要旨
最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 48/循環器7
急性冠症候群


第1章 急性冠症候群の成因
概念と定義

平山 篤志   日本大学医学部内科学系循環器内科分野 教授

要旨
 虚血性心疾患の予後を決定する急性心筋梗塞や不安定狭心症は,冠動脈内のプラークの破綻やびらんに引き続き生じる血栓により,血管内腔が狭窄あるいは閉塞することで心筋虚血や壊死を来すことが病因と考えられる疾患で,このような病態を急性冠症候群と定義する.

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第1章 急性冠症候群の成因
病理と病態生理

竹村 元三  岐阜大学医学部附属病院循環器内科 准教授
川崎 雅規  岐阜大学医学部附属病院循環器内科 講師
藤原 久義  兵庫県立尼崎病院 院長

要旨
 急性冠症候群(acute coronary syndrome)は不安定狭心症,急性心筋梗塞,心臓突然死を含む病態であり,冠動脈の急性イベントを一連の流れとしてとらえた概念であるが,この病態の背景には不安定プラークの破綻に続発する冠動脈内血栓形成,それによる急性冠閉塞がある.本稿では不安定プラークの病理学的特徴ならびにその形成と破綻のメカニズムについて記述する.

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第1章 急性冠症候群の成因
疫学と冠危険因子

葛西 隆敏   虎の門病院睡眠センター
          順天堂大学医学部循環器内科
代田 浩之   順天堂大学医学部循環器内科 教授

要旨
 急性冠症候群は,不安定プラークの破綻に起因する急性心筋虚血が引き起す複数の病態を含む症候群であり,単一の疾患単位としての疫学的データは少ないが,生活習慣の欧米化に伴い本邦における頻度は増加傾向にあると推測される.冠危険因子とのかかわりについては,欧米に比して糖尿病や高血圧との関連が強い可能性が示唆されている.最近では耐糖能障害やメタボリックシンドロームなどとの関連も注目されている.

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第2章 発症から初期治療まで
初期診断と最終診断

山本  剛   日本医科大学付属病院集中治療室
安武 正弘  日本医科大学内科学(循環器・肝臓・老人・総合病態部門)准教授

要旨
 急性冠症候群は発症パターンの違いから冠動脈の完全閉塞によるST上昇型あるいは不完全閉塞による非ST上昇型に二分され,初期診断および治療方針が決定される.その後トロポニンやCK-MBなどの心筋マーカー,Q波出現の有無により,不安定狭心症や非Q波梗塞,Q波梗塞の最終診断が確定する.近年は最終診断の判定に,Q波出現の有無よりも急性冠症候群を一貫してリスク層別できる心筋トロポニンが用いられる傾向にある.

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第2章 発症から初期治療まで
胸痛の鑑別

岩坂 潤二  関西医科大学第二内科心臓血管病センター 助教
山本 哲史  関西医科大学第二内科心臓血管病センター 助教
前羽 宏史  関西医科大学第二内科心臓血管病センター 助教
朴  幸男   関西医科大学第二内科心臓血管病センター 助教
岩坂 壽二  関西医科大学第二内科心臓血管病センター 教授

要旨
 胸痛の鑑別の最も大切なことは,速やかに重症・緊急疾患を鑑別し,Doctor's delayを最小限にとどめることである.すなわち,“胸痛”症状を呈する疾患のうち,心血管系疾患で重症度・緊急性が非常に高い急性冠症候群と急性大動脈解離,肺血栓塞栓症,劇症型心筋炎のprimary careにおける鑑別が必要である.これら疾患を臨床の場で常に念頭に置き,胸痛に対処する必要がある.

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第2章 発症から初期治療まで
心電図所見

大和 眞史   諏訪赤十字病院 副院長
          諏訪赤十字病院 教育研修推進室長

要旨
 心電図によって心筋壊死(新しいQ波),重症度,予後や合併症の評価ができ,急性期治療方針決定に重要である.梗塞の部位・大きさと発症からの経過時間によって心電図変化は多彩なため,早期には5〜10分ごとの経時的観察が必須である.ST上昇から梗塞・虚血部位を推定可能であるが,ST低下からは部位を特定できない.種々の病態で梗塞類似の心電図を呈するからST変化は特異的でなく,その経時的変化を読むことが重要である.

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第2章 発症から初期治療まで
心筋マーカー

酒井  宏   公立甲賀病院内科 医長
蔦本 尚慶   滋賀医科大学呼吸循環器内科 講師
堀江  稔   滋賀医科大学呼吸循環器内科 教授

要旨
 急性冠症候群患者に対する再疎通療法を有効に行うためにも,鑑別診断を速やかに行うことが重要である.その際に種々の生化学心筋マーカー(バイオマーカー)による診断は簡便かつ信頼性が高く有用である.さらに,重症度評価,予後および再梗塞のリスク評価や治療方針の決定にもバイオマーカーが使われ,多くの大規模臨床試験でその有用性が示されている.

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第2章 発症から初期治療まで
心エコーによる鑑別診断

伊藤  浩   桜橋渡辺病院心臓・血管センター センター長

要旨
 急性冠症候群の中でも急性心筋梗塞の診断と病態評価に果たす心エコー図法の役割は大きい.胸痛を主訴とする他の疾患との鑑別,心電図変化から判定できない症例の診断,そして梗塞リスクエリア・責任血管の評価,心原性ショックを始めとする合併症の診断において必須の検査と言える.特徴的な心エコー所見を理解することにより,急性期の現場で心エコー図法を活用する場面が増えることが期待される.

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第2章 発症から初期治療まで
プレホスピタルケアと初期管理

立花 栄三  駿河台日本大学病院循環器科
長尾  建  駿河台日本大学病院救命救急センター 部長

要旨
 急性冠症候群には,急性心筋梗塞,不安定狭心症,そして心臓突然死が含まれる.特にCCUの整備と再灌流療法の進歩により,急性冠症候群の院内死亡率は減少したが,心臓突然死による院外心停止例の死亡率はいまだ高い.急性冠症候群の真の死亡率を下げるためには,特にプレホスピタルケアと初期管理が重要である.

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第3章 ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
急性心筋梗塞症に対する再灌流療法

木村 一雄    横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター 教授
小菅 雅美    横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター

要旨
 発症早期のST上昇型心筋梗塞症において,再灌流療法により梗塞サイズの縮小に基づく左室機能保持が予後改善に最も重要であり,多くは2時間以内に再灌流することでその効果が期待できる.このため新たなデバイスや薬物の開発が行われるとともに救急システムを構築することも必要である.患者の病態を把握したうえで,施設や術者の状況に応じた迅速かつ安全確実な再灌流療法を選択することが望ましいと考える.

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第3章 ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
薬物療法

高見澤 格  財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院循環器内科
浅野 竜太  財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院循環器内科 部長
住吉 徹哉  財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 副院長
  
要旨
 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)における治療の原則は,再灌流により心筋虚血を解除し梗塞範囲を縮小することである.血栓溶解療法や冠動脈インターベンション(PCI)による再灌流療法が重要であることは言うまでもないが,これらを補助する薬物療法も患者の予後にかかわっている.STEMIの患者が来院した場合,まず除痛を始めとした初期治療を開始し,続いて血栓溶解療法やPCIの適応を判断して,カテーテル治療のための抗血小板薬の投与を行う.PCI後は患者の状態に合わせてACE-I/ARB,βブロッカー,Ca拮抗薬,スタチンの投与を積極的に行う.

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第3章 ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
心不全治療

矢尾板裕幸  福島県立医科大学医学部第一内科 講師

要旨
 ST上昇型急性心筋梗塞では半数以上で心不全を合併するが,その治療としては,早期の再灌流療法,心原性ショックでは,血行動態モニタリング下の急速補液,強心薬,昇圧薬,および呼吸管理(NIPPV,IPPV),抵抗性であれば機械的補助の併用,右室梗塞では急速補液,徐脈性不整脈に対するペーシング,心原性肺水腫(ショックを除く)では呼吸管理,硝酸薬,ループ利尿薬,カルペリチドの使用などが挙げられる.


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第3章 ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
重篤な不整脈への対策

杉   薫  東邦大学医療センター大橋病院循環器内科 教授

要旨
 ST上昇型急性心筋梗塞に合併する最も重篤な不整脈は心室頻脈性不整脈であり,迅速な診断と対応が求められる病態である.リドカインは期外収縮を抑制して心室頻脈性不整脈を予防する目的で使用される.心機能が低下して心室頻脈性不整脈を反復する場合は,ニフェカラントかアミオダロンを選択する.Electrical stormに対しては,引き金となる期外収縮をカテーテルアブレーションする方法もある.

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第3章 ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
外科治療(合併症を含む)

幕内 晴朗  聖マリアンナ医科大学心臓血管外科 教授

要旨
 ST上昇型急性心筋梗塞に対する侵襲的治療の第1選択は冠動脈インターベンション(PCI)で,緊急冠動脈バイパス術の適応はPCIに適さない,胸痛持続型または再発型の左冠状動脈主幹部(LMT)病変例や3枝病変例に限られる.臨床症状の推移や冠動脈病変を十分見極めて手術適応や手術時期を決定する.心室中隔穿孔や左室自由壁破裂,乳頭筋断裂などの機械的合併症を起した場合には急速に血行動態が悪化するので,迅速な診断と緊急手術が必要である.

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第3章 ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
心筋保護対策

朝倉 正紀  国立循環器病センター臨床研究開発部 医長
浅沼 博司  近畿大学医学部附属病院救急診療科 講師
北風 政史  国立循環器病センター心臓血管内科 部長
          国立循環器病センター臨床研究開発部 部長

要旨
 急性心筋梗塞の急性期治療は劇的に進歩を遂げた.そのおかげで急性心筋梗塞患者の救命率は向上し,急性心筋梗塞患者の予後改善が得られた.しかしながら,心筋梗塞後の心血管イベント(心不全の再入院など)が多く,これらの抑制が重要な課題となっている.かかる課題を克服するために,心筋梗塞治療に薬物による心筋保護対策が検討されている.

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第4章 不安定狭心症・非ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
リスク層別

森  文章  東京女子医科大学循環器内科
笠貫  宏  東京女子医科大学循環器内科 教授

要旨
 不安定狭心症・非ST上昇型心筋梗塞は症例ごとに病態が多様であり,心筋梗塞への進展や心臓突然死に至るリスクが大きく異なる.そのため診断がつき次第,早期にリスク層別を行い,リスクごとに治療を行うことが大切である.リスク層別を行う際には,病歴に加え心電図,生化学的マーカーが重要となる.近年では,リスクの高い症例では積極的に冠動脈造影を行い,早期に血行再建を行うことが推奨されている.

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第4章 不安定狭心症・非ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
薬物治療

吉川  勉   慶應義塾大学医学部循環器内科 准教授

要旨
 非ST上昇型急性冠症候群(ACS)の短期予後は悪くないが,重症冠動脈病変を背景とすることが多く長期予後は不良である.ST上昇型ACSでは再灌流療法が優先されるのに対して,非ST上昇型ACSでは薬物治療が基本である.アスピリンの咀嚼服用とヘパリン静注に引き続いて,冠攣縮性狭心症など禁忌がなければβ遮断薬を開始する.硝酸薬やカルシウム拮抗薬などが古くから使われてきたが,確たるエビデンスは存在しない.最近,スタチン薬をACSの早期に開始することによって心血管イベントを減らすことができるとの報告がある.これら薬物治療を始めつつリスク評価を行い,高リスク患者に対しては侵襲的治療がさらに必要となる.

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第4章 不安定狭心症・非ST上昇型急性心筋梗塞の管理・治療
侵襲的治療

小山  豊   岩槻南病院 副院長
一色 高明  帝京大学医学部内科 教授

要旨
 不安定狭心症/非ST上昇型急性心筋梗塞に対する侵襲的治療は,高度〜中等度リスクを有する症例に対して発症から48時間以内にステントを用いた冠動脈インターベンションを行うことで,保存的治療に比べより良い予後が得られることが示されている.侵襲的治療に際しては,抗血小板薬の併用が必須であるが,海外の臨床研究では本邦で未承認の薬剤が使用されていることから,我が国独自の臨床試験が必要と考えられる.

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第5章 回復期および退院後の患者管理
予後に関するリスク評価

伊原 俊一   東京女子医科大学附属青山病院循環器内科
川名 正敏   東京女子医科大学附属青山病院 院長

要旨
 急性心筋梗塞後の急性期死亡率が著しく低下した現在でも,心筋梗塞再発や心不全発症による再入院および心臓突然死を来す症例も多い.左室機能,心筋虚血,重篤な不整脈および冠危険因子の有無や治療状況により生命予後は大きく異なり,適切な総合的病態評価と治療が必要である.非侵襲的検査にて危険因子,心機能,心筋虚血,不整脈を評価し,心筋虚血が疑われた場合,冠動脈造影などの侵襲的検査を施行して治療方針を決定する.

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第5章 回復期および退院後の患者管理
心臓リハビリテーション

及川 惠子   東海大学医学部附属八王子病院循環器内科 講師
伊東 春樹   財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 副院長

要旨
 近年,急性冠症候群においては冠動脈インターベンションの進歩により早期再灌流療法が確立され,早期離床ならびに入院期間が短縮されたが,入院中における患者教育の十分な介入が困難となっている.“包括的心臓リハビリテーション”は,冠危険因子の評価と是正,生活指導(運動・食事・服薬・禁煙指導)・復職指導・カウンセリング(助言と支援)を行うことにより,患者が自己の病気に対する正しい知識を得,自己管理をすることによって再発を予防し,QOLの向上や予後改善を目的としている.メタアナリシスで心臓リハビリテーションにより心筋梗塞後患者の死亡率を20〜25%低下することが示されており,その中心となるのが運動療法である.

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第5章 回復期および退院後の患者管理
1次・2次予防

海北 幸一  熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学 講師
小川 久雄  熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学 教授

要旨
 急性冠症候群の病態は通常,発症数ヵ月以内に安定化していくが,重要なことは当疾患の発症自体を予防することである.現在の急性冠症候群の予防には,生活習慣の改善,薬物療法や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)などの侵襲的治療法があり,最近の臨床試験などによりこれらの有用性が実証されている.近年,本邦でも急性冠症候群の予防に関する臨床試験が試みられるようになり,日本人独自のエビデンスが構築されるようになった.

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第6章 特殊な診断法と治療
血管内超音波法と血管内視鏡

清宮 康嗣   日本医科大学千葉北総病院内科
水野 杏一   日本医科大学内科学(循環器・肝臓・老人・総合病態部門)教授

要旨
 冠動脈造影法は,急性冠症候群の診断,治療を行ううえでのゴールデンスタンダードであることは言うまでもない.しかし,血管内腔のシルエットを見ているに過ぎず,血管壁,プラークに関する情報は十分ではない.現在臨床においては,他の検査法を必要に応じ組み合わせて行うことで病変部を詳細に調べ,適切な治療法を選択している.
 血管内超音波(IVUS),血管内視鏡(AGS)は冠動脈造影に組み合わせ,各施設において頻用されている検査法であり,それらの重要性は今日大きいものと言える.それぞれ長所,短所があり,臨床においてはそれらを考慮した適切な使用が望ましい.

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第6章 特殊な診断法と治療
核医学・MDCT・MRIの応用

山田 昌央  東京医科大学病院循環器内科
平野 雅春  東京医科大学病院循環器内科 助教
肥田  敏   東京医科大学病院循環器内科 助教
山科  章   東京医科大学病院循環器内科 教授

要旨
 近年,循環器領域における非侵襲的画像診断は著しい発展を遂げている.早期の正確な診断が求められる急性冠症候群(ACS)の診断ストラテジーにおいても非常に重要な位置を占めている.胸痛患者の的確なトリアージは,医療の質の向上や経済効果などにも期待が持たれる.そのためには各モダリティーの特性や限界を知り,マルチモダリティーを臨床応用することが重要である.

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第6章 特殊な診断法と治療
急性心筋梗塞への再生医療−血管新生と心筋再生−

中野 律子   京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
高田 博輝   京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
辰巳 哲也   京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
松原 弘明   京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学 教授
          京都大学医学部探索医療センター重症心不全への細胞移植プロジェクト 教授

要旨
心筋梗塞への再生医療として末梢血単核球あるいは骨髄単核球を利用した血管新生治療が臨床応用されている.急性心筋梗塞(AMI)の冠動脈インターベンション(PCI)治療後に骨髄単核球を冠動脈から注入する血管新生治療が欧米で2001年頃からスタートした.初期のオープンラベル臨床試験では半年後の心機能が10%前後と改善し世界中の注目を浴びたが,最近の2重盲検試験では有意な改善がみられないとの報告もあり,適応症例の選択が必要になった.造血性サイトカイン(G-CSF)をAMI後に投与して,心機能を改善させる臨床試験も実施されている.一方,陳旧性心筋梗塞(OMI)への骨髄単核球の直接心筋移植は有効例が多く報告され,開胸・カテーテルを利用した再生医療が期待されている.ヒト心筋からの多能性幹細胞も分離され,低心機能の重症心筋梗塞への移植も間もなくである.心筋梗塞への再生医療の最新の臨床試験成績を中心に述べ,将来展望についても触れてみたい.

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第7章 ガイドライン
急性冠症候群治療のガイドラインの解釈

中村 正人   東邦大学医療センター大橋病院循環器内科 准教授
山口  徹   虎の門病院 院長

要旨
 急性冠症候群は最終診断を得るといった診断のプロセスに先んじて迅速な治療が必要とされる病態である.その観点から,救急の現場すなわち医師,看護師,救急救命士のマニュアル『救急蘇生法の指針』が策定された.胸痛発症から初期1時間における診療に焦点が置かれている.一方,日本循環器学会合同研究班は心電図上のST上昇の有無によってST上昇急性冠症候群と非ST上昇急性冠症候群の2つのガイドラインを作成しており,診断,治療,退院後の管理に至るまでの内容についてエビデンスに基づいた指針を示している.

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