要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 80/腎8
ネフローゼ症候群


第1章 概念・定義と疫学
疾患概念・定義

今井 圓裕   中山寺いまいクリニック内科・腎臓内科・糖尿病内科 院長

要旨
 ネフローゼ症候群は,3.5g/日以上の大量の蛋白尿とこれに伴う低アルブミン血症(3.0g/dl)を来す症候群と定義される.低アルブミン血症に伴う浮腫と肝臓でのコレステロール産生亢進による高コレステロール血症を合併する.ネフローゼ症候群の治療効果判定基準は尿蛋白の減少量を基準として決定され,尿蛋白が0.3g/日未満を完全寛解と定義することが一般的である.我が国では,尿蛋白が 1.0g/日になると予後が良好であることから,1.0g/日未満を不完全寛解T型とする.不完全寛解U型は,1.0g/日以上3.5g/日未満とし,ネフローゼ症候群を来す蛋白量3.5g/日以上を無効と定義する.

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第1章 概念・定義と疫学
ネフローゼ症候群の疫学

杉山  斉    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科慢性腎臓病対策腎不全治療学 教授
佐藤  博    東北大学大学院薬学研究科臨床薬学分野 教授
横山  仁    金沢医科大学医学部腎臓内科学 教授

要旨
 一次性ネフローゼ症候群は年間約5,000例の新規発症と推定され,そのうち難治性ネフローゼ症候群は800〜900例と推定される.長期治療依存型ネフローゼ症候群は,加療中の一次性ネフローゼ症候群の45%を占める.腎生検施行例においてネフローゼ症候群は臨床診断の20%以上を占め,慢性腎炎症候群に次ぐ頻度である.一次性ネフローゼ症候群のうち,微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)が42%で1位を占め若年者に多い.次いで膜性腎症(MN)が37%で高齢者に比較的頻度が高く,さらに巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)が11%の頻度である.MN や FSGS では,完全寛解または不完全寛解T型の症例の腎機能予後は,不完全寛解U型や治療無効例の予後より有意に良好である.現在,ネフローゼ症候群の多施設前向きコホート研究が進行中であり,予後調査の結果が期待される.

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第2章 病理・病態生理
ネフローゼ症候群を来す腎疾患の病理

長田 道夫   筑波大学医学医療系腎・血管病理学 教授

要旨
 蛋白尿は糸球体障害惹起因子による濾過障壁障害に起因する.濾過障壁構成要素の中でも,ポドサイトと糸球体基底膜が重要であるが,光学顕微鏡や蛍光抗体法では障害はとらえにくく,電子顕微鏡に見るポドサイトや基底膜異常は,細胞と基質の障害像を示すもので,原因としての形態は十分に可視化できていない.ポドサイトと基底膜には相互関連があり,糸球体障害因子,病理像と濾過障壁障害の関連を明らかにすることは,今後の重要な課題である.

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第2章 病理・病態生理
ネフローゼ症候群の病態生理

丸山 彰一     名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学 准教授

要旨
 ネフローゼ症候群は大量の蛋白尿により低アルブミン血症を呈する疾患群である.蛋白尿が長期にわたって持続することにより腎尿細管間質障害を来すことも重要であるが,アルブミン喪失が直接引き起す全身の変化,あるいは代償機構による反応性の変化といった病態への対処が,実際の臨床の場面ではより切実な問題となる.ネフローゼ症候群では,高度蛋白尿によるアルブミンやほかのタンパクの喪失,低アルブミン血症とそれに伴う浮腫,循環動態の変化,脂質異常症,そして,凝固線溶系異常,免疫力低下といった病態が惹起される.本稿では,こうした病態生理につき概説する.

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第2章 病理・病態生理
病因 1.微小変化型ネフローゼ症候群

山縣 邦弘   筑波大学医学医療系腎臓内科学 教授

要旨
 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)は,小児〜若年成人のネフローゼ症候群の原因としても最も多い疾患である.その発症機構として,従来からT細胞から分泌されるリンフォカイン様物質が MCNS の蛋白尿惹起物質と考えられてきた.しかしながら,MCNSの発症要因がポドサイト内に存在する可能性,B細胞を抑制するリツキシマブ治療が著効することなど,新たな MCNS の発症機構に関する発見が近年なされている.

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第2章 病理・病態生理
病因 2.巣状分節性糸球体硬化症

篠原 明成  東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
川上 貴久  東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
南学 正臣  東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科 教授
要旨
 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は難治性ネフローゼ症候群を呈する代表的な疾患である.可溶性ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子受容体(suPAR)やマイクロ RNA(miRNA),遺伝子異常などが病因として盛んに研究されており,病態を解明することで新たな治療法の発見につながる可能性がある.

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第2章 病理・病態生理
病因 3.膜性腎症

横山  仁     金沢医科大学医学部腎臓内科学 教授
山谷 秀喜   金沢医科大学医学部腎臓内科学 講師
林  憲史     金沢医科大学医学部腎臓内科学

要旨
 膜性腎症は糸球体係蹄上皮下の免疫複合体形成によって惹起される.その機序として @流血中免疫複合体沈着,A流血中抗原・抗体による局所(in situ)での形成,および B上皮細胞抗原(内因性抗原)があり,この内因性抗原として膜型ホスホリパーゼA2 受容体が注目されている.さらに,免疫複合体を形成するIgG抗体サブクラス(一次性は IgG4 が主体)から本症における一次性・二次性の鑑別を解説する.

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第2章 病理・病態生理
病因 4.膜性増殖性糸球体腎炎T型,V型

金子 佳賢   新潟大学大学院医歯学総合研究科腎・膠原病内科学分野
成田 一衛   新潟大学大学院医歯学総合研究科腎・膠原病内科学分野 教授

要旨
 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は病理学的疾患概念であり,糸球体係蹄壁の肥厚・二重化と,分葉状の細胞増殖病変,および持続性低補体血症を特徴とする.電子顕微鏡所見での高電子密度沈着物(EDD)の沈着部位の違いから,T型(内皮下),U型(基底膜緻密層),V型(内皮下と上皮下)に分類される.特発性に対しては,降圧療法や食事療法に加えて,ステロイド療法や免疫抑制薬,抗血小板薬の併用が行われるほか,エクリズマブの使用例が近年報告されている.
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第2章 病理・病態生理
病因 5.膜性増殖性糸球体腎炎U型

水野 正司   名古屋大学大学院医学系研究科腎不全総合治療学寄附講座 准教授

要旨
 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)U型は,糸球体に大量の C3 沈着を認めるが,通常,免疫グロブリン沈着を伴わない疾患である.近年,補体学の進歩により,MPGNの中で免疫グロブリン沈着を伴わず第2経路(AP)の補体制御系の異常により異常活性化を来す症例があり,これらを最近では C3 腎症と呼んでいる.本稿では,補体異常にかかわる MPGN2 型の病因と C3 腎症との関連について概説する.

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第2章 病理・病態生理
病因 6.糖尿病性腎症

金崎 啓造      金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学 講師

要旨
 糖尿病性腎症(腎症)がネフローゼ症候群を呈するまでに進展すると,腎機能低下を伴っていることが多く,またそのほかにも,併存する心血管病変など,治療に難渋することが多い.腎症の病因に基づいた治療の確立は急務であり,本稿では高血糖による細胞内代謝異常−糸球体血行動態異常に始まる腎症の発症進展機序を,特に細胞外基質蓄積−異常血管新生に注目して概説する.

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第2章 病理・病態生理
病因 7.ループス腎炎

山端 潤也   富山県立中央病院内科(腎臓・高血圧)医長
古市 賢吾   金沢大学医学部附属病院血液浄化療法部 准教授
和田 隆志   金沢大学大学院医薬保健総合研究科血液情報統御学 教授

要旨
 ループス腎炎(LN)は全身性エリテマトーデス(SLE)に見られる腎炎である.SLE の臓器障害の中で頻度が高く,予後を規定する病態である.非常に多彩な病理組織学的所見を呈し,びまん性LN や難治性ネフローゼ症候群の合併例は予後不良である.定期的に尿,血液検査を行い,異常を示唆する所見がある際は,腎生検にて病理組織学的評価を行うことが重要である.

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第2章 病理・病態生理
病因 8.アミロイドーシス

猪阪 善隆   大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 准教授

要旨
 全身性アミロイドーシスでは,アミロイド線維が腎糸球体間質に沈着することにより,組織構造が破壊され,ネフローゼ症候群を来す.アミロイド線維は,bシート構造のアミロイド原性タンパクが,直交する方向に積み重なることにより形成される.アミロイド沈着のメカニズムの詳細は明らかではないが,遺伝的な背景に加え,アミロイド原性タンパクへの構造変換,組織のプロテオグリカンなど,さまざまな要因が関与している.

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第3章 診 断
鑑別診断

湯澤 由紀夫   藤田保健衛生大学医学部腎内科学 教授

要旨
 成人ネフローゼ症候群の鑑別においては,臨床的にネフローゼ症候群である確認を行った後,二次性ネフローゼ症候群の基礎疾患の可能性を評価した後に原発性ネフローゼ症候群の原因検索を行う.最終的には,腎生検による病理診断により確定診断に至る.本稿では,代表的な原発性ネフローゼ症候群の最近の分類に加えて,今後鑑別の際に有用になると思われる新たなバイオマーカーについても記載する.特に膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)については,疾患概念が整理されつつあり,新たな分類が提唱されており,鑑別に有用である.

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第3章 診 断
検査所見

今田 恒夫    山形大学医学部内科学第一(循環・呼吸・腎臓内科学)准教授

要旨
 ネフローゼ症候群は,高度の蛋白尿(3.5g/日以上)と低アルブミン血症(血清アルブミン値3.0g/dl以下)を必須条件とし,浮腫,脂質異常症(高LDLコレステロール血症)を伴う.また,尿沈渣,腎機能,電解質,凝固・線溶系,免疫グロブリンなどの異常も見られる.ネフローゼ症候群の診断と病態評価にはこれらの検査所見が重要である.

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第4章 管理・治療
保存的治療

山下 靖宏    宮崎大学医学部内科学講座循環体液制御学分野
藤元 昭一    宮崎大学医学部血液・血管先端医療学講座 教授

要旨
 成人ネフローゼ症候群の浮腫への対応として,ループ利尿薬とアルブミン製剤を適正に使用することが重要である.また,腎保護効果の期待できるレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬やスタチンを適切に使用することで,腎機能低下抑制など予後の改善効果も望まれる.

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第4章 管理・治療
抗凝固療法

奥田 拓史     東北大学東北メディカル・メガバンク機構統合遠隔腎臓学分野
阿部 倫明     東北大学東北メディカル・メガバンク機構統合遠隔腎臓学分野 准教授
清元 秀泰     東北大学東北メディカル・メガバンク機構統合遠隔腎臓学分野 教授

要旨
 ネフローゼ症候群では,高度の浮腫に伴う末梢循環不全や有効循環血漿量の低下も相まって,二次性の凝固亢進状態が生じやすい.大量の蛋白尿によって生体内に重要な凝固・線溶因子が喪失するために,凝固異常に対する介入も単純ではない.ネフローゼ症候群では,動脈・静脈のいずれの血管系でも臨床的に血栓症を合併しやすいと報告されており,原疾患の治療と並行して,何らかの血栓症に対する治療介入が必要な場合がある.基礎研究では抗凝固療法による腎保護効果も期待されるが,臨床的には抗凝固療法単独での有効性は懐疑的である.予防的抗凝固療法による生命予後の改善や腎保護効果に対するエビデンスは不十分であるが,血栓形成に伴う重篤な肺血栓塞栓症(PE)が疑われる場合には,積極的な線溶療法と強力な抗凝固療法が推奨される.

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第4章 管理・治療
グルココルチコイド・免疫抑制薬D

寺西 順哉    大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学
山本 陵平    大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学

要旨
 副腎皮質ステロイド剤および免疫抑制薬は,ネフローゼ症候群に対する主要な治療薬である.一方,これらの薬剤の使用に関しては,副作用に対する注意が必要である.共通するものとして易感染性が挙げられるが,副腎皮質ステロイド剤の骨粗鬆症やカルシニューリン阻害薬(CNI)の腎毒性など,各薬剤に特徴的なものもある.

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第4章 管理・治療
微小変化型ネフローゼ症候群の治療

三上 大輔    福井大学医学部医学科腎臓病態内科学
岩野 正之    福井大学医学部医学科腎臓病態内科学 教授

要旨
 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)治療の基本薬は,副腎皮質ステロイド剤である.MCNSのステロイド剤に対する反応性は良好であるが,30〜70%で再発が見られ,頻回再発型,ステロイド依存性,ステロイド抵抗性を呈する症例が存在し,治療に苦慮する.これらの症例に対するエビデンスが確立した治療法はないが,免疫抑制薬の有効性を示した報告は多い.また,リツキマシブの有効性を示す報告が増えており,新しい治療法として期待される.
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第4章 管理・治療
巣状分節性糸球体硬化症の治療

佐藤 博     東北大学大学院薬学研究科臨床薬学分野 教授

要旨
 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の発症にかかわる糸球体上皮細胞の構造膜タンパク障害や液性因子の関与が徐々に解明されるにつれて本症の病因や病態への理解が深まっているが,臨床的には現在もなお治療に難渋する症例が多い.そのような中で,ステロイドパルス療法や免疫抑制薬の積極的な併用,さらにはレニン・アンジオテンシン系の抑制や LDL アフェレシスを含む脂質異常症対策などの組み合わせによって,可能な限りの寛解を目指す治療指針の枠組みが構築されている.

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第4章 管理・治療
膜性腎症の治療

江里口 雅裕    九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
鶴屋 和彦      九州大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学 准教授

要旨
 膜性腎症の治療では原発性と続発性の鑑別が重要で,続発性では原因薬剤の中止あるいは原因疾患の治療を行う.原発性では我が国と欧米で推奨される治療法が異なり,我が国では早期からのステロイド単独療法,欧米では,6ヵ月間の経過観察後,高度蛋白尿が持続する症例に対するステロイド・免疫抑制薬併用が推奨されている.免疫抑制薬としては,シクロスポリン(CyA),シクロホスファミド(CPA),ミゾリビン(MZR)などが有用である.

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第4章 管理・治療
糖尿病性腎症の治療

羽田 勝計    旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野 教授

要旨
 糖尿病性腎病の治療戦略は,血糖コントロール・糸球体高血圧の是正を中心とした集約的治療である.しかし,ネフローゼ症候群を呈する糖尿病性腎病の治療は困難であることが多い.ネフローゼ症候群の寛解という観点では,レニン・アンジオテンシン系阻害薬の使用と厳格な血圧コントロールが重要であると考えられる.また単独膵移植によるネフローゼ症候群の寛解も報告されており,可能であれば,正常化を目指した厳格な血糖コントロールの重要性も示唆される.

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第4章 管理・治療
ループス腎炎の治療

坪井 直毅     名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学 講師

要旨
 全身性エリテマトーデス(SLE)は,高率に腎障害を合併する代表的なV型アレルギー疾患である.腎病変の主座は糸球体にあり,ループス腎炎(LN)と総称される多彩な組織像を特徴とする.特に,増殖性腎炎やネフローゼ症候群合併例では腎不全に至ることも多く,腎組織学的所見に応じた適切な診断と治療が重要である.本稿では最近発表された欧米の診断クライテリア,診療ガイドラインをもとに,LN の診断から治療までを概説する.

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第4章 管理・治療
アミロイドーシスの治療

岡田 浩一    埼玉医科大学医学部腎臓内科 教授

要旨
 腎アミロイドーシスによるネフローゼ症候群は難治性であり,アミロイド前駆物質の産生抑制を目指した治療を行う.ALアミロイドーシスでは,遊離免疫グロブリン軽鎖(FLC)の産生を抑制するために,大量メルファラン療法と自家末梢血幹細胞移植との,もしくはメルファランとデキサメタゾンとの併用療法が,また AA アミロイドーシスでは血清アミロイドA(SAA)産生を抑制するために,抗腫瘍壊死因子a(TNFa)療法が行われる.近年,有望な新規薬剤として,前者にはボルテゾミブやサリドマイドが,後者にはトシリズマブが導入されつつある.

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第4章 管理・治療
リツキシマブ

武井  卓      東京女子医科大学第四内科 講師
新田 孝作    東京女子医科大学第四内科 主任教授

要旨
 リツキシマブは,B細胞表面に発現する分化抗原 CD20 に対するモノクローナル抗体であり,ヒト免疫グロブリンの定常部領域(IgG1k)とマウス抗 CD20 抗体の可変部領域からなるキメラ型の抗CD20モノクローナル抗体である.リツキシマブの作用機序としては,不明な点が多いが,B細胞表面の CD20 抗原に結合して,補体依存性細胞傷害(CDG)作用,あるいは抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)作用により,B細胞を特異的に傷害する.ステロイド依存性の難治性ネフローゼ症候群に対する,リツキシマブの有効性が検討されている.共刺激分子を発現するメモリーB細胞を優先的に除去して,B細胞−T細胞間相互作用を制御し,蛋白尿を減らす可能性がある.その有効性,および安全性に関して,大規模臨床試験の成果が期待される.

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第4章 管理・治療
LDLアフェレシス

武曾 惠理    公共財団法人田附興風会医学研究所北野病院腎臓内科 主任部長

要旨
 難治性ネフローゼ症候群の脂質異常に対する LDLアフェレシスは,LDL,VLDL,Lp(a)の低下をもたらし,@マクロファージの過剰活性化是正や炎症性サイトカインの抑制,A液性タンパク透過性亢進因子の吸着,B薬剤抵抗性改善による感受性を回復,などの機序により,脂質による組織障害性のみならず早期の寛解導入も期待できる.我が国の症例報告の解析や前向きの効果検討試験POLARISから,難治性ネフローゼ発症早期に本療法を試みることで,約半数の症例で予後良好となり,組織障害の進展を防ぐことが期待できる.

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第4章 管理・治療
高齢者ネフローゼ症候群

横 山  仁     金沢医科大学医学部腎臓内科学 教授
奥 山  宏     金沢医科大学医学部腎臓内科学 講師
藤本 圭司    金沢医科大学医学部腎臓内科学

要旨
 我が国では,高齢者特有のネフローゼ症候群が増加しており,その管理・治療の要点として,@約40%を占める二次性疾患,特に糖尿病性腎症とアミロイド腎の鑑別が重要である.A一次性では,膜性腎症,微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症,膜性増殖性糸球体腎炎(T型,V型)の4疾患で90%以上を占める.B微小変化型ネフローゼ症候群が,高齢者でも一次性疾患の16.7%(全体の約13%)を占める.C加齢とネフローゼ状態に伴う免疫能低下状態がある.

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第5章 ガイドライン
ガイドライン

西  慎一    神戸大学大学院医学研究科腎臓内科 教授

要旨
 本邦のネフローゼ症候群ガイドラインに関しては,日本腎臓学会と厚生労働省「進行性腎障害に関する調査研究班」が共同で診断基準と診療指針を作成し発表してきた経緯がある.また,近年 KIDGO からは,glomerulonephritis に関する診療ガイドラインが発表されており,この中にネフローゼ症候群が含まれている.診断基準,判定基準,治療法は時代とともに変化してきた.また,膜性腎症,巣状分節性糸球体硬化症に関する治療法においては,日本と世界では,特に初期治療に関して大きな考え方の差異がある.

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座談会
ネフローゼ症候群の診療は新しい時代へ
  -ガイドラインに基づく診療-

金沢大学          横山 仁
神戸大学          西 慎一
中山寺いまいクリニック   今井 圓裕(司会)

 座談会の内容
 ・ネフローゼ症候群診療指針の歴史
  ・エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013作成方針
  ・ネフローゼ症候群の治療の今後の展望 など

 西先生            今井先生    横山先生


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