要旨


最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 53/循環器8
二次性高血圧


第1章 血圧の測定法・評価法と診断
血圧日内変動の評価法とその意義

池本 智一   自治医科大学内科学講座循環器内科部門
苅尾 七臣   自治医科大学COE/内科学講座循環器内科部門 教授

要旨
 高血圧診療においては近年,自由行動下24時間血圧(ABPM)が測定可能となり,24時間平均血圧とともにその変動性の評価が可能となった.血圧変動性の中でも日内変動が最も重要であるが,高血圧,特に二次性高血圧患者には,その血圧日内変動に異常を来していることが多い.日内変動異常自体が心血管イベントを始めとした高血圧性臓器障害の危険を高めており,その評価とそれに応じた治療が重要となる.

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第1章 血圧の測定法・評価法と診断
家庭血圧測定の重要性

田中 宏治  東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座
小原  拓   東北大学大学院薬学研究科臨床薬学講座
           東北大学21世紀COE‘CRESCENDO’
今井  潤  東北大学大学院薬学研究科臨床薬学講座 教授
           東北大学21世紀COE‘CRESCENDO’拠点リーダー

要旨
 本邦にはすでに 3,000万台以上の家庭血圧計が普及している.近年の欧米や日本の高血圧治療ガイドラインは家庭血圧測定の臨床的意義を高く評価している.家庭血圧測定は患者の高血圧治療への参加意識を高め,服薬コンプライアンスを高める.また,白衣高血圧・仮面高血圧の診断に不可欠であり,薬効評価にも極めて有用である.今後,家庭血圧測定の導入が高血圧診療の質を向上させ,医療経済へ好影響を与えることが期待される.

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第1章 血圧の測定法・評価法と診断
血圧計の国際規格:課題と展望

久代登志男   日本大学医学部総合健診センター 所長

要旨
 血圧測定は,高血圧診療のみならずバイタルサインとしても重要であり,血圧計の規格と精度管理法は,臨床医にとっても必要な知識である.現在,血圧計について国際標準化機構(ISO)規格が策定されつつあるが,上腕動脈血圧は 102 年前に報告された聴診法がゴールドスタンダードとなっている.聴診法を基準とする自動血圧計の精度管理法,カフの消毒と滅菌法,血圧計の防水性能,水銀計とアネロイド計の問題,心房細動患者など直接法が必要な場合などについて概説した.

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第1章 血圧の測定法・評価法と診断
降圧目標設定の根拠と課題

松浦 秀夫    済生会呉病院 院長

要旨
 二次性高血圧の降圧目標値はガイドラインで詳しく述べられていない.基礎疾患に対する治療により十分な降圧が期待される場合があるが,基礎疾患の治療までの間や,基礎疾患治療が困難である場合には降圧薬の使用が必要となる.若年・中年者では 130/85mmHg,臓器障害や合併症のある高血圧患者では 130/80mmHg と降圧目標値が低く設定されていることから,二次性高血圧も同基準で降圧を考えることが必要である.

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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
概念・分類

安東 克之  東京大学大学院医学系研究科分子循環代謝病学講座 准教授
藤田 敏郎  東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科 教授

要旨
 二次性高血圧は高血圧患者の一部を占めるに過ぎないが,原因となる病態を治療することにより,高血圧ならびに随伴症状の治癒や軽減が期待できる.高血圧患者全体からみると症例数は決して多くないので,疑われる所見の有無をみて精査を行うべきである.腎性高血圧や内分泌性高血圧など多様多種の疾患からなり,それぞれに疾患によって顕著な特徴がある.

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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
疫 学

斎藤 重幸   札幌医科大学第2内科 講師
島本 和明   札幌医科大学第2内科 教授

要旨
 昇圧成因が明らかな二次性高血圧は,高血圧全体の5〜10%に存在する.その中で腎実質性高血圧の割合が多く,糖尿病性腎症における高血圧は臨床的に重要である.日本人の最近の報告では腎性高血圧,内分泌性高血圧が,1施設における全高血圧患者の 9.1% 占めるとされている.二次性高血圧は原因治療により根治が可能であり,初診時の注意深い診察とスクリーニングによりこれを見逃がさないようにしなければならない.
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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
慢性腎臓病(CKD)と心血管病

松尾 清一    名古屋大学大学院医学研究科病態内科学講座腎臓内科 教授
安田 宜成    名古屋大学大学院医学研究科病態内科学講座腎臓内科
湯沢由紀夫   名古屋大学大学院医学研究科病態内科学講座腎臓内科 講師

要旨
 慢性腎臓病(CKD)は慢性に経過する腎臓病の総称であり,近年注目度が高くなっている.その理由は,数が多いこと,末期腎不全や心血管障害のリスク要因であること,進行度に応じて目標を定めた治療が可能であることによる.CKD の治療の目標は末期腎不全の減少と併発症としての軽減である.CKD は関連する分野が協力して克服すべき重要な疾患であり,対策の確立と実行が早急に必要である.

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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
メタボリックシンドロームと二次性高血圧

上嶋 健治   京都大学大学院医学研究科EBM研究センター 准教授
中尾 一和   京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科 教授

要旨
 内分泌性の二次性高血圧の中には,クッシング症候群,原発性アルドステロン症,甲状腺機能低下症など,生活習慣病を基盤とせずにメタボリックシンドロームの病態を呈するものがある.高血圧を呈するメタボリックシンドローム患者の診療にあたっては,内分泌性の二次性高血圧を念頭に,本態性高血圧との鑑別を行うべきである.

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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
高血圧の病態・心血管危険因子としてのレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の意義

山田 浩之  京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学 講師
椿本 恵則  京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
横井 宏和  京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
松原 弘明  京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学 教授

要旨
 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系は,血管収縮や体液・電解質調節を介して高血圧の病態において重要な役割を果たしている.さらに,オートクリン・パラクリン作用を介した組織 RAA 系の解明により,高血圧に合併する臓器障害の病態生理が明らかとなり,心血管危険因子として日常臨床での降圧療法に役立てられている.今後は,最近注目されているアルドステロンの心血管組織に対する直接作用と,心血管イベント発症に関連した血球細胞における組織 RAA 系のさらなる解明が望まれる.

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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
鑑別診断の手順

楽木 宏実    大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 教授
荻原 俊男    大阪府立急性期・総合医療センター 院長

要旨
 二次性高血圧の中で頻度の高いものは腎実質性高血圧であるが,その鑑別は比較的容易である.高血圧を主訴とする患者で鑑別診断の中心となる二次性高血圧は,腎血管性高血圧,原発性アルドステロン症,偽アルドステロン症を含む薬剤誘発性高血圧である.その他,副腎偶発腫の精査において褐色細胞腫,クッシング症候群も鑑別が求められる.鑑別診断を必要とされるに至った病態別にスクリーニング検査を中心に概説する.

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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
非薬物療法

河野 雄平  国立循環器病センター高血圧腎臓内科 部長
  
要旨
 非薬物療法はすべての高血圧患者に推奨されているが,原因除去により治癒が期待できる二次性高血圧においてはあまり重視されていない.しかし,腎実質性高血圧や副腎過形成による原発性アルドステロン症など内科的治療を要する二次性高血圧では,薬物療法とともに食塩制限などの非薬物療法も重要である.ただし,腎不全や妊娠高血圧における非薬物療法は,通常の高血圧とは一部異なることに留意を要する.

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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
薬物療法

松岡 博昭  獨協医科大学循環器内科 教授

要旨
 二次性高血圧治療の原則は原因を取り除くことであるが,腎実質性高血圧では生活習慣の修正と薬物治療が主体となる.腎血管性高血圧や内分泌性高血圧に対しては血行再建術や腫瘍摘出術が基本的治療であるが,手術が不可能な症例や術前には薬物治療が行われる.腎実質性高血圧や一側性腎血管性高血圧にはレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬,褐色細胞腫にはα遮断薬,原発性アルドステロン症に対してはアルドステロン拮抗薬がまず用いられるべき降圧薬である.


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第2章 概念・疫学・病態・鑑別診断・治療
二次性高血圧の診断・治療と医療経済

畔越 陽子   琉球大学医学部薬物制御学
植田真一郎  琉球大学医学部薬物制御学 教授

要旨
 二次性高血圧の頻度は高くないが,適切な治療で治癒または改善するものが多い.スクリーニングをして早期に発見することで合併症の予防,医療コスト削減を図ることは可能である.

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第3章 各 論
腎実質性高血圧 1.糸球体腎炎,慢性腎盂腎炎

水野 晶紫   名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学
木村玄次郎   名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学 教授

要旨
 腎疾患では腎機能が低下するにつれ,腎実質性高血圧を高率に発症し,腎不全の進行を促進させ悪循環を形成する.腎実質性高血圧としては,糸球体腎炎や糖尿病性腎症などの糸球体疾患と,慢性腎盂腎炎や多発性D胞腎などの間質疾患があり,その機序は腎障害に伴う糸球体限外濾過係数の低下が主な病因と考えられる.
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第3章 各 論
腎実質性高血圧 2.糖尿病腎症

片山 茂裕   埼玉医科大学内科学内分泌・糖尿病内科 教授

要旨
 糖尿病腎症を有する患者においては,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬かアンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)を用いて厳格な血圧管理が推奨される.この理由は,これらレニン・アンジオテンシン系を抑制する降圧薬が,全身の血圧低下に加えて糸球体高血圧を改善するからである.事実,多くの臨床試験でACE阻害薬かARBが腎症の進展を抑制することが証明されてきた.最近では寛解や退縮がもたらされることも明らかになり,また早期からの治療により微量アルブミン尿の発症を予防する試みも始まっている.

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第3章 各 論
腎血管性高血圧の診断と治療

藤野 貴行   旭川医科大学循環・呼吸・神経・病態内科講座 助教
長谷部直幸  旭川医科大学循環・呼吸・神経・病態内科講座 教授

要旨
 腎血管性高血圧(RVH)は腎血管病変に起因する高血圧で,血管病変の修復により降圧が得られる可能性がある.腎動脈病変の原因の主としては,粥状硬化症,線維筋性異形成,大動脈炎症候群が挙げられるが,動脈硬化性腎動脈狭窄(RAS)は最近増加しており,これには高齢化と,内臓肥満,糖尿病,脂質異常などのメタボリックシンドロームの増加が背景になっている.動脈硬化性は老年期の急激な高血圧の悪化や腎機能低下の原因ともなり,看過されている可能性もある.特に 65 歳以上の高齢者の高血圧で,難治性,腎機能障害,糖尿病,他の血管合併症を伴い,RAS 抑制薬の著効,RAS 抑制薬による血清クレアチニンやカリウム値の上昇をみる場合には本症を強く疑うべきである.本症の診断には三次元 CT,MRIアンジオ,超音波ドプラー法などがある.血漿レニン活性(PRA)は両側性 RAS,糖尿病や高齢者では高値とはならないことが多く,スクリーニングとしてあまり有効ではない.腎動脈の画像診断で 50% 以上の狭窄があれば,超音波ドプラー法やカプトプリル負荷シンチグラフィで機能評価を行う.これらの検査で機能的狭窄と判断された場合に DSA による血管造影を行い,適応があれば経皮経管的腎動脈形成術(PTRA)やステント挿入を行う.降圧薬治療としては,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を用い,降圧不十分であれば Ca 拮抗薬および(または)少量の利尿薬を併用する.

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第3章 各 論
内分泌性高血圧 1.原発性アルドステロン症

佐藤 文俊    東北大学大学院医学系研究科腎・高血圧・内分泌内科 助教
伊藤 貞嘉    東北大学大学院医学系研究科腎・高血圧・内分泌内科 教授

要旨
 日本人で最も罹患者の多い疾患は高血圧であり,最近患者数が急増している肥満を基礎にしたメタボリックシンドロームにおいても日本人患者の特徴は高血圧の頻度が極めて高いことである.最近の新薬の開発,普及とともに高血圧診療は格段の進歩を遂げ,高血圧治療は飛躍的に容易になった.しかし,単に血圧を下げれば良いという考えのもとに二次性高血圧の診断が遅れると,不適切,不十分な降圧治療により,脳・心血管障害,腎硬化症などの発症を招いてしまう可能性がある.全体の 10% を占める二次性高血圧の存在を意識し,鑑別診断を心がけることは日常診療において大切である.特に原発性アルドステロン症(PA)は最近,世界で急速に診断数が上昇して疾患概念が変化したコモンディジーズであり,決してまれな疾患ではない.最近,診断される PA は正常カリウム血症の頻度の方が高く,主症状が高血圧のみである.PA は初期には一般の高血圧と同じ顔をしているが,強い酸化ストレス発生の母体である高アルドステロン血症は,次第に,あるいは急速に治療抵抗性や重症高血圧に変貌して脳・心・腎などの臓器障害を引き起す可能性が高い.高血圧症患者の中から,低レニン高アルドステロン血症を呈する患者を的確にスクリーニングし,PA を鑑別診断して早期治療することは,患者個人の幸福のためにも医療経済上も極めて重要である.

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第3章 各 論
内分泌性高血圧 2.褐色細胞腫

安田  元   横浜市立大学附属市民総合医療センター腎臓・高血圧内科 部長
梅村  敏   横浜市立大学医学部病態制御内科 教授

要旨
 褐色細胞腫は,高血圧症の1%以下と頻度は高くないが特徴的な臨床症状を示し,同腫瘍を診断することは容易である.両側副腎性や副腎外発症が多く,良性と悪性との鑑別は難しい.腫瘍局在判定には CT や MRI,MIBG,PET などの画像診断が有用である.降圧には,αβ遮断薬投与を使用する.悪性褐色細胞腫では化学療法,放射線療法などの治療戦略がある.再発や転移の有無を確認するため,5年以上の経過観察が勧められる.

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第3章 各 論
内分泌性高血圧 3.クッシング症候群

柴田 洋孝    慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 専任講師
伊藤  裕    慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 教授

要旨
 クッシング症候群は,特徴的なクッシング徴候や副腎偶発腫瘍を契機に疑い,尿中遊離コルチゾール高値,デキサメタゾン抑制試験における早朝コルチゾール高値,夜間血清コルチゾール濃度高値などにより診断する.そして,病型診断は血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)濃度の低値で副腎性を疑い,下垂体 MRI,デキサメタゾン8mg抑制試験,副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)負荷試験,両側下錐体静脈洞サンプリングなどによりクッシング病と異所性 ACTH 症候群の鑑別を行う.治療は,副腎,下垂体,異所性の腫瘍摘出であるが,ステロイド合成阻害薬による薬物療法を適宜考慮する.

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第3章 各 論
内分泌性高血圧 4.甲状腺機能亢進症・低下症

大蔵 隆文   愛媛大学大学院医学系研究科病態情報内科学 准教授
檜垣 實男   愛媛大学大学院医学系研究科病態情報内科学 教授

要旨
 甲状腺機能亢進症は収縮期高血圧を,甲状腺機能低下症は拡張期高血圧を来す.二次性高血圧の原因としてその頻度は高いものではないが,特に甲状腺機能低下症では症状が少なく,脂質異常症を同時に来すため,長期にわたり見逃された場合,動脈硬化が進行する.このため臨床上,二次性高血圧の原因として本疾患を常に念頭に置く必要がある.

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第3章 各 論
内分泌性高血圧 5.チャネル異常と高血圧

北村健一郎   熊本大学大学院医学薬学研究部腎臓内科学分野 助教
冨田 公夫    熊本大学大学院医学薬学研究部腎臓内科学分野 教授

要旨
 Liddle症候群は,腎皮質集合尿細管の管腔側膜に局在する上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)の遺伝子変異によって発症する遺伝性高血圧症である.ENaC のPYモチーフに変異が生じることにより,Nedd4-2を介したENaCのユビキチン化およびエンドサイトーシスが減少し,細胞膜上のENaCの数が相対的に増加する.その結果として,ナトリウムの再吸収が増加し,食塩感受性高血圧症が発症すると考えられている.

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第3章 各 論
血管性・心臓性高血圧

甲斐 久史   久留米大学医学部心臓・血管内科 准教授

要旨
 血管疾患,特に大動脈縮窄症,大動脈炎症候群などの大動脈疾患を基礎疾患とする二次性高血圧を血管性(脈管性)高血圧と言う.これらの血管性高血圧の病態形成には,血管抵抗増大や大動脈壁硬化に伴う Windkessel 効果消失といった機械的因子が大きな役割を果たしているが,腎血管性高血圧などの神経液性因子の関与も無視できない.また,心拍出量増大を伴う大動脈弁閉鎖不全症,動脈管開存症,動静脈瘻では収縮期高血圧を合併する.

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第3章 各 論
妊娠誘発性高血圧

鈴木 洋通   埼玉医科大学腎臓内科 教授

要旨
 妊娠に関連して発症する高血圧は,大きくは2つあると考えている.1つは妊娠中に血圧が上昇し高血圧を示す妊娠高血圧症候群.1つは,妊娠高血圧症候群は妊娠の終了とともに消失するが,肥満やタンパク尿が残ると出産後 10 年,20 年,特に閉経期以後に血圧が上昇してくる場合がある.妊娠高血圧症候群の中で従来,妊娠中毒症とされてきた前子癇はしばしば低体重児と関連することがあり,適切な対応が求められる.

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第3章 各 論
薬剤性高血圧

北村 和雄    宮崎大学医学部内科学講座循環体液制御学分野 教授

要旨
 薬剤性高血圧では薬剤自体の血圧を上昇させる作用や降圧薬の作用を減弱させる作用により,一過性もしくは持続性の二次性高血圧が惹起される.薬剤性高血圧は薬剤を中止もしくは減量することで治療効果が期待できるので,治療抵抗性高血圧などでは,他の二次性高血圧とともに薬剤性高血圧の可能性を念頭に置く必要がある.ただ,実際の臨床では原因となる薬剤を中止できないことも多く,病態やエビデンスに基づいた降圧薬の選択も必要となる.

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第3章 各 論
高血圧性緊急症

鈴木  越    聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター生体機能制御研究部門 講師
木村健二郎   聖マリアンナ医科大学腎臓高血圧内科 教授

要旨
 高血圧性緊急症とは単に血圧が異常に高いだけの状態ではなく,血圧の高度の上昇によって脳,心,腎,大血管などの標的臓器に急速に障害が生じる切迫した病態であり,臓器障害の進行を止めるために速やかに降圧すべき病態である.急激な血圧上昇による臓器の血管内皮障害と,その結果生じる臓器の炎症・虚血が病態の基本である.臓器障害の程度,範囲を把握し,速やかに適切に降圧することが重要である.

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第4章 我が国における大規模臨床試験の評価
CASE−J

島田 和幸   自治医科大学循環器内科 教授

要旨
 CASE-Jの対象者の中には,かなりの割合で臓器障害や糖代謝障害をすでに潜在性あるいは顕在性に有している患者が含まれている.CASE-J全体では,これらのハイリスク群における降圧薬間の優位性に対する違いは見いだせなかった.アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)の臓器保護効果は認められなかったことになる.より限定的なハイリスク群,例えば糖尿病,肥満,メタボリックシンドローム,慢性腎臓病などで ARB が優位かどうか,現時点では不明である.それら自体を目的とした試験が必要になるであろう.

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第4章 我が国における大規模臨床試験の評価
JATOS

江頭 正人   東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座(老年病科)講師

要旨
 高齢高血圧患者の治療目標値は明らかになっていない.このことを明らかにする目的で,我が国において JATOS 試験が行われた.65 歳から 85 歳の高齢高血圧患者に対し,治療法としてニホニジピンを基礎薬とする薬物療法を行い,収縮期血圧値 140mmHg 未満に維持した群(A群)と,収縮期血圧を 140mmHg 以上 160mmHg 未満の範囲に維持した群(B群)の2群間で比較検討を行ったが,両群間で脳心血管イベントの発症,脳心血管死の発症率に有意差は認められなかった.さらに,腎機能別のサブ解析においては,腎機能が悪化した群が,腎機能が改善したものと比べ,A群,B群ともに有意にイベント発症率が高かったことが明らかとなった.

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第4章 我が国における大規模臨床試験の評価
JIKEI HEART STUDY

桑島  巌    東京都老人医療センター 副院長

要旨
 日本人の心血管疾患を有する患者に,現行治療にアンジオテンシンU受容体拮抗薬を追加することで心血管イベントの予防効果が認められたとする報告である.エンドポイントに狭心症,一過性脳虚血発作などの非客観的イベントが含まれていることに問題を残す試験であるが,高齢者といえども積極的に降圧が行えることを示した点では意義があろう.

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