要旨

最新醫學 診断と治療のABC 114
慢性疼痛疾患

第1章 疾患概念と疫学
痛みの概念,定義

井上 雅之    愛知医科大学 運動療育センター
            愛知医科大学医学部 学際的痛みセンター
牛田 享宏    愛知医科大学 運動療育センター センター長
            愛知医科大学医学部 学際的痛みセンター 教授

要旨
 痛みは警告信号として,生命の危機管理に重要な役割を担うが,慢性疼痛においてはこの役割は消失し,有害な痛みとして患者を苦悩させている.17世紀にデカルトは心身二元論を唱え,痛みを感覚としてとらえたが,1979年,国際疼痛学会(IASP)は,痛みを感覚としてだけでなく,情動としてもとらえなければならないことを定義した.これにより,従来の生物医学モデルから生物心理社会モデルに基づくアプローチが重要視され,現在,欧米だけでなく本邦においても採用されている.

キーワード
慢性疼痛 情動 生物心理社会モデル

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第1章 疾患概念と疫学
運動器慢性疼痛の疫学

藤田 順之    慶応義塾大学医学部 整形外科学教室 助教
中村 雅也    慶応義塾大学医学部 整形外科学教室 教授

要旨
 運動器慢性疼痛に対する3年間の疫学調査を行った.慢性疼痛新規発生の危険因子は女性,デスクワーク,肥満,飲酒,喫煙,高学歴であった.慢性疼痛有症者の約20%に神経障害性疼痛の関与が疑われ,さらに神経障害性疼痛の関与が高いほど,Visual Analog Scale(VAS)が有意に高いこと,治療期間の変更回数が増加することも明らかとなった.心因性要因に関してはPain Catastrophizing Scale(PCS)とVASに有意な正の相関を認め,不安が強いほどVASが高く,抑うつが強いほど疼痛の持続期間が長いことが明らかになった.

キーワード
運動器 慢性疼痛 疫学

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第2章 病理・病態生理
痛みの生理・解剖(侵害受容性疼痛)

寺島 嘉紀    札幌医科大学医学部 整形外科学教室 助教
山下 敏彦    札幌医科大学医学部 整形外科学教室 教授

要旨
 侵害受容性疼痛は,生体組織を傷害するか,傷害する可能性のある侵害刺激により,侵害受容器が興奮して生じる痛みであり,生理的な痛みと炎症などの病態生理学的な痛みがある.皮膚や筋肉,腱,靱帯,骨,内臓などの組織に,外的・内的な侵害刺激が加わると,それらの組織に分布する侵害受容器は興奮し,侵害受容器からの侵害情報が,末梢神経や脊髄の求心性神経線維,視床を経て大脳皮質に伝達し,“痛み”として認識される.

キーワード
侵害受容性疼痛 ポリモーダル受容器

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第2章 病理・病態生理
神経障害性疼痛のしくみ:熱い脊髄後角2次ニューロン

丸山 一男      三重大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療学 教授
横地 歩       三重大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療学 講師

要旨
 神経障害性疼痛は,傷ついた神経の,痛み刺激によらない,普通でない痛みである.一方,普通の痛みは,正常な神経の,普通の痛み刺激(侵害刺激)による痛みである.神経障害性疼痛では,脊髄後角2次ニューロンが活動電位を発火しやすくなっている.1次ニューロンからの神経伝達物質の放出亢進,グリア細胞の活性化,脊髄後角の抑制性介在ニューロンや下行性抑制系の脱抑制などにより,2次ニューロンの細胞内膜電位の上昇・N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の開口・感受性亢進が発生している.

キーワード
神経障害 神経障害性疼痛 NMDA受容体 侵害刺激 脊髄後角

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第2章 病理・病態生理
痛みの心理:臨床における評価と対応の考え方

細井 昌子     九州大学病院 心療内科 講師

要旨
 痛みの心理を考えるときに,近年の脳科学的エビデンスを理解することは,患者―医療者の交流改善のためにも有用である.人間を対象とした研究で,侵害刺激を伴わない状態でも,社会的な疎外環境があると,身体的痛みと同様な苦悩が生起することが明らかとなり,社会的痛みとして理解されるようになってきた.臨床場面でも,この社会的痛みも治療対象であることを念頭にした評価と,認知行動療法などの心身医学的な対応が有用である.

キーワード
不快情動 社旗的痛み アレキシサイミア 罪悪感 治療的対話

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第3章 診断
慢性疼痛疾患の診断

井上 玲央     東京大学医学部附属病院 麻酔科・痛みセンター
住谷 昌彦     東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部/麻酔科・痛みセンター 准教授

要旨
 疼痛は,医療機関を受診する原因のうち,最も頻度の高い症状である.痛みの病態には,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛,中枢機能障害性疼痛,が考えられており,その診断は,治療方針(特に薬物療法)の決定のために重要である.神経障害性疼痛は重症度が高い病態で,その診断が重要である.ただし,痛みの病態の評価・診断だけでなく,痛みの認知・訴えを修飾する心理社会的要因の評価も,併せて重要である.

キーワード
侵害受容性疼痛 神経侵害性疼痛 心因性疼痛 中枢機能障害性疼痛

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第3章 診断
評価法

二階堂 琢也    福島県立医科大学医学部 整形外科学講座 講師
矢吹 省司     福島県立医科大学医学部 整形外科学講座 教授

要旨
 慢性痛を有する患者背景はさまざまであり,疼痛に対する治療目標も異なる.治療者には,患者の個性や価値観に応じた治療の選択が求められている.そのためには,慢性痛の病態を科学的に評価して,その結果を正確に治療にフィードバックする必要がある.すなわち,慢性痛の評価では,患者の視点を重視した主観的内容を含み,かつ客観的,多面的に測定・評価することが重要である.

キーワード
疼痛スケール アウトカム 臨床的に意義のある差異 多面的評価 健康関連QOL

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第4章 管理・治療
薬物療法,選択基準治療法 1.NSAIDs

松平 浩    東京大学医学部附属病院22世紀医療センター
          運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座 特任教授
          福島県立医科大学医学部 疼痛医学講座 特任教授
岡 敬之    東京大学医学部附属病院22世紀医療センター
          運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座 特任准教授

要旨
 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の主たる使用目的は,急性期の炎症性疼痛を早期に鎮痛させ,慢性化を予防することである.生理的な炎症性疼痛の潜在が明確でない慢性疼痛疾患に対し,安易にNSAIDsを継続使用する態度は,消化性潰瘍,腎機能障害,心血管イベントを代表する高齢者医療では,常に念頭に置かねばならない副作用のリスクを考慮し,慎むべきである.エビデンスのうえでも,慢性腰痛に対する効果は大きいとは言えず,神経障害性疼痛には推奨できない.

キーワード
NSAIDs COX-2阻害薬 消化性潰瘍 腎機能障害 心血管イベント

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第4章 管理・治療
薬物療法,選択基準治療法 2.アセトアミノフェン
今村 寿宏
    独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院 勤労者骨・関節疾患治療研究センター センター長
岩本 幸英    独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院 院長

要旨
 アセトアミノフェンは,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に比べ,薬剤性腎機能障害や消化管障害などのリスクは少ないため,若年者から高齢者まで使える鎮痛剤である.特に高齢者は,慢性腎臓病(CKD)などが潜在していることが多く,NSAIDsの長期内服は,さらなる腎機能低下を起す可能性がある.アセトアミノフェンには肝障害を引き起す可能性があり,治療用量域内でも定期的な血液生化学検査は必要である.またワルファリンとの相互作用も考慮する必要がある.

キーワード
肝障害 慢性腎臓病 薬物相互作用 ワルファリン

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第4章 管理・治療
薬物療法,選択基準治療法 3.オピオイド
山口 重樹
     獨協医科大学医学部 麻酔科学講座 教授
秦 要人      獨協医科大学医学部 麻酔科学講座
小澤 継史     獨協医科大学医学部 麻酔科学講座
武村 優      獨協医科大学医学部 麻酔科学講座
Donald R Taylor   Comprehensive Pain Care,P.C. Pain Management,Clinical Research and Office Based Opioid Addiction Treatment

要旨
 本邦での慢性疼痛に対するオピオイド治療は,始まったばかりである.しかし,諸外国からの報告を考慮すると,慢性疼痛に対するオピオイド治療では,痛みの軽減や機能の回復が予想以上に少なく,むしろ長期オピオイド処方による弊害に関するエビデンスが確固たるものとなっている.長引く痛みに悩む患者を救うためには,慢性疼痛に対するオピオイド治療について熟知し,治療中は細心の注意を払わなければならない.

キーワード
生活改善 弊害 高用量 長期 ガイドライン

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第4章 管理・治療
薬物療法,選択基準治療法 4.抗てんかん薬・抗うつ薬
高橋 良佳
    順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座

要旨
 痛みの治療は,その性質や病態を考慮した戦略を必要とする.慢性疼痛に移行しやすい神経障害性疼痛には,各学会から薬物治療ガイドラインが提示されており,これらガイドラインが基本戦略となる.『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン』と,そこで推奨されている抗うつ薬,抗てんかん薬(ガバペンチノイドを含む)の作用機序,投与量,薬物動態,副作用などを概説する.

キーワード
神経侵害性疼痛 侵害受容体性疼痛 抗うつ薬 抗てんかん薬

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第4章 管理・治療
理学療法
松原 貴子   日本福祉大学健康科学部 リハビリテーション学科 教授

要旨
慢性痛に対する理学療法(PT)は,身体的に加え心理社会的アプローチにより,患者が主体的かつ能動的に運動・行動することを促し,身体機能や日常生活活動(ADL)の改善,痛みの認知や情動の好転,自己効力感や対処能力の強化がなされ,生活の質(QOL)を向上する.結果的に,痛みが相対的に軽減,または痛みのとらえ方が変わり,気にならなくなることも多い.このように,患者自身が痛みをマネジメントできるよう導き支援することが,慢性痛PTの本質と言える.

キーワード
理学療法 運動療法 運動による疼痛抑制 私物心理社会的アプローチ 集学的リハビリテーション

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第4章 管理・治療
手術療法~脊椎脊髄疾患を中心に~
鈴木 秀典
    山口大学大学院医学系研究科 整形外科学   山口大学ペインセンター
原田 英宣    山口大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生・疼痛管理学   山口大学ペインセンター
田口 敏彦    山口大学大学院医学系研究科 整形外科学 教授   山口大学ペインセンター

要旨
 慢性疼痛に対する治療法には,さまざまなアプローチがある.本稿では手術療法についてのreviewを行い,その実際について概説する.また山口大学医学部附属病院で現在施行している,バクロフェンポンプの留置とバクロフェン持続クモ膜下腔内投与,脊髄電気刺激療法,ラッツカテーテルを用いた術後癒着性神経根症に対する治療,また慢性腰痛症治療のための多裂筋モニタリング下の腰椎後枝内側枝電気焼灼術の実際について述べる.

キーワード
慢性疼痛 手術療法 低侵襲手術 山口大学ペインセンター

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 1.全身的な痛み
桃原 茂樹
    博恵会 草薙整形外科 リウマチクリニック
慶應義塾大学医学部 整形外科学教室

要旨
 慢性疼痛疾患のうち全身的な痛みを訴える疾患には,線維筋痛症(FM)や関節リウマチ(RA)など多くの疾患が列挙される.これらは,それぞれ独立した疾患では必ずしもなく,また完全に病態や治療法が確立されたものばかりではない.それらの一部は症状が重複し,鑑別が困難であることも決してまれではない.今後,それぞれの疾患で世界的に統一された診断基準や分類基準が明らかにされ,さらに薬物などの進歩によって治療の効率が高まることが大いに期待されている.

キーワード
線維筋痛症 関節リウマチ 脊椎性関節炎 リウマチ性多発筋痛症 筋筋膜性疼痛症候群 

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 2.頭部の痛み
鈴木 紫布
    獨協医科大学 神経内科
鈴木 圭輔    獨協医科大学 神経内科 講師
平田 幸一    獨協医科大学 神経内科 教授

要旨
 頭痛は有病率が高く,特に片頭痛は日常生活への支障度も大きい疾患である.月半分以上に生じる連日性頭痛の原因としては,慢性片頭痛,薬剤の使用過多による頭痛(MOH)が多く,ほかにカフェイン摂取やストレスが誘因となる.本稿では,日常生活に支障のある反復性頭痛や慢性的に生じる頭痛疾患に焦点を当てて,その診断およびマネージメントについて解説する.

キーワード
片頭痛 緊張型頭痛 慢性片頭痛 薬剤の使用過多による頭痛

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 3.頸部の痛み
寒竹 司 
     山口大学大学院医学系研究科 整形外科学 准教授
田口 敏彦    山口大学大学院医学系研究科 整形外科学 教授

要旨
 頸部痛は腰痛に次いで多い主訴であるが,その病態解明は腰痛と比較して遅れている.診断ではいわゆるレッドフラッグの鑑別が重要となり,慢性痛では精神心理面での評価も必要となる.本邦の頸部痛の診療ガイドラインはないが,海外のガイドラインを参考にする場合は各国の医療事情が異なるため,特に治療については注意が必要である.慢性痛では神経障害性疼痛の要素を伴っていることが多く,それを念頭に置いた治療薬の選択を行う必要がある.

キーワード
頸部痛 肩こり 疫学 ガイドライン 診断 治療

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 4.肩の痛み
髙岸 憲二 
    サンピエール病院 整形外科
山本 敦史     群馬大学大学院医学系研究科 整形外科
一ノ 瀬剛     群馬大学大学院医学系研究科 整形外科
佐々木 毅志    群馬大学大学院医学系研究科 整形外科
濱野 哲敬     群馬大学大学院医学系研究科 整形外科

要旨
 肩は,身体において長期間疼痛を感じる部位として,頻度が高いことが分かってきた.本稿では肩こり,肩関節周囲炎(五十肩),腱板断裂など,外来でよく遭遇する肩周辺の疾患の診断と治療について述べる.肩こりと肩関節周囲炎は疼痛部位や肩関節可動域により鑑別される.肩こりは原疾患があることもあり,注意を要する.治療としてはいずれも保存的療法を最初に行う.治療が長引く場合には,整形外科医へコンサルトすることが必要である.

キーワード
肩関節周囲炎 肩こり 肩腱板断裂 保存的治療

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 5.口腔の痛み
今村 佳樹
    日本大学歯学部 口腔診断学講座 教授
岡田 明子    日本大学歯学部 口腔診断学講座 准教授
野間 昇     日本大学歯学部 口腔診断学講座 准教授

要旨
 三叉神経の支配領域である口腔には,三叉神経痛に代表される特徴的な痛みの病態がある.部位的特殊性も相まって,忌避しがちな領域となっていると思われるが,その痛みの病態の分類は,侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛,特発性口腔痛である.口腔顔面領域の特徴として,関連痛が生じやすいことを除いては痛みに対するアプローチは四肢,体幹と同じである.口腔領域の代表的な病態を例に挙げて分類,診断,治療について述べる.

キーワード
歯原性王痛 関連痛 有痛性三叉神経ニューロパチー 特発性口腔痛

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 6.顔面の痛み
平川 奈緒美
      佐賀大学医学部 麻酔・蘇生学 准教授

要旨
 顔面痛は,さまざまな原因で生じることがある.診断の際には痛みの部位,性状や持続時間などの問診は重要であり,必要に応じて画像診断や血液検査を行うことによって診断ができる疾患もある.脳神経症状を伴うものは,特に器質的疾患を見逃さないようにしないといけない.さらにほかの部位からの関連痛が顔面に及ぶこともあることにも留意すべきである.的確に診断することにより,原因に応じた痛みの治療を行うことが可能である.

キーワード
顔面の痛み 三叉神経痛 三叉神経・自律神経性頭痛 持続性特発性頭痛

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 7.腹部の痛み
安藤 友一
    名古屋大学医学部附属病院 総合診療科
伴 信太郎    名古屋大学医学部附属病院 総合診療科 教授
           名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 総合診療医学講座 教授

要旨
 慢性腹痛を来す疾患は多岐にわたる.消化器疾患だけでなく,泌尿器・産婦人科疾患やそのほかの原因も考慮する必要がある.また,器質的疾患なのか,あるいは機能的疾患かを鑑別する必要がある.その際には,頻度の高い疾患からまれな疾患まで,把握しておく必要がある.診断を絞り込むには,病歴が重要である.機能性腹痛に対しては,BPSモデルを利用した医療面接が効果的である.

キーワード
慢性頭痛 病歴 BPSモデル 機能的疾患 器質的疾患

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 8.腰部の痛み
大鳥 精司     千葉大学大学院医学研究院 整形外科学 准教授
折田 純久     千葉大学大学院医学研究院 整形外科学
稲毛 一秀     千葉大学大学院医学研究院 整形外科学
山内かづ代    千葉大学大学院医学研究院 整形外科学
鈴木 都      千葉大学大学院医学研究院 整形外科学

要旨
 腰痛を訴えた場合,まずは内科的疾患(呼吸器疾患,循環器疾患,内臓疾患)を十分に念頭に置く必要がある.そのような疾患を十分に鑑別した後に,整形外科疾患の検討を行う.①危険信号を有し,重篤な脊椎疾患(腫瘍,炎症,骨折)の合併が疑われる腰痛.②神経症状を伴う腰痛.③非特異的な腰痛(特に画像診断しても,異状のないもの)の3つがある.特に,高齢者における,日常診療で頻度の多い疾患の診断と鑑別,治療について述べる.

キーワード
腰痛 慢性 腰部脊椎管狭窄 間欠跛行

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 9.上肢の痛み(肩を除く)
岩月 克之
    名古屋大学大学院医学系研究科 運動・形態外科学 手の外科学 講師
平田 仁     名古屋大学大学院医学系研究科 運動・形態外科学 手の外科学 教授

要旨
 上肢に疼痛を来す疾患は多岐にわたり,診断に難渋することも多い.しかし,適切な診察と検査を組み合わせることにより,診断は可能である.そのためには,鑑別となる疾患についての知識が不可欠である.上肢に慢性疼痛を来す疾患として,変形性関節症・手根不安定症・骨折の変形治癒・偽関節・尺骨突き上げ症候群・三角線維軟骨複合体損傷・骨壊死・腱鞘炎・腱付着部炎・炎症性疾患・腫瘍・腫瘍類似疾患・神経障害性疼痛について解説を行う.

キーワード
上肢 慢性疼痛 変形性関節症 腱付着部炎 絞扼性神経障害

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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 10.下肢関節の痛み(足を除く)
岡上 裕介
    高知大学医学部 整形外科 助教
池内 昌彦    高知大学医学部 整形外科 教授

要旨
 下肢関節は荷重関節であるため,痛みが生じると歩行障害を起し日常生活動作(ADL)の制限や生活の質(QOL)の低下を来す.変形性関節症は,関節軟骨の磨耗と関節構成体の2次性変化を特徴とする疼痛性変性疾患であり,その病態から慢性化しやすいことが知られている.そのため,疼痛管理においては,慢性痛のメカニズムを考慮に入れた保存的治療が必要である.また,進行性の病変であるため,手術も考慮しながら治療にあたる必要がある.

キーワード
下肢関節 慢性痛 変形性股関節症 変形性膝関節症 関節リウマチ
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第4章 管理・治療
部位からみた慢性痛の診断と治療 11.足の痛み
伊東 勝也
    医真会八尾総合病院 整形外科 部長
田中 康仁    奈良県立医科大学 整形外科学教室 教授

要旨
 足部・足関節に慢性痛を引き起しうる原因疾患のうち,診断の難易度が高いもの,知名度が低く見落とされることが多いもの,近年注目されているものなどをピックアップして解説した.

キーワード
慢性痛 足 足関節 診断 治療

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第4章 管理・治療
慢性疼痛に対する各国の診療体制の実績と我が国の課題
福井 聖
    滋賀医科大学医学部附属病院 ペインクリニック科 学際的痛み治療センター 病院教授

要旨
 慢性疼痛は,我が国でも人口の22%が罹患し,身体的苦痛だけにとどまらず,精神的・社会的にも人を蝕み,我が国において,大きな経済的損失を生んでいる.そのような経済的損失を減らすためにも,器質面だけでなく,機能面,心理社会面,認知面から生物心理社会モデルで評価し治療する,学際的痛みセンターの普及など,国策として痛みの診療システムの確立を目指すことや,治療のレベルをより上げていくことが重要であると考えられる.

キーワード
学際的痛みセンター 生物心理社会モデル 慢性疼痛
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第4章 管理・治療
我が国における慢性疼痛に対する診療体制の実情と課題
柴田 政彦
    大阪大学大学院医学系研究科 疼痛医学寄附講座 教授

要旨
 「一億総活躍社会」,「介護離職ゼロ」,「健康寿命の延伸」など,我が国が直面している喫緊の課題が,慢性疼痛と強いかかわりがあるが,対策はまだ十分ではない.慢性疼痛に対する集学的診療体制の確立は,今後,医療界を始め,日本の社会全体が取り組むべき重要な課題である.2010年に,厚生労働省からこの問題に対する提言が出され,取組みが行われているが,さらに継続的に発展させるために,慢性疼痛の実態の解明,集学的診療体制の整備,治療の効果検証,人材の育成などが必要である.

キーワード
慢性疼痛 集学的治療 痛みセンター

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