要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 82/神経7
神経関連感染症


第1章 臨床的アプローチ
一般的・神経学的な病歴聴取と診察

柴田  護    慶應義塾大学医学部神経内科 専任講師
鈴木 則宏   慶應義塾大学医学部神経内科 教授

要旨
 神経感染症は,細菌性髄膜炎のような急性疾患からプリオン病などの慢性に経過する疾患まで含み,病状経過は非常に多彩である.病原体もプリオンから原虫までとさまざまで,各病原体の生物学的性質の相違を反映して,感染様式や感染経路も非常に複雑である.神経感染症の多くは治療可能であるものの,しばしば急速に神経組織損傷を引き起すため,迅速な診断が要求される.本稿では,病歴聴取と神経学的検査を含めた診察のポイントを概説する.

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第1章 臨床的アプローチ
検査と所見の解釈

丹治 治子   山形大学医学部附属病院第三内科 院内講師
加藤 丈夫   山形大学医学部附属病院第三内科 教授

要旨
 神経関連感染症における検査の目的は,病原微生物の証明と感染部位の把握である.重篤な後遺症を防ぐため,適切な検査を迅速に施行し,診断,治療へと進む必要がある.最も緊急性の高い神経関連感染症である細菌性髄膜炎では,疑ったらすぐに血液培養を行い,脳 CT や脳脊髄液検査に時間がかかるようなら,治療開始を優先する.そのほか,急性〜亜急性疾患,亜急性〜慢性疾患と,HIV 関連感染症に分けて,診断に必要な検査につき述べた.

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第2章 治療と予防
内科的治療(抗生物質,副腎皮質ステロイド,抗毒素,IVIg)

中川 正法   京都府立医科大学附属北部医療センター 病院長

要旨
 神経感染症は,ウイルス,細菌,真菌,寄生虫,プリオンなどによって引き起される.また,感染が契機となって自己免疫性脳炎などを引き起すこともある.多様な病原体が神経系に複数経路から感染しうるため,直接的な治療(抗細菌薬,抗真菌薬,抗結核薬,抗ウイルス薬,抗毒素など),病態に応じた副腎皮質ステロイドや免疫グロブリン大量点滴静注療法(IVIg)などの併用,さらに感染経路,基礎疾患などの検索とそれに対する対応が重要である.

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第2章 治療と予防
中枢神経感染の外科的治療

長嶋 達也     兵庫県立こども病院脳神経外科 院長

要旨
 抗生物質の開発と普及により,現在の日本では外科的治療を要する中枢神経感染症はまれになってきたが,免疫不全,耐性菌,頭蓋内の人工物留置など,複雑な病態に伴う新たな課題がある.外科的治療の原則は“膿瘍のドレナージと異物除去”そして感受性のある抗生物質の投与につきる.抗生物質の適切な使用の徹底,画像診断の進歩,画像誘導手術法の導入により,手術成績は向上している.外科的治療は,@頭蓋内占拠性病変,A急性水頭症や硬膜下水腫,B髄膜炎後の慢性水頭症,脊髄空洞症 C脊髄硬膜外膿瘍や先天性皮膚洞に伴う脊髄膿瘍,などが対象となる.

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第2章 治療と予防
公衆衛生の立場から

中村 好一   自治医科大学公衆衛生学教室 教授

要旨
 公衆衛生(予防医学)の視点から感染症を概括し,解説した.感染源,感染経路,感受性者の,感染症成立の3要素のどれか1つについて完全に対策がとれれば,その感染症は克服できるが,抗生物質で克服できた感染症はいまだに存在しない.微生物は“生きている”ということを再認識する必要がある.感染症対策として臨床医にまず求められるのは,@適切な患者の治療と A感染症法に基づく保健所への届出である.

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第3章 神経感染症各論
無菌性髄膜炎

大石 知瑞子  杏林大学医学部神経内科
千葉 厚郎    杏林大学医学部神経内科 教授

要旨
 無菌性髄膜炎は,通常の塗抹染色あるいは一般細菌培養にて細菌が検出されない髄膜炎すべてを意味し,感染性と非感染性に分類され,その原因は多岐にわたる.その中でウイルス性髄膜炎は最も多い疾患であり,日常診療において頻繁に遭遇し,見逃してはならない疾患の1つである.そのため,無菌性髄膜炎を診療するうえで注意すべき点を杏林大学医学部付属病院での経験をふまえながら,一般的な臨床症状,診断,検査,治療,経過について述べる.

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第3章 神経感染症各論
急性細菌性髄膜炎

亀井  聡    日本大学医学部内科学系神経内科学分野 主任教授

要旨
 細菌性髄膜炎(BM)は初期治療が転帰に大きく影響する neurological emergency である.したがって,早期診断が必要である.病歴と神経所見のみでは十分ではない.この点から髄液検査が重要となるが,診断上留意すべき点として,神経放射線検査で抗菌薬開始が遅れてはならないこと,髄液の塗沫培養は partially treated では検出率が低下すること,が挙げられる.初期治療は,本邦における年齢階層別主要起炎菌,耐性菌の頻度,および宿主のリスクを考慮し,抗菌薬選択を行う.

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第3章 神経感染症各論
慢性髄膜炎と髄膜脳炎

河内  泉    新潟大学脳研究所臨床神経学部門神経内科学分野 病院講師
西澤 正豊   新潟大学脳研究所臨床神経学部門神経内科学分野 教授

要旨
  慢性髄膜炎は,脳脊髄液異常を伴う神経症状が4週間以上持続することを特徴とする髄膜の慢性炎症病態である.@感染性,A腫瘍関連性,B非感染性,C化学性,D傍髄膜性感染症,E特発性,に分類される.近年の免疫抑制薬や抗がん剤の著しい進歩と盛んな海外渡航は,慢性髄膜炎の病態を複雑化している.慢性髄膜炎,特に感染性髄膜炎に対する迅速,かつ的確な検査体制の確立,診断・治療アルゴリズムの作成,臨床医と感染症研究者の全国的・国際的な連携の強化が望まれる.

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第3章 神経感染症各論
脳膿瘍

越智  崇   東京大学大学院医学系研究科脳神経外科学
斉藤 延人   東京大学大学院医学系研究科脳神経外科学 教授

要旨
  近年,脳膿瘍は発生頻度も下がり,診断と治療の進歩にて死亡率も下がっている.しかし,早期に適切な診断と治療が成されなければmortality,morbidityともに依然高い.脳膿瘍は進行が速く,急速に増大するなどダイナミックな形態変化を示すためである.治療の根幹は適切な抗生物質を長期に投与することであるが,外科的介入は,病原菌の同定や診断確定,病変の縮小効果など有利な点があり,常に選択肢の1つとして積極的に考慮すべきである.

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第3章 神経感染症各論
脳 炎

牧  美充      鹿児島大学医学部・歯学部付属病院神経内科
嶋  博      鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学講座神経内科・老年学 教授

要旨
  脳炎は,感染性と自己免疫介在性(傍腫瘍性も含む)に分類される.特に,感染性脳炎の代表である単純ヘルペス脳炎(HSE)と抗 NMDAR 脳炎などの自己免疫介在性脳炎は,辺縁系脳炎として同様の臨床症状を呈することがあり,鑑別が重要になる.本稿では,脳炎全体について臨床症状,検査,治療の順に勘どころやピットフォールを述べ,最後に各論として,本誌の他稿でふれられていない脳炎について,自己免疫介在性脳炎を含めて紹介する.

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第3章 神経感染症各論
脊髄硬膜外膿瘍,椎間板炎,骨髄炎

加藤  剛   東京医科歯科大学大学院医歯学総合学研究科整形外科学
大川  淳   東京医科歯科大学大学院医歯学総合学研究科整形外科学 教授

要旨
 近年増加の一途をたどる脊髄硬膜外膿瘍,化膿性脊椎炎の症状,診断,治療方法について述べる.診断に有用なのは造影MRIで,発熱や CRP 値の上昇などを伴う腰背部痛を見たときに本疾患を念頭に置くことが重要である.安静と抗菌薬投与での保存療法を行い,重篤化する前に個々の症例の患者背景や病勢,画像評価など総合的に判断し,比較的低侵襲な経皮的ドレナージや,早期からの固定術などの外科治療を積極的に検討すべきと考える.

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第4章 特異的神経感染症
神経系結核症

玉岡  晃   筑波大学大学院人間総合科学研究科病患制御医学専攻神経病態医学分野 教授

要旨
 神経系結核症の確定診断は髄液中の結核菌を同定することであるが,その診断は依然としてしばしば困難を伴う.本症の予後は治療開始時の病期に依存するため,早期に治療を開始することが重要である.緩徐進行性や急性の感染症では結核である可能性を疑い,結核を示唆する臨床データに基づいて診断を推定しなければならない.治療は通常4種類の第1選択薬(イソニアジド,リファンピシン,ストレプトマイシン,ピラジナミド)を組み合わせて施行する.

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第4章 特異的神経感染症
神経梅毒

峠  哲男    香川大学医学部看護学科健康科学 教授
高田 忠幸   香川大学医学部消化器・神経内科

要旨
 神経梅毒は,髄膜炎,血管内膜炎を経て,脊髄癆や進行麻痺といった神経系の非可逆的障害を引き起すので,忘れてはならない神経感染症である.また最近では,AIDSの合併症としても注目を浴びている.早期に治療を行えば治癒しうるが,罹病期間が長い患者では治療効果が期待できない.しかし,長期罹患例でも治療に反応を示すことがあるので,経過を観察しつつ,適宜治療を行うべきである.

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第4章 特異的神経感染症
ライム病

中野 史人    市立函館病院神経内科 医長
佐々木秀直    北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座 教授

要旨
 ライム病(Lyme disease)は野ネズミや鳥類など野生動物を保菌宿主として,マダニが媒介するスピロヘータの一種ボレリア感染に起因する全身性の細菌感染症である.初期病態である遊走性紅班やダニ咬傷の既往が確認できない症例では,非特異的な症状のために診断が困難となる.欧米に比較すると本邦ではまれな疾患であるが,抗生物質で治療可能であり,早期診断,早期治療すべき疾患である.

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第4章 特異的神経感染症
破傷風

山本 明彦   国立感染症研究所細菌第二部

要旨
 破傷風は主に土壌中に存在する破傷風菌の芽胞が,座傷または創傷部で皮下組織に侵入し,産生された神経毒素により発症する致命率の高い疾病である.感染源の芽胞は広く世界の土壌に存在する.感染後の破傷風毒素による特異的な症状で診断される.治療のため集中治療室(ICU)などの高度な医療体制が必要で,強い痛みと長い入院期間を強いるが,破傷風トキソイドによる免疫を付与することで,発症防止が可能である.

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第4章 特異的神経感染症
ボツリヌス症

高橋 元秀     (独)医薬品医療機器総合機構品質管理部 GMPエキスパート

要旨
 一般的なボツリヌス症患者の症状は,散瞳,眼球運動障害,便秘,眼瞼下垂,嚥下障害,腱反射消失,無表情顔貌,四肢脱力,などである.これらの症状から初期診断として,急性散在性脳脊髄炎(ADEM),ギラン・バレー症候群(Guillain−Barr■ syndrome),重症筋無力症,フィッシャー症候群(Fisher's syndrome),の可能性を疑うことが報告されている.乳児が神経障害,便秘などの症状を呈して上述の疾患を疑った場合には,実験室診断によるボツリヌス毒素と菌の検査を強く推奨する.

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第4章 特異的神経感染症
単純ヘルペスウイルス神経感染症 −ガイドラインを含めて−

神澤 朋子    福井大学医学部附属病院神経内科
米田  誠     福井県立大学看護福祉学部 教授

要旨
 単純ヘルペスウイルス(HSV)は1型(HSV−1),2型(HSV−2)の2つのサブタイプがあり,前者は脳炎,後者は髄膜炎および脊髄炎の起因ウイルスとして有名である.単純ヘルペス脳炎(HSE)は側頭葉などに好発し,意識障害や高次脳機能障害を来す.抗ウイルス薬の十分な投与によっても後遺症を残しやすく,ガイドラインに基づく早期診断・治療開始が重要である.最近,副腎皮質ステロイド併用の有用性が明らかにされつつあり,積極的に使用を検討すべきである.小児では成人の脳炎と発症機序が異なり,急激に意識障害が進行したり,全身型感染となる重篤な病態が存在する.髄膜炎,脊髄炎では比較的予後良好であるが,脳炎に進展したり,再発を来したり,膀胱直腸障害が後遺する例もあるため,脳炎に準じて抗ウイルス薬投与が勧められる.

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第4章 特異的神経感染症
水痘・帯状疱疹ウイルス感染症

林  祐一    岐阜大学医学部附属病院神経内科・老年内科 講師
犬塚  貴    岐阜大学大学院医学系研究科神経内科・老年学分野 教授

要旨
 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は,中枢神経系,末梢神経系のいずれにも神経感染症を来しうる神経向性ウイルスの1つである.神経症状の発生機序として,ウイルスの神経系への直接感染とウイルス感染に伴う二次的な免疫アレルギー反応や血管炎が想定されている.神経症状は多彩ながらも,水痘,帯状疱疹によって神経症状の生じ方,出現頻度がやや異なるため,水痘,帯状疱疹,無疹性,それぞれの神経感染症を区別し概説する.
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第4章 特異的神経感染症
サイトメガロウイルス感染症

大路  剛     神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野 講師

要旨
 ヘルペスウイルス属のサイトメガロウイルス(CMV)は,初感染でギラン・バレー症候群(Guillain−Barre syndrome)を,再活性化で CMV 脳炎や CMV 多発神経根炎を来す.再活性化 CMV 感染症の診断の原則は,CMV 自体の感染臓器における証明である.CMV 感染症の治療薬はいずれも骨髄抑制や腎障害の副作用が必発であるため,安易に CMV 抗原血症のみで治療を開始してはいけない.

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第4章 特異的神経感染症
進行性多巣性白質脳症 −PML診療ガイドライン2013より−

三浦 義治      がん・感染症センター都立駒込病院脳神経内科 診療科 責任医長

要旨
 近年の目覚ましいがん治療薬と免疫抑制薬剤の開発の背景の中,進行性多巣性白質脳症(PML)の基礎疾患は,従来のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を中心としたものからがん・自己免疫疾患・移植へと変貌しつつある状況であり,これまでの PML の概念を変遷する結果となってきている.今後,多発性硬化症(MS)の新規治療薬である natalizumab 使用に伴う natalizumab 関連 PML の増加が懸念されており,今後の動向に注意が必要である.

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第4章 特異的神経感染症
亜急性硬化性全脳炎

細矢 光亮    福島県立医科大学小児科学講座 教授

要旨
 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は,麻疹に罹患してから数年の無症状期間を経て比較的軽微な神経症状にて発症する.発病後は徐々に進行し,ついに全大脳機能を喪失して死に至る中枢神経感染症であり,遅発性ウイルス感染症の代表疾患である.SSPE に対し,イノシプレックス,インターフェロン,リバビリンなどによる治療が試みられているが,有効な治療法は確立されておらず,依然予後不良である.ワクチンにより麻疹罹患を予防することが重要である.

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第4章 特異的神経感染症
ヒトT細胞白血病ウイルス1型関連脊髄症

山野 嘉久     聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター病因・病態解析部門 部門長

要旨
 HTLV−1関連脊髄症(HAM)は,ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV−1)感染に起因する,慢性進行性の両下肢痙性麻痺,感覚障害,膀胱直腸障害を呈する神経難病である.現時点で根本的治療はなく,ステロイドやインターフェロンα(IFNα)による脊髄の炎症の制御が治療の主流であるが,症状に個人差が大きく,疾患活動性を見極めた治療が重要であるため,発症早期の診断が望まれる.また近年,大都市圏でも患者数の増加が見られるため,痙性麻痺を診たときの鑑別疾患としても,頭にとどめていただきたい.

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第4章 特異的神経感染症
ヒト免疫不全ウイルス感染症

岸田 修二     柏水会初石病院神経内科

要旨
 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染治療の進歩は,HIV感染症を致死的疾患から慢性感染症へと変化をもたらした.それに伴い,従来高頻度に見られた重度の認知症は減少し,軽度な神経認知障害を有する患者が増加してきた.HIV感染に伴う神経認知障害の病態解明とその対策のために,感染に伴う神経認知障害を総括してHIV関連神経認知障害(HAND)と称し,無症候性神経認知障害,軽度神経認知障害,認知症,の3型が分類された.本稿では,この神経認知障害を概説する.

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第4章 特異的神経感染症
トキソプラズマ症

吉田 眞理     愛知医科大学加齢医科学研究所神経病理部門 教授

要旨
 トキソプラズマ症は,トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)の感染により引き起される人獣共通感染症で,先天性トキソプラズマ症では経胎盤感染による胎児の脳炎と脈絡網膜炎を起し,後天性トキソプラズマ症は,特に後天性免疫不全症候群(AIDS)や臓器移植,悪性腫瘍などの免疫不全症で,頭蓋内占拠性病変や髄膜脳炎を起す.画像所見はリング状造影効果を示す多発性結節性病変で浮腫を伴うことが特徴で,抗体検査,抗原検査で診断確定できない場合には,診断的治療を行う.

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第4章 特異的神経感染症
クリプトコッカス髄膜脳炎

長坂 高村     山梨大学大学院医学工学総合研究部神経内科学講座 学内講師
瀧山 嘉久     山梨大学大学院医学工学総合研究部神経内科学講座 教授

要旨
 クリプトコッカス髄膜脳炎は,真菌性髄膜脳炎のうち最も頻度が高く,後天性免疫不全症候群(AIDS)など細胞性免疫低下者に多く発症し,亜急性・慢性の進行経過で非特異的な症状が目立つ.菌体の血管周囲腔に沿う脳深部への浸潤と,虫喰い様■胞性病変に伴う,MRIでの石鹸の泡状所見や水頭症などの特徴をとらえ,髄液抗原価,墨汁染色などによりできるだけ早期に診断し,アムホテリシンB(AMPH−B),フルシトシン(5−FC)を中心に適切な治療を行うことが重要である.

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第4章 特異的神経感染症
プリオン病

浜口  毅     金沢大学大学院医薬保健学総合研究科脳老化・神経病態学(神経内科学)
山田 正仁     金沢大学大学院医薬保健学総合研究科脳老化・神経病態学(神経内科学)教授

要旨
 クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に代表されるプリオン病は,病因から孤発性 CJD(sCJD),遺伝性プリオン病,獲得性プリオン病に分類される.sCJD は,プリオンタンパク(PrP)遺伝子コドン 129 多型と異常プリオンタンパクの型から6型に分類され,遺伝性プリオン病は PrP 遺伝子変異によってそれぞれ異なった病型を呈する.我が国の獲得性プリオン病は,1例の変異型 CJD を除き全例硬膜移植 CJD(dCJD)で,現在までに全世界の dCJD の6割以上が日本で発症しており,dCJD の多発は我が国の大きな問題である.

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