要旨

最新醫學 診断と治療のABC 115
膵炎・膵がん

第1章 概念・定義と疫学
膵炎の概念・定義

下瀬川 徹    東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 教授

要旨
 急性膵炎,慢性膵炎,自己免疫性膵炎の疾患概念の歴史,定義について概説した.急性膵炎と慢性膵炎の歴史は古いが,世界的コンセンサスが形成されたのは1963年のマルセイユ分類以降であり,1980年代に欧州を中心に形成された疾患概念が今日の原型となっている.自己免疫性膵炎は,1995年に疾患概念が提唱されて以来,過去20年間にさまざまな知識が集積され,それに伴って本疾患の概念や定義も変化し,現在に至っている.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 自己免疫性膵炎 概念・定義 歴史

目次に戻る



第1章 概念・定義と疫学
膵がんの概念・定義

早﨑 碧泉    三重大学大学院医学系研究科 肝胆膵・移植外科
村田 泰洋    三重大学大学院医学系研究科 肝胆膵・移植外科
伊佐地 秀司  三重大学大学院医学系研究科 肝胆膵・移植外科 教授

要旨
 膵原発のがん腫の90%は膵管上皮から発生する浸潤性膵管がんであり,一般的に膵がんと言えば,浸潤性膵管がんを指す.膵がんは年間の罹患数と死亡数がほぼ同数であり,難治がんの代表である.浸潤性膵管がんの大部分は5mm未満の微小な膵管を発生母地とした前がん病変である膵上皮内腫瘍性病変から発生する.本邦の『膵癌取扱い規約第7版』(2016)は大幅に改訂された.改訂のポイントは,腫瘍占居部位(膵体部と尾部の境界は大動脈の左側縁とする),T分類(国際対がん連合(UICC)第7版との整合性を図る),膵外神経叢の解剖学的再検討,N分類(群分類から領域リンパ節内の転移個数による分類),Stage分類(治療方針に重点を置き,UICC第7版との整合性を図る)などであり,新たに加わった内容は,CT画像による切除可能性分類などである.

キーワード
膵がん組織学的分類 遺伝性症候群 遺伝子異常 水痘神経叢 Stage分類

目次に戻る



第1章 概念・定義と疫学
膵炎の疫学

正宗 淳     東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授
濱田 晋     東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野
菊田 和宏    東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 非常勤講師
菅野 敦     東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 講師
下瀬川 徹    東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 教授

要旨
 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班が行った,最新の膵炎全国調査の結果について概説する.2011年に受療した急性膵炎患者数は推計63,080人であり,そのうち重症急性膵炎は19.7%を占め,致命率は10.1%であった.慢性膵炎患者数は66,980人,早期慢性膵炎は5,410人,自己免疫性膵炎(AIP)は5,745人と推計された.疫学は,患者特性に関する重要な情報を与えるため,十分理解したうえで診療にあたることが重要である.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 自己免疫性膵炎 アルコール 胆石

目次に戻る



第1章 概念・定義と疫学
膵がんの疫学

高舘 達之      東北大学大学院 消化器外科学
水間 正道      東北大学大学院 消化器外科学
元井 冬彦      東北大学大学院 消化器外科学
海野 倫明      東北大学大学院 消化器外科学

要旨
 膵がんは早期診断が難しく,発見時に約80%はStageⅣの進行がんであり,5年生存率は数十年変わらず10%未満である.根治治療は外科的切除のみであるが,切除率は40%程度にとどまる.また切除後の再発率も高く,術後の5年生存率は10~20%と,最も治療成績の不良ながんである.本邦では,膵がんはがん死亡数の第4位と増加傾向にあり,治療成績向上は急務である.膵がんの発症リスクには,家族性膵がんを始めとした遺伝性因子,慢性膵炎や糖尿病,膵?胞などの非遺伝性の疾患因子,喫煙や飲酒,肥満などの生活習慣因子がある.早期診断のためには,これら膵がん発症のリスク因子の把握と,高リスク群の積極的なスクリーニングが重要である.

キーワード
膵がん 疫学 リスク因子

目次に戻る



第2章 病理・病態生理
膵炎・膵がんにおける膵の組織学的変化:病態と画像所見の理解のために

能登原 憲司     倉敷中央病院 病理診断科 主任部長

要旨
 膵の炎症性ならびに腫瘍性疾患における臓器障害の所見について解説した.急性膵炎や慢性膵炎は,小葉ならびに脂肪組織が炎症で障害され,再生不能な場合には線維化で置換される.1型自己免疫性膵炎は,臓器障害自体は軽微ながらも,小葉,膵管,膵辺縁に特異な炎症を来す.膵管がんでは,腫瘍の増殖自体によるもののほかに,複雑な要因が絡み合って組織障害が起る.それに対し,圧排性に発育する膵腫瘍では,臓器障害は軽度である.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 自己面経性膵炎 膵がん 病理

目次に戻る



第2章 病理・病態生理
膵炎の病態生理

内田 一茂     関西医科大学 内科学第三講座(消化器肝臓内科)講師
岡崎 和一     関西医科大学 内科学第三講座(消化器肝臓内科)教授

要旨
 膵炎は,大きく分けて急性膵炎,慢性膵炎,さらに,現時点では慢性膵炎とは区別されている自己免疫性膵炎に分類される.急性膵炎は,トリプシンの異所性活性化を中心に研究が進められたが,その後の研究により,トリプシンの異所性活性化とともに,さまざまな因子が関与している可能性が示唆されている.また慢性膵炎は,その昔necrosis-fibrosis sequenceという急性膵炎の繰り返しによって慢性膵炎に移行するという説がComfortらによって提唱されたが,マルセイユ分類では急性膵炎の慢性膵炎への移行はまれと考えられたが,現在では,3~15%の急性膵炎は,慢性膵炎に移行するとされている.本稿では,近年注目されている自己免疫性膵炎を含め,膵炎の病態生理について,現在まで解明されている項目について概説する.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 自己免疫性膵炎 トリプシン

目次に戻る



第2章 病理・病態生理
膵がんの病態生理 -前駆病変からの進展過程について-

高折 恭一    京都大学大学院医学研究科 外科学講座 肝胆膵・移植外科分野 准教授
穴澤 貴行    京都大学大学院医学研究科 外科学講座 肝胆膵・移植外科分野
伊藤 達雄    京都大学大学院医学研究科 外科学講座 肝胆膵・移植外科分野
増井 俊彦    京都大学大学院医学研究科 外科学講座 肝胆膵・移植外科分野
上本 伸二    京都大学大学院医学研究科 外科学講座 肝胆膵・移植外科分野 教授

要旨
 膵がんは,膵上皮内腫瘍性病変(PanIN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),粘液性?胞腫瘍(MCN)などの前駆病変から発生する.これらの前駆病変には,膵がんに伴う遺伝子異常が段階的に蓄積していることが認められている.PanINは,周囲の膵腺房組織に限局性線維化を起す場合があり,病態生理学的に興味深い.また,局所浸潤にはmesothelinとMUC16の発現が,遠隔転移にはSMAD4とRUNX3の発現強度が,重要な役割を果たしていると考えらえている.これらの知見を膵がん診療に活用することができれば,その意義は大きい.

キーワード
発がん過程 膵管内腫瘍性性病変 膵管内乳頭状粘液性腫瘍 粘液性嚢胞腫瘍 ムチン

目次に戻る



第2章 病理・病態生理
膵がん浸潤・転移における微小環境の病態

大内田 研宙   九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科
中村 雅史     九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科 教授

要旨
 近年,分子標的治療を含む多くの化学療法が開発され,さまざまながん腫でその予後が改善している.しかし,膵がんではこれまでに開発された新規薬剤の多くが臨床治験において,その有効性を示すことができていない.膵がんは豊富な間質成分を特徴とする微小環境とともに成り立っている.臨床において真に有効な治療を開発するためには,この微小環境を含めた膵がんの病態をもっと正確に再現し,理解する必要がある.

キーワード
膵がん 微小環境 転移 浸潤

目次に戻る



第3章 診断
膵炎の診断
神澤 輝実
      がん・感染症センター 東京都立駒込病院 消化器内科 副院長
来間 佐和子    がん・感染症センター 東京都立駒込病院 消化器内科
千葉 和朗      がん・感染症センター 東京都立駒込病院 消化器内科

要旨
 急性膵炎は,上腹部の急性腹痛発作と圧痛,膵酵素の上昇,および膵の画像所見より総合的に診断され,さらに成因診断と重症度判定を行う必要がある.『慢性膵炎臨床診断基準2009』では,画像診断と病理診断の確診所見と準確診所見により診断し,また早期慢性膵炎の概念が取り上げられた.自己免疫性膵炎は,膵画像所見(膵腫大,膵管狭細像),血中免疫グロブリン(Ig)G4値,病理組織所見,膵外病変,ステロイド反応性の組み合わせにより,総合的に診断される.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 遺伝性膵炎 家族性膵炎 自己免疫性膵炎

目次に戻る



第3章 診断
膵がんの診断
近藤 尚 
     愛知県がんセンター中央病院 消化器内科
肱岡 範      愛知県がんセンター中央病院 消化器内科 医長
水野 伸匡     愛知県がんセンター中央病院 消化器内科 医長
原 和生      愛知県がんセンター中央病院 消化器内科 部長
山雄 健次     成田記念病院 顧問

要旨
 膵がんは,悪性新生物の中でも最も予後不良な疾患であり,また最近では死亡者,罹患者共に増加傾向にある.膵がんの危険因子は,大きく遺伝的要因と非遺伝的要因に分けられる.これらの危険因子を保有している者を囲い込み,血液検査に加えコンピュータ断層撮影(CT),磁気共鳴画像法(MRI),超音波内視鏡(EUS)などの画像診断を組み合わせた経過観察を行い,膵がんを早期に診断することが,現時点における膵がんに対する最良の診断・治療戦略と考えられる.

キーワード
膵がん 早期診断 危険因子 EUS EUS-FNA

目次に戻る



コラム
膵がんの早期診断
南 智之 
     JA尾道総合病院 消化器内科 部長
花田 敬士    JA尾道総合病院 消化器内科 主任部長

目次に戻る



第3章 診断
膵炎・膵がんの検査所見
川 茂幸 
      信州大学 総合健康安全センター 教授
伊藤 哲也      信州大学医学部 消化器内科
浅野 順平      信州大学医学部 消化器内科
村木 崇       信州大学医学部 消化器内科
新倉 則和      相澤病院 消化器病センター センター長

要旨
急性膵炎診断には,膵酵素・アミラーゼ,リパーゼの血中・尿中測定が有用であるが,より迅速・簡便な検査法が開発されてきている.慢性膵炎診断には膵外分泌機能検査法が重要であるが,現状ではN-benzoyl-L-tyrosyl-p-aminobenzoic acid(BT-PABA)pancreatic functioning diagnostant(PFD)試験しか施行できず,便中エラスターゼ測定などの臨床応用が望まれる.膵がん診断には糖鎖性腫瘍マーカ測定が主流であるが,遺伝子検査などによる早期診断法の開発が望まれる.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 膵がん

目次に戻る



第3章 診断
膵炎・膵腫瘍の画像所見 1.CT,MRI
磯田 裕義
    京都大学医学部附属病院 先制医療・生活習慣病研究センター 特定教授

要旨
 膵炎・膵腫瘍の早期診断および正確な重症度・深達度診断におけるコンピュータ断層撮影(CT),磁気共鳴画像法(MRI)の役割は大きい.膵炎・膵腫瘍の早期診断および鑑別診断の手掛かりとなる画像所見を知っておくことは重要であり,幾つかを取り上げ,そのポイントが理解できるように概説した.また代表的な膵炎・膵腫瘍の典型例を確実に診断できるよう,典型的な画像所見についても概説した.

キーワード
膵炎 膵腫瘍 CT MRI

目次に戻る



第3章 診断
膵炎・膵腫瘍の画像所見 2.内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)
辻 修二郎
      東京医科大学 消化器内科
糸井 隆夫      東京医科大学 消化器内科 主任教授

要旨
 近年,本邦でも超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNA)による診断法が普及し,画像で腫瘤として認識できる膵病変はこの対象となるため,手技に伴う術後膵炎が起りうる,診断的内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)が行われることは少なくなっている.しかし,膵管造影像での微細な異常所見から,細胞診や生検で悪性所見が得られ,最終的に上皮内がんの診断に至る報告もあることから,適応を選んでERCPを行うことが肝要である.そのほか,現在ではEUSや磁気共鳴胆道膵管造影法(MRCP)などの侵襲の少ない画像検査も同様に発展してきており,リスクを考慮しつつ,補完的に画像検査を組み合わせることが,安全で優れた膵疾患診療につながると考えられる.

キーワード
内視鏡的逆行性胆道膵管造影 膵がん 膵炎 

目次に戻る



第3章 診断
膵炎・膵腫瘍の画像所見 3.超音波内視鏡(EUS)
牧  匠
       福島県立医科大学会津医療センター 消化器内科学講座
入澤 篤志     福島県立医科大学会津医療センター 消化器内科学講座 教授
澁川 悟朗     福島県立医科大学会津医療センター 消化器内科学講座 准教授
山部 茜子     福島県立医科大学会津医療センター 消化器内科学講座
藤澤真理子    福島県立医科大学会津医療センター 消化器内科学講座

要旨
 超音波内視鏡(EUS)は,低侵襲性に膵実質および膵管の詳細な観察ができることから,膵疾患診断における高い有用性が認識されている.特に,早期慢性膵炎や膵?胞性腫瘍における画像診断としての役割は大きい.また,膵腫瘤性病変に対して超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS-FNA)を施行する際も,その高い診断能を十分に発揮するためには,EUS画像診断の理解が不可欠である.

キーワード
超音波内視鏡 早期慢性膵炎 膵腫瘍 EUS-FNA 膵嚢胞性腫瘍

目次に戻る



コラム
重症急性膵炎におけるperfusion CT
武田和憲
    国立病院機構 仙台医療センター 外科 臨床研究長


目次に戻る



第3章 診断
膵炎・膵がんの鑑別診断
丸尾 達
      福岡大学筑紫病院 消化器内科 助教
植木 敏晴     福岡大学筑紫病院 消化器内科 教授
土居 雅宗     福岡大学筑紫病院 消化器内科 助手
畑山 勝子     福岡大学筑紫病院 消化器内科 助手
永山 林太郎   福岡大学筑紫病院 消化器内科 助手

要旨
 膵がんは悪性度が高く,その術式は侵襲性が高い.したがって,膵がんと臨床所見が類似する,慢性膵炎に起因する腫瘤を形成する腫瘤形成性膵炎の鑑別には,高い診断精度が要求される.また,膵腫瘤の原因を炎症性と判断しても,その一部にがんが潜んでいる可能性を考慮する必要がある.最近の画像検査の進歩にもかかわらず,腫瘤形成性膵炎と膵がんの鑑別が困難な症例に遭遇する.腫瘤形成性膵炎と診断しても,画像検査の経時的変化を注意深く検討する必要がある.そこで,本稿では腫瘤形成性膵炎と膵がんの,各種画像検査による特徴について述べる.

キーワード
膵炎 膵がん

目次に戻る



第4章 管理・治療
膵炎の管理・治療
佐田 尚宏
    自治医科大学 消化器・一般外科 主任教授

要旨
 急性・慢性膵炎は,2015年に本邦のガイドラインが改定され,特に急性膵炎では,2012年の改定アトランタ分類で用語,治療の考え方が大きく変化した.膵炎では内科的治療が優先され,非奏功例,合併症発症例などに,外科的治療の適応がある.両疾患ともアルコール多飲が成因として最も頻度が高く,断酒・禁煙を含めた生活指導,栄養療法が重要で,特に慢性膵炎では,早期からの治療介入で発症・進展を予防することが望まれる.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 被包化壊死 ネクロセクトミー 膵性糖尿病

目次に戻る



第4章 管理・治療
膵がんの管理・治療
清水 敦史
      和歌山県立医科大学 第2外科
岡田 健一      和歌山県立医科大学 第2外科 講師
山上 裕機      和歌山県立医科大学 第2外科 教授

要旨
 近く改訂される『膵癌取扱い規約第7版』では,がん遺残のない手術が見込めるかどうかを判断するResectability分類が取り入れられ,『膵癌診療ガイドライン2016』では,それに沿った治療アルゴリズムが推奨されている.膵がんの予後は依然不良であるが,その治療成績向上のためには,進行度に沿った治療計画と,治療が円滑に進行するための患者状態の維持・改善が重要である.

キーワード
膵がん 管理治療 Resectability分類 Borderline resecable膵がん

目次に戻る



第4章 管理・治療
嚢胞性膵腫瘍(IPMN/MCN/SCN)の管理・治療
小暮 正晴
    杏林大学医学部 外科学(消化器・一般外科)
鈴木 裕      杏林大学医学部 外科学(消化器・一般外科)講師
横山 政明    杏林大学医学部 外科学(消化器・一般外科)
松木 亮太    杏林大学医学部 外科学(消化器・一般外科)
杉山 政則    杏林大学医学部 外科学(消化器・一般外科)教授

要旨
 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN):2012年に発行された国際ガイドラインでは,主膵管径10mm以上の主膵管型は原則切除とし,分枝膵管型に対する治療アルゴリズムが示された.
粘液性?胞腫瘍(MCN):浸潤がんの頻度は低いが,腫瘍切除により予後良好であり,原則切除が推奨される.
漿液性?胞腫瘍(SCN):ほとんどが良性腫瘍であるため,腫瘍径が小さくSCNの確実な診断ができ,無症状であった場合は,経過観察が可能である.腫瘍径が大きく増大傾向を来す場合や,有症状例は悪性の可能性があり,切除を考慮する.

キーワード
膵管内乳頭粘膜性腫瘍 粘液性嚢胞腫瘍 漿液性嚢胞腫瘍 手術適応 管理

目次に戻る



第4章 管理・治療
膵炎の薬物療法
片岡 慶正    大津市民病院 院長
            京都府立医科大学 消化器内科学 特任教授
阪上 順一    京都府立医科大学 消化器内科学 講師

要旨
 急性膵炎,慢性膵炎ならびに自己免疫性膵炎に代表される膵炎の薬物治療は内科的保存治療の基本であるが,治療における薬物療法の位置付け,治療薬の適応,選択,有効性に関するエビデンスが集積され,診療ガイドラインが作成されてきた。薬物療法における症状および病態改善,進展抑制あるいは予後改善に対する代表的な薬物の使用法と有効性について,現時点でのエビデンスと推奨度,さらにはその評価についても解説した.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 自己免疫性膵炎 薬物療法 エビデンス

目次に戻る



第4章 管理・治療
膵がんの薬物療法
古瀬 純司
    杏林大学医学部 内科学 腫瘍内科 教授

要旨
 膵がんに対する薬物療法は,切除手術の補助療法および切除不能進行例に対する治療として行われる.膵がんでは術後補助療法が標準治療であり,S-1単独が第1選択となっている.切除不能例に対する薬物療法では,まずオキサリプラチン+イリノテカン塩酸塩+フルオロウラシル+レボホリナートカルシウム(FOLFIRINOX)療法とゲムシタビン(GEM)+ナブパクリタキセル併用療法の適応を考慮し,これらの適応が難しい場合は,GEM単独,GEM+エルロチニブ併用,あるいはS-1単独から適切な治療を選択する.

キーワード
膵がん 薬物療法 術後補助療法

目次に戻る



第4章 管理・治療
膵炎の外科治療
竹山 宜典
    近畿大学医学部外科 肝胆膵部門 主任教授

要旨
 急性膵炎では,発症後期の感染性被包化壊死(infected WON)に対して壊死部切除が適応となる.最近では外科的手術に先立って,経皮的ドレナージや内視鏡的ドレナージ,さらに内視鏡的壊死部切除などの低侵襲治療を行った後に,それでも感染が制御できない場合に外科的アプローチを行うstep-up approachが推奨されており,外科治療の頻度は低下傾向にある.慢性膵炎では,主として保存的治療に抵抗する疼痛に対して外科治療が適応となるが,内視鏡治療などの保存的治療に固執すると,外科治療の時期を逸することがある.慢性膵炎治療に際しては,常に外科治療の可能性を念頭に置くべきである.

キーワード
急性膵炎 慢性膵炎 壊死部切除術 膵管減圧術
目次に戻る



第4章 管理・治療
膵がんの外科治療
里井 壯平
    関西医科大学 外科学講座 准教授
柳本 泰明    関西医科大学 外科学講座 講師
山本 智久    関西医科大学 外科学講座 助教
山木 壮      関西医科大学 外科学講座 助教
權 雅憲      関西医科大学 外科学講座 教授

要旨
 難治がんの代表疾患である膵がんにおいても,病理学的根治切除が行われ,術後補助治療が完遂できた患者では,比較的高率に長期予後が期待されるようになってきた.外科的根治度に基づいた術前評価方法,術後補助療法完遂を目的としたバランスの良い外科的切除範囲の設定,根治切除率を増加せしめるための術前治療,ならびに切除不能(UR)膵がん患者に対するconversion surgeryが注目されている.

キーワード
手術適応 病理学的根治切除 術後補助療法 術前補助療法 conversion surgery

目次に戻る



第5章 ガイドライン
急性膵炎診療ガイドライン -アプリ,改訂のポイント-
真弓 俊彦
    産業医科大学医学部 救急医学講座 教授
新里 到      産業医科大学病院 救急科
眞田 彩華    産業医科大学病院 救急科
石川 成人    産業医科大学病院 救急科
大坪 広樹    産業医科大学病院 救急科 学内講師
古屋 智規    産業医科大学医学部 救急医学講座 講師

要旨
 『急性膵炎診療ガイドライン』は,2003年に本邦初の根拠に基づく医療(EBM)の手法に則って作成された.第4版はGRADE systemを用いて作成され,2015年に刊行された.膵局所合併症の定義や対処が変わり,重症膵炎での抗菌薬予防投与,早期経腸栄養が推奨され,abdominal compartment syndromeの項も新設された.モバイルアプリも作成され,その利用によるpancreatitis bundleの遵守が望まれる.

キーワード
急性膵炎 診療ガイドライン GRADE system pancreatitis bundles abdominal compartment syndrome

目次に戻る



第5章 ガイドライン
慢性膵炎診療ガイドライン
下瀬川 徹
    東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 教授

要旨
 2015年に日本消化器病学会編集の『慢性膵炎診療ガイドライン2015改訂第2版』が刊行された.この改訂ガイドラインは,早期慢性膵炎の診断基準を提唱した『慢性膵炎臨床診断基準2009』に準拠した診療ガイドラインである.また,2009年の初版以降の本邦における,慢性膵炎診療の進歩を網羅した内容となっている.推奨度の決定にはGrading of Recommendations Assessment,Development and Evaluation(GRADE)システムが採用され,本邦の慢性膵炎診療を,世界に紹介することも念頭に置いて作成された.

キーワード
慢性膵炎 診療ガイドライン 早期慢性膵炎 GRADEシステム

目次に戻る



第5章 ガイドライン
自己免疫性膵炎診療ガイドライン2013 -改訂ポイント-
岡崎 和一
    関西医科大学 内科学第三講座(消化器肝臓内科)教授

要旨
 2011年の自己免疫性膵炎に対する国際コンセンサス診断基準(ICDC)と『日本膵臓学会の自己免疫性膵炎臨床診断基準2011(JPS2011)』の提唱を受け,2013年に『自己免疫性膵炎診療ガイドライン2013』が公表された.1型自己免疫性膵炎と2型自己免疫性膵炎の概念と定義,ICDCとJPS2011に基づく診断法,診断法と治療法におけるIgG4関連疾患研究班との整合性,などの改訂ポイントについて概説した.

キーワード
自己免疫性膵炎 ガイドライン

目次に戻る



第5章 ガイドライン
膵石症の内視鏡治療ガイドライン
乾 和郎
      藤田保健衛生大学坂文種報德會病院 消化器内科 教授
三好 広尚    藤田保健衛生大学坂文種報德會病院 消化器内科 講師
山本 智支    藤田保健衛生大学坂文種報德會病院 消化器内科 講師

要旨
 主膵管内膵石が原因で,疼痛が持続する場合や,急性発作を繰り返す場合に治療する.まず体外式衝撃波結石破砕療法(ESWL)や内視鏡治療を行うが,始めから外科治療を行うべき症例があり,慎重に検討する.内視鏡治療には膵管口切開術,膵石除去術,膵管ステントなどがあり,内視鏡治療とESWLの併用で,結石消失率は約70%,症状改善率は90%以上である.アルコール性膵炎では,結石再発予防に禁酒が必須だが,主膵管狭窄例における再発予防が今後の課題である.

キーワード
慢性膵炎 体外式衝撃波結石破砕療法 内視鏡的膵管口切開術 内視鏡的膵石除去術 膵管減圧術

目次に戻る



第5章 ガイドライン
科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013
山口 幸二
    藤元総合病院 外科 総括部長
            藤元メディカルシステム付属医療専門学校 特任教授

要旨
 2006年3月に,初版の『科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン』が出版され,2009年9月に第2版が出版された.さらに,2013年10月には第3版が出版された. 第3版は第2版と同様,『Mindsガイドライン作成の手引き2007』に基づくガイドラインとなっている.『科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013』の,2009年からの変更点,特徴などを概説した.また,化学療法のインターネットでの改訂,再改訂についても触れた.

キーワード
膵がん 診療ガイドライン

目次に戻る



第5章 ガイドライン
IPMN/MCN国際診療ガイドライン
田中 雅夫
    下関市立市民病院 理事長,院長

要旨
 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)国際診療ガイドライン2012年版では,主膵管型IPMNとする主膵管径と分枝型IPMNとする?胞径の閾値を5mmまで下げ,拾い上げ診断率の向上を図った.閉塞性黄疸,造影される充実性成分の存在,主膵管径≧10mm,を高リスク指標(HRS)として,悪性としての切除の適応とし,7項目の悪性懸念所見(WF)があれば超音波内視鏡(EUS)を勧める.経過観察の間隔は?胞のサイズによる方針としたが,併存膵がんを警戒して頻回の追跡も容認し,切除後膵の経過観察の必要性も盛り込まれた.

キーワード
膵管内乳頭粘液性腫瘍 膵がん 粘液嚢胞性腫瘍 国際診療ガイドライン

目次に戻る



第5章 ガイドライン
膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン2015
伊藤 鉄英
     九州大学大学院医学研究院 病態制御内科 准教授
藤山 隆      九州大学大学院医学研究院 病態制御内科
植田 圭二郎   九州大学大学院医学研究院 病態制御内科
李 倫學      九州大学大学院医学研究院 病態制御内科
菅野 真未     九州大学大学院医学研究院 病態制御内科
今村 正之     関西電力病院 神経内分泌腫瘍センター センター長

要旨
 神経内分泌腫瘍(NET)は,内分泌細胞や神経細胞から発症する腫瘍の総称である.膵・消化管NETに対する診断治療においては,世界保健機関(WHO)分類2010によるGrading,および正確な組織診断が重要である.さらに,腫瘍の機能性の有無,進達度,転移の有無を正確に評価し,腫瘍の分化度および悪性度に合わせた治療が必要である.これらを踏まえて,本邦での診療ガイドラインの必要性が高まり,2010年より企画し,『膵・消化管NET診療ガイドライン2015』として発刊された.

キーワード
神経内分泌腫瘍 診療ガイドライン 膵神経内分泌腫瘍 消化管神経内分泌腫瘍

目次に戻る