要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 58/循環器9
心筋症


第1章 概念・定義・疫学
概念と定義

磯部 光章   東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科循環制御内科学 教授

要旨
 心筋症は心筋に病変の首座がある一連の疾患を包含する概念と考えられる.しかし,その概念と定義は時代とともに大きく変遷してきており,そのため臨床の現場に混乱をもたらしている側面がある.病因が次第に明らかになってきたことに加えて,遺伝子解析や遺伝子工学,免疫学による研究が進んだことが背景にある.最近発表された米国心臓協会と欧州心臓学会の分類には大きな相違がある.

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第1章 概念・定義・疫学
疫学

西井 基雄  北里大学医学部循環器内科
和泉  徹   北里大学医学部循環器内科 教授

要旨
 我々が直面している高齢化社会は,保健医療制度の崩壊につながるものである.この問題を反映する1つの疾患モデルとして,頻繁な再入院あるいは入院の長期化といった臨床的特徴を有する心筋症が挙げられる.その有病率は中高齢者層で高く,我が国の疫学調査をみても有病率は年々増加の一途をたどっている.この傾向は,世界的にも同様である.高齢化社会において,心筋症はよく遭遇する1疾患であることを認識せざるをえない.

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第2章 病 因
遺伝的病因

木村 彰方   東京医科歯科大学難治疾患研究所分子病態分野 教授

要旨
 肥大型心筋症の病態生理は,心筋肥大に伴う左室拡張機能障害が主であり収縮機能は保たれていることが多い.しかし,中には心室壁厚が経過中に菲薄化し,左室拡大と収縮機能の低下を認める拡張相肥大型心筋症と呼ばれる病態も存在する.また,心筋肥大によって左室流出路狭窄や心筋虚血を認めることもある.

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第3章 肥大型心筋症
病態生理

大谷 朋仁    大阪大学臨床医工学融合研究教育センター
山本 一博   大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 特任教授

要旨
 肥大型心筋症の病態生理は,心筋肥大に伴う左室拡張機能障害が主であり収縮機能は保たれていることが多い.しかし,中には心室壁厚が経過中に菲薄化し,左室拡大と収縮機能の低下を認める拡張相肥大型心筋症と呼ばれる病態も存在する.また,心筋肥大によって左室流出路狭窄や心筋虚血を認めることもある.

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第3章 肥大型心筋症
画像診断:(1)心エコー・ドプラ法

中坊亜由美  兵庫医科大学内科学循環器内科
増山  理   兵庫医科大学内科学循環器内科 教授

要旨
 肥大型心筋症の基本病態は心筋の不均等な肥大であり,心エコー図により左室肥大の部位や形態的特徴が評価できる.ドプラ法を用いて、左室腔内閉塞の有無,僧帽弁逆流の合併などが評価できる.連続波ドプラ法による高流速信号の捕捉は単に左室腔内閉塞病変の有無だけでなく,その程度の判断(定量的評価)にも有用である.非侵襲的に繰り返し行えるため,長期的な経過観察や治療ガイドとして欠かすことのできない検査である.

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第3章 肥大型心筋症
画像診断:(2)CT,MRI

平野 雅春   東京医科大学循環器内科
大井 邦臣   東京医科大学循環器内科
山田 昌央   東京医科大学循環器内科
山科  章   東京医科大学循環器内科 教授

要旨
 臨床の場では心筋症の診断と経過観察のための手法が大切であり,非侵襲的画像診断法はこの点で重責を担っている.現在,多くの施設で普及している心臓超音波検査が非侵襲的画像診断法の主役となっているが,特異な形態を呈する心筋症の診断においては診断の困難なケースが必ずしも少なくない.近年の機器開発に伴い普及の進んできたマルチスライスCT(MDCT)や磁気共鳴画像(MRI)は,心臓全体のボリウムデータを撮像できるため,特異な形態を呈する心筋症の形態や機能診断に優れている.
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第3章 肥大型心筋症
画像診断:(3)核医学,PET

山本  健   山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学

要旨
 核医学,ポジトロン断層撮影(PET)の肥大型心筋症での有用性についてまとめた.肥大形式の診断に安静時心筋シンチグラムが利用できる.負荷心筋シンチグラムでしばしば固定欠損や一時的欠損が認められる.診断の補助所見としてのBMIPPの集積異常が利用できる.BMIPP集積低下および13N−ammonia−PETでの冠血流予備能低下が予後予測因子と成りうる.以上のように診断に決定的な所見はないものの,診断の補助あるいは予後の予測には有用である.

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第3章 肥大型心筋症
治 療:(1)薬物治療

濱田 希臣   市立宇和島病院循環器内科 副院長

要旨
 肥大型心筋症の薬物治療の目的は生命予後に密接に関連する心不全,突然死の発症を抑制することである.このためには左室内圧較差の軽減,左室拡張障害の改善,心肥大を退縮させることが必須である.これまで汎用されてきたβ遮断薬やカルシウム拮抗薬にはこれらの効能が乏しい.Naチャネル遮断薬であるジソピラミドやシベンゾリンは上記の改善効果を発揮できる可能性が高い.

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第3章 肥大型心筋症
治 療:(2)ペーシングによる治療

南 雄一郎  東京女子医科大学循環器内科
庄田 守男  東京女子医科大学循環器内科 准教授

要旨
 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対するペーシング治療とは,ペーシングにより左室の収縮様式を変化させ,左室流出路圧較差を軽減し,それを原因とする各種自覚症状を改善させるというものである.本法は経皮中隔心筋アブレーションや心室中隔筋切除に比して,圧較差改善効果においては劣るが,侵襲度および合併症頻度の低さにおいては優れており,薬剤抵抗性HOCMに対する治療手段として,欠かせない一選択肢であると考える.

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第3章 肥大型心筋症
治 療:(3)外科的治療

舩津 俊宏    国立循環器病センター心臓血管外科
小林順二郎    国立循環器病センター心臓血管外科

要旨
 閉塞性肥大型心筋症の外科治療としては,1975年に提唱された,肥厚した中隔心筋を大動脈弁越しに切除するMyectomy法がゴールド・スタンダードであり,中隔穿孔や伝導路障害などの合併症も頻度は少なく,今なお有用な手術法である.一方,僧帽弁の収縮期前方運動も圧較差を生じる重要な因子であることから,特にMyectomyが困難な肥厚心筋の分布を呈するような症例において,僧帽弁置換術も選択肢と成りうる.

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第3章 肥大型心筋症
予 後

安川 秀雄   久留米大学 循環器病研究所 講師
           久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門 講師
大場 豊治   久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門
馬渡 一寿   久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門
今泉  勉    久留米大学循環器病研究所 教授
           久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門 教授
  
要旨
 突然死,心不全と心房細動に伴う脳塞栓症が肥大型心筋症(HCM)の3大死因として重要である.HCMの年間死亡率は1〜2%であり比較的予後が良好な疾患であるが,一部に高リスク症例が存在する.突然死の危険因子を評価することにより,高リスク症例を同定し植込み型除細動器(ICD)を始めとする積極的な治療を検討すること,また生涯を通じて緩徐ではあるが心室のリモデリングが進行するため,定期的に病態の再評価を行い経過観察を行うことが肝要である.

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第4章 拡張型心筋症
病態生理

筒井 裕之  北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学 教授
岩野 弘幸  北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学
山田  聡   北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学 講師

要旨
 拡張型心筋症は,心筋の収縮能の低下と内腔の拡張を特徴とする疾患であり,多くの場合進行性である.その病態生理には,心筋障害とそれに対する代償機序が関与している.その主要なものは,心筋収縮不全,レニン・アンジオテンシン系や交感神経系など神経体液性因子の活性,心筋リモデリングである.これらの病態生理を十分に理解しておくことは,診断ばかりでなく治療にあたっても必要である.


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第4章 拡張型心筋症
画像診断:(1)心エコー・ドプラ法

穂積 健之  大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学 講師

要旨
 心エコー・ドプラ法は,拡張型心筋症の基本病態の評価に必要不可欠な検査法である.さらに近年では,ストレイン法,3次元心エコー法,冠血流エコーなどの新たな手法が用いられるようになり,治療法の適応や治療効果判定が行われるようになっている.

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第4章 拡張型心筋症
画像診断:(2)CT,MRI

江原 省一   大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学 講師
吉川 純一   大阪掖済会病院 院長

要旨
 心筋症を含めた心不全の診断において,近年進歩の著しいマルチスライスCTや核磁気共鳴画像(MRI)などの新しい非侵襲的画像診断法により,我々は心エコー法では得られない情報をより詳細に得ることが可能となっている.マルチスライスCTによる冠動脈狭窄病変の評価はすでに臨床の場で確立している.また,MRIを用いた遅延造影という概念は心筋の傷害部位の同定だけでなく,予後予測因子としても大いに期待される.
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第4章 拡張型心筋症
画像診断:(3)核医学,PET

吉永恵一郎   北海道大学大学院医学研究科分子イメージング講座 特任講師
玉木 長良    北海道大学大学院医学研究科病態情報学講座核医学分野 教授

要旨
 近年,治療の進歩により拡張型心筋症の予後は改善されているが,治療抵抗性の症例が存在し,予後マーカーの確立,治療効果を適切に評価しうる指標の確立が求められている.ポジトロン断層撮影(PET)検査は高い感度と空間解像力,優れた定量性,生理的・生化学的情報の画像化などの特徴を持つ先端の核医学画像検査であり,拡張型心筋症の病態解明・治療効果評価に応用され,従来の形態画像では得られない生理的な情報をもたらしている.

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第4章 拡張型心筋症
治 療:(1)薬物治療

安村 良男  独立行政法人国立病院機構大阪医療センター循環器科 科長

要旨
 拡張型心筋症は収縮不全に基づく慢性心不全の代表的疾患である.まず,二次性心筋症ではないかと疑ってその基礎疾患の診断をすることが重要である.特発性拡張型心筋症であれば,ガイドラインに従って収縮不全に基づく慢性心不全の治療を行うことになるが,この疾患ではβ遮断薬の効果を最大限引き出すことがポイントであると同時に,β 遮断薬のnon−responderの存在を同時に認識しておく必要がある.

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第4章 拡張型心筋症
治 療:(2)両心室ペーシングによる治療

神崎 秀明   国立循環器病センター心臓血管内科 医長

要旨
 左室を含む多点をペーシングする両心室ペーシングは,難治性で有症状の心不全に対する治療の1つとして広く認知されるようになった.しかし,実際には約3〜4割もの無効例の存在が報告され,治療の有効率を高めるための研究が続けられている.本治療の適応決定に心電図のQRS幅も重要な要素であるが,術前に効果を予測するために心エコー法の新技術が応用されている.植込み後の設定の調整や綿密な心不全管理も重要である.

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第4章 拡張型心筋症
治 療:(3)外科的治療

松居 喜郎  北海道大学大学院医学研究科循環病態学講座循環器外科学分野(協)教授
         北海道大学病院循環器外科

要旨
 難治性心不全に対する外科治療としては心筋障害を惹起する冠動脈,弁膜症に対する可及的血行再建,僧帽弁手術などの治療が基本となるが,それぞれ単独での効果には限界がある.左室形成術はリモデリングなどにより拡大,変形した心臓を縮小し楕円形にすることで,壁応力を低下させ心機能効率を改善させる治療法であり,左室容積の縮小のみならず形態の是正,また合併する僧帽弁閉鎖不全症の長期にわたる制御が重要である.

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第4章 拡張型心筋症
予 後

木原 康樹    広島大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学 教授

要旨
 特発性拡張型心筋症は遺伝子異常や感染症,あるいは薬物や環境因子によって引き起されるびまん性心筋病変をとらえた症候群であり,いまだに特異的診断法はない.その概念は時代とともに変遷し,その疫学や予後は,新たな診断法や薬物治療法の登場によりこの 20 年間で劇的に変化を遂げた.本稿ではそのような特発性拡張型心筋症の予後に関する内外のコンセンサスを小括する.

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第5章 拘束型心筋症
拘束型心筋症

寺崎 文生   大阪医科大学内科学V 准教授
北浦  泰    大阪医科大学内科学V 教授
伊藤 隆英   大阪医科大学内科学V

要旨
 特発性拘束型心筋症は,コンプライアンスが低く硬い心室による拘束性拡張障害が疾患の本質であり,左室壁厚がほぼ正常で左室収縮機能低下がなく,拡張期容量減少を認めるのを特徴とする.拡張型心筋症および肥大型心筋症と比較してまれな疾患である.老人心,高血圧性心疾患,肥大型心筋症との鑑別は必ずしも容易ではない.拡張障害性心不全および不整脈の治療,血栓・塞栓症の予防が重要である.
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第6章 心筋症と不整脈治療
心筋症の不整脈治療

相澤 義房   新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器学分野 教授
八木原伸江   新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器学分野

要旨
 心筋症は心筋の肥大,脱落,大小不同に加え,錯綜配列などを来し,間質には線維化を来し,心室性不整脈の発生基盤となる.とりわけ心室細動や持続性心室頻拍は突然死の原因となり,その適切な診断と治療は重要である.心不全は左房負荷をもたらし,上室性不整脈特に心房細動を合併する.  ここでは予後を規定する心室性不整脈を中心に,突然死の回避をどうするかを中心に不整脈治療の現状について述べる.

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第6章 心筋症と不整脈治療
不整脈源性右室異形成・心筋症(ARVD/C)

堀江  稔   滋賀医科大学呼吸循環器内科 教授

要旨
 特異な右室の形態異常と左脚ブロック型の心室頻拍を来す不整脈源性右室心筋症(ARVC)は,心筋症の一分野としてのみならず,不整脈を来す遺伝病としても最近注目されており,その多くがデモゾーム病であることが分ってきた.

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第7章 二次性心筋症
心アミロイドーシス

園田 信成   産業医科大学循環器・腎臓内科 学内講師
竹内 正明   産業医科大学循環器・腎臓内科 講師
尾辻  豊   産業医科大学循環器・腎臓内科 教授

要旨
 アミロイドーシスは特異なタンパク,アミロイドが臓器や組織の細胞外に沈着する疾患で,心臓への沈着により心障害を来した病態を心アミロイドーシスと言う.アミロイド沈着は心臓に進行性,不可逆性の障害をもたらし,心不全や狭心症,不整脈,伝導障害を引き起すため進行例の予後は極めて不良である.最近の著しい治療の進歩や新しい根治療法の開発もあり,早期に本疾患を疑い,確定診断,治療へ結びつけていくことが重要である.

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第7章 二次性心筋症
心サルコイドーシス

谷本 貴志    和歌山県立医科大学循環器内科
赤阪 隆史    和歌山県立医科大学循環器内科 教授

要旨
 サルコイドーシスとは,肺,リンパ節,眼,心,その他全身の臓器に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞からなる肉芽腫が形成され,多彩な臨床症状を呈する全身性疾患である.我が国では予後不良因子である心病変を合併する頻度が欧米に比して高いが,生前の心病変の診断率が低いことが指摘されている.二次性心筋症の中でも有効な治療法(ステロイド治療)が存在する数少ない疾患であり,適切な早期診断,治療が望まれる.

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第7章 二次性心筋症
心Fabry病

宮田 昌明    鹿児島大学大学院循環器・呼吸器・代謝内科学 講師
竹中 俊宏    鹿児島大学大学院心筋症病態制御講座 特任准教授
鄭  忠和    鹿児島大学大学院循環器・呼吸器・代謝内科学 教授

要旨
 Fabry 病は,α−galactosidase A の酵素活性低下によりスフィンゴ糖脂質が全身の細胞に進行性に蓄積するX染色体劣性遺伝疾患である.これに対し,心障害のみを呈する心 Fabry 病は,人種差なく左室肥大を有する患者の数%に存在する.近年,α−galactosidase A 活性を改善させる酵素補充療法が臨床応用されるようになり,心 Fabry 病や Fabry 病を早期に発見し,治療することが望まれる.

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第7章 二次性心筋症
薬剤性心筋症

安  隆則   琉球大学大学院医学研究科薬物作用制御学 准教授

要旨
 アドリアマイシンの総投与量が400mg/m2 を超えると5%に心不全が出現してくるので,総投与量が200mg/m2を超えた時点で心臓超音波検査をフォローし,アドリアマイシン心筋障害の早期発見に努める.パーキンソン病治療薬である麦角ドパミンアゴニストは約3割に線維性弁膜症を引き起すため,心臓超音波検査が義務づけられた.線維性弁膜症では弁の接合が不良となり弁逆流を来すので,逆流の程度が増強した場合にはすぐに薬剤の変更が望ましい.

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第7章 二次性心筋症
たこつぼ型心筋障害

安  隆則    琉球大学大学院医学研究科薬物作用制御学 准教授

要旨
 たこつぼ型心筋障害は,閉経後の女性に多く発生する原因不明の左室心尖部を中心とした一過性左室壁運動低下を呈し,冠動脈病変を有さない疾患である.病歴,心電図,心臓超音波検査で疑い,冠動脈造影で確定診断に至る.治療は対症的で,左室流出路狭窄があればβ遮断薬が有効である.短期的予後は約1〜2割で呼吸管理を有する心不全やまれに心破裂が報告されており,発症数日間の集中管理が必要であるが,長期的な予後は良好である.

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第7章 二次性心筋症
好酸球増多性心疾患

平光 伸也    藤田保健衛生大学循環器内科 客員准教授
           平光ハートクリニック 院長
森本紳一郎   藤田保健衛生大学循環器内科 教授
森  奈美    藤田保健衛生大学循環器内科

要旨
 好酸球増多性心疾患は,末梢血中の好酸球が増加し顆粒中に含まれる主要塩基性タンパク質や好酸球陽イオンタンパク質などの細胞毒性物質により心筋傷害が生じて発症する.好酸球性心筋炎の頻度が高いが,本症は発症時の病像はウイルス性心筋炎に酷似しており,心筋生検が鑑別診断に役立つ.本症と診断された場合は,ステロイド投与の適応となり本剤が著効する例が多いため,急性期の的確な診断と治療が必要となる.

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第7章 二次性心筋症
ミトコンドリア心筋症

浅沼 俊彦    大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座
中谷  敏    大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座 教授

要旨
 ミトコンドリア病は,単一臓器障害から重篤な多臓器障害まで,さまざまな臨床症状を呈し,その中でも心筋症の表現型をとるものをミトコンドリア心筋症と呼ぶ.本稿では,比較的頻度が高いミトコンドリア病である MELAS(mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acidosis,and stroke−like episodes)について解説し,ミトコンドリア心筋症の臨床的な特徴を述べる.

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第8章 心筋症の新しい治療
補助循環と人口心臓へ

許  俊鋭    東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座 特任教授
高本 眞一   東京大学大学院医学系研究科心臓外科 教授

要旨
 1997年の臓器移植法制定以後11年間の本邦の心臓移植数は60例に過ぎず,欧米諸国に比較して極端に少ない.極端に制限された状況下で,心臓移植代替治療法が強く求められ,難治性心不全に対して各種外科治療,特に補助人工心臓(VAS)治療が積極的に試みられてきた.平成17年以後,産官学が共同してVAS開発・審査ガイドラインを作り,植込型 VASの早期導入に取り組み,4種の臨床治療が精力的に進められている.

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第8章 心筋症の新しい治療
心臓移植の適応と治療の実際

松宮 護郎    大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科 准教授
澤  芳樹    大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科 教授

要旨
 心臓移植適応判定には,他の内科外科治療の効果が期待できない末期心不全状態であること,腎,肝機能を始めとする臓器機能障害,右心カテーテルによる肺血管抵抗の評価が重要である.補助人工心臓を装着し,心移植まで待機するbridge to transplantationは80%以上の患者に必要となり,その装着時期を逸しないよう注意する.移植後遠隔期においては移植後冠動脈病変,腎機能障害,悪性腫瘍などを念頭に置いての管理を要する.

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第8章 心筋症の新しい治療
再生医療の展望

永井 敏雄    千葉大学大学院医学研究院先端応用医学講座循環病態医科学 講師
小室 一成    千葉大学大学院医学研究院先端応用医学講座循環病態医科学 教授

要旨
 心筋症に対する心筋再生治療は,広範囲にわたり心筋組織を再構築する必要があり,従来の骨髄細胞や骨格筋芽細胞を用いた移植治療には限界がある.成体の心臓に内在する心筋幹/前駆細胞の増殖分化誘導方法は,心筋症治療の選択肢に成りうる.ヒト胚性幹細胞(ES細胞)は比較的容易に多くの心筋細胞を得ることができるが,免疫拒絶反応や,受精卵を使用する倫理的な問題があった.人工多能性幹細胞(iPS細胞)はES細胞の諸問題を解決でき,期待されている.

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第9章 ガイドライン
ガイドライン

久保  亨    高知大学医学部老年病科・循環器科
北岡 裕章   高知大学医学部老年病科・循環器科 学内講師
土居 義典   高知大学医学部老年病科・循環器科 教授

要旨
 日本循環器学会より,循環器疾患の特徴や医療の実情に即したガイドラインが策定されてきた.心筋症の診断・治療に関連するガイドラインは数多くあり,心筋症の実地診療に役立つものであると考える.また,2007年には『肥大型心筋症の診療に関するガイドライン』も改訂された.本稿では,各ガイドラインにおける心筋症の関連する内容を紹介し,『肥大型心筋症の診療に関するガイドライン』については改訂箇所を中心に概説する.

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