要旨


最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 54/消化器8
膵炎・膵癌


第1章 急性膵炎
定義・概念,疫学

武田 和憲   独立行政法人国立病院機構仙台医療センター外科 医長

要旨
 急性膵炎は腹痛を主訴とする膵の急性炎症性疾患であり,成因としては胆石やアルコールが多い.膵炎の発症機序に関しては十分に解明されていないが,膵管内圧上昇などの刺激により不活型のトリプシノーゲンが膵腺房細胞内を輸送される過程で異常を来し,病的なトリプシンの活性化が起ることが初発機序と考えられる.防御機構としての膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)を上回ってトリプシンが活性化されると膵炎(膵の自己消化)が惹起される.急性膵炎の病態は多彩であり,軽症のものから感染性膵壊死や敗血症,多臓器不全を伴うものまでさまざまである.急性膵炎の診療ガイドラインでは,急性膵炎にみられる病態を Atlanta 臨床分類に準じて整理している.我が国における急性膵炎の疫学としては,成因としてアルコールが多く,次いで胆石であるが,女性では逆転し,胆石性膵炎が最も多い.重症急性膵炎の死亡率は著明に改善し,1987年調査時点で 30% であったものが2003年調査では 8.9% にまで低下している.しかし,感染性膵壊死を伴う重症膵炎の死亡率は高く,感染予防や感染の診断が重要である.

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第1章 急性膵炎
病態生理

広田 昌彦   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学 准教授
大村谷昌樹   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学
橋本 大輔   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学
陶山 浩一   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学
藤村 美憲   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学
市原 敦史   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学
田中  洋    熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学
高森 啓史   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学 講師
馬場 秀夫   熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学 教授

要旨
 膵外分泌刺激時には,分泌タンパクの品質管理・処理機構としてのオートファジーの結果,トリプシンが生成するが,通常は first line defense としての膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)によりトリプシン活性は阻害されて膵障害は生じない.過度の膵外分泌刺激の結果,生じたトリプシンの活性が PSTI の制御活性を超えると,連鎖的な膵消化酵素の活性化を生じて膵障害(膵炎)を生じる.これが急性膵炎の主要な発症機構である.また,虚血,自己消化,全身性炎症反応症候群(SIRS)/sepsis の3病態が急性膵炎を重症化に導く主要な機構である.

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第1章 急性膵炎
診 断

佐藤 晃彦    東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
下瀬川 徹   東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野 教授

要旨
 急性膵炎の診療にあたっては,迅速な診断に加え,成因の特定や重症度の判定が重要となる.本邦では厚生労働省の臨床診断基準・重症度判定基準が広く用いられているが,運用上の問題点や最近の診断技術の進歩に対応して同基準の改訂作業が進められている.臨床医には,これら診療体系の変化や検査の特性の理解に基づく適切な検査の選択,得られた膨大な情報を治療方針の決定に有効に活用していくことが求められる.

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第1章 急性膵炎
管理・治療・予後

竹山 宜典   近畿大学医学部外科学教室肝臓・胆道・膵臓部門 准教授

要旨
 急性膵炎では,入院時の重症度判定,全身モニタリングとともに,初期輸液,予防的抗菌薬投与,栄養療法などの基本的治療を的確に施行することが重要である.重症例には,膵壊死や遠隔臓器障害に応じて動注療法や持続的血液濾過透析(CHDF)などの特殊療法を行い,発症2週以降の感染性合併症には,壊死部切除や経皮的ドレナージが適応となる.重症膵炎の死亡率は 10% 前後であり,いまだ難治性の疾患で,軽快例でも長期の経過観察が必要である.

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第1章 急性膵炎
医療経済

木原 康之  産業医科大学医学部消化器・代謝内科
大槻  眞   産業医科大学医学部消化器・代謝内科 教授

要旨
 重症急性膵炎は厚生労働省の特定疾患治療研究事業の対象疾患(難病)に指定されていて,特定疾患医療受給者証が交付されると原則として6ヵ月間の医療保険の自己負担分全額が公費で負担される.医療受給者証の新規受給者数は平成 17 年度は 1,822 人で平成 10 年度の2.54倍にまで増加している.特定疾患治療研究事業に占める重症急性膵炎の割合は明らかにされていないが,我々の施設に入院した急性膵炎患者の医療費を検討すると,高齢の重症急性膵炎患者の医療費が高額であった.急性膵炎発症早期から経腸栄養を行ったり,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後膵炎発症の危険が高い症例に対しては予防的にタンパク分解酵素阻害薬の投与やステントを留置すると医療費が抑制される.今後,医療費を軽減できる治療の開発が必要である.

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第1章 急性膵炎
ガイドライン

吉田 雅博   帝京大学医学部外科 准教授
高田 忠敬   帝京大学医学部外科 教授
浅野 武秀   帝京大学医学部外科 教授
要旨
 急性膵炎の診療ガイドラインは,系統的に検索した結果,日本3件,海外9編であった.重症度診断方法は,英国では Glasgow score を取り入れた UK Guidelines を作成し,米国では APACHEU score を中心に診断指針を公表している.日本では厚生労働科学研究事業として,重症度判定基準が制定された.
 日本のガイドラインの特徴として,保険適応の問題,日常臨床での超音波検査の普及,特殊療法や輸液量・鎮痛薬・予防的抗菌薬の内容を取り上げている.


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第2章 慢性膵炎
概念・定義と疫学

大橋 美穂    東京女子医科大学消化器内科
清水 京子    東京女子医科大学消化器内科 講師
白鳥 敬子    東京女子医科大学消化器内科 教授

要旨
 慢性膵炎の診断基準は,臨床像に異なる点がみられるにもかかわらず,すべての成因に共通する慢性膵炎の終末像を示している.しかし,非可逆性と定義されている慢性膵炎にも必ず可逆性の時期があることから,可逆性慢性膵炎を診断する方法が必要である.第5回全国調査によれば,慢性膵炎は罹患率,有病率ともに増加傾向を認め,最近の疫学研究では飲酒と喫煙は慢性膵炎のリスク上昇と有意に関連することが確認されている.食事,遺伝子などの研究も進められているが確定因子ではない.

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第2章 慢性膵炎
病理・病態生理

石黒  洋    名古屋大学総合保健体育科学センター(大学院医学系研究科健康栄養医学) 准教授
水野 伸匡   愛知県がんセンター中央病院消化器内科 医長
近藤 孝晴   名古屋大学総合保健体育科学センター(大学院医学系研究科健康栄養医学) 教授

要旨
 慢性膵炎の組織所見の特徴は,不均一に分布する小葉間の線維化と腺房の減少である.慢性膵炎の疼痛には,膵管内圧の上昇とコレシストキニンが関与すると考えられている.実質の荒廃が進んだ後期には疼痛は軽減するが,脂肪吸収障害と膵性糖尿病が現れる.膵管内のタンパク栓と膵石の形成には,膵液のうっ滞と,トリプシンの活性化による pancreatic stone protein の不溶化が関与すると推定される.

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第2章 慢性膵炎
診 断

正宗  淳    東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
下瀬川 徹   東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野 教授

要旨
 慢性膵炎の診断は,2001年に提唱された臨床診断基準に沿って行われる.侵襲の少ない検査から系統的に計画し,確診所見が得られた場合に慢性膵炎の診断を下す.確診所見が得られない場合,複数の準確診所見によって,診断がより確実なものになるように努める.

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第2章 慢性膵炎
内科治療・予後

伊藤 鉄英   九州大学大学院医学研究院病態制御内科学 講師

要旨
 慢性膵炎の代償期の治療は,疼痛予防,急性再燃予防が主体となり,過度の膵刺激を避ける食事療法,タンパク分解酵素薬を中心とした薬物療法が重要である.非代償期では消化吸収障害および糖尿病が顕在化する.低栄養状態を避けるため,十分量の脂肪摂取をさせたうえで,十分量の消化酵素薬を投与する.そのうえで膵性糖尿病に対するインスリン量を決定する.慢性膵炎は膵癌発症リスクが高く,膵癌発症を念頭に置いた診療が必要である.

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第2章 慢性膵炎
外科治療・予後

佐田 尚宏  自治医科大学鏡視下手術部消化器・一般外科 教授
  
要旨
 慢性膵炎手術の多くは疼痛対策で施行され,胆管狭窄・閉塞,膵癌との鑑別困難例などでも手術適応がある.疼痛対策として膵管減圧手術・膵切除術などが行われ,症例ごとに最適の低侵襲の術式が選択されるべきである.胆管狭窄・閉塞例に対してはまず内視鏡的治療選択が推奨され,改善困難例が胆管空腸吻合などの手術適応となる.膵癌との鑑別困難例は,膵癌の極めて悪い予後を考慮するとやむを得ない面はあるが,可能な限り術前鑑別診断の努力をすべきである.

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第2章 慢性膵炎
慢性膵炎診療ガイドライン

片岡 慶正  京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授
下瀬川 徹  東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野 教授
大槻  眞   産業医科大学医学部消化器・代謝内科 教授

要旨
 慢性膵炎はその成因,病期,重症度,合併症の有無あるいはその程度により多彩な臨床像を示し,しかも臨床経過が長く,多くは非可逆性な膵内・外分泌機能障害へと進行する疾患である.米国では 1998 年に『慢性膵炎疼痛治療に関するガイドライン』が提唱されたが,その後世界的にみても科学的根拠に基づいた診療ガイドラインは作成されていない.日本消化器病学会は 2006 年3月,消化器6疾患の診療ガイドライン作成委員会を発足し,その中で世界に先駆けて慢性膵炎診療ガイドラインの作成がスタートした.現在までに慢性膵炎診療全般を網羅した 60 項目のクリニカル・クエスチョン(CQ)作成,文献検索,構造化抄録を経て,エビデンスレベル,推奨度,推奨文の作成がほぼ完了し,評価と公開を目前とした最終段階にある.


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第3章 自己免疫性膵炎
概念・定義と疫学

大槻  眞  産業医科大学医学部消化器・代謝内科 教授
西森  功  高知大学医学部光学医療診療部 准教授

要旨
 自己免疫性膵炎(AIP)は自己抗体の存在や,免疫グロブリンの上昇,超音波やCT検査での膵のびまん性腫大,主膵管の壁不整とびまん性狭細,膵組織ではリンパ球と形質細胞を主体とした著明な細胞浸潤と線維化が認められるが,ステロイドに反応してこれらの所見が改善する特異な膵の慢性炎症であり,その発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎である.  層化無作為抽出法による全国調査により,AIP診断基準2002で診断された2002年1年間のAIP年間受療者数900人(95%信頼区間:670〜1,110人),有病患者数は人口10万人あたり0.71人と推計された.AIP診断基準2002は満たさないがAIPと考えられる症例は800人と推定された.発症年齢は,46歳以上で全体の96%を占め,男女比は2.77:1であった.

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第3章 自己免疫性膵炎
病 理

能登原憲司   財団法人倉敷中央病院病理検査科 部長

要旨
 自己免疫性膵炎は,lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と呼ばれる特異な病理所見を示す.一方,膵管壁への好中球浸潤を特徴とする特発性慢性膵炎は,それとは異なる概念である可能性があるが,欧米からの報告では自己免疫性膵炎に含まれていることが多い.LPSP類似の変化はまれに膵癌周囲にみられることがあり,生検でのLPSPと膵癌との鑑別は慎重になされる必要がある.

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第3章 自己免疫性膵炎
病態生理

神澤 輝実   国立がんセンター 中央病院放射線診断部 医長

要旨
 肝細胞癌(HCC)に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)は本邦で開発され,現在,世界で広く行われている.最近,2つの無作為化比較対照試験とメタアナリシスの結果,有意に予後の延長に寄与することが明らかになった.治療対象は3cm超,3個以上の多血性の癌で,適応外として門脈腫瘍栓(本幹)や肝外転移例,肝機能不良例(肝障害度C,Child-PughC)が挙げられる.日本肝癌研究会の追跡調査(n=8,510例)における TACEの中央値,1,3,5年生存率はおのおの34ヵ月,82%,47%,26%であった.独立した予後規定因子として肝障害度,TNM stage,αフェトプロテイン(AFP)の3因子が挙げられた.

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第3章 自己免疫性膵炎
診 断

岡崎 和一   関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)教授
内田 一茂   関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)講師
高岡  亮    関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)講師

要旨
『自己免疫性膵炎臨床診断基準2006』(厚生労働省難治性膵疾患調査研究班,日本膵臓学会)は@膵臓病の専門家や消化器病の専門医だけでなく,一般医家をも対象にする,A本症と最も鑑別すべき膵癌や胆管癌などの悪性疾患をできるだけ排除する,B自己免疫性膵炎の病因・病態が不明である以上,膵外病変を除き,膵病変に限定した診断基準であることなど,ミニマムコンセンサスの立場を重視した診断基準である.海外の診断基準と比較をしつつ,我が国における自己免疫性膵炎の診断の現状について述べた. 

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第3章 自己免疫性膵炎
管理・治療・予後

西森  功   高知大学医学部光学医療診療部 准教授
大槻  眞   産業医科大学医学部消化器・代謝内科 教授
大西 三朗   高知大学医学部消化器内科学 教授

要旨
 自己免疫性膵炎では約2/3の症例に糖尿病と閉塞性黄疸とがみられる.高齢者ほど糖尿病合併のリスクが高く注意が必要である.一方,胆道感染のない黄疸例において胆道ドレナージは必須ではないが,ステロイド治療中の感染管理の点から可及的なドレナージが望まれる.一方,ステロイドによる初期治療として,経口プレドニゾロンを0.6mg/体重 kg/日で治療を開始し,2〜4週間の継続投与後に漸減する方法が標準的である.プレドニゾロンの維持投与量は5〜7.5mg/日が適量と推察される.再燃を示す症例の多くはステロイド治療開始後3年までの間であることより,活動性の高い症例では,少なくとも 3年間のステロイド治療の継続が重要である.入院時,腹部圧痛所見,画像検査における1/3以上の膵腫大と膵管狭細像,膵外の硬化性胆管炎の合併を示す症例で有意に再燃率が高く,ステロイド治療に際し注意が必要である.長期予後は不明であるが,膵石を合併する例もあり,慢性膵炎と同様の経過をたどる可能性がある.

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第4章 膵 癌
概念・定義と疫学

金住 直人    名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学
中尾 昭公    名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学 教授

要旨
 膵癌は予後不良な難治がんの1つである.2006年のがんの部位別死亡者数で,男性:第5位,女性:第6位に位置し近年増加傾向にある.危険因子としてエビデンスが報告されたものは,家族歴(膵癌,遺伝性膵癌症候群),合併疾患(糖尿病,慢性膵炎,遺伝性膵炎),嗜好(喫煙)である.治療成績向上のためには早期発見しか手段がなく,複数の危険因子を有する症例では膵癌発症も念頭に置いた慎重な経過観察と定期的検査が望まれる.

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第4章 膵 癌
膵腫瘍の病理学的特徴

樋野 陽子   京都府立医科大学大学院医学研究科人体病理学
柳澤 昭夫   京都府立医科大学大学院医学研究科人体病理学 教授

要旨
 膵癌の主な分類は,日本の膵癌取扱い規約とWHO国際分類である.分類を正しく理解するには,腫瘍の肉眼像と由来細胞の2つの点を考慮する必要がある.腫瘍の肉眼像を考慮した分類には,D胞性腫瘍と膵管内腫瘍がある.腫瘍の由来細胞を考慮した分類には,膵管上皮細胞,腺房細胞,内分泌細胞から発生する膵管癌,腺房細胞腫瘍,内分泌細胞腫瘍がある.これらの腫瘍で最も頻度が高いのは浸潤性膵管癌である.

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第4章 膵 癌
診 断

真口 宏介   手稲渓仁会病院消化器病センター センター長
小山内 学   手稲渓仁会病院消化器病センター
潟沼 朗生   手稲渓仁会病院消化器病センター
高橋 邦幸   手稲渓仁会病院消化器病センター

要旨
 膵癌の発見には画像診断が必須である.膵癌診療ガイドラインでは,US,CTを行い,必要に応じてMRCP,EUS,ERP,PETを組み合わせることが推奨されている.一方,画像診断の進歩は目覚しく,早期診断を意識した場合には,積極的に MDCT での3相撮像を行い,膵実質相での low density と遅延相(平衡相)での high density に着目し,異常所見を認めた場合には,EUSを実施することがポイントとなる.さらに,質的診断が難しい場合には,ERCP とそれに引き続いて IDUS,細胞診や組織診を行う必要がある.

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第4章 膵 癌
内科治療

奥坂 拓志   国立がんセンター中央病院肝胆膵内科 医長
上野 秀樹   国立がんセンター中央病院肝胆膵内科
池田 公史   国立がんセンター中央病院肝胆膵内科
森実 千種   国立がんセンター中央病院肝胆膵内科
小島 康志   国立がんセンター中央病院肝胆膵内科

要旨
 膵癌患者の予後の改善のためには,有効な非手術療法の確立が切望されてきたが,膵癌に対して有効な内科治療は最近まで明らかでなく,十分なエビデンスを持つ治療はないとされてきた.近年,ゲムシタビンの延命効果が明らかにされた後,多くの研究者が本疾患の新治療開発に強い関心を示しており,より良い治療法の開発を目指して多数の臨床試験が実施されている.

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第4章 膵 癌
外科治療

土井隆一郎   京都大学大学院医学研究科肝胆膵・移植外科 講師

要旨
 膵癌は手術切除によってのみ長期生存の可能性がある.膵癌の手術適応は R0 手術が可能かどうかで判断される.『膵癌取扱い規約第4版』のstageWa膵癌に対しては,外科切除が放射線化学療法と維持化学療法の組み合わせよりも生存期間の延長が期待できる.化学療法の併用を治療体系に組み入れた切除手術の適応をさらに検討する必要がある.

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第4章 膵 癌
科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン

山口 幸二    九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科学 准教授
白鳥 敬子    東京女子医科大学消化器内科 教授
唐澤 克之    東京都立駒込病院放射線診療科 部長
石川  治     大阪府立成人病センター 院長
船越 顕博    九州がんセンター消化器内科 医長
田中 雅夫    九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科学 教授

要旨
『科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン』が日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン作成小委員会のもと,2006 年3月15日金原出版より発刊された.膵癌ガイドラインは EBM の手法を用いて作られ,膵癌の診断と治療のアルゴリズムとそれに対応する5分野,22CQ の部よりなる.CQ では推奨,推奨度を示し,そのエビデンスを述べ,エビデンスに用いた引用文献を示している.エビデンスの後に膵癌診療ガイドラインの特徴である「明日への提言」を挿入している.巻末には引用文献として用いた 304 の文献の構造化抄録を CD-R の附録として挿入した.膵癌診療ガイドラインが発刊されて1年が経過した段階でアンケート調査を行った.診療ガイドラインを知ったのは多くは学会であり,事前に行った公聴会は有用であった.ガイドラインは膵癌診療にも頻回に利用されているが,膵癌診療の知識の整理としても利用されていた.膵癌に関してはエビデンスレベルの高い論文が少なく,推奨度がCのものが多過ぎるとの意見もあった.膵癌診療ガイドラインの内容を紹介し,発刊後1年が経過して行ったアンケート調査の結果を集計した.

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