瘤の成因のうち,遺伝的要因はマルファン症候群がほとんどと考えられていたが,ロイス・ディーツ症候群を始め,多くの原因遺伝子が次々に明らかにされている一方,不明なものも多く,今後の課題である.

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第2章 病理・病態生理
腹部大動脈瘤(病因・病態生理)

保科 克行  東京大学医学部附属病院血管外科
宮田 哲郎  東京大学医学部附属病院血管外科 病院教授

要旨
 腹部大動脈瘤(AAA)の形成にはさまざまな因子が関与している.最終的には破裂というカタストロフが待っているこの病態に対して,現在は瘤の径や形状,拡張速度をもって治療の適応を決めている.まず,力学的因子について記載し,次に“炎症”と瘤,動物実験の視点から瘤の拡張と抑制のシナリオについて,また腹部大動脈の特殊性について概説した.臨床データから導かれた瘤の発生,拡張,破裂に関与する因子は重複するものも多いが,個別に考えなくてはならない.特徴的な,また,まれではあるが見逃してはならない症状についても,症例を提示して記述した.

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第2章 病理・病態生理
その他の大動脈瘤(病因・病態生理)

笠島 里美   国立病院機構 金沢医療センター臨床検査科・病理科 科長

要旨
 大動脈瘤の原因で最も多いものは動脈硬化性大動脈瘤であり,それ以外の特異的病因に基づく大動脈瘤はまれではあるが,疾患の理解に基づく適切な診断・治療が必要である.高安動脈炎,巨細胞性動脈炎,川崎病などの血管炎症候群,感染性,炎症性大動脈瘤などの IgG4 関連動脈病変を原因とする大動脈瘤,およびその主要な分枝に生ずる動脈瘤について,疾患概念,病因・病態,病理像の概説を述べる.

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第2章 病理・病態生理
マルファン症候群(類縁疾患)

森崎 隆幸    国立循環器病研究センター研究所分子生物学部・臨床遺伝科 部長
森崎 裕子    国立循環器病研究センター研究所分子生物学部・臨床遺伝科 室長

要旨
 マルファン症候群の病因は細胞外マトリックスの主要成分フィブリリンの機能異常であるが,質的異常より量的異常が重要であり,結果として生ずるトランスフォーミング増殖因子(TGFβ)シグナルの制御異常が,大動脈瘤・解離の病態に深く関係する.また,類縁疾患の病因として,TGFβシグナルの受容体,伝達分子,リガンド機能異常が知られている.さらに,平滑筋特異的な収縮タンパク質の機能異常も大動脈瘤・解離を引き起すことが知られている.
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第2章 病理・病態生理
その他の遺伝性大動脈瘤・大動脈解離 −血管型エーラス・ダンロス症候群−

古庄 知己   信州大学医学部附属病院遺伝子診療部 准教授

要旨
 特に誘因のない若年発症の,また家族歴を有する大動脈瘤・解離患者では,大動脈瘤・解離を生じる遺伝性・先天性疾患を有する可能性がある.本稿では,マルファン症候群(MFS)(類縁疾患)を除く疾患につき概説する.血管型エーラス・ダンロス症候群(vEDS)では,内膜中膜複合体肥厚の異常低値が動脈壁ストレスを増強して弾性動脈病変を来すことが示され,血管拡張作用を有するβ遮断薬セリプロロールの有効性が期待されている.

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第3章 診 断
急性大動脈症候群の鑑別診断

加地 修一郎      神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科 医長

要旨
 急性大動脈症候群は,偽腔開存型解離,偽腔閉塞型解離,穿通性粥状硬化性潰瘍(PAU)の3つから成る致死的疾患群である.偽腔開存型解離は,内膜破綻とそれによる中膜の解離を原因とし,血流のある偽腔を認める.これに対して,偽腔閉塞型解離は,血流を認めない三日月型の偽腔が特徴である.PAU は高度な動脈硬化を基盤として発症し,主として下行大動脈を中心に,潰瘍性病変とそれに伴う中膜内血腫を特徴とする.

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第3章 診 断
大動脈解離・大動脈瘤バイオマーカー

鈴木 亨   東京大学大学院医学系研究科循環器内科・ユビキタス予防医学講座 准教授

要旨
 大動脈疾患の急性期診断は困難なことがあり,迅速かつ非侵襲的な血液診断法(バイオマーカー)の開発は重要である.画像診断法などの併用が診断向上につながる期待がある.筆者らは世界に先駈けて,多数の大動脈疾患のバイオマーカーを開発してきた.大動脈疾患(特に解離)の診断フローとして普及することが期待されるマーカーの1つはD−ダイマーである.今後は大動脈のリモデリングを反映するマーカーなど,慢性期のマーカーの開発も期待される.

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第3章 診 断
画像診断(CT/MRI)

林 宏光   日本医科大学放射線医学 准教授

要旨
 大動脈瘤や大動脈解離の診断において,CTやMRIは欠くことのできない非侵襲的診断法である.さらに,近年の画像診断の進歩は目覚しく,CT では multidetector−row CT が,そして MRI では高磁場装置に加えて,さまざまな撮像法が開発されるに至り,両検査法の役割は“単なる診断法”としての位置付けから,“治療支援画像”へと paradigm shift した.

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第3章 診 断
画像所見(エコー)

大倉 宏之   川崎医科大学循環器内科 准教授

要旨
 大動脈解離や大動脈瘤の診断には,造影 CT 検査がその中心的役割を演じている.一方,エコーは救急外来あるいはベッドサイドで非侵襲的に繰り返し施行しうる検査法であり,まず最初に施行すべき画像診断法である.また,心■液(PE)貯留,急性大動脈弁逆流や急性冠症候群などの,急性大動脈解離に伴うさまざまな合併症の診断や心機能の評価には,心エコー図は必要欠くべからざる検査法である.

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第4章 管理・治療
大動脈解離(急性期管理・治療)

新沼 廣幸    聖路加国際病院心血管センター循環器内科 副医長

要旨
 急性大動脈解離(AAD)は突然発症し急性期死亡率が高い重篤な疾患とされ,救急外来搬入から診断確定に至る時点より,急性期管理を開始する必要がある.急性期治療の目的は,解離の進展と大動脈破裂を防ぐために,心拍数コントロール,降圧と疼痛管理が重要になる.一定間隔で心電図同期造影 CT を用いて,大動脈壁や臓器虚血の有無を確認し,呼吸不全,せん妄,または臓器虚血などの急性期合併症に対して,早期に十分な対応が必要である.

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第4章 管理・治療
大動脈瘤・大動脈解離治療のための画像診断

吉岡 邦浩    岩手医科大学附属病院 循環器医療センター循環器放射線科 教授
田中 良一    岩手医科大学附属病院 循環器医療センター循環器放射線科 准教授

要旨
 近年の CT や MRI の進歩は詳細な画像情報の提供を可能とし,大動脈瘤や大動脈解離の診断のみならず,治療法の選択や予後評価にも寄与できるようになった.本稿ではその代表として,Adamkiewicz 動脈の画像診断を紹介する.Adamkiewicz 動脈を術前に同定する目的は術後対麻痺の回避にあるが,最近の研究では側副血行路が重要であることが判明しつつある.同時に,側副血行路の情報を治療に利用することも可能である.

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第4章 管理・治療
大動脈解離に対する血管内治療:急性大動脈解離に対しての急性期血管内治療(ステント・フェネストレーション)の適応と実際

加藤 憲幸     三重大学大学院医学系研究科放射線診断科 准教授
橋本 孝司     三重大学大学院医学系研究科放射線診断科
東川 貴俊     三重大学大学院医学系研究科放射線診断科
茅野 修二     三重大学大学院医学系研究科放射線診断科

要旨
 大半の Stanford B型急性大動脈解離には保存的治療が行われるが,合併症のある例においては侵襲的な治療が必要となる.以前は治療の選択肢は人工血管置換術,バイパス術のみであったが,経カテーテル的開窓術,ベア・ステント留置術,ステントグラフト内挿術が登場してから治療戦略は一変し,これら血管内治療が Stanford B型急性大動脈解離に対する治療の主流となりつつある.
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第4章 管理・治療
内科治療(予後・問題点・今後)

坂倉 建一    自治医科大学附属さいたま医療センター循環器科
阿古 潤哉    北里大学医学部循環器内科学 主任教授

要旨
 Stanford B 型大動脈解離の治療は内科治療が中心となる.短期予後の規定因子は低血圧,ショック,無痛性,分岐にかかる解離,大動脈径の拡大などがある.一方,長期予後の規定因子は,女性,大動脈瘤の既往,動脈硬化の既往,腎不全,ピーク CRP(C反応性タンパク)の高値などが報告されている.内科治療,特に降圧薬の選択に関する有用なエビデンスは現時点では少ないことが問題であるが,心拍数を抑えることが予後改善につながる可能性がある.

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第4章 管理・治療
急性大動脈解離のリハビリテーション

田口 英詞   済生会熊本病院心臓血管センター循環器内科 医長
西上 和宏   済生会熊本病院心臓血管センター集中治療室 室長

要旨
 急性大動脈解離のリハビリテーションについては,日本循環器学会ガイドライン『大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン』(2011年改訂版)1)に詳しく記載されており,日常診療における指針となっている.本稿では,ガイドラインの記載を中心に解説を行う.一般に,急性期は数時間・数日単位で刻々と病状の変化があり,一律のリハビリプログラムでは対応困難な場合が少なくない.また,亜急性期の合併症は,病型や病態により予後が異なり,慎重な対応が必要である.個々の症例に対し,解離の病型・病状を十分把握したうえでの慎重なリハビリが必要と思われる.
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第4章 管理・治療
外科療法(open aortic repair)

荻野 均     東京医科大学心臓血管外科 主任教授

要旨
 胸骨正中切開もしくは側開胸により大動脈病変に到達し,体外循環(CPB)下に超〜軽度の低体温を用い,脳・脊髄,心,肝,腎などの重要臓器を保護しながら人工血管を用いて置換する.開胸操作を必要とし侵襲的であるため,最近ではハイリスク症例に対してはステントグラフト内挿術が選択されるが,根治性,確実性の面では本法が勝っており,標準的治療である.胸部・胸腹部大動脈瘤,および大動脈解離に対する外科治療について概説する.

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第4章 管理・治療
外科治療(合併症とその予防)

早津 幸弘    東北大学大学院医学系研究科心臓血管外科学
齋木 佳克    東北大学大学院医学系研究科心臓血管外科学 教授

要旨
 胸部ならびに胸腹部大動脈瘤手術は近年増加傾向にあるが,手術成績は依然として改善の余地がある.疾患自体の重篤度や手術侵襲の大きさ,さらに疾患特有の周術期合併症によるところが大きく,特に脳・脊髄梗塞が術後成績に大きく影響を与えるため,さまざまな工夫が成される.術中脳保護のための灌流法やモニタリング法などは標準化されつつあるが,術中脊髄虚血予防に対する手段は多岐にわたり,今後さらなる知見の集積が待たれるところである.

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第4章 管理・治療
Thoracic endovascular aortic repair(TEVAR)1.総論一般

白川 幸俊    大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科低侵襲循環器医療学 准教授

要旨
 大動脈瘤治療の低侵襲化を目指して,1993年,Dakeら,および,加藤らによって胸部大動脈瘤(TAA)に対するステントグラフトの臨床応用が開始された.TAA に対するステントグラフト治療(TEVAR)は,従来手術と比べて,圧倒的に低侵襲であることから脚光を浴び,2008年3月,胸部大動脈用のステントグラフトが薬事承認され,爆発的に普及することとなった.本稿では,その標準的な適応,手技,さらに今後の展望について説明する.

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第4章 管理・治療
Thoracic endovascular aortic repair(TEVAR)2.Complex TAA

加藤 雅明     森之宮病院心臓血管外科 部長

要旨
 Complex TAA に対する TEVAR について概説する.気管支(肺)瘻を形成する TAA には TEVAR が有効であるが,食道瘻を形成する TAA は TEVAR のみでは完治できない.外傷性大動脈損傷はTEVARが第1選択となる.大血管手術後大動脈瘤と先天異常を伴う大動脈瘤は,その解剖状況に合わせたバイパス手術を併用したハイブリッド TEVAR が有効である.

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第4章 管理・治療
Thoracic endovascular aortic repair(TEVAR)3.他科との集学的治療

宮本 伸二    大分大学医学部心臓血管外科学 教授
本郷 哲央    大分大学医学部放射線医学
森  宣      大分大学医学部放射線医学 教授

要旨
 近年,診断・治療法の多様化が急速に進む中,異なる能力を持つ他科とのチーム医療は必然である.大分大学医学部附属病院は,心臓血管外科と放射線科と共同でステントグラフト血管内治療(EVAR)を行い,そのシナジー効果により,in−situ fenestration などより高度な医療を,円滑・効率的に行うことができている.バランスのとれた仕組み作りも大切であるが,チーム医療を支えるのは,結局のところ,互いを理解し合おうとする個人の資質と努力である.

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第4章 管理・治療
Endovascular aortic repair(EVAR)1.総論一般

吉川 公彦    奈良県立医科大学放射線医学(画像診断・IVR)教授
岩越 真一    奈良県立医科大学放射線医学(画像診断・IVR)
市橋 成夫    奈良県立医科大学放射線医学(画像診断・IVR)
伊藤 博文    奈良県立医科大学放射線医学(画像診断・IVR)
阪口 昇二    松原徳州会病院大動脈ステントグラフト・血管内治療科 部長

要旨
 ステントグラフトを用いた大動脈瘤に対するステントグラフト留置術は,外科手術に比べて低侵襲的であり,周術期の合併症が少ないことより,本邦においても急速に普及しており,胸部および腹部大動脈瘤に対して,計9種類の企業製ステントグラフトが市販され,年間約10,000例の大動脈瘤が治療されている.今後,デバイスの屈曲性の向上,細径化,枝付デバイスなどの開発により,さらに適応は拡大することが予想されるが,長期にわたる経過観察が必要である.

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第4章 管理・治療
Endovascular aortic repair(EVAR)2.胸腹部大動脈瘤に対しての(枝付)ステント治療:その進歩と適応・成績

金岡 祐司    東京慈恵会医科大学外科学講座血管外科 講師
大木 隆生    東京慈恵会医科大学外科学講座血管外科 教授

要旨
 胸腹部大動脈瘤(TAAA)は腹部分枝を含め,大動脈が広範囲に瘤状に拡大したものである.TAAA に対する人工血管置換は,対麻痺を始め,臓器虚血,腎不全,肺合併症などの合併症があり,いまだ手術成績は満足すべきものではない.一方,ステントグラフト(SG)による治療も,瘤の空置かつ分枝血流温存のため,通常の SG では対応できない.本稿では TAAA に対する枝付き SG 術について概説する.

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第4章 管理・治療
胸部大動脈瘤のハイブリッド治療

志水 秀行    慶應義塾大学医学部外科(心臓血管)講師

要旨
 弓部大動脈瘤や胸腹部大動脈瘤に対して胸部ステントグラフト治療(TEVAR)を行う場合には,閉塞される分枝動脈の血流を維持するために何らかの工夫が必要である.ハイブリッド手術は,分枝血流を維持するためのバイパス手術と大動脈瘤治療のための TEVAR を組み合わせた治療法である.病変部位(Ishimaru 分類)に応じた術式でバイパス手術を行い,市販デバイスで TEVAR を行う.汎用性が高く,有用な術式である.

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第4章 管理・治療
外科治療(予後・問題点)

松森 正術    神戸大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科分野 講師
大北 裕      神戸大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科分野 教授

要旨
 大動脈瘤,大動脈解離の治療成績は格段に向上したが,解決すべき問題はまだまだあり,さらなる治療成績の向上が待たれる.今後はデバイスの発展に伴い,いっそう血管内治療(EVAR,TEVAR)が増加すると思われる.しかしながらステントグラフトの endoleak,migration の発症などの問題もあり,治療の選択には,おのおのの merit,demerit が十分に考慮される必要がある.

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第4章 管理・治療
マルファン症候群の経過・治療・予後 1.内科治療

藤田 大司    東京大学大学院医学系研究科循環器内科
今井 靖      東京大学大学院医学系研究科循環器内科 特任講師
平田 恭信    東京逓信病院 病院長

要旨
 マルファン症候群(MFS)の診断は1996年Ghent基準および2010年改訂Ghent基準に基づいて行われる.大動脈基部の拡大が特徴的であり,定期的なフォローアップと,必要時の手術治療が重要である.薬物治療としては従来のβ遮断薬に加えて,アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)の有用性が注目されており,大規模臨床試験の結果が待たれる.

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第4章 管理・治療
マルファン症候群の経過・治療・予後 2.外科治療

宮入 剛    聖マリアンナ医科大学心臓血管外科 病院教授

要旨
 マルファン症候群症例において,生命を脅かす最大のリスクは大動脈解離と大動脈破裂である.マルファン症候群症例では,ひとたび大動脈解離を起すと,広範囲かつ重症になりやすい.また,術式と周辺技術の改善によって,非解離性大動脈瘤の手術成績は極めて良好になった.したがって,大動脈解離を起す前の予防的手術が極めて大事である.自己弁温存大動脈基部置換術は,今後も術式の改良が加えられるであろう.

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第5章 ガイドライン
大動脈疾患治療をどう考える−ステントか外科治療か−

竹谷 剛    三井記念病院心臓血管外科 科長

要旨
『大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン』(2011年改訂版)においては,ガイドライン改訂版としては比較的広範な改訂が成されている.改訂の重要なポイントとしては,用語に関する注意,大動脈解離の分類法,ステントグラフトの適応や方法,大動脈疾患と遺伝子に関する解説,などが挙げられる.

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