要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 7/内分泌 1
骨粗鬆症


第1章 骨粗鬆症の概念・定義
定義と分類

中塚 喜義 大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学
西沢 良記 同 教授

要旨
  骨粗鬆症の定義やそれに基づいた診断が国際的に統一され,その診療はより容易となった.しかしながら,骨粗鬆症に至る過程においては,性ホルモン・カルシウム調節ホルモン,骨量減少速度,骨代謝回転などは,個々の患者で異なりその病態は多様である.原発性骨粗鬆症と診断された患者の病態は,Riggs らの分類が理解しやく有用であるが,個々の患者では二つの型への分類は必ずしも容易ではない.したがって,骨・カルシウム代謝や骨量減少速度などからその病態を把握することは,個々の骨粗鬆症患者の管理や有効な介入を行うため重要となる.

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第1章 骨粗鬆症の概念・定義
疫学:(1)骨粗鬆症,骨折の有病率

藤原佐枝子 (財)放射線影響研究所臨床研究部 副部長

要旨
 骨粗鬆症は,50 歳以上の日本女性の約 25% が持ち,頻度が高い疾患である.女性においては,椎体骨折有病率は,70 歳以降に高くなり,70 歳代で 30〜40% である.橈骨末端骨折発生率は 50 歳代に急増し,その後はプラトーになるが,上腕骨近位端骨折は 60 代以降,大腿骨頸部骨折は 70 歳代以降に増加が著しく,加齢とともに指数関数的に増加する.椎体骨折発生率は近年低下しているが,他の三つの骨折は増加している.

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第1章 骨粗鬆症の概念・定義
疫学:(2)骨粗鬆症,骨折の危険因子

吉村 典子 和歌山県立医科大学公衆衛生学 講師


要旨
 骨粗鬆症の危険因子について,骨量減少については低骨量および骨密度低下の両面から,さらに骨粗鬆症性骨折については脊椎椎体骨折と大腿骨頸部骨折の二つに絞って述べた.脊椎椎体骨折と大腿骨頸部骨折では,疫学的特徴が異なっており,危険因子を明らかにするためには異なったアプローチが必要であるが,加えて大腿骨頸部骨折の発症には転倒が大きく関与しており,転倒の危険因子についても考慮する必要がある.

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第2章 骨粗鬆症の病理・病態生理
病 理

遠藤 直人 新潟大学大学院医歯学総合研究科機能再建医学講座整形外科学分野 教授

要旨
 骨組織は石灰化組織で,正常状態では骨吸収と骨形成は密接に関連し,均衡を保っている(リモデリング:骨再構築).骨粗鬆症では骨の吸収と形成のバランスが崩れ,骨吸収が形成を上回る.その結果,総骨量が減少するものである.特に,海綿骨での骨量減少機序には骨梁の途絶(骨梁の数の減少)と骨梁幅の減少がある.  リモデリングの理解は骨の疾患,病態を知るうえで必要である.

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第2章 骨粗鬆症の病理・病態生理
病態生理・病因

樋口  毅  弘前大学医学部産婦人科学教室 講師
水沼 英樹 弘前大学医学部産婦人科学教室 教授

要旨
 骨粗鬆症の病態の基本である骨量減少は,骨量代謝調節機構の破綻によって生じる.通常,骨は骨吸収と骨形成を繰り返し,再構築(リモデリング)を行い,バランスを保っている(カップリング).これに不均衡が生じ(アンカップリング)骨量減少を来した状態が骨粗鬆症である.病因には閉経後のエストロゲン欠乏,加齢,副甲状腺機能亢進,ステロイド投与などが知られている.この項では骨代謝の調節機構を中心に述べる.

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第3章 骨粗鬆症の診断
診 断

福永 仁夫 川崎医科大学放射線医学(核医学) 教授
曽根 照喜 川崎医科大学放射線医学(核医学) 助教授

要旨
 原発性骨粗鬆症の診断は,診断マニュアルに従って行う.まず,続発性骨粗鬆症など低骨量を来す疾患を除外する.低骨量の判定は,骨塩定量法(特に腰椎骨密度)や脊椎X線像の骨粗鬆化の有無で判定する.次いで,脆弱性骨折の有無で分類した後,診断基準を適用する.脆弱性骨折を認めない場合,正常,骨量減少または骨粗鬆症を判定する.なお,本診断基準は日本人女性を対象に作成されたものであり,男性例や続発性骨粗鬆症の診断基準は別に定める必要がある.

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第3章 骨粗鬆症の診断
検査所見

五來 逸雄  国際医療福祉大学附属熱海病院産婦人科 教授

要旨
 特異性の高い骨代謝マーカーの出現により,骨粗鬆症治療において,治療薬剤の選択・治療効果判定が可能となりつつあり,健康保険の適応となっている.一方骨代謝マーカーにより,将来の骨密度変化の予測,将来の骨折の危険性の予測ができるようになってきた.このように,骨粗鬆症は骨密度測定と骨代謝マーカー定量により骨代謝回転を評価してその病態を診断する,いわゆる代謝性骨疾患の一つであることが明らかになりつつある.

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第3章 骨粗鬆症の診断
画像所見

伊東 昌子 長崎大学医学部附属病院放射線科 講師

要旨
 骨粗鬆症の診断において画像情報の寄与するところは大きい.原発性骨粗鬆症診断基準における脆弱性骨折の有無と骨萎縮度の判定には腰椎X線写真が必須である.微細構造の悪化を診断する方法には,in vivo での骨画像のテキスチャー解析は骨密度に付加する情報を提供し,また in vitro でのマイクロ CT による3次元骨梁構造解析は病態解明,薬物療法の効果判定,力学特性の評価に重要な情報を提供している.


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第3章 骨粗鬆症の診断
鑑別診断・続発性骨粗鬆症

岡崎  亮  帝京大学医学部附属市原病院第三内科 講師
林   勉   帝京大学医学部附属市原病院第三内科
田中 秀樹  帝京大学医学部附属市原病院第三内科

要旨
 原発性骨粗鬆症と比較して,続発性骨粗鬆症には,原発性副甲状腺機能亢進症のように重症だが手術療法により急激に改善するもの,男子性腺機能低下症のように治療薬の第1選択が異なるもの,ステロイド骨粗鬆症のように治療開始基準が異なるものがある.また,悪性腫瘍の骨転移,多発性骨髄腫,骨軟化症など治療法が全く異なる疾患も鑑別対象になる.したがって,適切な診察と検査により続発性骨粗鬆症を的確に鑑別することが重要である.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
管理・治療−総論−

白木 正孝 成人病診療研究所 所長

要旨
 強力な骨吸収抑制作用をもつアミノビスホスフォネート製剤の出現により,骨粗鬆症の骨折予防可能性は飛躍的に高まったと言える.したがって,骨折危険性を評価し,治療可能なリスク軽減を図ることは今後の骨粗鬆症診療において不可欠な要素となるであろう.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
基礎治療:(1)食事療法

江澤 郁子 日本女子大学 名誉教授

要旨
 骨粗鬆症は,生活習慣病の一つに位置付けられ,生活習慣の中でも特に食生活との関連が深い疾患に挙げられている.したがって,食事療法は骨粗鬆症の治療において最も重要な役割を担うものであること,さらには日常生活における食生活が大きく影響することなども含め,食事療法の重要性を患者に認識させることが重要である.この食事療法のエンドポイントは,患者個々人の栄養状態を客観的に評価・判定しながら,骨の健康回復・治療を図り,それぞれの患者の QOL の向上を実現していくことであろう.


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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
基礎治療:(2)運動療法

楊  鴻生 兵庫医科大学整形外科学教室 助教授

要旨
 骨は絶えず力学的な負荷により,骨再構築(リモデリング)が影響され骨量が維持されている.骨粗鬆症のトータルケアーを行ううえで,力学的な影響は無視することはできない.日常生活範囲の運動量は骨密度の維持に必要であるが,増加させるためには運動プログラムに従った運動の指示が必要である.また骨粗鬆症に伴う腰背部痛に対しては,体操療法が有効である.骨粗鬆症では脊椎の伸展運動を中心とした体操プログラムを指導する.運動療法全般に共通しているのは,より安全に実施する必要があり,継続することが最も重要である.


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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
薬物治療法・選択基準

三木 隆己 大阪市立大学大学院医学研究科老年内科学 助教授
樋口 真也 大阪市立大学医学部附属病院老年科・神経内科

要旨
 どの治療薬剤を選択するかに関する基準は存在しない.禁忌や合併症,自覚症状,服用方法の簡便さなどに基づいて選択されている.骨代謝状態による薬剤選択については,種々の面から検討がなされているが,まだ十分に証明があるとは言えない.ビスホスフォネート剤による治療は,短期間で有効性評価のできる可能性が高く,骨折抑制効果もあることから,今後選択される頻度が高まる.ただ,本格的な骨吸収抑制薬による骨塩量増加には限界があり,ビタミン D3 や K2 などを含めた周期的治療など,長期投与においては工夫が必要になると思われる.


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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
治療薬剤:(1)活性型ビタミン D3

中村 利孝 産業医科大学整形外科 教授

要旨
  既存骨折を有する閉経後骨粗鬆症における脊椎骨折の年間絶対危険率は,無治療では 10% 以上で,カルシウムとビタミンDの補充で7〜5% 程度にまで低下できる.活性型ビタミンDの投与による骨折危険率は,この値とほぼ同じ程度であり,活性型ビタミンDは,カルシウムとビタミンDの補充作用として骨折防止に役立っているに過ぎないという可能性はある.確かに,閉経後骨粗鬆症では約 30% にカルシウムとビタミンDを補充する必要がある.アレンドロネート,リセドロネート,ラロキシフェンなどの骨代謝調節薬の効果を充分に引きだして,椎体骨折防止効果を確実にするために,カルシウムとビタミンDの補充どのような手段で行うのが良いか,国民的なレベルで考えていく時期にきている.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
治療薬剤:(2)ビスホスフォネート

鈴木 康博 徳島大学大学院医学研究科生体情報内科学
井上 大輔
徳島大学大学院医学研究科生体情報内科学
松本 俊夫
徳島大学大学院医学研究科生体情報内科学 教授

要旨
 ビスホスフォネートは,ピロリン酸のP-O-P構造と類似したP-O-Pを基本骨格とし,ハイドロキシアパタイトに対して高親和性を有するため,骨の石灰化基質に高い選択性をもって集積する.  ピロリン酸が容易に分解されるのに対し,ビスホスフォネートはほとんど分解されない.そして,破骨細胞に取り込まれ骨代謝回転を低下させ,その機能を直接阻害するとともに一部ではアポトーシスも誘導する.  骨粗鬆症に対し投与することにより,骨量の増加効果,骨折の防止効果を発揮する.今後の課題は長期的な有効性,安全性の証明,他剤との併用あるいは逐次療法の検討などである.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
治療薬剤:(3)カルシトニン

和田 誠基 埼玉医科大学第4内科学 講師
安田 重光 埼玉医科大学第4内科学
甲川 昌和 埼玉医科大学第4内科学

要旨
 カルシトニンは強力な骨吸収抑制作用により骨粗鬆症の治療に応用され,海外では経鼻的カルシトニン製剤も用いられている.200 単位連日の経鼻カルシトニン投与は新規椎体骨折危険率を 33% 減少させることが示された.椎体以外の骨折も,危険率は低下させたが,骨密度に関してはほとんど変化を認めなかった.我が国では現在,低用量カルシトニン間欠投与の椎体骨折をエンドポイントとした臨床試験が行われているが,その結果を踏まえたうえでより有益な臨床応用を考える必要があると思われる.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
●治療薬剤:(4)ビタミン K2

川村 仁美 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科
重松  隆
 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科 講師

要旨
 ビタミン K2 は,その側鎖の繰り返し構造の長さにより MK-1〜14 に分類される.骨粗鬆症の治療薬として認可されているのは MK-4 である.ビタミンKはオステオカルシンのカルボキシル化を介して骨形成を促進し,副甲状腺ホルモン(PTH)により惹起された骨吸収活性を抑制することより骨形成促進薬として使用されている.特徴的なのは,骨密度に依存せず,骨折を予防する効果があるということである.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
治療薬剤:(5)エストロゲンおよび関連薬剤

太田 博明 東京女子医科大学産婦人科学教室 教授
尾上 佳子 東京女子医科大学産婦人科学教室
岡野 浩哉 東京女子医科大学産婦人科学教室

要旨
 女性が閉経後,卵巣機能低下によりエストロゲンが消退すると著しく骨量が低下し,閉経後骨粗鬆症を来す.エストロゲンの骨代謝作用はまだ明確ではないが,エストロゲン製剤を用いて欠乏したエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)は,欠くことのできない治療法である.また,骨量低下に対する効果のほかに更年期障害,脂質代謝異常の改善も見られる一方で,子宮内膜がんや乳がんのリスクなど管理面で十分な配慮が必要である.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
治療薬剤:(6)開発中の薬剤(副甲状腺ホルモン,選択的エストロゲン受容体モジュレーター,ビタミンD誘導体など)

杉本 利嗣  神戸大学大学院医学系研究科内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科 助教授

要旨
 新規開発中の骨粗鬆症治療薬のうち,待望の骨形成促進薬として副甲状腺ホルモン(PTH)が挙げられる.選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるラロキシフェンは骨や脂質系にはエストロゲン作用を示すのに対し,子宮内膜や乳腺に対しては抗エストロゲン作用を発揮する薬剤であることが実証されている.新規ビタミンD誘導体 ED-71 は骨形成を抑制することなく骨吸収を抑制し,強力な骨量増加作用を有することが示されてきている.


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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
QOL とリハビリテーション

高田信二郎 徳島大学医学部整形外科 講師

要旨
 骨粗鬆症患者の QOL を維持するための要件は,日常生活動作の自立と歩行能力の維持である.骨粗鬆症に合併する骨折は,治療の好機を逸すれば患者を寝たきりとし,QOL の著しい劣化をもたらす.それゆえ,リハビリテーションを含めた骨折の治療や骨折予防は,患者の QOL の維持に直結する.骨折患者には,リハビリテーションを可及的早期から開始して,日常生活動作の自立と歩行再開を目指す.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
脆弱性骨折の診断と治療

岡野  徹
鳥取大学医学部整形外科
萩野  浩
鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部 助教授

要旨
 大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折は,骨の脆弱化を基盤に軽微な外力で発生するが,明らかな外力なしに起ることもある.単純X線写真では骨折線を認めないこともあり,見逃されることも多い.高齢者が転倒したときは,まず脊椎と股関節の骨折を疑い,注意深い診察が必要で,必要に応じて MRI や骨シンチグラフィーなどを施行し,適切な治療を早期に開始しなければならない.

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第4章 骨粗鬆症の管理・治療
介護と医療経済

林  泰史 東京都多摩老人医療センター 院長

要旨
 骨粗鬆症への対応は高額な医療費を必要とする薬物療法以外に,保健指導や介護予防など重層化されてきた歴史の積み上げがある.薬物療法のみで大腿骨頸部骨折を減らしても,医療・介護経費の面で見ると必要とする経費の方が何倍も多くなる.しかし,生活様式の変容,転倒予防,ヒッププロテクターの装着など包括的に骨粗鬆症・骨折対策へ取り組めば骨折の直接費用に加えて健康長寿に伴う経済効果も生じ見合うことになる.

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第5章 骨粗鬆症のガイドライン
骨粗鬆症治療・管理のガイドライン−海外・国内の紹介−

細井 孝之 東京都老人医療センター内分泌科 医長

要旨
 骨粗鬆症治療に関する我が国の治療指針は 1998 年に「骨粗鬆症治療のガイドライン」としてまとめられ,2002 年に改訂版が発表される.エビデンスに基づく骨粗鬆症の診療が実現するための進展であるが,我が国における臨床研究の進展はまだ途上にある.ガイドラインの活用とともに,未解決の課題に対するアプローチが必要である.

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第5章 骨粗鬆症のガイドライン
骨代謝マーカー適正使用のガイドライン−海外・国内の紹介−

中塚 喜義 大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学

要旨
 骨粗鬆症診療で保険適応となった骨代謝マーカーを適正に使用するためには,ガイドラインを用いることが必須である.これまでの海外でのガイドラインと同調し我が国でも,日本骨粗鬆症学会のガイドラインが示された.このガイドラインにより有効かつ適正に骨代謝マーカーを使用することで,骨粗鬆症診療がより有効かつ合理的なものとなることが期待される.

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