要旨

最新醫學 診断と治療のABC 104
肺高血圧症

第1章 定義・病態・病理
定 義

中西 宣文   国立循環器病研究センター研究所 寄付プロジェクト部門 肺高血圧先端医療学研究部 部長

要旨
 健常者に右心カテーテルを用いて肺血行動態を測定した結果,平均肺動脈圧(mPAP)は約14.0mmHg,上限は20.6mmHgであることが報告されている.肺高血圧症(PH)の定義や分類,治療指針を定めている肺高血圧症ワールドシンポジウムでは,歴史的に肺高血圧を,mPAPが25mmHg以上と定義している.肺高血圧症の診断確定には,右心カテーテル検査を用いて肺動脈圧を実測することが必須である.肺高血圧症臨床分類では肺高血圧症は5群に分類され,第2群:左心系疾患による肺高血圧症は,肺高血圧でかつ肺動脈楔入圧(PAWP)が15mmHg以下であることが診断条件である.また肺高血圧症で第2,3,4群を除外した例が,ほぼ第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)である.肺高血圧症と肺動脈性肺高血圧症は異なった概念で,混同しないように留意すべきである.

キーワード
肺高血圧症 肺動脈盛会高血圧症 平均肺動脈圧 肺動脈楔丹入

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第1章 定義・病態・病理
自覚症状と身体所見

倉石 博     長野赤十字病院 呼吸器内科

要旨
 肺高血圧症(PH)は,特発性のものを除けば,さまざまな全身疾患に合併する病態である.頻度の高い疾患を知り,診察にあたる必要がある.初期の自覚症状は労作時の息切れである.PHが軽度の場合には自覚症状がないか,気づかない.右心不全を来すと,典型的な症状と身体所見が出現する.失神や胸痛,頸静脈怒張,下腿浮腫,心雑音などである.PHを鑑別の1つに挙げることが重要である.

キーワード
肺高血圧症 右心不全 身体所見 心雑音 中心静脈圧

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第1章 定義・病態・病理
臨床分類

坂巻 文雄   東海大学医学部付属八王子病院 呼吸器内科 教授

要旨
 肺高血圧症(PH)は,Group1(肺動脈性肺高血圧症:PAH),Group2(左心疾患によるPH),Group3(肺疾患および/または低酸素血症によるPH),Group4(慢性血栓塞栓性肺高血圧:CTEPH),Group5(そのほかの要因によるPH)に分類される.PHの鑑別診断および治療戦略にも重要である.Group2とほかの群との鑑別がまず重要であり,右心カテーテルによる肺動脈楔入圧(PAWP)測定が望ましい.

キーワード
肺高血圧症 肺動脈性肺高血圧症 分類 ガイドライン

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第1章 定義・病態・病理
病 理

植田 初江      国立循環器病研究センター 病理部 部長・バイオバンク長

要旨
 本稿では,2013年ニースシンポジウムの分類に従って,肺高血圧症の病理を提示する.肺高血圧症国際会議のたびに肺高血圧症の分類が少しずつ変更されるが,肺高血圧による肺動脈病理組織の変化は,疾患特異的なものは少なく,病理学的な分類についてはベニス会議のものを提示した.肺動脈の組織変化を画像診断でも詳細に描出されるようになれば,これまでの病理の蓄積データがさらに有用となる.

キーワード
肺動脈性肺高血圧 結合組織病合併肺動脈性肺高血圧症 肺静脈閉塞症 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 病理

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第2章 診断
診断手順

村岡 洋典  JR東京総合病院 循環器内科
八尾 厚史  東京大学大学院医学系研究科 保健・健康推進センター 講師

要旨
 肺高血圧症(PH)の原因は多岐にわたるが,大部分の症例は左心疾患や肺疾患が原因であり,鑑別の初期段階で峻別することが重要である.これらの疾患が除外された後に残る,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)や肺動脈性肺高血圧症(PAH)は,いずれも非常にまれな疾患であるが,治療方針が大きく異なるために,肺換気・血流シンチグラフィーを用いて鑑別する.PAHは,原因疾患を治療することで改善を認めることもあり,丁寧な評価が必要である.

キーワード
左心疾患や肺疾患に併発する肺高血圧症 血栓塞栓性肺高血圧症 肺動脈性肺高血圧症 肺換気・血流シンチグラフィー 右心カテーテル検査

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第2章 診断
診断 1.バイオマーカー
渡邉 裕司    浜松医科大学 臨床薬理学・臨床薬理内科 教授

要旨
 血液バイオマーカーは,頻回な測定が可能であることから,治療効果の判定には極めて有用である.肺高血圧症(PH)の血液バイオマーカーとして,B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP),NT-proBNPは,ガイドライン上でもその使用が推奨されている.このほかに,尿酸,トロポニンT,非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)などもPHのバイオマーカーとして提案されている.それぞれのバイオマーカーの病態生理的な位置付けや,限界を認識したうえで,上手に活用することが望まれる.

キーワード
バイオマーカー BNP NT-proBNP トロポニンT 尿酸

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第2章 診断
診断 2.心エコー
更科 俊洋    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体制御学講座 循環器内科
伊藤 浩      岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体制御学講座 循環器内科 教授

要旨
 心エコー図検査は,肺高血圧症のスクリーニング,原因となる病態の把握や重症度評価などを目的に施行される.肺高血圧症の予後予測因子には右室機能や右房圧(RAP),心D液貯留が含まれており,心エコー図検査で評価可能である.また,非侵襲的な検査であることから,治療開始後のフォローアップとしても重要な位置を占める.本稿では,肺高血圧症の日常診療に欠かせない,心エコー図検査項目について概説する.

キーワード
推定肺動脈圧 推定右房圧 右室機能

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第2章 診断
診断 3.胸部CT

福田 哲也   国立循環器病研究センター病院 放射線部 医長

要旨
 肺高血圧症における画像診断の役割は,鑑別疾患と重症度評価,そして治療効果判定である.核医学検査は換気,血流の状態を簡便に全肺にわたり知ることができ,CT,MRIは血管内,肺野の詳細な情報を得ることができる.肺高血圧症の画像所見は肺動脈に現れる所見,肺高血圧に伴う所見,側副血行路の発達所見,肺実質に現れる所見に大別される.特にCTEPHにおいて肺動脈に現れるweb,bandの成因に関する病理学的理解とCT,血管造影における詳細な読影は重要である.

キーワード
CEPH web band

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第2章 診断
診断 4.右心カテーテル

守尾 嘉晃   順天堂大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 准教授

要旨
肺高血圧症の確定診断および血行動態の詳細な把握には,右心カテーテル検査(RHC)による直接計測が必須である.RHCによる計測で,臨床的に肺高血圧症の存在が示された1950年代以降,侵襲的ではあるものの,RHCは,肺高血圧症の診断・治療アルゴリズムで,重症度判定や効果判定に不可欠な検査として位置づけられている.長期治療管理の向上のためには,3~6ヵ月ごとの定期的なRHCが推奨される.
キーワード
右心カテーテル検査 肺動脈圧 肺動脈楔入圧 肺血管抵抗 心拍出量

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第2章 診断
重症度分類

笠原 靖紀     千葉大学大学院医学研究院 総合医科学講座 特任教授

要旨
肺高血圧症(PH)患者の治療選択や予後の推測のため,重症度を評価する必要がある.WHO機能分類は簡便であり,汎用されている.臨床評価,運動負荷,生化学マーカー,心エコーあるいは肺循環動態の評価,などから得られるデータを総合して,重症度を評価する.3~6ヵ月ごとに定期的に重症度を評価して,予後良好ではない状態では,追加治療,または異なった治療を再考慮する.

キーワード
WHO肺高血圧症機能分類 身体活動能力質問票 REVEAL研究 肺動脈性肺高血圧症 慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症
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第2章 診断
肺高血圧症の遺伝子診断

森崎 裕子   国立循環器病研究センター研究所 分子生物学部 室長
森崎 隆幸   国立循環器病研究センター研究所 分子生物学部 部長

要旨
 肺動脈性肺高血圧症(PAH)のうち,先天性心疾患や膠原病などの先行する原疾患を伴わない特発性PAHについては,2000年に家系内連鎖解析手法により,BMPR2遺伝子が原因遺伝子として同定され,次いで同じTGF-βシグナル伝達系の遺伝子である,ACVRL1,ENG,SMAD9などが同定された.さらに,近年,エクソーム解析などの網羅的遺伝子解析手法により,CAV1,KCNK3遺伝子も原因遺伝子として報告されている.

キーワード
TGF-βシグナル伝達系 BMPR2遺伝子 ACVRL1遺伝子 エクソーム解析

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コラム
肺高血圧症病因論のパラダイムシフト ~肺生理学から肺細胞生物学へ~

巽 浩一郎  千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学 教授

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第3章 治療
肺動脈性肺高血圧症の治療指標と治療目標

佐藤 徹  杏林大学病院 循環器内科 教授

要旨
1999年にエポプロステノールが本邦で認可となり,本来難病である肺動脈性肺高血圧症(PAH)症の予後を改善できる時代となった.しかし,依然予後不良な患者も多く,治療指標と治療目標を決定し,それに向かって治療を進めていく必要があった.BNP,肺血管抵抗(PVR),右房圧など予後規定因子とされている指標は,治療指標とするには不十分であることを経験的に感じるようになり,自験例を解析すると,平均肺動脈圧(mPAP)が治療指標として最も有用であろうことが分かってきた.ROC曲線を使った検討では,40mmHg以下に低下させることが,15年程度の生存を保障するには必要であった.

キーワード
エポプロステノール 肺動脈性肺高血圧症 治療指標 平均肺動脈圧 ROC曲線

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第3章 治療
プロスタサイクリン誘導体
小川 愛子   独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 臨床研究部

要旨
プロスタサイクリン(PGI2)誘導体は,肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する治療薬として使用されており,本邦ではベラプロストナトリウム,エポプロステノール,トレプロスチニルの3種類がある.特にエポプロステノールは,持続静注製剤であるため投与に関して注意点が多いが,最も強力であり,生存率改善効果が証明されている.より簡便に使用できる製剤の開発も進められている.

キーワード
肺動脈性肺高血圧症 プロスタグランジンI2 持続静注 皮下投与

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第3章 治療
エンドセリン受容体拮抗薬
中山 和彦   神戸大学医学部附属病院 循環器内科 特命助教
江本 憲昭   神戸大学医学部附属病院 循環器内科 戦略的客員教授
          神戸薬科大学 臨床薬学研究室 教授

要旨
 エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)は,内服肺血管拡張薬の中で最も歴史があり,昨今の肺高血圧治療の発展を牽引してきた.早期診断・早期治療の流れの中,肺高血圧専門施設以外での肺血管拡張薬導入の機会も増え,一般内科医でも,日常診療上遭遇する薬剤として広く浸透してきている.しかし本剤は,特有の副作用や相互作用を有し,肺高血圧症という特別な病態の中,注意すべき点も多く,専門的な配慮を必要とする薬剤であることには変わりがない.本稿では初めてERAを処方される先生方に向けて,薬剤特性・エビデンス・導入法・処方継続上の注意点など,これだけは知っておきたいERAの最適使用上のピットホールを,新規ERA,マシテンタンも含めて解説する.

キーワード
エンドセリン受容体拮抗薬 マシテンタン 換気血流不均衡 体液貯留 薬物相互作用

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第3章 治療
NOを介する治療
田中 真理子    九州大学大学院医学研究院 循環器内科学
            九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学
阿部 弘太郎    九州大学大学院医学研究院 先端循環制御学講座

要旨
 肺高血圧症(PH)の内科的治療は,エンドセリン,プロスタグランジン,そして一酸化窒素(NO),の3つの経路を標的にしている.これらの経路は肺血管収縮・拡張のバランスを維持し,肺血管リモデリングを調節する.本稿では,NOを介した治療薬について解説する.

キーワード
肺高血圧症 血管リモデリング 一酸化窒素 5型ホスフォジエステラーゼ阻害薬 可用性グアニル酸シクラーゼ刺激薬

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第3章 治療
肺高血圧症と肺移植
伊達 洋至   京都大学大学院医学研究科 器官外科学講座 呼吸器外科 教授

要旨
 肺高血圧症に対する薬物療法は近年急速に進化したが,薬物療法が無効な症例もあり,肺移植は最後の治療手段と位置づけられている.肺高血圧症に対しては脳死両肺移植が世界のスタンダードである.肺移植適応基準を満たす症例は,日本臓器移植ネットワークに待機登録することができるが,現在でも約800日の平均待機期間がある.このため,生体肺移植も重要な治療手段となっている.これまでに77例の肺高血圧症に対する肺移植(脳死肺移植41例,生体肺移植36例)が本邦で実施され,その5年生存率は78.8%であった.

キーワード
肺高血圧症 脳死肺移植 生体肺移植 特発性肺動脈性肺高血圧症

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コラム
肺高血圧症治療はどこまでするか?

重歳 正尚   独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 循環器科
松原 広己   独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 循環器科 臨床研究部長

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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
特発性肺動脈性肺高血圧症の診断と治療
田村 雄一    パリ大学 国立肺高血圧症センター
木村 舞      慶應義塾大学医学部 循環器内科

要旨
 エポプロステノール持続静注療法を始めとする治療法の開発により,肺動脈性肺高血圧症(PAH)の予後は劇的に改善している.昨今では欧米における臨床試験においても,良好な予後をもたらす治療法の開発に注目が集まっている.本邦の肺高血圧症センターにおける疾患の予後は,欧米のそれと比較してさらに良好であるが,その背景には,積極的な治療介入が行われていることと,治療のゴールを運動耐容能ではなく肺動脈圧にしていることがある.多施設共同研究の結果,平均肺動脈圧が44.5mmHg未満を達成できる例が良好な予後を示していたことから,それを実現するために,多剤併用療法およびエポプロステノール持続静注療法を躊躇しない治療戦術をとっていくことが,良好な予後を実現するために大切である.

キーワード
エポプロステノール 肺動脈圧 運動耐容能 治療のゴール

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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(PVOD/PCH)の診断と治療
坂尾 誠一郎    千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学 講師

要旨
 肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(PVOD/PCH)は極めてまれな疾患であり,臨床的には肺高血圧を呈する.そのため,肺動脈性肺高血圧症(PAH)との鑑別が困難であるが,病理学的には明らかに異なる疾患である.本稿では,新たに厚生労働省の難病指定を受けたPVOD/PCHについて,その概要,診断,治療について解説するとともに,指定難病として申請する際,考慮すべき診断基準および重症度分類について解説したい.

キーワード
肺静脈塞栓症/肺毛細血管腫症 肺動脈性肺高血圧症 肺静脈 指定難病

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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診断と内科的治療
田邉 信宏     千葉大学大学院医学研究院 先端肺高血圧症医療学 寄附講座 教授

要旨
 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は,厚生労働省の指定難病に認定されている.労作時の息切れ,肺換気・血流スキャンにおいて,換気に異常を認めない区域性の血流欠損,肺動脈造影や造影CTにおいて,慢性血栓に特徴的な所見,右心カテーテルによる前毛細血管性肺高血圧症の確認,によって診断される.治療としては,第1に厳密な抗凝固療法,次いで肺動脈内膜摘除術(PEA)の適応を検討する.非手術適応例では,バルーン肺動脈形成術(BPA),リオシグアトが有用である.

キーワード
労作時息切れ 肺換気・血流スキャン small vessel disease 肺動脈造影 可用性グアニル酸シクラーゼ

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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
慢性血栓塞栓性肺高血圧症の外科治療
石田 敬一   千葉大学大学院医学研究院 総合医科学講座 特任准教授
          千葉大学医学部附属病院 心臓血管外科

要旨
 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は,器質化血栓が肺動脈を狭窄・閉塞し,肺高血圧となる致死的疾患である.肺動脈内膜摘除術(PEA)は,肺血管拡張薬・在宅酸素療法なしで,症状改善,生存率向上が得られる“potentially curative treatment”である.しかし,手術の難度が高く,経験が必要であるため,手術適応は施設により異なる.すべてのCTEPH症例で外科治療が検討されるべきであり,経験のある外科医を含むCTEPHチームにコンサルトすることが重要である.

キーワード
肺塞栓症 肺高血圧 外科治療 適応

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コラム
慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈バルーン形成術
大郷 剛    国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 肺循環科 医長

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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
呼吸器疾患に伴う肺高血圧症の診断と治療

花岡 正幸    信州大学学術研究院医学系医学部 内科学第一教室 教授

要旨
 呼吸器疾患に伴う肺高血圧症を診療する際のポイントは,①臨床症状やルーチン検査から肺高血圧症の合併を疑うこと,②心エコーにてスクリーニングすること,③右心カテーテル検査により確定診断すること,④治療の基本は酸素療法であり,特異的肺動脈性肺高血圧症治療薬は慎重に用いること,である.呼吸器疾患に肺高血圧症が合併すると予後不良であるため,早期発見に努め,診療経験のある専門的施設と連携することが重要である.

キーワード
第3群肺高血圧症 慢性塞栓性肺疾患 特発性肺線維症 気腫合併肺線維症 酸素療法

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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
膠原病に伴う肺高血圧症の診断と治療

桑名 正隆    日本医科大学大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野 教授

要旨
 膠原病に伴う肺高血圧症(PH)では,肺動脈性肺高血圧症(PAH)だけでなく,左心疾患(LHD)や間質性肺疾患(ILD)に伴うPH,肺静脈閉塞症(PVOD),慢性血栓塞栓性肺高血圧症など,多彩な分類が見られ,これらがしばしば混在する.全身性エリテマトーデス(SLE)や混合性結合組織病(MCTD)では,免疫抑制療法と肺血管拡張薬を組み合わせた集学的治療により,血行動態正常化が可能だが,全身性強皮症(SSc)では複雑な心肺病変を呈するため,病態に応じたきめ細かな治療調整が必要である.

キーワード
肺動脈性肺高血圧症 全身性強皮症 混合型結合組織病 スクリーニング 免疫抑制療法
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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
左心疾患に伴う肺高血圧症の診断と治療

辻野 一三    北海道大学大学院医学研究科 内科学講座 特任教授

要旨
 左心疾患による肺高血圧症(PH-LHD)は,5群の肺高血圧症(PH)の中で最も患者数が多いとされるが,その病態や分類,適切な治療法については未解決の部分が多い.特に肺血管病変合併の有無・程度の重要性が注目される中で,ニースガイドラインでは,拡張期圧較差(拡張期肺動脈圧(DPAP)-肺動脈楔入圧(PAWP))7mmHgをカットオフ値とする基準が提唱された.本稿ではその理論的背景や,本群PH例に対する最近の治療の動向について概説する.

キーワード
後毛細血管性肺高血圧症 拡張期圧較差 経肺圧較差 収縮機能の保たれた心不全 収縮機能の低下した心不全
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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
先天性シャント性心疾患に伴う肺高血圧症の診断と治療

山田 修     国立研究開発法人国立循環器病研究センター 小児循環器部 医長

要旨
 先天性心疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症(CHD-PAH)は,成人も含めた全体のPAHの中で,現時点では少数であるが,小児では最多のサブグループである.成人先天性心疾患(adult congenital heart disease:ACHD)の増加状況から見て,今後は成人でも大きな増加が見込まれる.CHD-PAHでは成因,血行動態のみならず治療法,予後もほかのサブグループと異なる.本稿では,主としてシャント疾患に伴うCHD-PAHについて概説する.

キーワード
先天性心疾患 肺血管塞栓性病変 Eisenmenger症候群 手術適応 標的治療
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第4章 各疾患に伴う肺高血圧症
肝疾患に伴う肺高血圧症の診断と治療

岡野 嘉明    医療法人錦秀会 阪和第二泉北病院 内科 部長
          京都大学医学部附属病院 循環器内科 肺高血圧症外来

要旨
 肝疾患に伴う肺高血圧症は,WHO分類第1群-4の,各種疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症(APAH)に位置づけられ,“門脈(性)肺高血圧症(PoPH)”と表記されてきた.ほかの肺高血圧症と同様に,早期診断で最も有用な検査は心エコー図であり,確定診断には右心カテーテル検査を要する.内科的治療の基本的戦略は,ほかの肺動脈性肺高血圧症(PAH)とほぼ同様であるが,肝移植の適否判断と,それに向けての治療介入を必要とする場合がある点に特異性がある.

キーワード
肝疾患に伴う肺高血圧症 門脈(性)肺高血圧症 肺動脈性肺高血圧症 肺高血圧特異的治療薬 肝移植
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