要旨

最新醫學 診断と治療のABC 109
大腸腺腫・大腸がん

第1章 概念・定義と疫学
大腸腺腫・大腸がんの概念と定義

山内 淳嗣    公益財団法人田附興風会医学研究所 北野病院 消化器センター内科
藤盛 孝博    社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院病理診断センター
市川 一仁    社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院病理診断センター
前田 盛     社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院病理診断センター
八隅 秀二郎  公益財団法人田附興風会医学研究所 北野病院 消化器センター内科

要旨
 ポリープは内腔に突出する限局性病変と定義されるが,その要因は多彩である.大腸腫瘍性ポリープである腺腫は,adenoma-carcinoma sequenceによって前がん病変であることが広く認識されている.さらに近年では,sessile serrated adenoma/polyp (SSA/P),過誤腫性ポリープ,潰瘍性大腸炎に伴うdysplasiaなどが,前がん病変として重要視されてきている.本稿では,これらの病理形態学的分子生物学的特徴を概説し,最後に進行度に関する欧米との定義の相違について言及した.

キーワード
大腸腺腫 adenoma-carcinoma sequence 前がん病変 大腸がん

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第1章 概念・定義と疫学
大腸がんの疫学データ

固武 健二郎    栃木県立がんセンター研究所 所長

要旨
 我が国の大腸がんの疫学的動向を概観した.我が国は大腸がんの高罹患率国の1つであり,罹患数・死亡数共に絶対数は増加している(2011年の罹患数12.4万人,2013年の死亡数4.8万人).一方,大腸がんの罹患および死亡リスクが高い高齢者層の増加の影響を調整すると,罹患率は横ばい,死亡率は減少傾向にある.我が国を含む経済的先進国における生存率を指標とする大腸がんの治療成績は,漸次改善していることが明らかになってきた.

キーワード
大腸がんの統計 罹患率 死亡率 生存率

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第2章 病理
発生機序

三代 雅明   大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科
高橋 秀和   大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科
土岐 祐一郎  大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科 教授
森 正樹     大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科 教授

要旨
 大腸がんの主な発がん分子機序は,染色体不安定性(CIN),マイクロサテライト不安定性(MSI)とCpGアイランドメチル化形質(CIMP)とされている.大腸がんの発生,進展については,adenoma-carcinoma sequence,de novo発がん,dysplasia-carcinoma sequenceがよく知られているが,鋸歯状病変からのがん化経路であるserrated pathwayが新たに提唱され,注目を集めている.

キーワード
大腸がん 発がん機序 染色体不安定性 マイクロサテライト不安定性 adenoma-carcinoma sequence

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第2章 病理
大腸がんの病理診断

菅井 有    岩手医科大学医学部 病理診断学講座 教授

要旨
 大腸がんの病理診断は,近年急速な進歩を遂げている.大腸がんの病理診断は組織診断のみではなく,多くの病理学的因子を記載することが求められている.多くの病理学的因子は主観的な因子が多いが,極力客観的な方法で確定することが要求されるようになっている.本邦では『大腸癌取扱い規約』に基づいて診断されるが,世界保健機関(WHO)との整合性も考慮する必要性がある.組織診断は,分類そのものが本邦のそれとは異なり,WHO分類を翻訳する際には注意が必要である.脈管侵襲像は病理診断にとって重要な因子であるが,その客観性については診断者間の不一致が指摘されている.D2-40はリンパ管内皮を特異的に染色するので,リンパ管侵襲の判定に有用性が期待されている.大腸がんの病理診断にとって,大腸がんの分子異常を知ることは極めて重要である.染色体不安定性(CIN)型とマイクロサテライト不安定性(MIN,MSI)型は大腸がんの分子学的特徴を的確にとらえており,大腸がんを構成する種々の組織型も,いずれの分子病型に対応しているかを常に考慮すべきである.免疫染色も鋸歯状病変やMSI陽性大腸がんの診断の際に有用性が指摘されているが,的確に使用する必要がある.Tumor buddingや神経侵襲像も大腸がんの予後因子として有用性が明らかにされており,病理診断の新しい診断項目として採用されている.がんが浸潤すると,微小環境を形成するが,cancer associated fibroblastやM2マクロファージは,大腸がんの予後因子として,有用性が期待されている.大腸がんの病理診断には,上述したような多くの因子が採用されてきており,病理医も実務にそれらを取り入れるべく努力すべきである.

キーワード
大腸がん 病理診断 分子異常 組織型 微小環境

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第2章 病理
大腸発がんにおける遺伝素因および環境要因

神藤 英二  防衛医科大学校 外科 講師
上野 秀樹  防衛医科大学校 外科 准教授
梶原 由規  防衛医科大学校 外科 学内講師
長谷 和生  防衛医科大学校 外科 教授

要旨
 家族性大腸腺腫症(FAP)やリンチ症候群の原因となるAPCあるいはミスマッチ修復遺伝子の異常が,遺伝性大腸がんの要因として広く認識されている.また,ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって,大腸がんとの関連が示唆される遺伝子多型が複数明らかとなり,大腸発がんの遺伝的素因として注目されている.さらにこれまでの膨大な疫学的研究から,さまざまな環境因子が発がんに作用することが報告されてきた.赤身の肉や加工肉の摂取,飲酒,肥満,放射線治療の既往,炎症性腸疾患の既往が,大腸がん発症の危険因子として重要であること,逆に食物繊維や牛乳,カルシウムの摂取,適切な運動が予防的因子と成りうることは繰り返し報告され,確度が高いと解釈されている.近年になり,個別の因子の重要性のみならず,遺伝素因と環境要因の相互作用に関する研究も進められ,遺伝情報に基づいた,発がん予防法の確立に向けての重要な知見になると期待されている.

キーワード
大腸発がん要因 家族性大腸腺腫症 リンチ症候群 遺伝子多型

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コラム
大腸がんの内視鏡的深達度診断のコツ
鶴田 修    久留米大学医学部 消化器病センター 教授

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第3章 検査と診断
大腸内視鏡検査
角川 康夫    国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 医長/
           国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 検診部
松本 美野里  国立がん研究センター中央病院 内視鏡科/
           国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 検診部
松田 尚久    国立がん研究センター中央病院 内視鏡科/
          国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 検診部長
斎藤 豊     国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 科長

要旨
 大腸内視鏡検査は,肛門からスコープを挿入し,全大腸の内腔を観察する検査法である.大腸の検査にはさまざまなものがあるが,この大腸内視鏡検査は,大腸内腔の粘膜面を観察する最も精度の高いモダリティと言える.軸保持短縮法による丁寧な挿入操作と,スコープなどの機器の進歩も相まって,多くの場合は苦痛なく検査を行うことが可能である.また,病変が発見された場合には,適宜,内視鏡的切除などの処置が行える点も,本検査の利点と言える.日常臨床に幅広く普及している,この大腸内視鏡検査について概説する.

キーワード
大腸内視鏡検査 腺腫検出率 大腸がん がん検診

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第3章 検査と診断
CT,MRI

女屋 博昭   群馬県立がんセンター 放射線診断部 部長
堀越 浩幸   群馬県立がんセンター 放射線診断部 部長
小林 秀章   国立がん研究センター中央病院 放射線診断科

要旨
 コンピュータ断層診断(CT)と磁気共鳴画像法(MRI)による主に大腸がんの診断,原発巣の深達度,リンパ節転移,遠隔転移(肝転移,肺転移,腹膜播種)について概説する.おのおのの画像機器の特徴と画像所見を理解して,適切な術前診断,術後の経過観察への応用としたい.画像評価は基本となる軸位断のみでなく,矢状断や冠状断などの多断面からの追加観察は部分容積効果を減少させることによって,管腔臓器である大腸がんの浸潤診断や小さな転移巣の評価に有用である.

キーワード
深達度診断 遠隔転移 造影ダイナミック検査 拡散強調像

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第3章 検査と診断
PET,PET/CT

荻原 佑介      東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 画像診断・核医学分野/
             JAとりで総合医療センター 放射線科
鳥井原 彰      東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 画像診断・核医学分野
立石 宇貴秀    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 画像診断・核医学分野 教授

要旨
 フルオロデオキシグルコース(FDG)-PET/CTは,悪性腫瘍の診断を始めとして,臨床現場で広く用いられている.大腸は,FDGが生理的に集積する臓器であり,本検査を正しく評価するためには,集積が異常なものかどうかを区別することがまず重要である.FDG-PET/CTを用いた大腸がんの病期診断では,特に遠隔転移の診断において有用性が高く,治療方針が変更されることも少なくない.さらに,再発診断や治療効果判定にも力を発揮する.

キーワード
FDG FDG/PET 大腸

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コラム
切除不能大腸がん遠隔転移例に対する原発巣切除の意義;症状緩和と予後改善?
安野 正道     東京医科歯科大学 消化管外科学分野 准教授

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第4章 治療
大腸腺腫・大腸がんの治療戦略

橋口 陽二郎   帝京大学医学部 外科学講座 教授
松田 圭二     帝京大学医学部 外科学講座 准教授
藤井 正一     帝京大学医学部 外科学講座 講師

要旨
 Stage0~Ⅲ大腸がんの治療は,原発巣切除が第1選択であり,壁深達度とリンパ節転移の有無によって,リンパ節郭清範囲を決める.切除可能な遠隔転移患者には,原発巣と遠隔転移巣の切除を施行し,切除不能の遠隔転移患者にも,有症状の原発巣があれば,外科的切除を考慮する.StageⅢ,R0切除後には補助化学療法を施行し,切除不能大腸がんには延命効果と臨床症状のコントロールを目的とした化学療法が施行される.

キーワード
大腸癌治療ガイドライン 内視鏡治療 SMがん 再発 遠隔転移

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第4章 治療
内視鏡治療ポリペクトミー,EMR,ESD
田中 信治    広島大学大学院医歯薬保健学研究科 内視鏡医学 教授
岡 志郎     広島大学病院 内視鏡診療科 診療講師

要旨
内視鏡治療の適応は,腺腫または早期がん(cTisおよびcT1aがん)である.安全かつ標準的なポリペクトミー,内視鏡的粘膜切除術(EMR)による一括切除の限界は,スネアサイズによって規定され,一般に径20mm程度までの病変である.内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を用いれば,大きさに関係なく完全一括摘除が可能である.出血に対してはクリップや止血鉗子が有用であるが,有茎性ポリープには留置スネアによる予防法も可能である.径20mmを超える大きな大腸腫瘍でも,側方発育型腫瘍顆粒型(LST-G)のうち顆粒均一型は腺腫主体のものが多く,詳細な術前診断のもと計画的分割切除も容認される.

キーワード
大腸腺腫 内視鏡治療 ポリペクトミー 内視鏡的粘膜切除術 内視鏡的粘膜下層剥離術

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第4章 治療
大腸腫瘍内視鏡治療後のサーベイランス
小林 望     栃木県立がんセンター 画像診断部 医長
松田 尚久   国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 検診部 部長/
           国立がん研究センター中央病院 内視鏡科
佐野 寧     佐野病院消化器センター 院長
藤井 隆広   藤井隆広クリニック 院長
斎藤 豊     国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 科長

要旨
すでに,エビデンスに基づいたガイドラインが策定されている欧米とは対照的に,我が国では大腸腫瘍内視鏡治療後のサーベイランスに関する明確な指針が存在せず,個々の医師の裁量によって頻回な経過観察が行われてきた.2014年に発表された Japan Polyp Study(JPS)の結果から,我が国においてもサーベイランスは3年後でよいことが明らかとなり,大腸内視鏡検査の効率化と,それを利用した内視鏡検診導入につながることが期待される.

キーワード
大腸がん 大腸ポリープ 大腸内視鏡 Japan Polyp Study National Polyp Study

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第4章 治療
大腸早期がんに対する局所切除後の追加腸切除
上野 秀樹   防衛医科大学校 外科学講座 准教授
神藤 英二   防衛医科大学校 外科学講座
梶原 由規   防衛医科大学校 外科学講座
長谷 和生   防衛医科大学校 外科学講座 教授

要旨
大腸pT1がんの治療の原則は,リンパ節郭清を伴う腸切除である.局所切除後の再発に対するsalvage治療の有効性は明らかでない.一方,pT1がんのリンパ節転移は10%前後に留まり,局所切除のみで根治される症例も多数存在することから,局所切除されたpT1がんすべてが手術適応になるものではない.追加切除を要する症例の効率的な選別は,臨床的に重要な課題である.局所切除後の追加切除の要否は,切除断端の所見とリンパ節転移リスクを総合して判断され,後者に関して,本邦では組織型,粘膜下層(SM)浸潤度,脈管侵襲,簇出の4つの病理学的所見が重視されている.

キーワード
大腸pT1がん リンパ節転移 簇出 内視鏡切除 追加腸節所

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第4章 治療
手術療法
古畑 智久   札幌医科大学保健医療学部 看護学科 教授
西舘 敏彦   札幌医科大学医学部 消化器・総合,乳腺・内分泌外科
沖田 憲司   札幌医科大学医学部 消化器・総合,乳腺・内分泌外科

要旨
 本邦の大腸がん外科治療法の基本方針は,T1/T2大腸がんに対してはD2手術,T3/T4およびリンパ節転移陽性症例に対してはD3手術を行うことである.一方,欧米では,low tie手術から全結腸間膜切除(CME)と中枢側高位結紮(CVL)が結腸がんに対する主流になりつつある.D3手術は,CME+CVLと手術手技の原則はほぼ同一のものと考えられる.両手技ともに長期予後に関して良好な成績が報告されており,直腸がんに対する全直腸間膜切除(TME)と同様に,結腸がんの標準的な術式になると思われる.

キーワード
大腸がん リンパ節郭清 全結腸間膜切除 中枢側高位結紮 D3手術 

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第4章 治療
腹腔鏡下手術
草野 徹     大分大学医学部 消化器・小児外科学講座
赤木 智徳    大分大学医学部 消化器・小児外科学講座
猪股 雅史    大分大学医学部 消化器・小児外科学講座 教授

要旨
 1990年代の初頭,腹腔鏡下大腸切除術が報告され,低侵襲手術のカテゴリーを確立し,内視鏡治療の困難な大腸腺腫はもちろん,早期がん,さらには進行がんへと,この25年間で急速に普及してきた.その間,国内外で安全性・低侵襲性・根治性に関する種々の臨床研究が行われ,腫瘍学的安全性を確保しながら,段階的にその適応拡大が進んできた.しかし,腫瘍の位置や解剖学的な理由によって難度が異なることから,術者・チームの習熟度に応じて適応を決定する必要がある.本邦の医療環境の中で,現在進行中の結腸がんおよび直腸がんに対する臨床試験によって,腹腔鏡手術の適切な普及が期待されている.

キーワード
大腸がん 腹腔鏡下手術 低侵襲 ランダム化比較試験
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第4章 治療
直腸がんに対する側方郭清
山岡 雄祐   静岡県立静岡がんセンター 大腸外科
絹笠 祐介   静岡県立静岡がんセンター 大腸外科 部長
塩見 明生   静岡県立静岡がんセンター 大腸外科
山口 智弘   静岡県立静岡がんセンター 大腸外科
賀川 弘康   静岡県立静岡がんセンター 大腸外科

要旨
 側方リンパ流は直腸がんの主要な転移経路の1つであり,進行下部直腸がんでは一定の頻度で側方転移が生じる.転移リスクのある直腸がんに対しては,側方リンパ節郭清(以下,側方郭清)が推奨され,直腸がん手術を行う外科医にとっては会得しておかなくてはならない,重要な手技の1つである.本稿では,側方郭清の適応ならびに,手術に必要な解剖と,静岡県立静岡がんセンター大腸外科で行っているロボット支援下による側方郭清手技について解説する.

キーワード
大腸がん 側方郭清 ロボット手術

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第4章 治療
直腸がんに対する術前化学放射線療法
小西 毅     がん研究会有明病院 消化器外科 大腸外科副医長
上野 雅資   がん研究会有明病院 消化器外科 大腸外科部長
福長 洋介   がん研究会有明病院 消化器外科 大腸外科副部長
長山 聡     がん研究会有明病院 消化器外科 大腸外科医長
藤本 佳也   がん研究会有明病院 消化器外科 大腸外科副医長
秋吉 高志   がん研究会有明病院 消化器外科 大腸外科副医長

要旨
 進行直腸がんでは,結腸がんに比べ局所再発が高率であり,本邦では側方郭清による拡大手術が標準治療とされてきた.一方,欧米では,側方郭清は手術侵襲や術後性機能,排尿機能の観点から避ける傾向にあり,術前化学放射線療法(CRT)または放射線療法(RT)を用いた集学的治療を,標準治療としてきた.近年,本邦でも術前CRTやRTを取り入れる施設が増えている.本稿では,術前CRT,RTの基本事項と,本邦での現状について解説する.

キーワード
直腸がん 化学放射線療法 放射線療法 集学的治療 側方郭清

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第4章 治療
閉塞性大腸がん(大腸がんイレウス)の治療
塩澤 学    神奈川県立がんセンター 消化器外科 部長

要旨
 閉塞性大腸がん(大腸がんイレウス)の治療は,早急な処置が必要となる.その治療方針は個々の症例によって決定されるが,大きく分けて2つある.1つは初回治療として大腸がん原発巣切除手術であり,もう1つは減圧処置後に一期的に大腸がん切除手術を行う方法である.減圧処置には経鼻イレウス管挿入,経肛門イレウス管挿入,大腸ステント留置,人工肛門(ストマ)造設などがある.それぞれの現状について解説した.

キーワード
閉塞性大腸がん 大腸がんイレウス 大腸ステント 経肛門イレウス管

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第4章 治療
術後補助化学療法
石川 敏昭     東京医科歯科大学大学院 総合外科学分野 腫瘍化学療法外科 講師

要旨
 術後補助化学療法は,がん治療の治癒率の向上を目指すうえで非常に重要である.特に,治療対象には手術単独で治癒する患者が含まれているうえに,補助療法を行っても再発する患者がいることから,標準治療としてコンセンサスの得られた治療を,適切に行うことが大切である.実臨床では適応のほか,オキサリプラチン併用レジメンや,経口フッ化ピリミジン薬の使い分けなど,熟慮を要することがある.本稿では我が国の現状を概説した.

キーワード
術後補助化学療法 UFT カペシタビン S-1 オキサリプラチン

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第4章 治療
切除不能大腸がんに対する化学療法
大北 仁裕    香川大学医学部 臨床腫瘍学
辻 晃仁      香川大学医学部 臨床腫瘍学 教授

要旨
 近年の新規薬剤の登場,また支持療法の標準化,さらに臨床経験の蓄積に伴い,切除不能進行・再発大腸がん患者の治療成績は飛躍的に向上してきた.しかしこれら成績はすべて臨床試験や治験といった,比較的条件の良い症例を対象としたエビデンスのうえに成り立っている.レジメン適応を選択する際には十分な検討を行い,患者に化学療法の目的や毒性を十分に説明したうえで,患者自身が納得した治療を受けられるようにすることが大切である.

キーワード
大腸がん化学療法 抗EGFR抗体薬 抗VEGF抗体薬 TAS102 レゴラフェブ

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第4章 治療
分子標的治療薬の作用機序
野口 正朗    国立がん研究センター東病院 消化管内科
吉野 孝之    国立がん研究センター東病院 消化管内科 科長

要旨
 近年,分子生物学の進歩によって,がん細胞の浸潤・増殖・転移にかかわる分子の解明が進み,創薬の中心は分子標的治療薬にシフトしている.分子標的治療薬の作用機序を知ることは,出現しうる有害事象の予想や,バイオマーカー探索を行っていくうえで,臨床上も有用と考えられる.

キーワード
作用機序 ベバシズマブ セツキシマブ パニツムマブ レゴラフェニブ

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第4章 治療
大腸がんにおける遺伝子検査
木藤 陽介     静岡県立静岡がんセンター 消化器内科
山﨑 健太郎   静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 医長

要旨
 大腸がん薬物療法における実臨床では,RAS遺伝子検査による抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体薬の治療効果予測,UGT1A1遺伝子多型検査によるイリノテカン(IRI)の副作用予測が行われている.また,BRAF遺伝子変異は切除不能例における強い予後不良因子,マイクロサテライト不安定性(MSI)はStageⅡ症例における予後因子,術後補助化学療法の効果予測因子と考えられており,現在これらの異常を有する症例を対象とした治療開発が進められ,今後の展開が期待されている.

キーワード
RAS遺伝子 UGT1A1遺伝子多型 BRAF遺伝子 マイクロサテライト不安定性

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第4章 治療
肝転移の治療方針
長谷川 潔    東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科 准教授
河口 義邦>   東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科
大道 清彦>   東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科
阪本 良弘>   東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科 准教授
國土 典宏>   東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科 教授

要旨
 大腸がん肝転移に対する標準治療は,肝切除である.安全な肝切除には,術前の正確な肝機能と残肝容量の評価が必須である.残肝容量が不足でも,門脈塞栓術,2期的切除,associating liver partition and portal vein ligation for staged hepatectomy(ALPPS)手術,肝静脈再建などを駆使し,安全かつ治癒的な肝切除が可能である.術後の高再発率は依然問題だが,再発すれば繰り返し切除が,再発抑制にはUFT/LV(テガフール/ウラシル+ロイコボリン)補助化学療法が有用である.切除不能例には分子標的治療薬を含む強力な化学療法による,conversionを狙う治療方針が良い.

キーワード
EORTC4098試験 UFT/LV療法 Time to surgical failure 繰り返し切除 先行切除

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第4章 治療
肺転移の治療方針
廣澤 知一郎   東京女子医科大学 第二外科 講師
板橋 道朗     東京女子医科大学 第二外科 准教授
番場 嘉子     東京女子医科大学 第二外科 助教
小川 真平     東京女子医科大学 第二外科 講師
亀岡 信悟     牛久愛和総合病院 院長

要旨
 大腸癌研究会のプロジェクト研究で,大腸がん肺転移のGrade分類を考案した.肺切除例の切除後5年生存率(以下,5生率)は46.7%,非切除286例は3.9%であった.肺転移因子(PUL)は,PUL1a:肺転移1個かつ無再発期間(DFI)2年以上,PUL1b:肺転移1個かつDFI2年未満または肺転移2個または肺転移3個以上の片側,PUL2:肺転移3個以上の両側またはリンパ節転移または播種症例,とした.肺切除後5生率はGradeA:66.9%,GradeB:44.0%,GradeC:8.6%(p<0.0001)であった.治療方針はGradeA:切除,GradeB:切除or化学療法,GradeC:化学療法or緩和医療(BSC)が推奨される.

キーワード
大腸がん肺転移 Grade分類 手術適応 予後
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第4章 治療
直腸がん局所再発の治療

金光 幸秀      国立がん研究センター中央病院 大腸外科 科長
志田 大       国立がん研究センター中央病院 大腸外科 医長
塚本 俊輔      国立がん研究センター中央病院 大腸外科
落合 大樹      国立がん研究センター中央病院 大腸外科
小森 康司      愛知県がんセンター中央病院 消化器外科 医長

要旨
 直腸がん局所再発に対して,唯一根治が期待できる治療は,外科的な完全切除(R0)手術であるが,骨盤全摘や仙骨合併切除などの過大な侵襲を伴う手術がしばしば必要となり,生活の質(QOL)の観点からも,術前にR0手術が期待できるような症例でなければ,手術を行うべきではない.集学的治療の恩恵も,R0手術を得てこそ期待されるが,そのためには治癒切除率を上げ,術後の遠隔転移を抑制するという,2つの目的をかなえる必要がある.術前画像を用いた局所再発巣のstagingは,術後のがん遺残や遠隔転移の高危険群の抽出に役立つ可能性があり,このような分類を利用した集学的治療によって,さらなる治癒切除率の向上が期待される.

キーワード
直腸がん 局所再発 R0手術 集学的治療

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第4章 治療
大腸がんの治療にかかる費用

石黒 めぐみ    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 応用腫瘍学講座 准教授

要旨
 がん治療に伴う費用負担は,患者さんのQOLや治療意欲にも影響する.治療方針の決定とともに,予想されるおおまかな費用を伝え,負担を軽減する制度や相談窓口を案内することで,治療をよりスムーズに進めることができるようになる.内視鏡治療,手術,化学療法,放射線治療など,主な治療にかかる費用は医療者も認識しておくべきであり,“がん相談支援センター”なども利用して,積極的な情報提供に努めることが望ましい.

キーワード
大腸がん 医療費(治療費) 高額療養費補助制度 自己負担限度額 化学療法

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コラム
ロボット支援下直腸がん手術
須並 英二   日本赤十字社医療センター 大腸肛門外科 部長

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第5章 ガイドライン
大腸ポリープ診療ガイドラインの概説
斉藤 裕輔   市立旭川病院消化器病センター 副院長,センター長

要旨
 『大腸ポリープ診療ガイドライン2014』で取り扱う病変は,腺腫,早期がんを含めたすべての大腸局在性病変である.推奨のグレードはガイドライン作成の国際基準であるGRADEシステムに準じて決定されている.①疫学,②スクリーニング,③病態・定義・分類,④診断,⑤治療・取扱い,⑥治療の実際,⑦偶発症と治療後のサーベイランス,⑧そのほか,の項目に対して,91個のクリニカルクエスチョン(CQ)が設けられている.本ガイドラインは,『大腸癌治療ガイドライン2014年版』や『大腸ESD/EMRガイドライン』と補完的な役割を果たしている.

キーワード
大腸ポリープ 早期大腸がん 大腸がんポリープ診療ガイドライン2014 大腸癌治療ガイドライン2014 
大腸ESD/EMRガイドライン

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第5章 ガイドライン
大腸ESD/EMRガイドラインの概説
樫田 博史   近畿大学医学部 消化器内科 教授

要旨
 『大腸ESD/EMRガイドライン』について概説する.早期大腸がんのうち,リンパ節転移の可能性が極めて低く,病巣が内視鏡的一括摘除できる大きさと部位であり,根治性が期待される病変は,原則的に内視鏡治療を行う.明らかなpT1b(SM)がん(SM浸潤距離1,000μm以深)は,原則的に外科手術を行う.早期大腸がんに対する内視鏡的摘除は一括切除が基本であるが,SM浸潤の可能性を確実に否定できる場合,分割切除も適切に施行されるのであれば容認される.

キーワード
内視鏡的粘膜切除術(EMR) 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 適応 hybrid ESD precutting EMR

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第5章 ガイドライン
大腸癌治療ガイドラインの概説
岡島 正純   地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 外科 副院長
小島 康知   地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 CEセンター 主任部長,外科 部長
徳本 憲昭   地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 外科 部長
井谷 史嗣   地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 手術室 主任部長,外科 部長

要旨
 2014年版大腸癌治療ガイドラインを,総論,各論それぞれの特徴と注意すべき点について概説した.総論では,ガイドラインを使用するにあたっての注意,またGrading of Recommendations Assessment,Development and Evaluation(GRADE)システムを用いたclinical question(CQ)レベルを,各論では,最近注目されている臨床研究の結果を加味して,内視鏡治療,腹腔鏡下手術,直腸がんに対する側方郭清に関するガイドラインの記述と,今後の展望について述べた.

キーワード
大腸癌治療ガイドライン 内視鏡治療 腹腔鏡手術 側方郭清

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