要旨

最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 85/呼吸器9
全身性疾患の肺病変

第1章 膠原病と肺病変
関節リウマチ

須田 隆文   浜松医科大学内科学第二講座 教授

要旨
 関節リウマチ(RA)に合併した肺病変は多彩であり,間質性肺炎(IP),気道病変,胸膜病変,などがある.IP は,特発性間質性肺炎(IIP)の組織分類に準じた組織パターンに分類され,それぞれ臨床像や予後などが異なる.一方,気道病変は,中枢気道病変である気管支拡張症に加え,濾胞性細気管支炎(FB)や閉塞性細気管支炎(BO)などの末梢気道病変がある.実臨床ではこれらのRA固有の肺病変は,日和見感染症などの肺感染症や治療に用いる薬剤による薬剤性肺障害との鑑別が問題となる.

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第1章 膠原病と肺病変
多発性筋炎/皮膚筋炎

佐藤 敬太    東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科
本間  栄     東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科 教授

要旨
 多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)は筋力低下を主症状とする全身性疾患である.多彩な肺病変を合併するが,中でも間質性肺炎(IP)は,予後にかかわる重要な合併症である.その病態は多彩であり,臨床所見,検査所見,呼吸機能検査,病理組織学的所見などから,総合的に治療戦略を立てなければならない.近年自己抗体が同定され,治療反応性や予後について推測されてきている.特に予後不良なclinically amyopathic DM(CADM)に合併するIPの今後の治療確立が,重要な課題である.

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第1章 膠原病と肺病変
強皮症

岸   潤    徳島大学 呼吸器膠原病内科 講師
河野 弘     徳島大学 呼吸器膠原病内科
西岡 安彦   徳島大学 呼吸器膠原病内科 教授

要旨
 強皮症に合併する間質性肺疾患(SSc-ILD)の多くは予後良好であるが,進行性に ILD が悪化し,肺機能の低下から呼吸不全となり,死亡に至る症例も存在する.進行性の症例には免疫抑制療法を行うが,治療適応となる症例の選択,治療内容については,標準的なものは確立されていない.最近になって大規模で質の高いRCTが複数発表され,それらに基づいた治療が行われるようになっている.本稿では,SSc-ILDの診断と治療の現状について説明する.
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第1章 膠原病と肺病変
全身性エリテマトーデス

花岡 洋成    慶應義塾大学医学部リウマチ内科

要旨
 全身性エリテマトーデス(SLE)は,呼吸器を含めた多臓器に障害を来す代表的な全身性自己免疫疾患である.その死因は感染症や腎病変が主とされているが,肺病変による死亡も少なくない.現在,その難治性病態の理解も進み,新たな治療戦略も考案されている.ここでは SLE に合併する肺病変について概説する.

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第1章 膠原病と肺病変
シェーグレン症候群

半田 知宏  京都大学医学部附属病院呼吸器内科

要旨
 シェーグレン症候群は,膠原病の中でも多彩な胸郭内病変を呈する疾患である.組織型では非特異性間質性肺炎(NSIP)の頻度が高いが,リンパ球性間質性肺炎(LIP)や悪性リンパ腫,アミロイドーシスなどを認めることがある.胸部HRCTは肺病変の検出において感度が高いが,本症の多様な組織型との診断一致率は高くない.薬物治療に関するデータは十分でなく,リツキシマブなどを含めた治療薬の有効性に関してデータの集積が待たれる.

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第1章 膠原病と肺病変
混合性結合組織病

槇野 茂樹   大阪医科大学リウマチ膠原病内科 専門教授
要旨
 混合性結合組織病(MCTD)は全身性エリテマトーデス(SLE),全身性硬化症(強皮症,SSc),多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)の3疾患を思わせる臨床所見と抗U1-RNP抗体陽性が特徴である疾患で,その肺病変は間質性肺疾患(ILD),肺高血圧症(PH),胸膜炎が主なものであり,ILD は SSc のそれと類似した非特異性間質性肺炎(NSIP)が主であり,PH では,肺動脈性高血圧症(PAH)が主で,SSc のそれとは異なり,免疫抑制療法に対する反応性があり予後も SSc 性より良好である.
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第2章 血管炎と肺病変
ANCA関連血管炎

小田 桂士   産業医科大学医学部呼吸器内科学
迎  寛     産業医科大学医学部呼吸器内科学 教授

要旨
 全身型のANCA関連血管炎には,@顕微鏡的多発血管炎(MPA),A多発血管炎性肉芽腫症(GPA),B好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の3疾患がある.これらすべての疾患において,肺病変を合併する可能性があり,時に肺胞出血などの急性呼吸不全を呈する.ANCA関連血管炎の診療においては,肺病変の合併に注意し,正確なアプローチと評価を行ったうえで,早期の治療介入を行う必要がある.

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第2章 血管炎と肺病変
グッドパスチャー症候群

近藤光子   東京女子医科大学内科学第一講座 准教授

要旨
 グッドパスチャー症候群(GPS)は,抗基底膜(GBM)抗体が陽性の急速進行性糸球体腎炎と肺胞出血を来すまれな疾患である.抗 GBM 抗体が抗原として認識するのは,肺と腎の基底膜に共通なW型コラーゲンα3鎖非コラーゲンドメイン1(α3(W)NC1)である.治療は初期の血漿交換が重要で,これに副腎皮質ステロイド,シクロホスファミドなどの免疫抑制薬を用いる.また,抗 GBM 抗体と ANCA の両方が陽性例も存在し,予後に影響する.

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第2章 血管炎と肺病変
急速進行性糸球体腎炎に伴う肺病変

有村 義宏   杏林大学医学部第一内科学教室腎臓・リウマチ膠原病内科 教授

要旨
 血管炎は,急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を認め,肺病変を合併することも多い.RPGN は病理組織学的には,糸球体基底膜破綻による壊死性糸球体腎炎,および肺毛細血管の破綻による肺胞出血を認めることが多い.このほか,RPGN に伴う肺病変には,間質性肺炎,肺肉芽性炎症,さらに腎不全に伴う肺水腫や治療に伴う肺感染症もある.血管炎では,RPGNとそれに伴う肺病変を把握し,治療する必要がある.

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第2章 血管炎と肺病変
多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)

山下 裕之     国立国際医療研究センター病院膠原病科

要旨
 Wegener肉芽腫症(WG)の代表的な罹患部位は,頭頸部・肺・腎であるが,病変が上下気道などに限局する場合もある.2012年の Chapel Hill コンセンサス会議(HCC)において,多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と名称変更された.GPA の肺合併頻度は90%と集計され,さまざまな画像を呈する.治療に関しては Birmingham Vasculitis Activity Score(BVAS)に基づき,重症度判定を行い,2009年の EULAR recommendations に従い治療を行うが,患者のADL・QOLを損なわないのであれば,多少妥協して,病変と共存するという形をとったほうがよい場合もある.
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第3章 血液疾患による肺病変
白血病

大西 広志   高知大学医学部血液・呼吸器内科
横山 彰仁   高知大学医学部血液・呼吸器内科 教授

要旨
 白血病の治療経過中には,肺病変をしばしば合併する.大別すると,日和見感染症を含む感染性肺病変,血液疾患自体による肺病変,治療関連肺障害,その他の原因による肺病変があり,血液検査や画像検査のみでは診断が困難である.気管支鏡検査は,確定診断のみならず除外診断にも有用であるが,適応が限られることも多い.肺病変は,予後にかかわる重大な合併症であり,適切に診断し,早期に治療を開始する必要がある.

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第3章 血液疾患による肺病変
悪性リンパ腫

松尾 規和  神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科
小倉 高志  神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 部長

要旨
 リンパ増殖性肺疾患から,悪性リンパ腫として診断するためには,monoclonalityを証明するために,免疫染色以外にも,染色体検査や遺伝子検査などの分子細胞学的手法が必要である.肺の原発性リンパ腫では,70%が節外性濾胞辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)であるが,そのほかに,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL),リンパ腫様肉芽腫症(LYG)がある.血管内大細胞型B細胞リンパ腫(血管内リンパ腫:IVL),免疫抑制治療に伴うリンパ腫(移植後,メトトレキサート:MTX 関連など)が特徴的な臨床像をとり,注目されている.

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第3章 血液疾患による肺病変
多中心型キャッスルマン病

生島 壮一郎  日本赤十字社医療センター呼吸器内科 部長代理

要旨
 本症は血清IL-6高値を背景として多クローン性高γ-グロブリン血症,CRP,ESR,などの炎症反応の亢進,貧血などの検査所見を示し,リンパ節,肺,腎,皮膚に病変を生じうる全身性形質細胞増多疾患である.肺病変は,肺門,縦隔リンパ節腫大,小葉中心性粒状影,すりガラス影,多発性■胞形成などが特徴である.確定診断には病理診断が必須だが,臨床所見や画像所見と合わせて総合的に診断する.治療は一般的には,ステロイドや免疫抑制薬が使用され,一定の効果が見られるが,漸減中もしくは中止による再増悪が多く,長期投与を余儀なくされる.トシリズマブ(抗IL-6受容体抗体)により難治例への治療介入へも道が開けたが,長期継続投与が必要となる.

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第3章 血液疾患による肺病変
IgG4関連疾患の肺病変

松井 祥子   富山大学保健管理センター 准教授
要旨
 21世紀に提唱された新規疾患“IgG4関連疾患”は,2011年に,その包括診断基準が作成された.本疾患は,顎下腺,膵臓など全身の臓器に病変を生じうるが,肺病変においても,縦隔リンパ節や気管支,胞隔などにさまざまな程度で病変が生じ,多彩な病像を呈する.鑑別すべき疾患が多いので,診断の確定は慎重に行う必要がある.ほかの臓器病変では,厚生労働省研究班を中心に臓器別診断基準が確立されつつあり,肺病変においても準備中である.

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第3章 血液疾患による肺病変
臓器移植に関連した肺病変<

若原 恵子     名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学
長谷川 好規    名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学 教授

要旨
 臓器移植後には免疫抑制に伴う易感染性と,移植片対宿主病(GVHD)に代表されるような過剰免疫反応により種々の合併症が発症する.同種造血幹細胞移植後には肺合併症を伴うことが多く,予後や日常生活活動度(ADL)を規定する.予防投与や,ガイドラインに準じたマネージメントの普及により,感染症による死亡率は減少してきたが,移植後生存期間の延長により,慢性 GVHD である閉塞性細気管支炎(BO)のマネージメントが注目されている.

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第3章 血液疾患による肺病変
後天性免疫不全症候群

永井 英明   国立病院機構東京病院呼吸器センター 外来診療部長

要旨
 抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)薬の併用療法が導入され,HIV感染者の予後は飛躍的に改善し,今やHIV感染症は慢性疾患ととらえられるようになった.後天性免疫不全症候群(AIDS)指標疾患は減少し,患者の高齢化に伴って,AIDS指標疾患でない合併症が増えている.HIV感染症に合併する呼吸器疾患も,発症頻度に変化が見られる.欧米では細菌性肺炎がニューモシスチス肺炎(PCP)よりも多く,悪性腫瘍ではAIDS指標疾患の腫瘍は減少し,肺がんが増加している.

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第4章 その他の全身性疾患による肺病変
サルコイドーシス

四十坊 典晴   JR札幌病院呼吸器内科 副院長
山口 哲生     JR東京総合病院呼吸器内科 副院長

要旨
 サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患で,典型的な画像所見は両側肺門リンパ節腫脹(BHL)で,種々の程度に肺病変が認められる.肺病変はリンパ路に沿った多発粒状影で,CTでは気管支,血管の不整肥厚,小葉間隔壁の肥厚,胸膜下の粒状影,微細粒状影-分岐状影である.進行すれば,小葉間間質や気管支血管束に沿う帯状の線維化が生じ,■胞や空洞形成,牽引性気管支拡張症,肺葉収縮,蜂窩肺など,非常に多彩な所見を伴う.

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第4章 その他の全身性疾患による肺病変
再発性多発軟骨炎

石田 学     杏林大学病院呼吸器内科
滝澤 始     杏林大学病院呼吸器内科 教授

要旨
 再発性多発軟骨炎(RP)は,全身の軟骨およびプロテオグリカン含有組織を再発性かつ進行性に侵す,原因不明の慢性炎症性疾患である.稀少疾患で臨床像が多彩であるため,症状のみから本疾患を鑑別に挙げることは極めて困難である.本稿では,疫学・病態・症状・検査・診断・治療・予後に大きく分け,特に RP の気道病変に関しては,自験例を提示しつつ記述した.臨床現場において,本疾患へのアプローチの一助となれば幸いである.

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第4章 その他の全身性疾患による肺病変
リンパ脈管筋腫症

瀬山 邦明     順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学 先任准教授

要旨
 リンパ脈管筋腫症(LAM)は,ほぼ女性に限って発症する性差の著しい腫瘍性疾患で,LAM細胞の増殖により肺の■胞性破壊と気流閉塞,リンパ系の機能障害を生じる.LAM 細胞では,TSC遺伝子異常によりmTORC1が活性化され,腫瘍性増殖する.シロリムス(ラパリムス■)はmTOR阻害薬であり,LAMによる肺機能低下を抑制する分子標的薬として2014年7月4日に薬事承認された.今後のLAM患者の診療や予後を大きく変えることが期待される.

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第4章 その他の全身性疾患による肺病変
肺ランゲルハンス細胞組織球症

渥美 健一郎    日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野
吾妻 安良太    日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野 教授

要旨
 ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は,ランゲルハンス細胞の増殖と浸潤を組織学的特徴とする.原因不明のまれな疾患である.肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)は,成人に発症した肺病変単独または肺外病変を合併した疾患であり,多くに喫煙歴がある.禁煙のみで自然寛解または病勢の進行抑制が期待できるが,予後については明確でない点も多く,進行性の呼吸不全や肺外病変合併などの予後不良例も存在する.

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第5章 他臓器疾患の肺病変
炎症性腸疾患の肺病変

石井  寛      福岡大学医学部呼吸器内科学 講師
渡辺 憲太朗    福岡大学医学部呼吸器内科学 教授

要旨
 炎症性腸疾患(IBD)の代表である潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病は,腸管外病変を合併することが以前より知られており,近年呼吸器病変の報告例が増加している.気管支拡張症を主体とする中枢気道病変の頻度が多いが,器質化肺炎や細気管支炎もある.気管支喘息の合併頻度が多いことも報告されており,IBD は多彩な呼吸器病変を来しうる.なお,生物学的製剤を始めとした治療薬による薬剤性肺障害にも,注意が必要である.

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第5章 他臓器疾患の肺病変
胃食道逆流症と肺疾患

山沢 英明    自治医科大学内科学講座呼吸器内科学部門 講師

要旨
 胃食道逆流症(GERD)には,種々の食道外症状が合併する.2006年の Montreal Definition におけるGERDの食道外症候群には,呼吸器関連の症状や疾患として,咳嗽と喘息が“明確な関連あり”に,特発性肺線維症(IPF)が“関連の可能性あり”に分類されている.そのほか,COPDや気管支拡張症もGERDとの関連について,検討が成されている肺疾患である.本稿では,これらとGERDの関連について述べる.

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第5章 他臓器疾患の肺病変
内分泌疾患と肺病変

安藤 克利    順天堂大学医学部呼吸器内科
高橋 和久    順天堂大学医学部呼吸器内科 教授

要旨
 一般的に,内分泌疾患は肺病変を伴うことが少なく,実地臨床では,肺腫瘍に伴う内分泌異常や月経随伴性肺疾患が問題になる.本稿では,これらについての病態や特徴を中心に概説するが,ホルモン補充療法に伴う肺血栓塞栓症のリスク上昇や糖尿病の免疫機能低下に伴う肺感染症など,間接的に内分泌疾患と関与している呼吸器疾患は複数存在する.このため内分泌疾患の存在を鑑別に想起し,必要な場合には検索を進めることが重要である.

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第5章 他臓器疾患の肺病変
神経筋疾患と肺病変

田口 善夫    公益財団法人天理よろづ相談所病院呼吸器内科 部長

要旨
 神経筋疾患(NMD)における肺病変の基本は,主に呼吸筋の神経伝達が障害されることにある.その結果,病態としては,換気不全,咳嗽不全,上気道機能不全が重要である.特に,換気不全では自覚症状が乏しく,画像上の異常は認めないため,発見が遅れることが多い.換気不全に対しては,非侵襲的陽圧換気法(NPPV)を含めた人工呼吸管理,咳嗽不全では機械式強制吸気呼気装置(MIE)による対応,上気道機能不全では経皮経食道胃管挿入術(PEG)などを,倫理的な面を考慮して早期に行う必要がある.

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