要旨

最新醫學 診断と治療のABC 101
高LDL-C血症・低HDL-C血症

第1章 概念・定義と疫学
高LDL-C血症と低HDL-C血症の概念と病型分類

中田 佳延   社会福祉法人湘南福祉協会湘南病院 循環器内科 医長
池脇 克則   防衛医科大学校病院 抗加齢血管内科 教授

要旨
 LDL-Cの増加や,HDL-Cの低下および質の異常は,動脈硬化性疾患の原因である.リポタンパク代謝は,外因性・内因性リポタンパク代謝,そしてコレステロール逆転送系がバランスを取り,過剰なコレステロール蓄積を防いでいる.動脈硬化症の治療は,脂質異常症だけでなく包括的かつ厳格な管理が重要である.スタチンによってLDL-C低下療法が確立し,一般診療に浸透したが,HDLは治療法を含め模索が続いている.動脈硬化性疾患予防の観点から,介入の機会を逃さず指導を開始することが求められる.

キーワード
高LDL-C血症 低HDL-C血症 リポタンパク代謝 診断基準

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第1章 概念・定義と疫学
高LDL-C血症,低HDL-C血症,高HDL-C血症の臨床疫学

和田 高士     東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター 教授

要旨
 基準範囲と基準値,特に予防医学的閾値,臨床判断値の違いを明確にする必要がある.基準範囲については,日本人間ドック学会から出されたメガスタディからの報告書により,LDL-Cは有意な性差,年齢差があり,HDL-Cは性差があることが明らかにされた.予防医学的閾値は厚生労働省による特定健康診査で設定され,臨床判断値は日本動脈硬化学会で設定されている.高LDL-C,低HDL-C,高HDL-Cの臨床上の問題点を述べた.

キーワード
LDL-C HDL-C 基準範囲 予防医学的閾値 臨床判断値

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第2章 病理・病態生理
脂質異常症による動脈硬化の病理

池田 善彦   国立循環器病研究センタ- 病理部 臨床病理科 医長
平野 賢一   大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学

要旨
 コレステロール誘発性の動脈硬化では,線維性被膜に被われたnecrotic coreが形成され,やがてマクロファージ由来の泡沫細胞やリンパ球浸潤,少数の平滑筋細胞を伴う線維性被膜の菲薄化が生じる.これに対し,トリグリセライド(TG)の組織含有量が有意に高い進行性糖尿病例の冠動脈では,びまん性求心性肥厚を呈し,内膜および中膜には脂肪滴を有する泡沫化平滑筋細胞を伴い,質量顕微鏡にてTGは平滑筋細胞の分布に一致していた.

キーワード
コレステロール トリグリセライド 糖尿病 平滑筋細胞 adipose trigkyceride lipase

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第2章 病理・病態生理
コレステロール代謝異常の病態生理 1.リポタンパク受容体

黒田 正幸      千葉大学医学部附属病院 未来開拓センター 特任准教授
横手 幸太郎    千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学 教授

要旨
 コレステロールを始めとする脂質の代謝はさまざまな生体分子により精密に制御され,血清脂質濃度はほぼ一定に保たれている.この制御機構の中でリポタンパク受容体は細胞内外の脂質の輸送を担う膜タンパクである.LDL受容体ファミリーとスカベンジャー受容体ファミリーが同定され,数多くの受容体が,認識するリガンドの違いやその下流にあるシグナル伝達経路によりコレステロールの代謝と動脈硬化発症に関与する.

キーワード
LDL受容体 スカベンジャー受容体 家族性高コレステロール血症 動脈硬化

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第2章 病理・病態生理
コレステロール代謝異常の病態生理 2.転写因子SREBPと核内受容体

酒井 寿郎  東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野 教授

要旨
 LDL受容体は,血中のコレステロールレベルを決定し,その遺伝子異常は人類で最も多い遺伝病である家族性高コレステロール血症を引き起す.高コレステロール血症の中心的治療薬であるスタチンは,LDL受容体を転写レベルで発現上昇させ,血中のLDL-Cを低下させる.このメカニズムとして細胞内コレステロールホメオスタシスを担う転写因子SREBPの役割の全貌が明らかになった.また,受容体型転写因子である核内受容体PPARα,およびγサブタイプの合成リガンドであるフィブラートやグリタゾンは,それぞれ血中のトリグリセライド値やインスリン感受性を調節する.本稿は転写調節から見た脂質制御について概説する.

キーワード
転写因子 核内受容体 SREBP PPAR ファルネソイドX受容体

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第2章 病理・病態生理
コレステロール代謝異常の病態生 3.コレステロール吸収
出牛 三千代  東京医科歯科大学 生命倫理研究センター・先進倫理医科学
吉田 雅幸    東京医科歯科大学 生命倫理研究センター・先進倫理医科学 教授

要旨
 体内のコレステロール総量は,小腸での食事由来の吸収と,肝臓での生合成により保たれている.コレステロールはリポタンパクとして体内を移送されるが,そのバランスが偏る,高LDL-C・低HDL-C血症は重要なリスクとなる.高LDL-C・低HDL-C血症の原因のうち,高糖質食・高脂肪食,運動不足による肥満,糖尿病では,コレステロール吸収亢進が大きく関与している.吸収亢進はより高リスクであることが考えられるため,吸収のコントロールが必至である.

キーワード
ニーマンピックC1様1 トランスポーター 植物ステロール コレステロールエステル輸送タンパク 吸収亢進

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第2章 病理・病態生理
コレステロール代謝異常の病態生理 4.コレステロール逆転送系
木下 誠     帝京大学医学部内科 教授

要旨
 動脈硬化の進展に対して,HDL濃度が抑制的に働くことはよく知られている.これには,末梢に蓄積したコレステロールを,HDLを介して肝臓に転送する機構が重要な役割を果たしており,コレステロール逆転送系と呼んでいる.コレステロール逆転送系を介して動脈硬化を予防する方法が検討されているが,まだ成功していない.

キーワード
HDL コレステロールエステル輸送タンパク 動脈硬化予防 CETP阻害薬

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第2章 病理・病態生理
コレステロール代謝異常の病態生理 5.LDLRAP1,PCSK9

川尻 剛照   金沢大学大学院医薬保健研究域医学系 臓器機能制御学 准教授

要旨
 LDL受容体は細胞内へのLDL取り込みに関係し,ヒトのコレステロール代謝に重要な役割を果たしている.その欠損症は家族性高コレステロール血症(FH)である.LDLRAP1はLDL受容体のアダプタータンパクであり,PCSK9はLDL受容体の細胞内分解と関連するタンパクであるが,いずれもLDL受容体活性と密接に関連する.近年,PCSK9に対するモノクローナル抗体製剤が開発され,新たなコレステロール低下薬として注目されている.

キーワード
家族性高コレステロール血症 常染色体劣性高コレステロール血症 低比重リポタンパクコレステロール
低比重リポタンパク受容体

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第2章 病理・病態生理
コレステロール代謝異常の病態生理 6.植物ステロール・酸化コレステロール

塚本 和久   福島県立医科大学 会津医療センター 糖尿病・代謝・腎臓内科学講座 教授

要旨
 植物ステロールは,その摂取が,血清コレステロール値を低下させて動脈硬化を抑制するであろうと考えられているが,まだ確固とした地位は築いておらず,各国のガイドラインでもその取扱いが異なるステロールである.酸化コレステロールは,コレステロールから酵素的・非酵素的に産生されたり,食事摂取により体内に入るステロールであるが,一般に動脈硬化惹起性に働くと考えられているステロールである.詳細を本稿で概説する.

キーワード
植物ステロール 酸化コレステロール 動脈硬化 脂質代謝

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第2章 病理・病態生理
動脈硬化惹起性のリポタンパクの代謝 1.酸化LDL

宮崎 章      昭和大学医学部 生化学講座 教授

要旨
 血中のLDLは,血管壁で酸化を受け酸化LDLとなる.酸化LDLは,マクロファージに取り込まれ,マクロファージ由来泡沫細胞形成の原因になるだけでなく,種々の血管壁細胞に働き,血管収縮,プラークの不安定化,血栓形成促進などを介して,心血管イベントの発症を促進する.特異抗体を用いた酸化LDL測定系が開発され,急性心筋梗塞などの動脈硬化性疾患のバイオマーカーとして期待されている.

キーワード
酸化LDL マクロファージ 泡沫細胞 バイオマーカー カルパイン

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第2章 病理・病態生理
動脈硬化惹起性のリポタンパクの代謝 2.small dense LDL

平野 勉    昭和大学医学部 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 教授

要旨
 小型で密度の重いLDLをsmall dense LDL(sdLDL)と称し,LDLの中でも催動脈硬化性がより強い.sdLDLは粥状動脈硬化の主因である酸化LDLの良き原料となる.血清トリグリセライドの上昇や,インスリン抵抗性がLDLの小粒子化に密接に関連している.冠動脈疾患を頻発するメタボリックシンドロームや2型糖尿病で増加する.我々はsdLDL-コレステロールのホモジーニアス法を開発した.今後この測定が,臨床上広く用いられることが期待される.

キーワード
small dense LDL コレステロール 冠動脈疾患 インスリン抵抗性 トリグリセライド

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第3章 診断
診断のすすめ方

荒井 秀典  独立行政法人 国立長寿医療研究センター 副院長

要旨
 高LDL-C血症や低HDL-C血症は,心筋梗塞などの虚血性心疾患の発症リスクを高くするため,高血圧などほかのリスクを勘案した上での包括的管理が必要である.家族性高コレステロール血症や家族性複合型高脂血症は,LDL-C高値を示す代表的な原発性高脂血症で,冠動脈のリスクが高い病態であり,タンジール病などの原発性低HDL-C血症も冠動脈疾患のリスクが高く,注意が必要である.

キーワード
LDL受容体 家族性高コレステロール血症 家族性複合型高脂血症 タンジール病

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第3章 診断
LDL-C測定法の現状と将来の課題

三井田 孝  順天堂大学大学院 臨床病態検査医学 教授

要旨
 LDL-Cは,動脈硬化性疾患の最も重要な危険因子である.LDL-Cの測定は,脂質異常症をスクリーニングするだけでなく,動脈硬化性疾患を合併した患者のリスク管理の目的でも行われる.臨床では,1970年代にFriedewaldが提唱した計算法でLDL-Cを求めてきた.計算式の変法も複数報告されている.1990年代に登場したLDL-C直接法は,食後検体でも測定できる利点があり,次第に普及した.計算法と直接法の正確性を中心に,LDL-C測定法の現状と課題について概説する.

キーワード
LDL-コレステロール ホモジニアス法 BQ法 脂質標準化プログラム

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第3章 診断
HDL検査(量と質に関して)
綾織 誠人   所沢ハートセンター
         衛医科大学校神経・抗加齢血管内科
佐々木 誠   防衛医科大学校神経・抗加齢血管内科
池脇 克則   防衛医科大学病院 抗加齢血管内科 教授

要旨
 スタチンにより低減されない動脈硬化性疾患のリスク低下の標的として,HDLが注目されている.HDLには,コレステロール逆転送のほかにも抗炎症作用や抗酸化作用が報告されており,近年,血中HDLコレステロール濃度の多寡のみに介入・評価することに対し,疑問が生じるような知見が集積されている.心血管疾患(CVD)発症と最も直接的に関連するコレステロール以外のHDL中の異なる分子や,HDL機能そのものを探索する試みが,今後継続的になされる必要がある.

キーワード
HDL量的評価 HDL質的評価 コレステロール搬出能 抗酸化能 プロテオミクス

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コラム
特定健診の現状と課題(公衆衛生医師の立場から)

斉藤 功   愛媛大学大学院医学系研究科 健康科学・基礎看護学 教授


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第4章 管理・治療
高LDL-C血症と低HDL-C血症の管理・治療 1.食事療法
田口 千恵
    お茶の水女子大学 寄附研究部門「食と健康」
近藤 和雄    お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 教授

要旨
食事療法により高LDL-C血症と低HDL-C血症といった脂質異常症を是正するためには,エネルギーや炭水化物,脂肪,たんぱく質,ビタミン,ミネラルなどの栄養素を適正量摂取するとともに,バランス良く摂取することが必要で,さらに食物繊維などの非栄養素成分の摂取についても考慮することが求められる.

キーワード
エネルギー摂取量 脂質エネルギー比 脂肪酸


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第4章 管理・治療
高LDL-C血症と低HDL-C血症の管理・治療 2.運動療法
勝川 史憲   慶應義塾大学スポーツ医学研究センター 教授

要旨
 運動療法でHDL-Cは軽~中等度上昇する.効果をもたらす運動のエネルギー消費量(週1,200kcal),継続時間(1回30分)には閾値があり,対象の特性(性別,肥満度,介入前HDL-C値)が効果に影響する.運動のLDL-C改善効果は不確実で,薬物療法や食事療法と比べて,LDL-C改善における運動療法の意義は小さい.レジスタンス運動の脂質改善効果も一定せず,脂質異常症の運動療法の第1選択とはならない.

キーワード
有酸素運動 レジスタンス運動 エネルギー 運動継続時間 体重


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第4章 管理・治療
高LDL-C血症と低HDL-C血症の薬物療法の基準

佐々木 淳   国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 保健医療学専攻 教授

要旨
 『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』1)では,2次予防(冠動脈疾患の既往)に対してLDL-C 100mg/dL未満,1次予防に対しては冠動脈疾患発症率・死亡率(絶対リスク)に応じて管理目標値が設定されている.我が国の心筋梗塞死亡率は米国のおよそ1/4であることを考慮すると,米国のガイドラインと比べて厳しい基準になっている.米国の「2013 ACC/AHA脂質管理ガイドライン」ではエビデンスがないことから,LDL-C管理目標値が撤廃された2).我が国の管理目標値にはエビデンスはなく,目安である.無作為化比較試験(RCT)のメタ解析で,スタチンによるおよそ30%の絶対リスク抑制効果が確かめられていることから,LDL-C 20~30%の低下を目標とすることが勧められる.低HDL-C血症は冠動脈疾患の独立した危険因子であるが,薬剤によるHDL-C上昇の効果は示されていない.

キーワード
LDL 管理目標 ACC/AHA ガイドライン 絶対リスク

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第4章 管理・治療
治療薬剤 1.スタチン
野原 淳     金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 脂質研究講座 特任准教授

要旨
 スタチンは,動脈硬化性疾患の予防および治療で,最も重要な薬剤の1つである.主たる作用はLDL-C低下作用に基づく動脈硬化性疾患の予防で,多くのエビデンスがあり,冠動脈疾患2次予防,2型糖尿病,慢性腎臓病(CKD),非心原性脳梗塞,末梢動脈疾患,といったハイリスク症例では,積極的な投与が考慮される.本邦の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年度版』では,患者ごとに冠疾患リスクを勘案し,適正なLDL-C目標値を設定して治療にあたることが推奨されている.

キーワード
HMG-CoA還元酵素阻害薬 大規模臨床試験 コエンザイムQ10 PCSK9

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第4章 管理・治療
治療薬剤 2.エゼチミブ
重松 絵理奈   横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学教室
           国立病院機構横浜医療センター 糖尿病内分泌内科
寺内 康夫
     横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学教室 教授

要旨
 腸管よりのコレステロール吸収が亢進している場合,血清コレステロール値に差が認められなくとも,心血管疾患の発症率が高くなると報告されている.LDL-Cを最も効果的に低下させる薬剤はスタチンであるが,LDL-C管理目標値が達成できない場合には追加で薬物治療を考慮する必要がある.エゼチミブは,小腸でのコレステロール吸収を抑制させ,LDL-Cの“質”が改善し,心血管疾患発症抑制に大きな役割を果たすことが期待される薬剤である.

キーワード
エゼチミブ 2型糖尿病 総コレステロール 中性脂肪 LDL-C

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第4章 管理・治療
治療薬剤 3.フィブラート,チアゾリジン誘導体
若林 徹治    自治医科大学 内科学講座 内分泌代謝学部門
石橋 俊      自治医科大学 内科学講座 内分泌代謝学部門 教授

要旨
 高トリグリセライド(TG)血症・低HDLコレステロール(HDL-C)血症の治療薬として,PPAR作動薬であるフィブラート,チアゾリジン誘導体について概説する.特にインスリン抵抗性を伴うような2型糖尿病,メタボリックシンドローム患者における脂質代謝異常に有用であり,心血管イベント発症の残余リスクの軽減にも効果が期待される.

キーワード
フィブラート チアゾリジン 高TG血症 低HDL-C血症

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第4章 管理・治療
治療薬剤 4.プロブコール,陰イオン交換樹脂製剤(レジン)
久米 典昭    神戸学院大学薬学部 臨床薬学部門 教授

要旨
 プロブコールと陰イオン交換樹脂製剤(レジン)は,いずれもスタチンよりも古い薬剤である.それらの性格は極めて異なるが,スタチンの登場後は,いずれも単独で使用される機会は減り,家族性高コレステロール血症(FH)などの重症な高LDL-C血症に対して,スタチンに追加して使用される薬剤と位置づけられている.これらの薬剤にはいまだ解明されるべき点も多く,さらなるエビデンスの蓄積が望まれる.

キーワード
低比重リポタンパク 高比重リポタンパク 家族性高コレステロール血症 LDL受容体 抗酸化剤

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第4章 管理・治療
治療薬剤 5.イコサペント酸エチル(EPA)製剤,ドコサヘキサエン酸(DHA)製剤,ニコチン酸製剤
志鎌 明人    筑波大学医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科
島野 仁      筑波大学医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科 教授

要旨
 脂質異常症に対するスタチンの有用性は確立しているが,残余リスクとして多価不飽和脂肪酸(PUFA)のバランス異常(質の異常)が注目されている.w-3 PUFAの代表である,EPA・DHAは脂質代謝異常の改善だけでなく,抗炎症作用,抗血栓作用,血管内皮機能改善作用,など多面的な作用が期待されている.高純度EPA製剤を用いたJELISにより,日本人においても心血管イベント抑制が示されている.一方,ニコチン酸製剤も古くから使用されており,トリグリセライド(TG),LDLコレステロール(LDL-C)の低下に加え,HDLコレステロール(HDL-C)を上昇させ,またリポタンパク(a)(Lp(a))の低下作用も知られている.ニコチン酸受容体の発見を経て,その作用機序も明らかにされてきている.

キーワード
ω-3多価不飽和脂肪酸 イコサペント酸 ドコサヘキサエン酸 JELIS ニコチン酸製剤

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第4章 管理・治療
補助療法LDLアフェレシス

斯波 真理子    国立循環器病研究センター研究所 病態代謝部 部長

要旨
 LDLアフェレシスは,家族性高コレステロール血症ホモ接合体に対して,LDLの除去を行い,動脈硬化進展抑制を目的として開発された.その後,薬剤不耐性で冠動脈疾患を有する重症のヘテロ接合体も適応となった.LDLアフェレシスは強力なLDL-C低下のみならず,接着分子や凝固系分子の除去効果など有しており,最近ではPCSK9も除去することが分かってきており,動脈硬化進展抑制作用に寄与していると考えられる.

キーワード
家族性高コレステロール血症 LDL-C 動脈硬化 閉塞性動脈硬化症

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第4章 管理・治療
プラークの退縮とLDL-C,HDL-C

倉林 正彦    群馬大学大学院医学系研究科 臓器病態内科学 教授

要旨
 血管内エコーや頸動脈エコーなどの画像技術によって,冠動脈のプラークの体積や性状を評価することが可能になっている.スタチンはプラークの安定化作用だけでなく,退縮誘導作用も持つことが明らかにされている.また,コレステロールを引き抜く作用(cholesterol efflux機能)を持つHDLの役割についても研究が進んでいる.LDL-C低下療法とともに,HDL-C濃度や機能を標的とする治療が展開すると期待できる.

キーワード
血管内エコー アポA1 JART IMPROVE-IT エゼチミブ

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第4章 管理・治療
CETP阻害薬の現状

山下 静也    大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科・総合地域医療学寄附講座 教授

要旨
 多くの疫学調査の結果,低HDLコレステロール(HDL-C)血症は冠動脈疾患の独立した危険因子であり,その診断と治療は重要である.HDLやそれを構成する主たる構成アポタンパク(アポ)であるアポA-Ⅰは,血管壁に蓄積した余剰のコレステロールを抜き出し,肝臓へ運んで処理するコレステロール逆転送系(RCT)において,コレステロールの運搬役として機能する.HDLやアポA-Ⅰによって引き抜かれたコレステロールは,HDL上でエステル化され,コレステロールエステル転送タンパク(CETP)によって,VLDL,LDLなどのアポB含有リポタンパクへ転送される.海外ではHDL-Cを上昇させ,LDLコレステロール(LDL-C)を低下させる目的でCETP阻害薬が数多く開発されてきたが,臨床試験の行われたtorcetrapibやdalcetrapibの失敗が相次いでいる.本稿では動脈硬化性疾患におけるCETP阻害薬の開発状況について,批判的な見解も含めて現状を紹介する.

キーワード
コレステロールエステル転送タンパク コレステロール逆転送系 HDL CETP阻害薬 cetp欠損症

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