要旨

最新醫學 診断と治療のABC 108
特発性肺線維症とその周辺疾患

第1章 概念・定義と疫学
特発性肺線維症の概念・定義

杉野 圭史   東邦大学医学部 内科学講座 呼吸器内科学分野(大森)講師
本間 栄    東邦大学医学部 内科学講座 呼吸器内科学分野(大森)教授

要旨
 我が国における特発性肺線維症(IPF)の概念・定義の歴史は古く,40年間にわたり厚生労働省研究班を中心に症例を蓄積し,詳細に分析してきた結果,我が国から世界に発信された成果や見解が,少しずつ国際ガイドラインに反映される時代となった.疾患多様性を有するIPFの診断ならびに治療は難しく,現在でも原因不明かつ予後不良の難治性疾患である.したがって,疾患経過(disease behavior)を意識した管理・治療が必要不可欠であり,今後は個別化治療の時代になるものと考えられる.

キーワード
特発性肺線維症 特発性間質性肺炎 ガイドライン 定義

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第1章 概念・定義と疫学
疫 学

千葉 弘文    札幌医科大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座 准教授
高橋 弘毅    札幌医科大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座 教授

要旨
 北海道において,特発性肺線維症(IPF)の特定疾患医療受給者を対象に,疫学調査を行った.その結果,有病率は10万人対10.0人,発症率は10万人対2.23人であった.発症年齢の平均は70.0歳,性比では男性に多く73.2%を占めた.生存中央値は35ヵ月であり,最も多い死亡原因は,急性増悪で40%,予後因子として,診断時の%肺活量(VC),重症度で有意差を認めた.死亡原因などに欧米との差異を認め,疾患実態における人種,民族間差の存在を示唆する結果であった.

キーワード
特発性肺線維症 日本人 疫学調査 予後規定因子 人種間差

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第2章 IPFの病理・病態生理
特発性肺線維症の病理

石田 佳央理  長崎大学病院 病理診断科
福岡 順也    長崎大学病院 病理診断科 教授

要旨
 特発性肺線維症(IPF)は,組織学的に通常型間質性肺炎(UIP)pattern(以下UIP)を来す疾患のうち,膠原病に随伴するものや,薬剤など原因の明らかな“2次性”の間質性肺炎を除いたものを言う.つまり,組織学的なUIPの診断は,IPFの診断に直結するわけではなく,所見診断であり,IPFと診断するためにはUIPを呈するこういった“2次性”の疾患を除外する必要がある.2011年にIPFのガイドラインが発表されてから,UIPに診断のクライテリアが示された.その中では,おおむね UIPの診断はIPFに限定したものに使用されるよう記載されており,近年これによるUIP診断の混乱が起ってきている.本稿では,まずIPFのガイドラインに記載されたUIPの組織学的診断基準を示し,補足的にUIPおよびその周辺疾患の組織学的特徴について解説を行い,鑑別点や問題点を考察する.また,ガイドラインに新たに取り入れられた,Not UIPという病理診断の取扱い方について,私見を述べる.

キーワード
特発性肺線維症/通常型間質性肺炎 特発性間質性肺炎 病理診断 ガイドライン

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第2章 IPFの病理・病態生理
細胞生物学,分子病態

佐藤 正大      徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野
西岡 安彦      徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野 教授

要旨
 特発性肺線維症(IPF)における慢性肺胞上皮細胞傷害の素因として,上皮細胞におけるintegrityの破綻や遺伝的素因が注目されている.また,それに続く異常修復の過程においては,さまざまな線維化関連因子,特に線維芽細胞への作用を有する増殖因子が,重要な役割を果たしていると考えられている.本稿では,IPFにおける分子病態について,最近の知見を中心に概説する.

キーワード
特発性肺線維症 ERストレス オートファジー 増殖因子 遺伝子異常

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第2章 IPFの病理・病態生理
血清マーカーの病態生理

横山 彰仁  高知大学医学部 血液・呼吸器内科学 教授

要旨
 間質性肺炎の診療に,KL-6やSP-Dなど,肺に比較的特異的なバイオマーカーが有用である.本稿では,KL-6を中心に,その上昇機序,機能的側面,間質性肺疾患の鑑別診断,早期発見,活動性評価および予後予測における利用方法について概説した.バイオマーカーは有用ではあるが,測定された数値のみにこだわることなく,評価の指標の1つとして,総合的に評価することが重要である.

キーワード
バイオマーカー KL-6 サーファクタントタンパク 特発性間質性肺炎

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第2章 IPFの病理・病態生理
遺伝子関連病態論
萩原 弘一    自治医科大学 総合医学第1講座 教授

要旨
 特発性肺線維症(IPF)は,原因不明の上皮障害と異常な組織修復の結果,細胞外基質の過度の蓄積が起り,最終的に肺線維化へとつながる疾患である.IPFの一部は先天性角化不全症の不全型と考えられ,テロメラーゼ遺伝子異常が認められる.テロメラーゼ機能,先天性角化不全症の病態生理から推測すると,IPFの発症に肺幹細胞の異常が関与している可能性がある.本稿では,既知の情報を参考に,IPFの原因を考察する.

キーワード
テロメア テロメラーゼ 先天性角化不全症 肺幹細胞 ヘイフリック限界

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第2章 IPFの病理・病態生理
急性増悪
大下 慎一郎    広島大学大学院医歯薬保健学研究院 救急医学 講師

要旨
 特発性肺線維症(IPF)は,一般的に慢性・進行性の経過を示す予後不良の間質性肺疾患である.しかし,時に急激に呼吸状態が増悪し,短期間で死亡に至ることがあり,これを急性増悪と呼ぶ.急性増悪の病態生理には,肺胞上皮傷害,線維性・炎症性サイトカイン,凝固・線溶異常,遺伝的素因など,複数の因子が相互に関与していると考えられる.これらを多角的に標的とできる新たな治療法の開発が重要である.

キーワード
びまん性肺胞障害 ポリミキシン 体外式膜型人工肺 低分子ヘパリン 人種差

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第2章 IPFの病理・病態生理
病態生理学的変化-呼吸生理の視点から-

桑平 一郎   東海大学医学部付属東京病院 呼吸器内科 教授

要旨
 特発性肺線維症の病態生理学的変化を,呼吸メカニクスの変化および換気血流比不均等,拡散障害などの,ガス交換異常の視点から整理した.古典的な呼吸生理学を復習しながら,それを病態の理解にいかに応用していくかという立場に立った.また臨床試験の成績を見る際に,参考となる事項も付記した.明日からの日常診療のお役に立てていただきたい.

キーワード
特発性肺線維症 呼吸メカニクス ガス交換 換気血流比不均等 肺拡散能

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コラム
MUC5Bの病因論 -precision medicine vs. ethnic balance-

貫和 敏博   公益財団法人結核予防会 常務理事

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第3章 診断
診断の進め方
近藤 康博     公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科 主任部長

要旨
間質性肺炎を呈する疾患は多岐にわたるため,注意深い問診と,症状,身体所見,血液所見,呼吸機能検査,画像所見,組織所見,を駆使して診断を進める必要がある.この際,難治性疾患である特発性肺線維症(IPF)の可能性の判断が重要である.また,疾患の重症度や,呼吸困難などの疾患特異性の高い症状,運動耐容能,社会的・心理的側面,これらを含めた健康関連生活の質(QOL)など,患者を多面的・全人的にとらえ,検討することが重要である.

キーワード
特発性肺線維症 特発性間質性肺炎 通常型間質性肺炎 高分解能CT 外科的肺生検

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第3章 診断
身体・血液検査所見

臼杵 二郎   日本医科大学武蔵小杉病院 呼吸器内科 部長

要旨
 特発性肺線維症(IPF)を始めとする間質性肺疾患の診断において,聴診,特にfine cracklesの有無は,極めて重要である.身体所見の観察は診断の基本であり,二次性間質性肺炎との鑑別にも役立つ.間質性肺炎マーカーの多くは,我が国において開発され,臨床応用されている.血中マーカーのみでは診断の確定はできないが,大きなヒントを与えてくれる.各マーカーの性質を知ることが,間質性肺疾患の診療の向上につながる.

キーワード
fine crackles ばち指 KL-6 SP-A SP-D

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第3章 診断
IPF/UIPの画像
髙橋 雅士     医療法人友仁会 友仁山崎病院 病院長
村田 喜代史   滋賀医科大学 放射線医学講座 教授

要旨
特発性肺線維症/通常型間質性肺炎(IPF/UIP)の画像診断について,そのガイドラインにおける位置付け,高分解能CT(HRCT)の基本的な読影法,などをレビューした.2011年,米国胸部疾患学会/ヨーロッパ呼吸器学会/日本呼吸器学会/中南米胸部協会(ATS/ERS/JRS/ALAT)によるIPF診療ガイドラインでは,多診療科による総合的アプローチ法であるCRP診断が,multidisciplinary discussion(MDD)という言葉で表現され,その重要性が強調されている.また,HRCT診断の比重が極めて高くなっている.

キーワード
特発性間質性肺炎 通常型間質性肺炎 高分解能CT

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第3章 診断
気管支鏡検査
朝川 勝明   新潟大学医歯学総合病院 呼吸器感染症内科
鈴木 榮一   新潟大学医歯学総合病院 病院長

要旨
特発性間質性肺炎(IIPs)は,病理組織像によって分類が進められてきたが,近年では臨床,画像を合わせた総合診断が重要視されている.一方で,間質性肺炎を含むびまん性肺疾患の診療では,病理学的所見によって肺内で生じている変化が推察・観察された結果,診断あるいは治療方針確立に至ることは多い.本稿では,呼吸器内科医が,びまん性肺疾患を対象に病理学的検索を行う際,主として選択する手技である気管支鏡検査について述べる.

キーワード
間質性肺炎 気管支鏡検査 気管支肺胞洗浄 経気管支的肺生検

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第3章 診断
周辺疾患の診断・管理 1.気腫合併肺線維症
花岡 正幸   信州大学学術研究院医学系医学部 内科学第一教室 教授

要旨
気腫合併肺線維症は,胸部高分解能(HR)CTによって“上肺野の気腫病変”と“下肺野の線維化病変”を認める慢性呼吸器疾患である.喫煙歴のある男性に多く,スパイロメトリーはほぼ正常所見にもかかわらず,肺拡散能(DLco)の著しい低下と体動時の高度なガス交換障害を認める.肺がんや肺高血圧症を高率に合併し,増悪頻度が高く,予後不良である.現在までのところ,診断の根拠は画像所見のみであり,診断基準や治療方針は確立していない.

キーワード
肺気腫 肺線維症 高分解能CT 肺がん 肺高血圧症

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第3章 診断
周辺疾患の診断・管理 2.慢性過敏性肺炎
稲瀬 直彦   東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 統合呼吸器病学分野 教授

要旨
 慢性過敏性肺炎は,長年の抗原曝露により特発性肺線維症(IPF)と類似した肺線維化を示す.経過中に急性増悪や肺がんを合併することも報告されている.慢性過敏性肺炎の原因の約半数は鳥抗原であり,鳥飼育以外に,羽毛製品や野鳥などが原因となる.画像および病理所見の特徴が明らかとなってきたが,IPFとの鑑別は困難である.早期に診断し,抗原回避することが,治療において重要である.

キーワード
慢性過敏性肺炎 鳥関連過敏性肺炎 羽毛ふとん肺 潜在性発症型 抗原回避 

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第3章 診断
周辺疾患の診断・管理 3.膠原病性間質性肺炎
槇野 茂樹     大阪医科大学 リウマチ膠原病内科 専門教授

要旨
 膠原病性間質性肺炎は,特発性に準じて分類される.急性/亜急性型は,画像,経過,予後共に特発性と大差はない.慢性線維化型は基礎膠原病により,画像,経過,経過中事象,予後で大きく異なり,全身性強皮症-非特異性間質性肺炎(SSc-NSIP)というように表現するのが適当と考える.治療では免疫抑制療法の有用性が指摘されており,特に亜急性進行性の皮膚筋炎(DM)-NSIPでは,ステロイド大量+カルシニューリン阻害薬±シクロホスファミド間欠静注療法(IVCY)による治療が,予後を大幅に改善している.

キーワード
非特異性間質性肺炎 通常型間質性肺炎 びまん性肺胞障害 器質化肺炎 皮膚筋炎
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第3章 診断
周辺疾患の診断・管理 4.血管炎
木下 ありさ    国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 呼吸器・アレルギー科
谷口 正実    国立病院機構相模原病院 臨床研究センター センター長

要旨
 特発性肺線維症(IPF)の周辺症状と位置付けされる血管炎としては,顕微鏡的多発血管炎(MPA)が重要となる.MPAは,抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)が高率に陽性となる全身血管炎であり,多くの症例で肺病変を来す.また,IPF患者でMPO-ANCA陽性を認め,このうちMPAに進展する症例があることが知られている.現時点では議論が不十分で,検討の余地があるところもあるが,互いの関係を正しく理解し,臨床所見,画像所見などで厳格に経過を追い,症例に応じて治療時期を判断する必要がある.

キーワード
抗好中球細胞質抗体関連血管炎 顕微鏡的多発血管炎 抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体
特発性肺線維症

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コラム
疾患概念の変遷はどこへ
杉山 幸比古   自治医科大学 内科学講座 呼吸器内科学部門 教授


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第4章 管理・治療
管理・治療の目標
谷口 博之   公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科 部長

要旨
 特発性肺線維症(IPF)は,特発性間質性肺炎(IIPs)の中で最も頻度が高く,慢性かつ進行性に進行する予後不良の線維化性間質性疾患と位置づけられてきた.しかしながら,IPFの治療管理においては,IPFの疾患進行を抑制する薬剤が登場し,薬物療法や長期酸素療法,呼吸リハビリテーション,合併症管理などにおいても,急速な進歩が認められつつある.IPFの管理・治療においては患者および家族に現在のIPFの診断,治療管理の概要と問題点,および将来展望などについて分かりやすく説明することが肝要である.

キーワード
特発性肺線維症 管理と治療 薬物療法 酸素療法 呼吸リハビリテーション

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第4章 管理・治療
薬物療法・選択基準 1.ピルフェニドン
馬場 智尚      神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科
小倉 高志     神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 部長

要旨
 特発性肺線維症(IPF)は予後不良の疾患である.ピルフェニドンは,IPFに対して複数の試験で,肺活量の低下の抑制,6分間歩行距離の低下の抑制が示されている.内服による症状改善効果がなく,食欲低下・日光過敏症といった副作用もあるが,CAPACITY試験およびASCEND試験の統合解析では予後の改善が示されており,患者への丁寧な説明のもとに,積極的な使用が勧められる.

キーワード
ピルフェニドン 特発性肺線維症 予後 ガイドライン

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第4章 管理・治療
薬物療法・選択基準 2.ニンテダニブ
井上 義一    国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター 臨床研究センター長

要旨
 ニンテダニブは,米国では2014年,我が国では2015年に,特発性肺繊維症(IPF)の治療薬として承認された.IPF患者において呼吸機能の年間減少率を抑制し,病勢進行を遅らせ,急性増悪発現のリスクを抑制する可能性を示した.ニンテダニブによる有害事象は,ほとんどの患者で管理可能であった.

キーワード
特発性肺線維症 血小板由来増殖因子 繊維芽細胞増殖因子 血管内皮増殖因子 ニンテダニブ

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第4章 管理・治療
薬物療法・選択基準 3.N-アセチルシステイン吸入療法
杉野 圭史    東邦大学医学部 内科学講座 呼吸器内科学分野(大森)講師

要旨
 特発性肺線維症(IPF)におけるN-アセチルシステイン(NAC)単剤経口投与の有効性は,国際的大規模試験によって証明されなかったが,一部に有効群が存在する可能性が示唆されている.また本邦では,NAC単独吸入療法の臨床的有効性が報告されており,投与方法および重症度などの違いから,これらの結果を慎重に取り扱う必要がある.NAC吸入療法は,副作用が少なく比較的導入しやすい治療法であり,特にレドックスバランスの不良例には,その効果が期待される.また,NAC吸入療法開始後の効果判定には,血中レドックスバランスおよびCCL-18,MMP-7の推移をモニタリングすることが有用であり,悪化群には適切な時期に抗線維化薬との併用療法を行うべきである.

キーワード
特発性肺線維症 N-アセチルしステイン 吸入療法 レドックスバランス バイオマーカー

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第4章 管理・治療
薬物療法・選択基準 4.ステロイド・免疫抑制薬
宮崎 泰成    東京医科歯科大学 保健管理センター センター長
           東京医科歯科大学 呼吸器内科 教授

要旨
 間質性肺炎の治療では,ステロイド,免疫抑制薬,抗酸化薬および抗線維化薬が使用される.炎症が主体であればステロイド・免疫抑制薬,線維化が主体であれば抗線維化薬を選択するので,その治療選択は特発性肺線維症(IPF)とその周辺疾患では異なる.ステロイド・免疫抑制薬はIPF慢性期では使用せず,進行例や急性増悪あるいはそのほかの特発性間質性肺炎(IIPs)で使用される.周辺疾患では,膠原病肺や慢性過敏性肺炎で適応がある.

キーワード
シクロスポリン試験 PANTHER試験 ステロイド シクロスポリン

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第4章 管理・治療
急性増悪の管理・治療
猪俣 稔     東京都立広尾病院 呼吸器科
阿部 信二   東京都立広尾病院 呼吸器科 部長

要旨
 特発性肺線維症(IPF)において急性増悪は死因として最も多く,さらに救命が困難な予後不良の病態である.その原因は不明であり,IPFの進行形態の1つと考えられている.治療法としては,ステロイドと免疫抑制薬の併用療法に加え,最近では,遺伝子組換えヒトトロンボモジュリン(rhTM)療法やポリミキシンB固定化カラム(PMX)療法の有効性が報告されている.また,ピルフェニドンやニンテダニブの急性増悪予防効果の可能性も報告されている.

キーワード
特発性肺線維症 遺伝子組換えヒトトロンボモジュリン療法 ボリミキシンB固定カラム療法
ピルフェニドン ニンテダニブ

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第4章 管理・治療
合併症・併存症の管理
宮本 篤   虎の門病院 呼吸器センター内科

要旨
 特発性肺線維症(IPF)は,さまざまな臨床経過をたどる不均一な疾患であり,一般的に進行性で予後不良である.さまざまな合併症が知られるが,その種類や重症度は症例により異なる.本稿では,肺高血圧症(PH),胃食道逆流症(GER),閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS),気胸,慢性呼吸器感染症,の診断法,治療法を整理する.予後因子となる合併症も多く,検査の特性を理解し,適切にスクリーニングすること,治療可能な疾患は,積極的に適応を考慮し治療することが重要である.

キーワード
肺高血圧症 胃食道逆流症 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 気胸 慢性呼吸器感染症
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第4章 管理・治療
間質性肺炎の呼吸リハビリテーション

黒澤 一       東北大学 環境・安全推進センター 教授・統括産業医
           東北大学大学院医学系研究科 産業医学分野(兼任)

要旨
 間質性肺炎では,ほかの呼吸器疾患と同様,呼吸リハビリテーションが有効であり,運動耐容能,呼吸困難,生活の質(QOL)を改善させる.プログラムの中核は運動療法であるが,重症者ではコンディショニングなどのケアを中心とするなど,状況に合わせた治療を行うことができる.運動で低酸素血症となりやすいなど,間質性肺炎の特性に注意しながら,身体活動性の向上を図り,維持させていくことが重要である.

キーワード
運動療法 コンディショニング 呼吸困難 低酸素血症 身体活動性

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第4章 管理・治療
間質性肺炎合併肺がんの治療 1.外科療法

岩田 剛和    千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学 講師
吉野 一郎    千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学 教授

要旨
 間質性肺炎合併肺がんは予後不良であるうえに,抗がん治療を契機として致命的な急性増悪が生じる危険があり,治療が難しい.手術も急性増悪の誘発因子であり,間質性肺炎急性増悪は,我が国の肺がん術後死亡原因の第1位を占める.最近の大規模調査の結果,リスク因子が同定されて術後急性増悪の危険性が予測できるようになってきた.有効な予防手段は確立されていないが,ピルフェニドンやニンテダニブといった,間質性肺炎治療薬の周術期投与に期待が持たれている.

キーワード
間質性肺炎 肺がん 外科治療 急性増悪 ピルフェニドン

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第4章 管理・治療
間質性肺炎合併肺がんの治療 2.化学療法
岸 一馬   虎の門病院 呼吸器センター内科 部長

要旨
 間質性肺炎(IP)合併肺がんに対する化学療法では,IPの急性増悪に注意が必要である.治療前には肺がんとIPの精査を行う.IPの患者に禁忌の抗がん剤として,イリノテカン,ゲムシタビン,アムルビシンがある.IP合併進行肺がんの1次治療として,非小細胞肺がん(NSCLC)ではカルボプラチン+パクリタキセル療法,小細胞肺がん(SCLC)ではプラチナ製剤+エトポシド療法が広く行われている.IP合併肺がんの予後は不良である.

キーワード
間質性肺炎 肺がん 化学療法 急性増悪 分子標的治療

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第4章 管理・治療
経過・予後
滝澤 始   杏林大学医学部付属病院 呼吸器内科 教授

要旨
 特発性肺線維症(IPF)は,特発性間質性肺炎と総称される一群の中で主要な疾患で,我が国での有病率は10万人対10.0人と報告されている.病因がいまだ不明な慢性進行性の疾患であり,呼吸不全の進行に加え,急性増悪や肺がんの合併などにより死亡する,予後不良の疾患である.近年,ピルフェニドンなど,経年的な呼吸機能の低下を軽減させる薬剤が登場して,今後の予後の改善が期待される.

キーワード
特発性肺線維症 経過 急性増悪 予後 治療

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コラム
細胞老化とオートファジー
桑野 和善   東京慈恵会医科大学 内科学講座 呼吸器内科 教授
荒屋 潤     東京慈恵会医科大学 内科学講座 呼吸器内科 准教授
原 弘道     東京慈恵会医科大学 内科学講座 呼吸器内科 講師


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第5章 ガイドライン
IPF診療ガイドライン
坂東 政司   自治医科大学 内科学講座 呼吸器内科学部門 准教授

要旨
 診療ガイドラインとは,科学的根拠に基づき,系統的な手法により作成された推奨を含む文書で,患者と医療者を支援する目的で作成されている.現時点での我が国における特発性肺線維症(IPF)診療ガイドラインは,2011年に米国胸部疾患学会/ヨーロッパ呼吸器学会/中南米胸部協会(ATS/ERS/ALAT)と合同で作成した,エビデンスに基づくIPFの診断と管理ガイドラインで,2015年にClinical Practice Guidelineとして,治療に関する領域がupdateされた.しかし,質の高いエビデンスが少ないIPFの診療ガイドラインを,科学的根拠に基づく系統的な手法のみに則って作成することは困難であり,臨床現場における最終的な判断は,主治医が患者と協議して行うことが最も重要である.今後は,国情に合った臨床現場における意思決定の判断材料の1つとして,エビデンスにコンセンサスを加えた利用価値の高いガイドラインの作成が望まれる.

キーワード
特発性肺線維症 診療ガイドライン クリニカルクエスチョン システマティックレビュー GRADE法

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第5章 ガイドライン
認定基準の変更
坂本 晋   東邦大学医学部 内科学講座 呼吸器内科学分野(大森)講師
本間 栄   東邦大学医学部 内科学講座 呼吸器内科学分野(大森)教授

要旨
 2015年1月から難病医療費助成制度が改訂され,所得に応じた階層区分の見直しや算定方法,自己負担限度額などが変更された.特発性間質性肺炎(IIPs)は,これまでは重症度Ⅲ度以上が,医療費助成を受給できた.今回の改訂により,高額の医療費を支払っている重症度Ⅰ,Ⅱ度の軽症のIIPs患者も,新たに助成の対象となった.これにより,疾患早期に薬剤の介入が可能となり,薬剤の有効性がより期待できる早期例にも投薬が可能となっている.

キーワード
特発性肺線維症 特定疾患 抗線維化薬 医療費助成

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