要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 77/消化器11
機能性食剛疾患 -GERDと機能性食道障害-


第1章 概念・分類・疫学
概念・分類

木下 芳一   島根大学医学部第2内科 教授

要旨
 食道にはがんや炎症のような器質的疾患と,運動・知覚機能に異常を示す機能性疾患が存在する.運動機能に異常があるために形態的な異常や炎症が誘発される疾患も,本質が運動障害にある場合には,機能性食道疾患に分類するべきであると考えられる.機能性食道疾患の患者では,不快な症状なしに食物を咽頭から胃まで運搬し同時に胃内容物を食道に逆流させない,という正常な食道の働きに支障を来しており,QOL の低下が臨床上の大きな問題となっている.

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第1章 概念・分類・疫学
疫 学

眞部 紀明   川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)講師
畠  二郎    川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)教授
春間  賢    川崎医科大学消化管内科学 教授

要旨
 胸やけ,胸痛,嚥下困難,球症状を慢性的に訴える機能性食道障害は,決してまれな疾患ではない.また,同疾患は胃食道逆流症(GERD)の症状と重複する点が多く,日常診療ではその鑑別が重要である.これまで,GERD の疫学研究は欧米のみならず本邦でも行われてきたが,機能性食道障害のそれは少なく,欧米からのごく少数の研究を認めるのみである.近年,本邦の消化器疾患の疾患構造が変化してきており,機能性消化管疾患の割合が増加していると言われている.今後,本邦におけるその臨床像を明らかにしていくことが急務である.

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第2章 逆流性食道炎
病態生理

足立 経一   島根大学医学部臨床看護学 教授
森山 美香   島根大学医学部臨床看護学 講師
秋鹿 都子   島根大学医学部臨床看護学 講師
三瓶 まり    島根大学医学部臨床看護学 教授
古田 賢司   島根大学医学部第2内科 講師
木下 芳一   島根大学医学部第2内科 教授

要旨
 逆流性食道炎は,酸性胃内容物が食道内に逆流して,それが長く食道に停滞するために生じる.胃食道逆流の機序としては,食後期の一過性下部食道括約筋弛緩(TLESR)が最も重要であるが,逆流性食道炎の重症例では,食道裂孔ヘルニアの存在などにより下部食道括約筋(LES)圧が低下しており,夜間就寝時にも高頻度に逆流が観察される.H.pylori 感染陰性などで酸分泌が保たれていること,食道運動能や唾液分泌能の低下も,逆流性食道炎発症の重要な要素である.

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第2章 逆流性食道炎
病 理

田久保海誉    東京都健康長寿医療センター研究所老年病理学研究チーム 研究部長
相田 順子     東京都健康長寿医療センター研究所老年病理学研究チーム
熊谷 洋一     東京医科歯科大学大学院食道・一般外科分野 准教授
星原 芳雄     経済産業省診療所 所長
新井 冨生     東京都健康長寿医療センター病理診断科 部長

要旨
 逆流性食道炎や胃食道逆流症(GERD)症例の食道には多くの変化があるが,疾患固有の変化は報告されていない.逆流性食道炎に出現する代表的所見は,扁平上皮の肥厚,balloon cells の出現,粘膜固有層乳頭内血管の拡張,乳頭の延長,上皮内の炎症細胞浸潤,基底層の肥厚,Ki−67 陽性細胞層の増加,細胞間隙の拡大,などである.逆流性食道炎の時期,程度,採取部位によって,病理組織像は異なる.したがって,逆流性食道炎は病理組織像のみから診断することは困難である.

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第2章 逆流性食道炎
診断 1.症状・問診票による診断

正岡 建洋   慶應義塾大学医学部内科学教室(消化器)
鈴木 秀和   慶應義塾大学医学部内科学教室(消化器)准教授
日比 紀文   慶應義塾大学医学部内科学教室(消化器)教授

要旨
 胃食道逆流症(GERD)の診療において,患者記入によるアンケート形式の問診票は非侵襲的であることやその簡便さから,日常臨床における,GERDの診断および治療効果の判定において,重要なツールである.本稿では多数作成されている GERD に関する問診票のうち代表的なものを,@診断に用いる問診票,A症状変化の評価に用いる問診票,に大別して,おのおのの問診票の特色について述べる.

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第2章 逆流性食道炎
診断 2.内視鏡診断

天野 祐二  国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院内視鏡部 教授
藤代 浩史  島根県立中央病院 内視鏡科 部長
要旨
 近年,逆流性食道炎の著しい増加を認めており,逆流性食道炎の的確な内視鏡診断が,適切な診療を行うにあたり重要な役割を果たすことは,言うまでもない.ところが,実際の内視鏡診断にあたっては,特に,内視鏡医の診断一致性について,以前より問題が指摘されているものの,いまだ改善がなされていない.このままでは疫学調査や臨床研究のみならず,日常診療において適切な診療を行うにも支障があり,分類法の改訂と診断技術の向上が早急に必要である.

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第2章 逆流性食道炎
診断 3.pHモニタリング,インピーダンスモニタリングによる診断

杉本 光繁   浜松医科大学第一内科
魚谷 貴洋   浜松医科大学第一内科
佐原  秀    浜松医科大学第一内科
山出美穂子   浜松医科大学第一内科
市川 仁美   浜松医科大学第一内科
古田 隆久   浜松医科大学臨床研究管理センター 准教授

要旨
 胃食道逆流症(GERD)の診断は,問診と内視鏡検査を中心に行われているが,pH モニタリング検査は酸逆流を定量的,かつ経時的に観察ができる点から,GERD の診断において重要な検査法である.特に,非びらん性胃食道逆流症(NERD)の診断に有用であり,薬物療法の効果判定も可能である点が特徴である.pH モニタリング検査には,カテーテル法と無線式 Bravo pH モニタリング,酸以外の逆流も評価可能なインピーダンスモニタリングの3種類が存在し,状況に応じた使い分けが必要である.

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第2章 逆流性食道炎
管理・治療 1.生活指導

道免 和文   国家公務員共済組合連合会千早病院内科 診療部長
藤本 一眞   佐賀大学消化器内科 教授

要旨
 逆流性食道炎はその発症・増悪に日常生活態度が大きくかかわっており,生活指導は症状軽減・悪化予防に極めて重要な手段である.食事の多量摂取,脂肪分多量摂取,就寝前の食事摂取などの食事習慣は避け,肥満,糖尿病,骨粗鬆症に至る生活は改め,アルコール・喫煙を控えることが肝要である.
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第2章 逆流性食道炎
管理・治療 2.薬物治療

山下 博司   大阪府済生会中津病院消化器内科 医長
蘆田  潔   大阪府済生会中津病院消化器内科 部長

要旨
 びらん性食道炎(EE)治療の第1選択薬は,メタアナリシスの結果からもプロトンポンプ阻害薬(PPI)で異論のないところである.しかし,少数ながら,常用量 PPI で治療抵抗性である患者も存在する.H.pylori 陰性患者では PPI でも十分な酸分泌抑制が得られにくいことや,重症 EE では夜間の酸逆流が存在することを念頭に置く必要がある.また,PPI の薬物動態を考慮した投与が必要であり,難治例に対する PPI 倍量分割投与は有用である.

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第2章 逆流性食道炎
管理・治療 3.外科治療と内視鏡治療

小澤 壯治      東海大学医学部消化器外科 教授

要旨
 胃食道逆流症(GERD)に対する逆流防止治療には,食道胃接合部近傍に対して消化管の外側からアプローチする外科治療と,内側すなわち管腔内からアプローチする内視鏡治療の2種類ある.前者の代表的手術は,Nissen噴門形成術とToupet噴門形成術であり,腹腔鏡下に行われていることが多い.後者の代表的方法は ELGP 法や EsophyX 法であり,食道胃接合部を中心に皺壁を形成する.適応を検討して,新しい治療体系の確立が望まれる.

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第2章 逆流性食道炎
管理・治療 4.合併症

加藤 真吾   横浜市立大学医学部消化器内科学教室
稲森 正彦   横浜市立大学医学部消化器内科学教室 講師

要旨
 逆流性食道炎の主な合併症は,出血・狭窄・Barrett 食道・発がんである.出血・狭窄は,頻度自体は低いものの,緊急処置を必要とする合併症であり,注意が必要である.Barrett食道・発がんは近年大規模なコホート研究が行われ,Barrett食道から食道腺がんに罹患する患者は,従来概算されてきた年間0.5%を下回る年間0.12%であることが報告されている.

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第2章 逆流性食道炎
逆流性食道炎/GERD:ガイドライン

本郷 道夫   東北大学 名誉教授
          公立黒川病院 管理者

要旨
 胃食道酸逆流は,定型的な自覚症状として胸やけ,内視鏡的には逆流性食道炎を呈するが,それぞれの重症度が必ずしも相関しない.そればかりでなく,呼吸器症状や咽喉頭症状などの多彩な病態を呈する.そのため,適切な診断と治療についてのガイドラインが求められる.『胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン』は,専門医およびプライマリケア医のそれぞれが活用できるものである.また,患者のためのガイドブックも出版されている.

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第3章 非びらん性胃食道逆流症
病態生理

三輪 洋人   兵庫医科大学内科学上部消化管科 主任教授

要旨
 非びらん性胃食道逆流症(NERD)は症状によって定義される疾患である.症状の直接的な誘因は胃内容物の食道への逆流であるが,逆流程度が症状の強さと相関せず,NERD 患者の症状は強い.これには,食道知覚過敏,精神心理因子など多因子の関与が推測されており,逆流性食道炎の軽症型というより,むしろ異なった病態を有する疾患と位置づけることが適当であろう.NERD の病態研究から,1つの刺激に対する個人レベルの応答が多様であることが理解できよう.

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第3章 非びらん性胃食道逆流症
診 断

小池 智幸    東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野 特命教授
中川健一郎   東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
前嶋 隆平    東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
新海 洋彦    東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
飯島 克則    東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野 講師
下瀬川 徹    東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野 教授

要旨
 非びらん性胃食道逆流症(NERD)とは,胃食道逆流症(GERD)の中で,胸やけや逆流感(呑酸)などの胃食道逆流症状はあるものの,食道にびらん(粘膜障害)のない疾患概念であり,定義上その診断には,適切な自覚症状の問診と内視鏡検査が必須となる.また,近年開発された24時間食道pH・多チャンネルインピーダンスモニタリング検査は NERD の診断に非常に有用と考えられ,今後のさらなる普及が望まれる.

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第3章 非びらん性胃食道逆流症
管理・治療

羽生 泰樹    大阪府済生会野江病院消化器内科 部長
野山 裕揮    大阪府済生会野江病院消化器内科
西谷  聡    大阪府済生会野江病院消化器内科
青井 一憲    大阪府済生会野江病院消化器内科
柴田 倫子    大阪府済生会野江病院消化器内科 医長

要旨
 非びらん性胃食道逆流症(NERD)は,逆流によると思われる症状があるにもかかわらず食道にびらんを認めない疾患であり,びらん性胃食道逆流症と比較して有病率はより高く,疫学背景も異なっている.病因も,酸逆流のみならず,酸以外の逆流も関与しており,臨床的には逆流現象を伴わない症例との区別が困難な場合も多い.治療については,プロトンポンプ阻害薬(PPI)が第1選択であるが,有効性はびらん性胃食道逆流症の場合よりやや低い.無効例では,推定される病態により種々の治療が試みられる.

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第4章 機能性胸やけ
病態生理

藤原 靖弘     大阪市立大学消化器内科学 准教授
谷川 徹也     大阪市立大学消化器内科学 講師
山上 博一     大阪市立大学消化器内科学 講師
斯波 将次     大阪市立大学消化器内科学 講師
渡辺 憲治     大阪市立大学消化器内科学 講師
富永 和作     大阪市立大学消化器内科学 准教授
渡辺 俊雄     大阪市立大学消化器内科学 准教授
荒川 哲男     大阪市立大学消化器内科学 教授

要旨
 機能性胸やけはRomeV基準により,@胸骨後方の灼熱感を伴う不快感または痛み,A症状の原因となるような胃食道酸逆流が確認できない,B組織病理学的に確認できる食道運動障害がないことを満たす疾患,と定義される.近年,多チャンネルインピーダンス・pH モニタリングにより弱酸逆流が診断可能となり,疾患概念が変わりつつある.胃酸の逆流が全く関係しないものを機能性胸やけと定義するならば,その病態は何らかの刺激に対する食道知覚過敏が主たるものである.
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第4章 機能性胸やけ
診 断

神谷  武    名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学 准教授
鹿野美千子   名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学
城  卓志    名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学 教授

要旨
 機能性胸やけは,胃内容物の食道内逆流とは無関係に胸やけが生じる疾患である.その診断は,内視鏡的に食道粘膜病変のない胸やけ患者のうち,食道運動障害を来す疾患と非びらん性逆流症(NERD)を除外することにより成される.確定診断には多チャンネルインピーダンス・24 時間pHモニタリング検査が必要であるが,日常臨床で全症例にこの検査を行うことは不可能で,実際にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)に対する反応性で評価されている.

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第4章 機能性胸やけ
管理・治療

大島 忠之   兵庫医科大学内科学上部消化管科 講師
富田 寿彦   兵庫医科大学内科学上部消化管科 講師
福井 広一   兵庫医科大学内科学上部消化管科 講師
渡  二郎    兵庫医科大学内科学上部消化管科 教授
三輪 洋人   兵庫医科大学内科学上部消化管科 主任教授

要旨
 機能性胸やけ(FH)の治療体系は,確立されていないが,治療前に上部消化管内視鏡検査,食道内圧検査,24時間インピーダンス・pHモニタリング検査で病態を確認しておくことが望まれる.一方で,必要のない侵襲的な検査を繰り返すことは避けるべきである.まず十分な酸分泌抑制を行うが,これで症状が改善されない場合には,知覚過敏や疼痛制御にかかわるような薬剤の応用が期待されている.
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第5章 アカラシア
病態生理

眞部 紀明    川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)講師
畠  二郎     川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)教授
春間  賢     川崎医科大学消化管内科学 教授

要旨
 食道アカラシアの病態の基本は,Auerbach 神経叢内の抑制系神経の消失であり,臨床像としては,下部食道括約部の弛緩不全と食道体部の蠕動波の消失により特徴づけられる.その発症要因はいまだ明らかにはされていないが,ウィルス感染などの幾つかの環境因子,Auerbach 神経叢に対する自己抗体などの自己免疫的機序,ヒト白血球型抗原(HLA)に関連した遺伝学的因子が,さまざまに影響し合いながら発症している可能性が考えられている.

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第5章 アカラシア
診 断

古田 賢司    島根大学医学部第2内科 講師

要旨
 食道アカラシアの診断には,@食道造影検査,A上部消化管内視鏡検査,B食道内圧測定検査が有用である.2012年6月に食道学会から最新の『食道アカラシア取扱い規約』(第4版)が発行された.この改訂では,食道造影検査の拡張型分類が紡錐型,フラスコ型,シグモイド型の3つから直線型,シグモイド型の2つへと変更になり,上部消化管内視鏡検査で下部食道狭小部に放射状の襞が観察されることや,内圧測定にマイクロトランスジューサーを使用した高解像度食道内圧測定(HRM)が行われるようになったことなど,最新の知見が盛り込まれている.

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第5章 アカラシア
管理・治療

柏木 秀幸    富士市立中央病院 外科 副院長

要旨
 アカラシアは食道知覚の消失や異常を伴うため,症状だけでなく,内視鏡検査などを組み合わせて管理する.逆流による呼吸器合併症,巨大食道による呼吸器系・循環器系の圧迫症状が見られることがある.長期経過例では食道がんの発生に注意する.腹腔鏡下 Heller−Dor 法がアカラシア治療に用いられるようになっているが,拡張治療の進歩や経口的内視鏡下筋層切開術の登場により,治療の選択肢は多くなってきている.

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第6章 びまん性食道痙攣症
病態生理

岩切 勝彦     日本医科大学千葉北総病院消化器内科 部長
            日本医科大学消化器内科学 准教授
川見 典之     日本医科大学消化器内科学
佐野 弘仁     日本医科大学消化器内科学
田中由理子    日本医科大学消化器内科学
梅沢まり子     日本医科大学消化器内科学
坂本 長逸     日本医科大学消化器内科学 教授

要旨
 びまん性食道痙攣症(DES)は,食道運動異常症の代表的疾患の1つであり,原因不明な“胸痛”,“嚥下困難”を有する患者の鑑別診断として重要である.食道内圧検査では正常食道蠕動波および間欠的な食道同期性収縮波を認める.同期性収縮波出現の原因としては,内因性一酸化窒素(NO)の合成・分解が関与していると考えられている.

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第6章 びまん性食道痙攣症
診断・治療

春日井邦夫    愛知医科大学医学部消化器内科 教授

要旨
 びまん性食道痙攣症(DES)は,つかえ感や胸痛を主訴とする一次性食道運動障害の1つで比較的まれな疾患であり,食道内圧検査により診断される.治療は困難であるが,カルシウム拮抗薬,亜硝酸剤,抗コリン薬などが使用される.これらの薬物治療が無効の場合には,バルーン拡張術,ボツリヌス菌局注療法,外科的筋層切開術なども行われる.また,心身医学的治療も考慮すべき疾患である.

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第7章 その他の食道運動異常
病理・病態生理

栗林 志行    国立病院機構沼田病院消化器科
           群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学
草野 元康    群馬大学医学部附属病院光学医療診療部 准教授
川田 晃世    群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学
保坂 浩子    群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学
下山 康之    群馬大学医学部附属病院消化器内科
前田 正毅    群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学
河村  修    群馬大学医学部附属病院消化器内科 講師
堀越  勤    群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学

要旨
 食道運動異常は食道内圧所見から分類され,アカラシアとびまん性食道痙攣症以外の食道運動障害には,ナットクラッカー食道や高圧下部食道括約筋,非特異的食道運動異常(NEMD)などがある.これらの病態生理については明らかになっていないものの,生理学的検討から,興奮系および抑制系の神経や食道筋の異常の関与が推測されている.

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第7章 その他の食道運動異常
診断・治療

河村  修    群馬大学医学部附属病院消化器内科 講師
栗林 志行    国立病院機構沼田病院消化器科
          群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学

要旨
 食道運動異常は,高解像度食道内圧測定(HRM)の登場により詳細に解析できるようになり,新しいシカゴ分類が提唱されている.食道内圧測定はごく限られた施設でしか施行できないため,一般臨床の場では胸痛やつかえ感を訴える患者に対しては,食道バリウム造影を行うと食道運動障害の初期診断には有用なことがある.上部消化管内視鏡検査では,食道粘膜生検による好酸球性食道炎の除外が重要である.収縮圧が高くなる異常では,アカラシアに準じた治療が試されることが多く,収縮が減弱する異常では運動機能改善薬が試される.

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第8章 二次性食道運動機能障害
二次性食道運動機能障害

大原 俊二    芙翔会姫路愛和病院内科
木下 芳一    島根大学医学部第2内科 教授

要旨
 二次性食道運動機能障害の原因には,全身性強皮症(SSc)などの膠原病や,糖尿病,慢性アルコール中毒,多発性硬化症,アミロイドーシス,Chagas 病のほかに,カルシウム拮抗薬,亜硝酸剤などによる薬剤性などがある.その診断には,食道造影検査,内視鏡検査に加えて,食道内圧検査が必要となる.治療は原疾患の十分な治療や原因薬剤の中止が重要であるが,十分な治療効果が得られない場合もある.

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