要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 57/血液6
静脈血栓症・肺塞栓症とDIC


第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
概念・定義と疫学 1.概念・定義

太田 覚史   三重大学大学院医学系研究科循環器内科学
山田 典一   三重大学大学院医学系研究科循環器内科学 講師
中野  赳   医療法人山本総合病院 顧問,三重大学 名誉教授
要旨
 深部静脈血栓症とは,Virchow の3大因子に大別される種々リスクファクターが絡み合うことにより下肢深部静脈に血栓が産生される病態を指す.腫脹,疼痛といった症状を呈するほか,下肢にできた血栓が遊離し肺循環へ流入することで急激に肺血管を閉塞し,肺血栓塞栓症を発症することもあり注意が必要である.このように,深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症は深い関連を持つ疾患であることから,これらの病態を一括して静脈血栓塞栓症とも呼ぶ.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
概念・定義と疫学 2.疫 学

佐久間 聖仁  女川町立病院内科 副院長

要旨
 日本での肺塞栓症は死亡者数においても臨床診断数においても増加してきている.日本における肺塞栓症頻度は欧米と比較して低いが,その一因として人種差がある.肺塞栓症による死亡者の頻度は加齢により増加する.20 歳代と 30 歳代での頻度は高くないが,死因としては他の年代より高い割合を占めている.肺塞栓症の発症には季節変動があるか否かについてはまだ結論が出ていない.予後規定因子,反復の危険因子についても述べた.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
概念・定義と疫学 3.いわゆるエコノミークラス症候群(ロングフライト血栓症,肺血栓塞栓症)

牧野 俊郎  日本医科大学成田国際空港クリニック救急医学講座 所長

要旨
 空の旅は,いわゆるエコノミークラス症候群(s−ECS)の危険因子と考えられているが,これまで s−ECS と飛行時間,飛行距離の関係について十分な調査がなされているとは言いがたい.本稿ではこれらの関係を含めて検討した.1992 年 12 月より 2008 年3月までの 15 年4ヵ月に,我が国で最も多忙とされる成田国際空港に到着し,救急医療を要したすべての s−ECS 症例について調査を行った.s−ECS 症例の平均飛行時間は約 11 時間,平均飛行距離は約 9,000km だった.全 s−ECS 症例 146 例のうち,日本人は 103 例(70.5%)だった.空の旅に伴う長時間のフライトは,s−ECS 発症の危険因子として極めて重要と考えられる.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
病因・病理 1.病因・リスクファクター

駒井 宏好   東京医科大学外科学第二講座(血管外科)講師
重松  宏   東京医科大学外科学第二講座(血管外科)教授

要旨
 静脈血栓症と肺塞栓症は古くから,血液凝固能亢進,血流の停滞,血管内皮障害という“Virchow の3徴”と呼ばれる因子によって発生するとされている.本稿ではその病因を新しい知見とともに解説し,臨床的に重要なリスクファクターを紹介する.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
病因・病理 2.病 理

山下  篤   宮崎大学医学部病理学講座構造機能病態学分野
浅田祐士郎  宮崎大学医学部病理学講座構造機能病態学分野 教授

要旨
 静脈ではフィブリンと赤血球に富む赤色血栓が形成されると一般に理解されているが,通常認められる血栓は白色,混合,赤色血栓の部が種々の程度に混じり合った複合血栓である.肉眼的に白色を呈する部は血小板とフィブリンに富む.一方,赤色を呈する部は血小板とフィブリンの網状構造に赤血球が取り込まれた構築をしている.これらの所見から,血小板もフィブリンの形成や血栓の成長に関与していることが示唆される.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
診断・検査所見・鑑別診断 1.深部静脈血栓症

山田 典一   三重大学大学院医学系研究科循環器内科学 講師

要旨
 深部静脈血栓症では急性期の症状ばかりでなく,時として致死的となる急性肺血栓塞栓症や慢性期の血栓後遺症といった合併症も大きな問題となるため,早期の診断と適切な対応が不可欠である.早期診断には,除外診断法としてのD−ダイマー測定によるスクリーニングや簡便で非侵襲的な下肢静脈超音波検査が有用であり,最近では臨床確率1)とD−ダイマー測定の組み合わせにより,確定診断法としての画像検査を要する症例を絞り込む試みが行われている.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
診断・検査所見・鑑別診断 2.急性肺血栓塞栓症

坂尾 誠一郎   千葉大学大学院医学研究院加齢呼吸器病態制御学(B2)

要旨
 一般に肺血栓塞栓症とは,深部静脈血栓が血管壁から離れ血液の流れに乗って肺に到着し,肺の動脈を閉塞する疾患である.特に急性肺血栓塞栓症は,発症後おおむね2週間以内のものとされ,診断に至らず死亡する例がいまだ多い疾患である.そのため臨床症状より本疾患をまず“疑うこと”が重要であり,早期診断および適切な加療を行うことが必要となる.
目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
診断・検査所見・鑑別診断 3.慢性肺血栓塞栓症

中西 宣文   国立循環器病センター心臓血管内科肺循環グループ 医長

要旨
 肺動脈内で深部静脈由来の血栓塞栓子が十分に溶解せず器質化し,肺動脈を狭窄・閉塞した病態を慢性肺血栓塞栓症と言う.また,高度肺高血圧症を合併した例は特に慢性血栓塞栓性肺高血圧症と呼ばれる.本症では血栓症と関連する D−ダイマーなどのマーカーが大きな異常値を示すことは少なく,凝固−線溶系の亢進状態は終息している場合が多い.本症は,血栓症としてよりはむしろ肺高血圧症の1疾患として取り扱うべき疾患である.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
管理・治療 1.抗凝固療法

丹羽 明博  平塚共済病院 院長

要旨
 静脈血栓症治療の基本は抗凝固療法である.標準的使用法は急性肺塞栓を疑った時点でヘパリン 5,000 単位を静注し,診断確定後 1,400 単位/時の持続静注を開始する.抗凝固薬継続中は再発予防効果が指摘されているが,臨床家はその継続期間について悩んでいる.この点について文献的考察を行うとともに,D−ダイマーを指標にする私見を述べた.急性肺塞栓発症直後では,2次予防を意識した早期離床をいかに行うかが重要である.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
管理・治療 2.抗凝固療法中の抜歯・内視鏡検査・手術への対応

曽村 富士  名古屋セントラル病院循環器内科 主任医長

要旨
 抜歯や止血が容易な体表面の小手術の場合には抗凝固薬を中止しない.出血性合併症が起った場合の対処が困難な体表の小手術,内視鏡による生検など,および大手術では,ヘパリンを併用しつつワルファリンを中止して出血性合併症を予防する.緊急手術ではビタミン K1 や凝固因子濃縮製剤などの使用を考慮する.周術期静脈血栓症予防のために理学的療法を加える.個々の症例における個別の事情を考慮に入れて主治医が臨床的に判断すべきである.
目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
管理・治療 3.血栓溶解療法

田中 啓治  日本医科大学附属病院集中治療室 教授
山本  剛   日本医科大学附属病院集中治療室 講師

要旨
 急性肺血栓塞栓症(PTE)や深部静脈血栓症(DVT)の治療法には抗凝固療法,血栓溶解療法,カテーテル治療法,外科療法などがある.中でも血栓溶解療法は,右心負荷を伴った亜広範囲型(sub massive type),広範囲型(massive type),心停止・循環虚脱型(cardiac arrest or collapse)の急性肺血栓症に適応がある.血栓溶解薬には従来のウロキナーゼ(UK)と組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)製剤があるが,出血のリスクが高い場合にはカテーテル治療を優先することもある.薬剤の有効性と出血のリスクを十分に見極めて適応することが大事である.
目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
管理・治療 4.外科療法

渋谷  卓   東宝塚さとう病院血管外科 部長
左近 賢人  西宮市立中央病院外科 院長

要旨
 深部静脈血栓症急性期の多くは血栓溶解療法が行われるが,有痛性青股腫には静脈血栓摘除術が適応となる.慢性期の静脈血栓後遺症にはバイパス術や弁形成術が試みられる.急性肺血栓塞栓症でショック状態から脱し得ない例は外科的血栓除去術の適応であり,慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧)に対する超低体温下での血栓内膜摘除術はほぼ確立された術式である.これら外科的療法につき概説する.


目次に戻る


第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
管理・治療 5.妊婦の静脈血栓症・肺塞栓症の管理・治療

小林  浩   奈良県立医科大学産婦人科 教授

要旨
 妊娠中の血栓症発症率は非妊婦の5倍以上で,肺塞栓症の妊産婦死亡率に占める割合は出産 10 万人に対し 9.1,肺血栓塞栓症(PTE)はその 27% を占め第1位である.また,出産時のみならず妊娠中にも発症する.妊婦に対しては血栓症予防・治療ともに,妊娠中,分娩時,産褥期(授乳中)の取り扱い,胎児への影響を考慮しなければならない.そのために,未分画ヘパリン,低分子量ヘパリン,アスピリン,ワルファリンを使い分ける必要がある.また,反復する流早産妊婦に血栓症が多発する thrombophilia という概念にも着目すべきである.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
管理・治療 6.医療経済

上塚 芳郎  東京女子医科大学医学部医療・病院管理学 教授

要旨
 新しい技術は,より大きな効果が期待されるが,費用も余計にかかる.新技術を公的医療保険に収載するかどうかを経済評価で判断している国もあるが,その手法として増分費用分析がある.
 一方,静脈血栓塞栓症(VTE)は医原性に発生することも多いため問題となっている.今回,VTE 予防に関する医療経済評価について,増分費用分析により費用対効果について考察してみた.一般的に,質調整年(QALY)/年で5万米ドル以内であれば,費用対効果は良好であると考えられている.その点,弾性ストッキングなどによる予防は十分費用対効果がよいと考えられた.薬剤による予防に関しては,低分子量ヘパリンとフォンダパリヌクスのどちらも,費用対効果から考えれば,許容範囲であると考えられた.

目次に戻る



第1章 静脈血栓症・肺塞栓症
肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン

小林 隆夫    県西部浜松医療センター 院長

要旨
 静脈血栓塞栓症(VTE)はこれまで我が国では比較的まれであるとされていたが,生活習慣の欧米化に伴い近年急速に増加している.2004 年2月に我が国でもようやく VTE の予防ガイドラインが策定され,さらに同年4月から“肺血栓塞栓症予防管理料”305 点が新設されるに至った.その後多くのエビデンスが集積したが,中でも日本麻酔科学会の調査結果から,理学的予防法の限界,抗凝固療法の積極的導入の有用性が示唆されている.そして,我が国でも初めて臨床治験が行われた結果,欧米で予防の中心となるフォンダパリヌクスとエノキサパリンが VTE 予防に保険適用が認められ,今後普及が期待される.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
概念・定義と疫学 1.概念・定義

丸山 征郎   鹿児島大学大学院医歯学総合研究科血管代謝病態解析学 教授

要旨
 播種性血管内凝固症候群(DIC)は血管破綻部位でのみで限局的に作動すべき血液凝固系が,時間的,空間的に多発性に血管内で作動し,血管内皮細胞の制御閾値を超えてトロンビンが生成され,血管内での播種性の微小血栓と,結果として凝固線溶系因子とその阻害因子,血小板が消耗されて,出血傾向に陥った病態である.この微小血栓と出血により,(多)臓器不全という重篤な病態がもたらされる.多くの場合には,重症の感染や侵襲など血中で炎症性サイトカインも増加しているという全身性炎症ベクトルも基礎病態をなしている.

目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
概念・定義と疫学 2.疫 学

朝倉 英策    金沢大学附属病院高密度無菌治療部 准教授
門平 靖子    金沢大学附属病院血液内科

要旨
 厚労省研究班の疫学調査によると,我が国における播種性血管内凝固症候群(DIC)年間患者数は 73,000 人(1施設 9.2人,発症頻度 1.9%)であり,死亡率は 56.0% と報告されている.死亡患者のみを対象とすると,DIC そのものが死因は 24% であり,年間約1万人の患者が DIC により死亡されている.DIC 研究は,この年間約1万人を救命するためにある.DIC の3大基礎疾患は,敗血症,固形癌,造血器悪性腫瘍である.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
病因・病理・病態生理 1.病因と病態生理

趙   娟     名古屋市立大学大学院医学研究科展開医科学分野
成松 紀子    名古屋市立大学大学院医学研究科展開医科学分野
原田 直明    名古屋市立大学大学院医学研究科展開医科学分野 准教授
岡嶋 研二    名古屋市立大学大学院医学研究科展開医科学分野 教授

要旨
 播種性血管内凝固症候群(DIC)は,さまざまな基礎疾患に合併するが,共通した病態は,全身の血管内フィブリン形成である.病因の種類により,血管内フィブリンの運命が異なり,血管内フィブリンの早期溶解(過剰線溶)により出血症状が,そして血管内皮細胞障害に起因する血管内フィブリンの溶解低下では,微小血栓形成による臓器症状が発現する.それぞれの病因における病態生理を理解することが治療法の選択において重要である.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
病因・病理・病態生理 2.病 理

居石 克夫    九州大学大学院医学研究院病理病態学分野 教授

要旨
 ヒト播種性血管内凝固症候群(DIC)の病理について概説した.DIC の病理を理解するためには,特徴的な3病変,すなわち@多発微小血栓,A出血,B虚血病変,の病理を理解することに加えて,悪性腫瘍や感染症などの基礎疾患の病理・病態を把握することが肝要である.とりわけ,最近の DIC の剖検症例では治療修飾が高度で,血栓を認める頻度が少なくなり,むしろ虚血や出血による病変が目立つ傾向にある.したがって,剖検を含めた DIC の病理学的検討には,臨床医と病理医の緊密な情報交換が不可欠である.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
診 断 1.診断・検査所見・鑑別診断

松下  正    名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学 講師

要旨
 DIC 発症頻度の高い基礎疾患を有する患者の診療にあたっては最初から DIC を念頭に診療を進めなければならない.我が国で最も頻用されてきた厚生労働省 DIC 診断基準は悪性腫瘍に伴う DIC には特異性が高いが,特徴的な病態を示す感染症に伴う DIC においては急性期 DIC 診断基準との使い分けを工夫する必要がある.診断にあたっては血小板数,プロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),フィブリノーゲン,フィブリン分解物(FDP)はもとより,各種分子マーカーを必要に応じて測定し,病態に応じた治療戦略を立てる際の参考とすべきである.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
診 断 2.DIC準備状態の診断

辻   肇    京都府立医科大学輸血・細胞医療部 准教授

要旨
 “DIC 準備状態”は,典型的な播種性血管内凝固症候群(DIC)に至るまでの初期段階,臨床所見も検査成績も軽度のため DIC 診断基準を満足していない病態と考えられる.DIC 診断基準で点数不足のため DIC と診断できない症例で複数の補助診断項目を満たすものを“DIC 準備状態”とする診断基準が提唱されている.“DIC 準備状態”診断の臨床的意義は,早期に治療を開始し,予後の改善を図ることである.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
管理・治療 1.治 療

射場 敏明    順天堂大学大学院医学研究科救急・災害医学 教授

要旨
 播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療は,基礎疾患の治療と出血がみられる際の補充療法は共通であるが,抗凝固療法の適応については基礎疾患により異なる.そして,抗凝固療法に関しては,用いられる薬剤の選択肢が広く,治療の合併症もまれならずみられるので,注意が必要である.本邦では現在,ヘパリンやヘパリン類として,未分画ヘパリン,低分子量ヘパリン(ダルテパリン),ダナパロイドがあり,合成プロテアーゼ阻害薬としてメシル酸ガベキサートとメシル酸ナファモスタット,生理的プロテアーゼ阻害薬としてアンチトロンビンが使用可能であり,それぞれ単独もしくは複数の組み合わせで用いられている.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
管理・治療 2.経過・予後

丸藤  哲     北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野 教授
澤村  淳     北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野 診療准教授
早川 峰司    北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野
星野 広勝    北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野
久保田 信彦   北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野
菅野 正寛    北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野
平安山 直美   北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野

要旨
 播種性血管内凝固症候群(DIC)の経過・予後は診断基準,基礎疾患と病態,治療方法に依存する.この中で基礎疾患と病態の関与が重要であるが,診断基準および治療介入による予後改善の科学的報告は少ない.疫学調査および前向き試験結果によると,本邦では DIC 症例の予後が緩やかに改善傾向にあることが認められるが,敗血症・外傷(後期)に伴い発症する DIC,救急集中治療領域の重症症例に発症する DIC,そして外科系疾患に合併する DIC の予後はいまだ不良である.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
管理・治療 3.医療経済

小野寺 睦雄    名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学講座

要旨
 播種性血管内凝固症候群(DIC)が我が国の医療経済に与える影響について,診断群分類(DPC)制度から得られるデータに基づいて検討を行った.DIC の診断や治療に直接かかわる医療費は1症例あたり約 38 万円であり,アンチトロンビンV(ATV)製剤の使用により約 30 万円上乗せされると推定された.我が国全体での DIC の医療費は約 510 億円であり,その約4分の1はATV製剤の薬剤費であった.今後は治療法に関する費用対効果などについて検討を加える必要がある.
目次に戻る



第2章 DIC(播種性血管内凝固症候群)
DIC治療ガイドライン作りに向けて

和田 英夫    三重大学大学院医学研究科臨床検査医学 准教授

要旨
 播種性血管内凝固症候群(DIC)治療は限られた臨床経験から行われ,各施設あるいは主治医ごとに治療法や治療成績が異なるといった事態が生じ,できるだけエビデンスに基づいた DIC 治療ガイドラインが望まれている.質の高いエビデンスは限られるため,病態別にきめの細かい推奨度を設定し,コンセンサス会議を何度も重ね,日本血栓止血学会ならびに関連学会での公開,フィードバックを繰り返し,DIC 治療ガイドラインが完成しようとしている.
目次に戻る