要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 44/消化器6
肝硬変 
改訂第2版


第1章 概念・定義・疫学
定義と概念

渡邊 丈久   熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学分野
田中 基彦   熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学分野 准教授
佐々木 裕   熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学分野 教授

要旨
 肝硬変とは,さまざまな原因により慢性の肝細胞障害が引き起され,それに肝再生と結合織の新生が伴い,その結果生じる慢性肝障害の終末像である.肝臓は多くの機能を有しているため,肝硬変ではさまざまな障害が全身に生じ,病態の研究や治療法が進んだ現在においても,多くの場合,肝硬変は進行性で不可逆的であり,予後不良である.特に肝硬変は,肝がんの高リスク群であることを常に念頭に置いて診療を行う必要がある.

目次に戻る



第1章 概念・定義・疫学
疫 学

田中 純子    広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学・疾病制御学 教授
片山 惠子    広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学・疾病制御学 講師

要旨
 我が国は,住民を対象とした肝炎ウイルス検診などを世界に先駈けて導入し,肝炎ウイルスの持続感染による肝炎・肝がんの対策を推進してきた.社会における存在状態別にキャリアの規模を把握し,それぞれの状態に応じた対策を講じることが有効であると言える.
 人口動態統計による肝がん死亡数(率)は横ばいあるいは減少傾向にあるものの,肝硬変からの肝がんへの推移率は,50歳代男性では年率7%を超えること,しかし女性では肝がんへの病態移行確率が男性より低く肝硬変の状態でとどまっている割合が高いと推定されること,1995年以後集計可能となった肝硬変(アルコール性を除く)による死亡は女性にやや増加傾向が見られること,などから,今後,肝がん死亡の減少と同時に,肝硬変死亡の減少を意識した対策,治療戦略が必要であると考えられる.

目次に戻る



第2章 病理・病態生理
病 因

河田 則文   大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学 教授

要旨
 肝硬変は,B型やC型肝炎ウイルス感染(HBV,HCV)アルコール多飲,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変など,すべての慢性肝疾患の終末像である.病理学的にはびまん性にコラーゲンで構成される線維性隔壁に囲まれた再生結節(偽小葉)が形成された状態で,臨床的には,代償性肝硬変と非代償性肝硬変の2つに大きく分けられる.また,肝硬変からは年率5〜8%で肝がんが生じるため,肝がん発生母地として肝硬変を理解することが重要である.

目次に戻る



第2章 病理・病態生理
病 理

鹿毛 政義   久留米大学病院病理部 教授

要旨
 肝硬変は,線維性隔壁によって取り囲まれる再生結節が肝臓全体にびまん性に形成される病変である.肝硬変は,慢性肝疾患の終末病変であるとともに肝細胞がんが高率に発生する母地でもある.肝硬変の形態は,病因によって異なる.ウイルス性肝硬変,アルコール性肝硬変,うっ血性肝硬変,胆汁性肝硬変の組織像は,それぞれに特徴がある.慢性ウイルス肝炎と肝硬変との鑑別に苦慮する場合,臨床所見も合わせ,総合的に診断すべきである.

目次に戻る



第2章 病理・病態生理
病態生理

孝田 雅彦    鳥取大学医学部機能病態内科 准教授
村脇 義和    鳥取大学医学部機能病態内科 教授

要旨
 肝硬変はびまん性に線維化と再生結節による偽小葉が見られ,肝実質機能低下と門脈圧亢進症に由来する病態が発生する.代償期には症候は見られないが,非代償期に進行すると,黄疸,門脈圧亢進症,腹水,肝性脳症,肝腎症候群,肝肺症候群など,全身疾患としての病態を示す.さらに,肝硬変は肝がんの発生母地として重要であり,その発がん機序も明らかになりつつある.肝硬変の病態把握は,適切な診断治療に大きく貢献する.

目次に戻る



第3章 診 断
臨床所見

川口  巧  久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門・消化器疾患情報講座 講師
佐田 通夫  久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門・消化器疾患情報講座 主任教授

要旨
 慢性肝疾患患者は,病期の進行とともに,さまざまな臨床所見を呈する.その所見は,肝硬変の診断に有用であるだけでなく,患者 QOL に関与するものが多く,慢性肝疾患患者をマネージメントするうえで重要な所見である.本稿では,実臨床に即して,肝硬変患者に認められる臨床所見を自覚症状と身体所見に大別し,最近の知見を含めて概説する.また,認知機能にかかわる潜在性肝性脳症についても,併せて解説する.

目次に戻る



第3章 診 断
検査所見

池上 正    東京医科大学茨城医療センター消化器内科 准教授
松ア_靖司   東京医科大学茨城医療センター消化器内科 教授・病院長

要旨
 肝硬変は組織診断が基本であるが,侵襲の大きな肝生検をせずに,肝硬変の診断をつけるために,さまざまな工夫が成されてきた.これらの肝硬変診断ツールに用いられる血液データの概略について解説し,現況について述べる.

目次に戻る



第3章 診 断
画像診断1.超音波

泉 並木      武蔵野赤十字病院消化器科 部長・副院長
玉城 信治    武蔵野赤十字病院消化器科

要旨
 B型やC型肝硬変は腹腔鏡と肝生検による線維化の診断がゴールドスタンダードである.最近臨床的に用いる採血検査によって肝線維化を推測する指標が開発され,APRI スコアや FIB−4 index が有用である.さらに,超音波を用いて real−time tissue elastography(RTE)が行われ,心拍動によって得られた肝臓の歪みを数値化した Liver Fibrosis Index(LFI)が肝臓の線維化と相関し,特にF1,F2の線維化軽度例の診断に有用である.また,超音波信号振幅の確率密度分布を統計学的に分析する方法である Acoustic Structure Quantification(ASQ)は,F3〜F4 の線維化進行例の診断に有用である.Fibroscan は広く用いられているが,肋間が狭かったり皮下脂肪が多い例では,計測が正確とならない点が指摘されている.超音波を用いた線維化の指標と血小板を組み合わせると,進行した肝線維化の判別が良かった.
目次に戻る



第3章 診 断
画像診断 2.腹部超音波,CT,MRI 検査

土屋 昌子   社会保険下関厚生病院健康管理センター

要旨
 肝硬変の画像診断において,腹部超音波検査が最も簡便である.CT,MRI 検査は客観性に優れた検査ではあるが,主な目的は,占拠性病変や肝内外短絡の検出であり,造影剤を使用することが多い.肝硬変の形態的変化は機能的変化に遅れて出現するため,画像での初期診断は困難であり,エラストグラフィーによる肝線維化評価が注目されている.また,造影剤を用いた超音波,MRI 検査などで肝機能評価をする検討も進められている.

目次に戻る



第3章 診 断
鑑別すべき疾患

仁科 惣治      川崎医科大学肝胆膵内科 講師
日野 啓輔      川崎医科大学肝胆膵内科 教授

要旨
 近年肝生検によらない肝硬変の診断をしようとする試みがされている.これには,血小板数,血清線維化マーカー,ならびに超音波組織弾性イメージング装置を用いた診断が用いられている.肝硬変による門脈圧亢進症は肝性であり,臨床的には腫瘍塞栓や血栓による肝前性,Budd−Chiari症候群などの肝後性門脈圧亢進症との鑑別が必要となる.近年,肝硬変に合併する小結節の画像診断能も向上したが,依然肝細胞がんとの鑑別困難例に遭遇することがある.

目次に戻る



第4章 管理・治療
生活管理(栄養管理を含む)

森脇 久隆   岐阜大学大学院医学研究科消化器病態学 教授

要旨
 肝硬変患者の生命予後や QOL を良好に維持するうえで,日常生活管理は極めて重要である.中でも肝硬変患者で頻度の高いたんぱくエネルギー栄養障害(PEM)に対して,分岐鎖アミノ酸製剤や就寝前軽食を用いた栄養治療が,近年のガイドラインで推奨されている.また,肝硬変患者には従来,安静が指導されてきたが,最近,肝予備能が良好であれば,むしろ一定の運動を処方する方向性も出てきている.

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬物治療・選択基準

加藤 章信   盛岡市立病院 院長

要旨
 肝硬変は臨床的に,代償性(期)と非代償性(期)とに分けられ,黄疸,腹水,浮腫,肝性昏睡,消化管出血などの徴候のある非代償性肝硬変では,積極的な薬物療法が必要となる.薬物投与に際しては,症例ごとに,臨床兆候や血液生化学検査値を参考に投与量を加減する.また,肝予備能の低下例では薬物療法の効果に限界があることに留意し,タイミングを逸することなく,治療を開始することが重要である.


目次に戻る


第4章 管理・治療
薬物治療 1.腹水治療の進歩

内田 耕一   山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学 講師
坂井田 功   山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学 教授

要旨
 肝硬変における非代償期での腹水出現は低タンパク血症のみならず,門脈圧亢進症など,ほかの病態が混在している.治療法としては,低塩分食を基本に,ループ利尿薬やカリウム保持性利尿薬が用いられてきた.しかし,こうした治療薬を投与しても効果に乏しい症例は存在し,難治性腹水として治療に苦慮する場合がある.2013年9月にバゾプレッシン V2 レセプターアンタゴニスト(一般名トルバプタン)が,ループ利尿薬などのほかの利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留に対して保険適応となり,今後の新しい治療として注目される.

目次に戻る


第4章 管理・治療
薬物治療 2.高アンモニア血症治療の進歩

鈴木 一幸    岩手医科大学名誉教授 盛岡大学栄養科学部 教授
佐原  圭     岩手医科大学消化器内科肝臓分野
小岡 洋平    岩手医科大学消化器内科肝臓分野
吉田 雄一    岩手医科大学消化器内科肝臓分野
小野寺 美穂   岩手医科大学消化器内科肝臓分野
遠藤 龍人    岩手医科大学消化器内科肝臓分野 准教授
滝川 康裕    岩手医科大学消化器内科肝臓分野 教授
加藤 章信    盛岡市立病院 院長

要旨
 肝性脳症の発生機序に密接に関与する高アンモニア血症の治療法について,最近の進歩・話題を含めて解説した.高アンモニア血症の治療では,食事療法(低たんぱく質食)および合成二糖類(ラクツロース,ラクチトール)の投与が基本であるが,亜鉛製剤,難吸収性抗菌薬であるリファキシミン,L−カルニチンなどが,新たな高アンモニア血症治療薬として期待されており,そのエビデンスの集積が待たれる.

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬物治療3.門脈圧亢進症の薬物療法

入江  真      福岡大学医学部消化器内科 講師
向坂 彰太郎    福岡大学医学部消化器内科 主任教授

要旨
 本邦においては,門脈圧亢進症(PH)に合併する食道静脈瘤(EV)に対しては,内視鏡的治療が主として行われてきたが,門脈圧を考慮した治療はあまり行われていなかった.しかし最近では,PH に対する薬物療法も増加傾向にある.PH の薬物療法には,肝内血管抵抗を低下させる薬物(ARB)や門脈血流量を減少させる薬物(非選択的b遮断薬:NSBB)などがある.今後は,PH に対する薬物療法も考慮すべきであると考える.

目次に戻る



第4章 管理・治療
特殊な治療が行われる肝硬変 1.自己免疫性肝炎に伴う肝硬変

三宅 康広     岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科
山本 和秀     岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科 教授

要旨
 自己免疫性肝炎(AIH)は,進行性の慢性肝炎であり,適切な治療が行われないと肝硬変や肝不全へ進展する.治療の第1選択薬はコルチコステロイドであり,ほとんどの症例で寛解が得られる.ステロイド治療で寛解の得られない症例や再燃を繰り返す症例,合併症などでステロイド治療が困難な症例では,アザチオプリンが有効である.適切な治療により,トランスアミナーゼの持続正常化を得ることができれば,肝予備能や肝線維化の改善が見られる.

目次に戻る



第4章 管理・治療
特殊な治療が行われる肝硬変 2.原発性胆汁性肝硬変

阿部 雅則    愛媛大学大学院医学系研究科消化器・内分泌・代謝内科学 准教授
日浅 陽一    愛媛大学大学院医学系研究科消化器・内分泌・代謝内科学 教授

要旨
 原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療において,第1選択はウルソデオキシコール酸(UDCA)である.UDCA で十分な効果が得られない場合には,ベザフィブラート(BF)の併用が試みられている.無症候性 PBC(a−PBC)と診断され,UDCA 投与によって血液生化学検査の改善が見られる症例は,予後良好である.その一方で,症候性PBC(s−PBC)やUDCA治療抵抗例では予後不良であり,このような症例に対する治療に課題が残されている.肝移植は,比較的良好な成績が得られている.

目次に戻る



第4章 管理・治療
特殊な治療が行われる肝硬変 3.ウイルソン病

原田  大    産業医科大学第3内科学 教授
本間 雄一   産業医科大学第3内科学
千手 倫夫   産業医科大学第3内科学

要旨
 ウイルソン病は先天性銅代謝異常症であるが,数少ない治療可能な疾患である.そのため,正確な診断が極めて重要である.本症の原因は,銅トランスポーターである ATP7B の遺伝子異常である.この銅トランスポーターの機能障害による胆汁中への銅の排泄障害により,肝臓を始めとする体内に銅が蓄積する.症状は肝障害,神経症状,ならびに全身臓器の障害と多彩であり,これは患者における ATP7B の遺伝子変異の種類の多さと関連していると考えられている.
目次に戻る



第4章 管理・治療
内視鏡治療

小原 勝敏     福島県立医科大学附属病院内視鏡診療部 教授

要旨
 食道・胃静脈瘤出血は門脈圧亢進症の重大合併症であり,出血による二次性肝不全や大量出血では致命的となる.出血時の緊急内視鏡は重要であり,直ちに内視鏡治療(緊急止血)へと移行できる.静脈瘤治療は多様化し,病態に応じた治療法を選択できるので,安全かつ効果的な治療手技が要求される.そのためには,各治療法の適応を明確にし,患者の病態と門脈血行動態を把握したうえで,最良の治療法を選択することが重要である.

目次に戻る



第4章 管理・治療
IVR

國分 茂博    順天堂大学医学部附属練馬病院消化器内科 先任准教授

要旨
 肝硬変症における interventional radiology(IVR)の役割は,肝の形態学的変化・肝内外の門脈圧亢進症の画像診断に引き続き行われる,血行改変などによる肝予備能の改善にある.血小板低下のみが原因療法の適応と完遂を妨げている前肝硬変から,肝がん治療(切除・ラジオ波治療)前・門脈圧亢進症(EIS,BRTO)治療前の血小板値回復・門脈減圧に対するPSE,孤立性胃静脈瘤・肝性脳症の治療,時に術前 ICG 値低下を目的とする BRTO,また PTO / DBOE による適切な塞栓術や TIPS の適応に至るまで,何よりも血行動態の解析と理解が必要である.

目次に戻る



第4章 管理・治療
外科治療

別城 悠樹     九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科)
川中 博文    九州大学大学院医学研究院外科集学的治療学 准教授
赤星 朋比古   九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座 講師
調   憲     九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科) 准教授
池上  徹     九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科) 併任講師
吉住 朋晴    九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科) 診療准教授
山下 洋市    九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科) 診療講師
井口 友宏    九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科)
吉屋 匠平    九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科)
前原 喜彦    九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科) 教授

要旨
 肝硬変に伴う食道・胃静脈瘤の治療として,内視鏡治療・血管内治療(IVR)・外科治療がある.内視鏡治療・IVRは外科治療に比べて低侵襲であり治療の中心となったが,外科治療である脾臓摘出(脾摘)術は,門脈圧亢進症の改善以外にも,C型肝硬変に対するインターフェロン(IFN)治療の完遂の助けとなる役割があり,近年注目されている.内視鏡治療・IVRと共に腹腔鏡下脾摘術を行い,門脈圧亢進症を集学的に治療している.

目次に戻る



第4章 管理・治療
肝硬変に対する肝移植

市田 隆文     順天堂大学医学部附属静岡病院消化器内科 教授
玄田 拓哉     順天堂大学医学部附属静岡病院消化器内科 准教授
平野 克治     順天堂大学医学部附属静岡病院消化器内科 准教授

要旨
 非代償性肝硬変に対する肝移植は,胆汁うっ滞性肝硬変では原発性硬化性胆管炎が,肝細胞性肝硬変ではC型肝炎ウイルス陽性レシピエントの成績が,それぞれの原因別生存曲線の検討から,全体に比して低率であることが判明した.非代償性肝硬変の予後予測はChild−Pugh分類(CTP)スコアとMELDスコアを計算することにより,短期死亡の予想が可能となり,それに合わせて脳死肝移植の適応評価における医学的緊急度を再設定することができるようになった.

目次に戻る



第4章 管理・治療
肝硬変に対する骨髄由来細胞を用いた細胞療法

寺井 崇二    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学 准教授
高見 太郎    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学 講師
坂井田 功    山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学 教授

要旨
 肝硬変,特に非代償性肝硬変に脳症,腹水などの合併症に対する対策として,脳症,新規利尿薬の開発,栄養療法が開発されてきた.我々は肝硬変の原因となる肝線維化改善,再生療法の開発を目指し,2000年より自己骨髄細胞投与(ABMi)療法の開発を進め,2003年より臨床研究を実施してきた1)2).その後,多施設臨床研究を実施し,アルコール,B型肝炎を起因とする肝硬変に対する臨床研究を行い,その有効性を明らかにしてきた.2013 年6月,先進医療Bに認定され,さらに 2013 年 10 月現在多施設無作為比較試験を実施していく予定である.一方でさらに,低侵襲な培養骨髄由来細胞を用いた治療を行うため研究開発を行っている.本稿では,現在の状況,今後の展望について概説する.

目次に戻る



第4章 管理・治療
経過・予後

福井 博    奈良県立医科大学消化器・内分泌代謝内科 教授

要旨
 肝硬変が進行すると全身に種々の合併症が出現する.死因としては肝がんと肝不全が代表的だが,肝病態は他臓器との関連が深く,複合要因が予後を規定している.Bacterial translocation が肝機能や腎,脳,消化管,肺などの他臓器合併症に与える影響は多大で,予後予測にも肝臓以外の要因を無視できない.予後改善のためには,肝硬変,合併症の治療に加えて,gut−liver axis の制御が重要である.

目次に戻る



第4章 管理・治療
C型肝炎抗ウイルス治療の対費用効果

池田 健次    虎の門病院肝臓センター・肝臓内科 部長

要旨
 C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法で持続的ウイルス陰性化(SVR)に至ると,発がんリスクは10%に低下するが,肝硬変症例では35%にしか低下しない.しかし,本来発がん率の高い肝硬変では“発がん抑制効率”が高く,“高い発がん率を65%低下させる”ことになる.このことから,抗ウイルス療法により1人の肝がんを減らすための社会全体の薬剤費用は,慢性肝炎は3,008万円かかるのに対し,肝硬変であれば2,279万円で済む.発がん抑制効率からも,肝硬変の抗ウイルス療法は考慮すべきである.

目次に戻る



第5章 ガイドライン
EBMからみた肝硬変治療のあり方

藥師神 崇行    大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学
竹原 徹郎     大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学 教授

要旨
 2010年4月,肝硬変に対して日本消化器病学会よりEBMの手法に基づいた診療ガイドラインが刊行された.このガイドラインは肝硬変の診療における指針を網羅的に記していることを特徴とする.本稿では,肝硬変の原因疾患と主な合併症に対する治療について,このガイドラインを中心に概説する.ガイドラインはあらゆる臨床現場に対応しているわけではなく,医師は個々の状況を的確に判断したうえで,適用していかなければならない.

目次に戻る