要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 52/腎6
腎結石・尿路結石



第1章 概念・病因と疫学
結石の発生機序と結石形成

小出 卓生  大阪厚生年金病 副院長

要旨
 尿路結石の発生機序ならびに結石形成に至る過程の解説はいまだ活発な議論の中にあり,総説的に解説できるほど簡単ではない.特に,尿路結石成分の多くを占めるシュウ酸カルシウム結石の発生機序については,我が国のみならず世界的にも重要な研究問題であり,最新の研究手法も導入され slow but steady に研究が展開されつつある.本稿では,その大きな流れを概説した.

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第1章 概念・病因と疫学
尿路結石の構成成分と構築

竹内 秀雄  公立豊岡病院組合立豊岡病院 院長

要旨
 尿路結石は大部分晶質よりなり,一部有機性基質を含む.晶質にはシュウ酸カルシウム一水化物および二水化物,ヒドロキシアパタイトやカーボネートアパタイト,リン酸水素カルシウム,リン酸マグネシウムアンモニウム,尿酸および尿酸塩,シスチンなどがあり,これらの単一成分や混合の結石がある.それぞれについて形態的特徴やその構築を述べ,破砕についても言及した.

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第1章 概念・病因と疫学
疫 学

井口 正典   市立貝塚病院 院長

要旨
 2005年に実施された尿路結石に関する全国疫学調査結果を中心に述べた.年間罹患率(人口 10 万人対)は男性 192 人,女性 79 人で,40 年間で約3倍増加し,10 年前との比較でも男性63%,女性 79% 増加した.生涯罹患率は男性 15.1%,女性 6.8% で,男性7人に1人,女性 15 人に1人が一生の間に一度は尿路結石症に罹患することになる.生活習慣病の一形態として尿路結石症を位置づける必要がある.

第2章 病理・病態生理
副甲状腺機能亢進症・骨粗鬆症

高見  博   帝京大学医学部外科学 教授
亀山 香織  慶応義塾大学医学部病理学 講師

要旨
 副甲状腺腺腫と過形成は,組織学的には単結節か多結節か,normal rimの有無で鑑別しているが,実際は難しい.癌は被膜あるいは脈管侵襲により診断できる.骨粗鬆症は骨梁の数が減少するとともに菲薄化し,表面で破骨細胞の増加が認められる.
 副甲状腺機能亢進症は原発性と続発性(腎性)とに大別できる.ともに日本ではこの分野の臨床,研究は遅れている.その理由は,これらの病態よりも骨・Ca 代謝に興味を持っている人が多いからである.

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第2章 病理・病態生理
シュウ酸カルシウム結石症

諸角 誠人   埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科 准教授
山田 拓己   埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科 教授
寺尾 俊哉   埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科 講師

要旨
 シュウ酸カルシウム結石はシュウ酸とカルシウムをミネラル成分としたものであり,全尿路結石の 90% 以上を占める.シュウ酸カルシウム結石の成因は多因子にわたり,その中で尿中シュウ酸は重要な位置を占めている.尿中シュウ酸は代謝により産生される内因性シュウ酸と,消化管吸収による外因性シュウ酸により大きく影響される.そして,尿中シュウ酸と尿細管細胞との相互作用が,シュウ酸カルシウム結石形成の重要な鍵となっている.



第2章 病理・病態生理
尿細管性アシドーシス・髄質海綿腎

堀江 重郎  帝京大学医学部泌尿器科 教授

要旨
 尿細管性アシドーシスと髄質海綿腎は臨床での頻度が高い疾患である.酸排泄は尿細管の重要な機能であるが,どちらの疾患も尿細管での酸排泄能の低下があるのを特徴とする.尿細管性アシドーシスには,酸排泄の障害部位により近位型と遠位型に分類される.特に遠位尿細管性アシドーシス(T型)は髄質海綿腎に合併することが多く,腎結石の原因となる.髄質海綿腎は腎発生での集合管の形態異常に起因するが,先天異常に合併することもある.特徴的な画像診断で診断できる.



第2章 病理・病態生理
感染性尿路結石

松本 哲朗  産業医科大学泌尿器科 教授

要旨
 尿路感染症に基因して尿路結石が形成される感染結石の成因には,ウレアーゼ産生菌が関与している.ウレアーゼ産生菌は多岐に及ぶが,Protus mirabilis が最も多く分離される.一般細菌以外にも Ureaplasma spp. などもウレアーゼを産生し,結石形成に関与するものと思われる.また,細菌の biofilm 形成やnanobacteriaなどが,結石形成の初期段階で関与している可能性がある.



第2章 病理・病態生理
痛風・高尿酸血症

清水  徹   医療法人祐生会みどりヶ丘病院リウマチ科 副院長

要旨
 痛風には尿路結石の合併が多く,尿路結石症と尿酸代謝異常の関係を探るうえで研究対象になる.1960 年代の Gutman,Y■らの学説はこの分野の原典となっているが,治療がほとんど尿酸排泄薬で行われていた時期に確立されたものであり,幾つかの点で問題がある.アロプリノールの登場を契機として異なった意見も現れているが,特に近年,肥満を背景としたインスリン抵抗性と高尿酸血症や酸性尿の関連が注目されている.



第2章 病理・病態生理
シスチン尿症

赤倉功一郎  東京厚生年金病院泌尿器科 部長

要旨
 シスチン尿症は,腎尿細管におけるシスチンと二塩基性アミノ酸の吸収障害を本態とする常染色体劣性の遺伝性疾患で,尿路にシスチン結石を形成する.原因遺伝子として rBAT/SLC3A1 と BAT1/SLC7A9 が同定され,新たな遺伝子病型分類が提唱された.診断には,家族歴,結石分析,尿中アミノ酸定量などが有用である.治療は非侵襲的な結石の除去が基本だが,飲水食事指導や薬物療法による再発予防が重要である. 



第2章 病理・病態生理
2,8-Dihydroxyadenine結石・キサンチン結石

長妻 克己   済生会横浜市東部病院腎泌尿器センター泌尿器科 医長

要旨
 Adenine phosphoribosyltransferase(APRT)欠損症は常染色体劣性遺伝疾患で,X線陰性の2,8-Dihydroxyadenine(2,8-DHA)結石の原因疾患である.結石の初発年齢は乳幼児から高齢者まで幅広い.尿中round crystalや尿中アデニンの上昇,腎機能障害が特徴である.アロプリノールの内服や飲水量の増加,低プリン食の摂取を行うと予後は良い.キサンチン結石は,尿中キサンチン濃度の上昇により尿路にX線陰性結石ができる疾患である.予防法は水分の大量摂取と低プリン食指導である. 



第2章 病理・病態生理
過シュウ酸尿症1型

服部 元史  東京女子医科大学腎臓小児科 教授
松村 英樹  東京女子医科大学腎臓小児科
  
要旨
 原発性過シュウ酸尿症1型は,シュウ酸過剰産生を主徴とする常染色体劣性遺伝疾患で,肝臓のペルオキシソームに特異的に存在するアラニン-グリオキシル酸アミノ基転移酵素の機能異常によるグリオキシル酸代謝異常症の1つである.過シュウ酸尿症,腎尿路結石,腎石灰化,進行性腎機能障害,全身へのシュウ酸カルシウムの沈着(オキサローシス)を特徴とし,慢性腎不全例では肝腎複合移植の適応となる.

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第2章 病理・病態生理
過シュウ酸尿症2型

高山 達也   浜松医科大学泌尿器科 助教
永田 仁夫   浜松医科大学泌尿器科 助教
麦谷 荘一   浜松医科大学泌尿器科 講師
大園誠一郎  浜松医科大学泌尿器科 教授

要旨
 過シュウ酸尿症2型ではグリオキシル酸/ヒドロキシピルビン酸還元酵素(GRHPR)の欠損により,サイトソル内に大量に蓄積したグリオキシル酸とヒドロキシピルビン酸が乳酸脱水素酵素(LDH)によりシュウ酸とL−グリセリン酸に変換され,尿中に排泄される.無症候から尿路結石,腎不全,多臓器不全に至るものまで広範囲にわたる.15種類の遺伝子変異が報告されている.GRHPR は組織内にユビキタスに存在し,細胞内ではサイトソルとミトコンドリアに局在する.

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第2章 病理・病態生理
小児尿路結石症

浅沼  宏    東京都立清瀬小児病院泌尿器科 医長
宍戸清一郎   東京都立清瀬小児病院泌尿器科 医長
佐藤 裕之   東京都立清瀬小児病院泌尿器科
村松 真樹   東京都立清瀬小児病院泌尿器科
田村 啓成   東京都立清瀬小児病院泌尿器科

要旨
 小児尿路結石症は比較的まれな疾患であるが,生活習慣の変化などにより成人同様に今後増加することが懸念されている.成人症例と比べ先天性代謝疾患や尿路奇形を有する症例が多いため,結石の治療方法や再発防止の検討のためにも,血液・尿生化学検査や画像検査による原因検索が必要である.また,小児に対する結石治療として,近年は体外衝撃波砕石術(ESWL)や endourology などの低侵襲治療が積極的に行われるようになっている.

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第2章 病理・病態生理
薬剤による尿路結石

柑本 康夫  和歌山県立医科大学泌尿器科 講師
射場 昭典  和歌山県立医科大学泌尿器科 助教
原   勲   和歌山県立医科大学泌尿器科 教授

要旨
 薬剤による尿路結石は全尿路結石の1〜2%を占めるに過ぎないが,その多くは予防可能なものであり,常に注意を払っておかなくてはならない.尿中で薬剤やその代謝産物が結晶化することによって形成された結石では,結石成分分析から原因薬剤の同定が可能である.一方,薬剤がシュウ酸,カルシウム,尿酸などの代謝に影響することによって誘発された結石では,詳細な病歴および薬歴の調査から薬剤の関与を明らかにする必要がある.



第2章 病理・病態生理
腎盂癌の合併

山口 千美  社会福祉法人三井記念病院泌尿器科 科長

要旨
 尿路結石症患者における腎盂癌の合併は 0.2〜0.6% にみられ,一般よりその発生頻度は高くなる.扁平上皮癌や腺癌では結石の存在が病因となることが示唆されている.本邦では現在まで 158 例が報告されており,最近では移行上皮癌の報告が多い傾向にあった.過去10年の正診率は50%未満と,いまだ術前診断が困難であり,診断されたときには進行癌のことが多く,一般に予後が不良である.尿路結石症患者に対しては,腎盂癌の合併を念頭に置いて日常診療にあたるべきである.

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第2章 病理・病態生理
腎移植後の尿路結石

矢澤 浩治  大阪府立急性期・総合医療センター泌尿器科 診療主任

要旨
 腎移植後の尿路結石の頻度は,0.2〜1.7%と高くはない.腎移植後に使用される免疫抑制薬のうち,ステロイド,シクロスポリン,ミゾリビン,ミコフェノール酸モフェチルは,高尿酸血症,高カルシウム尿,尿細管性アシドーシスなど尿路結石の危険因子の原因となる.また,腎移植後の尿路感染症,三次性副甲状腺機能亢進症といった問題も尿路結石の原因となりうる.

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第2章 病理・病態生理
腎胞性疾患と結石

奴田原紀久雄  杏林大学医学部泌尿器科 教授
東原 英二    杏林大学医学部泌尿器科 教授

要旨
 常染色体優性多発性D胞腎では約 20% の症例で尿路結石の合併をみる.尿路結石の成因として,嚢胞による尿路通過障害とアンモニア排泄量やクエン酸排泄量の減少が関与していると考えられている.外科的治療の適応と手術法は,一般の尿路結石と同様で体外衝撃波砕石術が主体になるが,症例によっては経皮的腎砕石術も適応となる.



第2章 病理・病態生理
尿路変更と結石

朝倉 博孝   東京電力病院泌尿器科 科長
要旨
 尿路変更術に伴う尿路結石は,シュウ酸カルシウム結石ではなく,リン酸マグネシウムアンモニウム,リン酸カルシウム,炭酸リン酸塩などの感染性結石が主たるものである.その理由は,消化管を尿路に転用するので,慢性代謝性アシドーシスを引き起し一連の尿中結石関連物質が増加したり,尿管導管吻合部狭窄などの手術の合併症による上部尿路の拡張や粘液閉塞によるリザーバーのドレナージ不良などの尿停滞,易感染性,ステープルなどの異物の存在が挙げられる.以上のように特徴的な病態を呈する.



第2章 病理・病態生理
神経因性膀胱と結石

田尻 雄大  神奈川リハビリテーション病院泌尿器科 医長
長島 政純  神奈川リハビリテーション病院泌尿器科
田中 克幸  神奈川リハビリテーション病院泌尿器科 部長

要旨
 神経因性膀胱には尿路結石を合併することが多い.結石の成分はリン酸マグネシウムアンモニウムを含むものが多く,一般的な尿路結石でみられるシュウ酸カルシウムを主成分とするものと異なる.慢性尿路感染が1つの発生原因と考えられる.原疾患の急性期,回復期には尿道留置バルーンカテーテルの長期留置による膀胱結石が多い.早期抜去と膀胱洗浄が予防になると考えている.慢性期は排尿管理別に結石の原因,予防について概説する.

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第3章 診 断
尿検査・飽和度測定

小川 由英 琉球大学医学部泌尿器科 教授

要旨
 尿路結石が発生あるいは再発するためには,尿中の結石関連物質が一定期間過飽和になることが必要である.尿が過飽和状態でないと結石は発生しない.尿の生化学検査で,過シュウ酸尿,過カルシウム尿,低クエン酸尿,低マグネシウム尿などは,治療すべき病態を知るのに便利である.過飽和度は結石ができるか否かのリスクの判定に有用である.過飽和状態の際に高分子の結石阻止物質が重要な役割を果たす.尿の飽和度を測定するために Finlayson が 30 年前に考案した Equil プログラムが現在でも改良されて用いられている.改良された Equil2 のプログラムによりイオン活量積,自由エネルギーの微分(dG),supersaturation ratio(SS)などが求められる.これらは飽和度を示し,その簡易法として Marshall-Robertson のノモグラム,Tiselius の指数,我々が考案した計算式が用いられている.

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第3章 診 断
過カルシウム尿症の診断

松崎 章二  稲城市立病院泌尿器科 診療部長

要旨
 過カルシウム尿症はカルシウムの病態によって,腸管吸収性過カルシウム尿,腎性過カルシウム尿,骨吸収性過カルシウム尿に分類される.本稿ではおのおのの病態を解説した.また,過カルシウム尿症は原因疾患が特定できる2次性過カルシウム尿症と原因不明の特発性過カルシウム尿症に分類される.各原因疾患について尿路結石成因を説明した.本稿が臨床の場でのカルシウム含有結石の治療,再発予防の一助になることを希望する. 

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第3章 診 断
過シュウ酸尿症

高山 達也   浜松医科大学泌尿器科 助教
永田 仁夫   浜松医科大学泌尿器科 助教
麦谷 荘一   浜松医科大学泌尿器科 講師
大園誠一郎  浜松医科大学泌尿器科 教授

要旨
 尿路結石症の約 80% はシュウ酸カルシウムを成分として含み,過シュウ酸尿症は再発結石の大きな原因となる.産生の増多には原発性過シュウ酸尿症1型・2型と特発性があり,吸収の増多には腸管性過シュウ酸尿症などがある.小児期以前の尿路結石症は重篤な合併症を来す原発性過シュウ酸尿症の可能性があり,また再発尿路結石も結石の嵌頓による腎機能の低下を起すため,原因の検索は十分に行うべきである. 

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第3章 診 断
低クエン酸尿

有賀 誠司   新松戸中央総合病院泌尿器科 部長

要旨
 クエン酸は体内でエネルギーを産生するだけでなく,体内のアルカリ化,尿アルカリ化,カルシウムのキレート作用を有するが,後者2つの働きが尿路結石の生成抑制に重要である.実際,尿中のクエン酸排泄量の低下はカルシウム系尿路結石生成の危険因子とされており,尿路結石患者では低クエン酸尿症を呈する割合が多いとされている.尿中クエン酸排泄を低下させる因子として代謝性アシドーシス,慢性酸負荷があり,動物性タンパク質などの酸性食の過剰摂取は低クエン酸尿症の原因とされているが,遺伝的因子の関与も指摘されている.尿中クエン酸排泄量に重要な働きをしている腎近位尿細管管腔側のナトリウムジカルボン酸トランスポーター(NaDC-1)の遺伝子多型が関与している可能性がある.

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第3章 診 断
低マグネシウム尿

有賀 誠司  新松戸中央総合病院泌尿器科 部長
北村 唯一  東京大学医学部泌尿器科 教授

要旨
 マグネシウム欠乏モデル動物においてカルシウム含有結石が生じることが証明されていることから,尿中でマグネシウムは尿路結石形成抑制因子として働いていることが知られている.健常人に比べ尿路結石患者では尿中マグネシウム排泄量が低下しているとの報告があるが,変わらないとの報告もある.マグネシウム製剤の投与による尿路結石生成予防に関しては賛否両論であるが,最近 4,500 人超を対象とした prospective cohort study でマグネシウム摂取不足は尿路結石生成の危険因子であると報告された.他の疾患においてもマグネシウム代謝は近年注目されており,腎での再吸収,分泌の機序が次第に明らかにされてきた.尿路結石生成との関係についてのさらなる研究が期待される.

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第3章 診 断
高尿酸血症・高尿酸尿

山口  聡  北海道社会事業協会富良野病院尿路結石治療センター センター長

要旨
 高尿酸血症や高尿酸尿は,尿酸結石に限らず,カルシウム含有結石の形成にも関与し,尿路結石症全体の発生機序を知るうえで重要な位置を占める.その診断には,血清尿酸値,尿中尿酸排泄量や尿 pH の測定のみならず,家族歴や既往歴,現病歴の把握が極めて有益である.また,高尿酸血症や痛風に頻用される尿酸排泄促進薬には特に注意を払う必要がある.適切な診断により初めて以後の尿路結石の治療や再発予防に結びつけることが可能となるであろう.

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第3章 診 断
尿中高分子物質

宮澤 克人  金沢医科大学泌尿生殖器治療学 准教授
鈴木 孝治  金沢医科大学泌尿生殖器治療学 教授

要旨
 尿中高分子物質は主にシュウ酸カルシウム(CaOx)結晶,腎尿細管細胞に作用し,尿路結石発生に促進的・抑制的に働き重要な役割を成しており,糖タンパクと glycosaminoglycan の2つの成分,および結石に存在する物質と存在しない物質がある.  CaOx 結晶に対する作用と,結石マトリックスとしての役割,代表的タンパクである osteopontin,renal prothrombin fragment 1,bikunin について概説した.

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第3章 診 断
画像診断

本多 正徳  栃木県済生会宇都宮病院診療部放射線科 科長
小林  桂   栃木県済生会宇都宮病院医療技術部診療放射線技術科
八神 俊明  栃木県済生会宇都宮病院診療部放射線科
河野  勲   栃木県済生会宇都宮病院診療部放射線科
薄井 広樹  栃木県済生会宇都宮病院診療部放射線科
荒川 和清  栃木県済生会宇都宮病院診療部放射線科
谷村 慶一  栃木県済生会宇都宮病院診療部放射線科 医長

要旨
 尿路結石の診断法はマルチスライス CT の登場以来変化を見せている.腹部単純X線撮影(KUB),超音波,排泄性尿路造影による診断から,今後はCT urographyによる診断が主流になると考えられる.CT による画像診断上,尿管結石と静脈石の鑑別は重要であり,soft-tissue rim sign やcomet tail signが役立つ.尿路閉塞に伴うperinephric fat strandingも把握しておく必要がある.

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第3章 診 断
結石様の疼痛と鑑別診断

荒川  孝  国際医療福祉大学三田病院尿路結石破砕治療センター センター長

要旨
 尿路結石からくる疼痛は激烈で,しかも深夜から明け方に急に発症することが多く,各医療施設の通常の診療時間内に来院するよりも,時間外や夜間の二次救急を受診する機会が多くなりがちである.自律神経症状も強く出るため,尿路結石以外の消化器疾患との鑑別が困難であることも多い.尿路結石からくる疼痛の特徴と鑑別すべき疾患を挙げながら,他覚的検査所見を含めて解説する.

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第4章 管理・治療
腎結石の治療

東  義人  医療法人医仁会 武田総合病院泌尿器科 副院長

要旨
 腎結石の手術的治療法はここ 20 数年の間に激変した.今や体外衝撃波砕石術(ESWL)と経皮的腎砕石術(PNL)による,いわゆる低侵襲的治療術式が中心となり,開放手術の施行頻度が激減した.本稿では,ESWL については基本原理を中心に,また PNLについては基本的な術式を中心に述べる.手術的治療においては,1つの術式にこだわることなく,両術式の長所を生かした併用療法を臨機応変に採用することが重要である.

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第4章 管理・治療
ESWLの適応・禁忌・合併症

佐藤 嘉一  三樹会病院泌尿器科 医局長
丹田  均   三樹会病院泌尿器科 院長
加藤 修爾  三樹会病院泌尿器科 院長
大西 茂樹  三樹会病院泌尿器科 院長

要旨
 体外衝撃波砕石術(ESWL)の適応・禁忌・合併症につきまとめた.現在も ESWL は尿路結石治療の中心的役割を担っている.機器の進歩により下部尿路結石などの適応が拡大されている.我が国においても ESWL 導入後 20 年以上が経過した現在,長期的合併症が注目されている.高血圧・糖尿病のリスクの増加の報告もあるが,我々の検討では腎結石および尿管結石間での差を認めず,長期的にも安全な治療と考えている.

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第4章 管理・治療
腎杯結石の治療

戸塚 一彦  自治医科大学附属さいたま医療センター泌尿器科 非常勤講師

要旨
 腎杯結石の治療は,結石の大きさ,部位によって異なる.5mm以下の結石では自然排石が期待できるが,5mm以上では排石されにくい.10mm以下の結石は無症状のことが多いが,疼痛発作を予防する目的で体外衝撃波砕石術(ESWL)を行っても,腎杯,殊に下腎杯に砕石片を残すことが多く,その予防効果は低い.したがって,無症状の腎杯結石では結石の増大を抑えることが肝要であり,結石が増大する場合に ESWL,経尿道的尿管砕石術(TUL),経皮的腎砕石術(PNL)を考慮する.

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第4章 管理・治療
珊瑚状結石の治療

冨安 克郎   久留米大学医学部泌尿器科 講師
松岡  啓   久留米大学医学部泌尿器科 教授

要旨
 珊瑚状結石は,小さな部分珊瑚状結石から大きな厚型の珊瑚状結石まで,その形態,ボリュームにおいて多種のものがある.標準的な珊瑚状結石は,経皮的腎砕石術と体外衝撃波砕石術の併用療法が第1選択となっている.ただ,小さなものでは体外衝撃波砕石術単独療法も選択肢となりうるし,腎機能が廃絶した感染を伴うものは,開放手術による腎摘除術が行われる.無症状に経過するものも多いが,腎機能の温存や尿路感染症の予防のためにも積極的治療をすべきである.

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第4章 管理・治療
馬蹄腎・尿路奇形に合併した結石治療

馬場 志郎  北里大学医学部泌尿器科 教授

要旨
 腎結石を合併する頻度の多い尿路奇形は,馬蹄腎,腎盂尿管移行部狭窄ならびに腎杯憩室である.尿のうっ滞があれば結晶が排泄されにくく,さらに感染を起しやすいことから結石形成され,さらに再発しやすい.また,non-struvite stone では,基礎に結石形成の原因となる代謝異常があることが通常の結石患者と同様に報告されている.治療は個々の症例の解剖学的特徴や結石のサイズ,部位によって異なり,低侵襲性治療を行うとともに,術後の適切な経過観察が再発予防に重要である.

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第4章 管理・治療
尿管結石の治療

高山 達也    浜松医科大学泌尿器科 助教
永田 仁夫    浜松医科大学泌尿器科 助教
麦谷 荘一    浜松医科大学泌尿器科 講師
大園誠一郎   浜松医科大学泌尿器科 教授

要旨
 尿管結石に対する積極的治療は,その簡便性と低侵襲性から体外衝撃波砕石術(ESWL)が選択されることが多い.しかし,ESWLが普及した現時点でも,ESWL単独治療では治療に難渋する症例もあることは事実である.ESWL砕石困難あるいは砕石効果が乏しい場合は,速やかに経尿道的尿管砕石術(TUL)の選択が望まれる.現時点では Ho:YAG レーザーを用いた TUL が,結石成分に左右されない高い砕石効果を有している.実際の日常診療では個々の患者の病態を考慮し,診療方針を検討する必要がある.

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第4章 管理・治療
Stone streetの治療

石川  悟  (株)日立製作所日立総合病院泌尿器科 副院長

要旨
 Stone street とは体外衝撃波砕石術(ESWL)の後に砕石片が尿管内につまった状態を言う.英語圏では steinstrasse を翻訳せずにそのまま用いる.結石が大きいほど発生頻度は高く,70% 以上下部尿管である.水腎症・尿路感染などの合併症がある.ESWL前のステント留置は尿路閉塞の予防に効果的である.治療はESWL,尿管鏡による砕石,経皮的砕石がある.交感神経α1ブロッカーの投与は排石に効果がある.

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第4章 管理・治療
高齢者の尿路結石

吉村 一宏  市立豊中病院泌尿器科 部長

要旨
 高齢者社会の到来に伴い,今後さらに高齢者の尿路結石症患者を診察,治療する機会が増えてくるものと考えられる.上部尿路,下部尿路結石症ともに現在は低侵襲な外科的治療が高齢者に対しても行われているが,高齢者は若年者に比べ全身状態の低下や他疾患を合併していることが多く,治療に際しては十分な留意が必要である.

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第4章 管理・治療
妊婦の尿路結石

岡田 裕作  滋賀医科大学泌尿器科学講座 教授

要旨
 妊婦が尿路結石症に罹患する率は,妊娠 250 回から 3,000 回に1回と比較的まれであるが,いったん罹患すると,胎児の被曝問題,疼痛に対する鎮痛薬や抗生物質の妊婦への使用法,侵襲的治療の適応の決定やその麻酔薬の使用法,未熟児出産率や胎児死亡の増加など,留意する点が極めて多い.治療にあたって,泌尿器科医,産婦人科医,放射線科医,麻酔科医の協調による診療が要求される.

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第4章 管理・治療
結石性腎盂腎炎

我喜屋宗久  医療法人おもと会 大浜第一病院泌尿器科 医長

要旨
 上部尿路結石症は,全尿路結石症の約 95% を占めている.上部尿路結石症は強い疝痛発作や血尿を伴うことが多く,救急の現場では日常的に遭遇する疾患ではあるものの,尿路結石のみでは致死的なケースはほとんどない.しかし,ひとたび感染を合併し結石性腎盂腎炎を発症すると,結石により閉鎖腔となった尿路内で増殖した細菌が腎盂内圧の上昇により容易に腎静脈へと侵入し敗血症へと進行する.いわゆる urosepsis である.尿ドレナージの適否を迅速に判断しなければいけない.

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第4章 管理・治療
薬物療法

伊藤尊一郎  豊川市民病院泌尿器科 部長
郡 健二郎   名古屋市立大学大学院医学研究科腎・泌尿器科学分野 教授

要旨
 尿管結石はしばしば急性腹症として受診するために,夜間外来や内科外来で診察する機会も多い疾患である.尿路結石の薬物療法は,結石によって引き起される疝痛発作の緩和と結石除去を目的とした,結石溶解療法および排石促進療法が主体となる.また,結石が排出した後の再発予防にかかわる薬物療法も重要である.本稿では,これらの尿路結石の薬物療法について概説した.

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第4章 管理・治療
漢方療法

小川 由英   琉球大学医学部泌尿器科 教授
外間 実裕   琉球大学医学部泌尿器科 講師

要旨
 尿路結石は増加の一途をたどり,ひとえにグルメ社会の産物でメタボリックシンドロームの1つと言わざるをえない.特殊な病態を除けば結石形成または再発は防止できる可能性がある.過食を避け,規則的にバランスよく摂取することが大切で,十分な飲水,適度の運動などが結石再発防止と予防になる.悪循環のベクトルを漢方により正しい方向に向けることが尿路結石治療の本治で,鎮痛と排石は西洋医学で良いと考える.

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第4章 管理・治療
結石溶解療法

秦野  直   東京医科大学泌尿器科 教授
米納 浩幸  東京医科大学泌尿器科

要旨
 結石溶解療法は,経口内服薬によるものと,腎瘻や尿管カテーテルから溶解液を灌流する方法に分けられる.経口内服薬で溶解可能な結石としては,尿酸結石やシスチン結石がある.一方,腎瘻カテーテルや尿管カテーテルによる方法は一般的な治療が困難な場合に用いられ,尿酸結石,リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)やシスチン結石が良い適応である.

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第4章 管理・治療
食事指導

井口 正典  市立貝塚病院 院長

要旨
 尿路結石症の食事療法について,栄養素摂取量と食生活全般の観点ならびに「尿路結石症は生活習慣病の一病態である」との観点から述べた.尿路結石予防のための食事指導は,糖尿病や高脂血症などの生活習慣病の予防と矛盾するものはなく,偏食や過食を是正し,規則正しい,好き嫌いのないバランスのとれた食生活を送ることである.食事指導ですべての結石の再発が予防できるものではないが,すべての結石患者に第一に行うべき再発予防法である.

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第4章 管理・治療
シュウ酸分解菌

外間 実裕  琉球大学医学部泌尿器科 講師

要旨
 ヒトの腸管内には多数のシュウ酸分解菌が生息していることが分かっている.腸管より吸収されるシュウ酸は尿路結石形成に重要な役割を果たしていることが証明されており,シュウ酸分解菌による腸管内でのシュウ酸分解により体内に吸収されるシュウ酸が減り,尿中シュウ酸濃度が減少する.今後は腸管内のシュウ酸分解菌を活用した結石形成予防の道が開かれることが期待される.

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第4章 管理・治療
再発予防

西尾 俊治  天真会南高井病院 副院長

要旨
 結石溶解療法は,経口内服薬によるものと,腎瘻や尿管カテーテルから溶解液を灌流する方法に分けられる.経口内服薬で溶解可能な結石としては,尿酸結石やシスチン結石がある.一方,腎瘻カテーテルや尿管カテーテルによる方法は一般的な治療が困難な場合に用いられ,尿酸結石,リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)やシスチン結石が良い適応である.

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第4章 管理・治療
尿路結石の経過・予後

山口 秋人   原三信病院泌尿器科 副院長
真ア善二郎  原三信病院泌尿器科 顧問

要旨
 腎杯結石についてはサイズ,位置,成分などの要素を考えて,治療か観察かを決めるべきとされる.珊瑚状結石は原則として積極的な治療が望まれる.尿管結石はサイズが大きいほど自排の可能性は少なく,5mm以上の尿管結石は積極的な治療が必要とされる.尿路結石は治療後の再発率が高く,厳重な経過観察が必要である.特に体外衝撃波砕石術(ESWL)後の clinically insignificant residual fragment は大半が残存もしくは増大する.

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第4章 管理・治療
医療経済

八木澤 隆  自治医科大学腎泌尿器外科学講座腎臓外科学部門 教授

要旨
 尿路結石の罹患率は年々上昇し,これに要する医療費も増大化している.治療法が確立され,治療に選択肢のある疾患に対してはcost-effectivenessを考慮した診療が求められ,尿路結石症はまさにこの点が実践されるべき対象である.破砕手技の選択にあたっては症例ごと,最少回で砕石可能であろう方法を初回選択することがcost-effectivenessにつながることになる.尿路結石症はまた代表的な再発性疾患であり,再発予防も cost-effectiveness に大きく寄与する.医療費はその国の医療制度,また検査費用,薬価,破砕治療費の相対的な比率によって異なるが,どのような状況下にあっても飲水励行,食事指導は最も安価で効率の良い方法である.再発例に対しては薬物療法を積極的に勧めるべきである.

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第5章 ガイドライン
診療ガイドラインの改訂

山口  聡  北海道社会事業協会富良野病院尿路結石治療センター センター長

要旨
 2002年12月に刊行された『尿路結石症診療ガイドライン』は,現在,改訂作業が進められている.ガイドライン作成手法は変化し,多くのガイドラインではクリニカルクエスチョン方式が採用されている.ガイドライン一般の問題点として,日本国内での大規模な前向き研究が少ないことが挙げられる.本ガイドラインにおいては,将来の改訂に備え,その妥当性の再評価と不足するエビデンスを補完する研究も行っており,その時代に即したガイドラインとなるべく努力している.

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