要旨

最新醫學 診断と治療のABC 116
高血圧

第1章 概念・定義
高血圧と血圧変動Update:オーバービューと今後の展開

苅尾 七臣    自治医科大学 内科学講座循環器内科学部門 主任教授

要旨
 近年,大規模臨床試験とメタ解析において厳格な血圧管理の有用性と,大規模観察研究において早朝家庭血圧管理の重要性が,明確に示された.さらに,降圧治療中・ハイリスク患者では夜間血圧が重要視され,夜間血圧が測定可能な家庭血圧計や,睡眠時無呼吸発作時の著明な血圧サージを選択的に測定するトリガー血圧計,さらに一心拍ごとの連続血圧測定計の研究開発が進んでいる.従来の血圧管理から,近未来の循環器イベント管理へのパラダイムシフトは,情報通信技術(ICT)を活用し,血圧変動を指針とした,リアルタイム“anticipation medicine”である.

キーワード
家庭血圧 早朝高血圧 夜間高血圧 血圧変動 anticipation medicine

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第2章 疫学とメタ解析
高血圧の疫学と1次予防

藤吉 朗     滋賀医科大学 社会医学講座 公衆衛生学部門 准教授
伊藤 隆洋    滋賀医科大学 社会医学講座 公衆衛生学部門
三浦 克之  滋賀医科大学 社会医学講座 公衆衛生学部門 教授

要旨
 一般健常者では,血圧が低いほど循環器疾患リスクが低いことが認められているが,我が国では高血圧有病者がいまだ多く,血圧管理も十分ではない.高血圧関連死亡も多く,高齢化に伴う今後の有病率上昇が懸念されている.高血圧の1次予防においては,食塩制限,適正体重維持,運動など,生活習慣の改善に注意を払い,治療においては軽度の高血圧者であっても軽視しない,などのポピュレーション・アプローチ的視点が一層重要となるであろう.

キーワード
危険因子 1次予防 ポピュレーション・アプローチ

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第2章 疫学とメタ解析
降圧治療のメタ解析・SPRINT試験

石上 友章     公立大学法人横浜市立大学医学部 循環器・腎臓内科学 准教授
梅村 敏       横浜労災病院 院長  
            横浜市立大学 名誉教授

要旨
 高血圧は,さまざまな心血管疾患のリスクファクターであり,降圧治療の有効性は確立している.どのような患者に,どの薬剤を,どのように使用すれば,最適なアウトカムが得られるのか?科学的根拠に基づく医療(EBM)の時代が定着して,世界各地の高血圧専門家の手によって,診療ガイドラインが作られているが,すべてのクリニカル・クエスチョンに対して,明確な回答が用意されているわけではない.長年にわたって議論の的になっていた課題の1つが,降圧目標値(blood pressure goal)である.“the lower,the better”とする考えと,“Jカーブ現象”の存在を認めて降圧目標を制限する,2つの考えが対立している.2015年に発表されたSPRINT試験は,この課題に直接的な回答を与える画期的な臨床試験として,大いに注目されている.

キーワード
急厳格降圧治療 Jカーブ 降圧目標 AOBP the lower, the better

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第3章 高血圧と臓器障害の病態生理
高血圧の病因

中神 啓徳      大阪大学大学院医学系研究科 健康発達医学 寄附講座教授
森下 竜一      大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学 寄附講座教授

要旨
 血圧は,心臓から拍出される血液量(心拍出量)と末梢血管での血液の流れにくさ(末梢血管抵抗)によって規定される.高血圧の発症機序には心拍出量の増加,末梢血管抵抗の上昇,またはその両方が関与していることになる.高血圧前症から高血圧へと進行していく過程では,ナトリウム排泄障害による体液貯留,交感神経系の活性化,細動脈リモデリング,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系などが関与している.

キーワード
血管抵抗 ナトリウム排泄 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 交感神経系

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第3章 高血圧と臓器障害の病態生理
交感神経系の役割(血圧変動と体液調節)

廣岡 良隆     九州大学循環器病未来医療研究センター 先端循環制御学部門 教授

要旨
 高血圧の治療目的は,高血圧性臓器障害およびそれに基づく死亡を撲滅することである.そのためには,高血圧の成因を踏まえた病態生理を,常に考えていく必要がある.血圧の調節異常である高血圧における交感神経系の活性化が,重要な役割を果たしている.圧受容器反射機能を中心とした神経性調節機序は,血圧変動性へ大きく影響する.また,高血圧の成因としての腎臓の役割は大きいが,腎臓の各部位へ交感神経は密に分布しており,その機能へ影響し,体液量調節を変化させる.レニン・アンジオテンシン系活性化ともリンクしている.腎臓から脳へ至る上行性神経の役割も注目されている.さらに,高血圧の病態の連続性において,脳・心・腎という標的臓器障害や動脈硬化の進行程度によって,交感神経系活性化の機序を踏まえた重要性は異なってくることも,適切な治療を個別に考えて行くうえで課題になってくるものと思われる.

キーワード
血圧変動性 交感神経系 アンジオテンシンⅡ 脳 腎臓

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第3章 高血圧と臓器障害の病態生理
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の役割

檜垣 彰典     愛媛大学大学院医学系研究科 分子心血管生物・薬理学
茂木 正樹     愛媛大学大学院医学系研究科 分子心血管生物・薬理学 准教授
堀内 正嗣     愛媛大学大学院医学系研究科 分子心血管生物・薬理学 教授

要旨
 高血圧にかかわる重要な体液性因子に,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)がある.本来血圧や細胞外液量の調節をつかさどるホルモン系であるが,その作用の亢進により血圧が上昇する.RAASは循環血液中だけでなく,各臓器においても発現調節されており,高血圧性臓器障害を修飾する因子と考えられている.また,古典的RAAS以外にもさまざまな生理活性を持つ物質が同定されており,特に臓器保護的作用を示す,新たなRAASに注目が集まっている.

キーワード
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 本態性高血圧 高血圧性臓器障害 臓器保護的RAAS

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第3章 高血圧と臓器障害の病態生理
血圧変動増大とその臓器障害機序

甲斐 久史    久留米大学医療センター 循環器内科 教授

要旨
 血圧には,心拍間,短期間,日内,日間,受診日間や季節間など,さまざまな時間軸の変動があり,それぞれの増大と臓器障害・心血管イベントの間に,相関が見られる.血圧変動増大は,血管硬化による臓器障害・心血管イベントのサロゲートマーカーであると同時に,高血圧性臓器障害増悪の原因となる.その機序として,細動脈を中心とするアンジオテンシンⅡ・ミネラルコルチコイド受容体(MR)を介した慢性炎症が示唆されている.

キーワード
炎症 リモデリング アンジオテンシン アルドステロン ストレイン血管

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第3章 高血圧と臓器障害の病態生理
中心血行動態の臓器障害機序

橋本 潤一郎     宮城教育大学 保健管理センター 教授

要旨
 高血圧や加齢に伴う動脈硬化は,中心大動脈の血行動態異常を介して主要臓器の障害を引き起す.心臓では,中心脈圧の開大による後負荷の増加や冠血流の低下が,左室肥大や心筋虚血を惹起する.腎臓や脳では,大動脈の拍動圧が深部の微小血管に伝播し,アルブミン尿やラクナ梗塞が生じる.さらに,近位下行大動脈の拡張期逆流が増加するため,腎流入血流や糸球体濾過量(GFR)が減少し,大動脈プラークによる逆行性脳塞栓の危険性が高まる.

キーワード
中心血行動態 臓器障害 動脈硬化 血圧 血流

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コラム
高血圧に対するデバイス治療
岸 拓弥
      九州大学循環器病未来医療研究センター 未来心血管治療学共同研究部門 准教授

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第4章 診断
診断+検査
星出 聡
     自治医科大学内科学講座 循環器内科学部門 准教授

要旨
 高血圧の診断および治療は,診察室血圧だけでなく,家庭血圧や24時間自由行動下血圧測定(ABPM)といった,診察室外血圧での評価も併用して行う.診断のためには,白衣高血圧,仮面高血圧の分類が重要である.治療中の患者においては,早朝高血圧や夜間高血圧が個別療法の治療ターゲットとなる.

キーワード
白衣高血圧 仮面高血圧 家庭血圧 ABPM

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第4章 診断
鑑別診断(二次性高血圧)
佐藤 文俊
      東北大学大学院医学系研究科 難治性高血圧・内分泌代謝疾患地域連携寄附講座 特任教授
              東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科
森本 玲        東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科
小野 美澄       東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科
尾股 慧        東北大学大学院医学系研究科 難治性高血圧・内分泌代謝疾患地域連携寄附講座
              東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科
手塚 雄太      東北大学大学院医学系研究科 難治性高血圧・内分泌代謝疾患地域連携寄附講座
             東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科

要旨
高血圧が,我が国で最も罹患者が多い疾患であり,推定4,300万人と考えられている.特に慢性腎臓病が高齢化と共に国民病と呼ばれるほどの増加を示し,国民の肥満人口の増加とともに,睡眠時無呼吸症候群(SAS)も増加の一途をたどっている現状では,二次性高血圧症の存在も全体の20%,もしくはそれ以上を占めている現実を認識すべきであろう. 本稿では,二次性高血圧のうち,原発性アルドステロン症(PA),腎血管性高血圧(RVH),偽性アルドステロン症,クッシング症候群,傍神経節腫(褐色細胞腫),についての鑑別診断法を述べる.これらの鑑別診断のためには内分泌ホルモン検査と,CT,MRI,腎動脈ドプラーエコー検査などの画像診断が重要である.

キーワード
原発性アルドステロン症 腎血管性高血圧症 偽性アルドステロン症 クッシング症候群 褐色細胞腫

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第4章 診断
高血圧に合併する血管障害の診療
冨山 博史
      東京医科大学 循環器内科 教授

要旨
血管障害評価には,リスク評価目的で頸動脈超音波検査,脈波速度関連検査などが実施され,潜在性動脈疾患検出目的で足関節上腕血圧比(ABI,末梢動脈疾患検出),腹部超音波検査(腹部大動脈瘤)などが実施される.こうした検査は,血圧以外の予後影響因子の合併の有無を考慮して実施が決定される.中心血圧や内皮機能検査は,リスク評価への有用性は確立されていないが,治療効果評価の指標になる可能性がある.

キーワード
頸動脈超音波検査 脈波速度 足関節上腕血圧比 腹部超音波検査

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第4章 診断
心臓評価
窪薗 琢郎
      鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学 助教
大石 充        鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学 教授

要旨
 高血圧性心疾患は,圧負荷の増大により,左室は肥大・線維化し心筋リモデリングが生じ,比較的早期から拡張障害を呈する.早期の適切な介入により,心機能を改善させることができるため,心エコー図検査にて左室壁肥厚や左室心筋重量,左室拡張能を経時的に評価する必要がある.また,高血圧は冠動脈硬化症の危険因子であり,冠動脈CTによるスクリーニングが有用である.

キーワード
高血圧性心疾患 心肥大 拡張能障害

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第4章 診断
脳・脳血管の評価
藤本 茂 
      自治医科大学 内科学講座神経内科学部門 教授
             自治医科大学附属病院 脳卒中センター長

要旨
 血圧値と脳卒中の発症率には正の相関があり,血圧上昇に伴って脳卒中の発症や死亡リスクが高まることが示されている.高血圧は無症候性脳梗塞,微小出血(microbleeds),頸動脈狭窄,頭蓋内脳動脈狭窄,深部白質病変など,さまざまな病変に関与することが知られており,これらの病変の存在は,脳卒中や認知症の予測因子となる.高血圧患者においては,磁気共鳴(MR)検査や超音波検査などを用いて脳や脳血管のスクリーニング検査を行い,早期に脳卒中や認知症の予防のための治療を開始する必要がある.

キーワード
無症候性脳梗塞 微小出血 無症候性動脈狭窄 無症候性頭蓋内狭窄 大脳白質病変 

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第4章 診断
高血圧診療における腎臓評価
長洲 一 
     川崎医科大学 腎臓・高血圧内科 講師
柏原 直樹    川崎医科大学 腎臓・高血圧内科 教授

要旨
 高血圧診療において,腎臓評価は重要性を増している.まずは病歴から高血圧に先行する腎疾患の除外を行い,現状の腎機能把握をする必要がある.そこで有用な検査として,腎臓超音波による腎評価と血清クレアチニンから算出される推算糸球体濾過量(eGFR)がある.特に腹部超音波による腎血流評価(resistance index(RI)など)は近年,腎機能予後の予測因子としても注目されている.これらを駆使し,高血圧と腎疾患の相互関係を理解し,治療に臨む必要がある.

キーワード
二次性高血圧 腎硬化症 腹部超音波 Resistance Index

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コラム
LCZ696 ~新たな薬剤angiotensin receptor-neprilysin inhibitor(ARNi)~
向山 政志
    熊本大学大学院生命科学研究部 腎臓内科学分野 教授


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第5章 管理・治療
高血圧に対する管理・治療の基本方針
石光 俊彦
      獨協医科大学 循環器・腎臓内科 主任教授
大平 健弘      獨協医科大学 循環器・腎臓内科
矢野 秀樹      獨協医科大学 循環器・腎臓内科

要旨
 高血圧の診断基準である140/90mmHg以上を呈するすべての高血圧患者が,降圧治療の対象となる.患者の背景因子や合併する病態により心血管疾患のリスクを評価し,適正な生活習慣の指導を基本として,降圧薬治療の開始を判断する.一般的な降圧目標は140/90mmHg未満であるが,後期高齢者では150/90mmHg未満,糖尿病患者や蛋白尿を呈する慢性腎臓病(CKD)患者では130/80mmHg未満である.脳血管障害や冠動脈疾患を合併する場合の降圧目標は140/90mmHg未満である.

キーワード
降圧目標 高齢者 糖尿病 脳卒中 冠動脈疾患 慢性腎臓病

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第5章 管理・治療
高血圧に対する非薬物療法
土橋 卓也
    製鉄記念八幡病院 院長

要旨
 生活習慣修正を中心とした非薬物療法は,降圧薬治療の有無にかかわらず,すべての高血圧者に勧めるべきである.中でも,依然として食塩摂取量が多い我が国では,減塩が最も重要である.我が国の高血圧は,昔の“やせ型”から“メタボ型”に変化しており,エネルギー制限による体重減量,運動,飲酒制限など,複合的修正の指導が必要となる.さらに睡眠,室温管理など環境要因にも配慮することで,安定した血圧管理が可能となる.

キーワード
生活習慣 減塩 肥満 運動 行動変容

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第5章 管理・治療
薬物療法-降圧薬の選択基準,糖尿病・CKD合併例など-
田中 正巳
      慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 特任講師
宮下 和季      慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 特任講師
伊藤 裕       慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 教授

要旨
 高血圧治療による脳・心血管イベントの予防効果は,降圧薬の種類ではなく,降圧度に比例して得られる.降圧薬は積極的適応と慎重投与例を考慮して,また禁忌を避けて選択する.Ca拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),利尿薬,β遮断薬の5種が主要降圧薬であり,前4者が第1選択薬である.降圧薬は単剤を少量から開始することが,有害事象を防ぐ観点から重要である.糖尿病,慢性腎臓病(CKD)合併高血圧はリスクが高いため,薬物療法に特別な注意が必要である.

キーワード
高血圧 糖尿病 CKD JSH2014 主要降圧薬

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第5章 管理・治療
降圧薬の特徴と使い方 1.カルシウム拮抗薬
竹内 利治
      旭川医科大学内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野 講師
長谷部 直幸    旭川医科大学内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野 教授

要旨
 カルシウム(Ca)拮抗薬は,臓器血流保持効果に優れ,速やかで確実な降圧が期待できるため,心血管イベント発症に対する抑制効果が期待できる.強力な冠拡張作用,冠攣縮抑制作用に加え,動脈硬化の進展をも抑え,冠攣縮性狭心症,器質性狭心症のいずれにおいても,推奨される薬剤である.心筋梗塞後の2次予防における日本人のエビデンスも有し,脳血管疾患,慢性腎臓病(CKD)に対しても積極的適応とされ,十分な降圧のために使用すべき,第1選択薬と言える.

キーワード
高血圧治療ガイドライン2014 長時間作用型カルシウム拮抗薬 冠攣縮抑制作用 抗動脈硬化作用 抗酸化作用

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第5章 管理・治療
降圧薬の特徴と使い方 2.RA系抑制薬
石井 俊輔    北里大学医学部 循環器内科学
阿古 潤哉    北里大学医学部 循環器内科学 教授

要旨
 レニン・アンジオテンシン(RA)系は,臓器障害に深く関与し,循環血液中だけでなく組織レベルでの局所RA系が,病態発症・進展に関与する.そのため臓器保護の観点からも,RA系抑制薬が積極的適応となる背景疾患は多い.現在使用されているアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の登場以降,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),直接的レニン阻害薬など,新たなRA系抑制薬が誕生し,差別化を図るべく,さまざまな効果が唱えられ,検証された.本稿では,現在使用されるRA系抑制薬の特徴と使用法を概説する.

キーワード
RA系抑制薬 ACE阻害薬 ARB 直接的レニン阻害薬

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第5章 管理・治療
降圧薬の特徴と使い方 3.利尿薬-高血圧における使い方-
下澤 達雄
    東京大学医学部附属病院 検査部 講師

要旨
 利尿薬は,降圧薬としての歴史も長く,心血管イベント抑制効果も多くの臨床試験で証明されている.カリウム代謝,尿酸排泄などの副作用が心配されるが,投与量を少量とすることで,多くの場合は安全に使える.サイアザイド系利尿薬に加え,ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬は今後も開発が進み,臓器保護作用を有する有用な降圧薬として,広く使われることが期待される.

キーワード
Na+-CL-共輸送体 アルドステロン ミネラルコルチコイド受容体

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第5章 管理・治療
降圧薬の特徴と使い方 4.交感神経抑制薬・その他
有馬 秀二
    近近畿大学医学部 腎臓内科 主任教授

要旨
 β遮断薬は,主要降圧薬の1つと位置づけられており,積極的適応となる病態が少なくない.ただし,β遮断薬は個性(特性)の強い薬剤であり“クラスエフェクト”ではなく,優れたβ遮断薬の“ドラッグエフェクト”を生かした治療が求められる.一方,α遮断薬や中枢性交感神経抑制薬の使用頻度は高くないが,それぞれの薬剤の特徴と副作用を正しく理解して適切に使用すれば,高血圧治療の質を高めることが期待される薬剤群である.

キーワード
邊0遮断薬 ビソプロロール カルベジロール α遮断薬 中枢性交感神経抑制薬
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第5章 管理・治療
治療抵抗性高血圧,コントロール不良高血圧の治
中村 卓人
     琉球大学医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学講座
山里 正演     琉球大学医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学講座 助教
大屋 祐輔     琉球大学医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学講座 教授

要旨
 治療抵抗性高血圧は,利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を用いても,コントロール不良の高血圧である.本邦での臨床統計では,血圧コントロール良好な高血圧患者は30%程度と報告されており,血圧コントロール不良者は少なくない.コントロール不良を示す要因を考慮し,対策をとることが重要である.コントロール不良の要因として,①血圧の測定上の問題,②降圧薬治療が不十分,③生活習慣,④併用薬剤,⑤二次性高血圧,が挙げられる.対策として,①標準化された血圧測定法に準拠し,家庭血圧や24時間自由行動下血圧測定(ABPM)も併用する.②降圧薬は作用機序が異なる薬剤を組み合わせる.アドヒアランス不良に対して医療者,患者双方の高血圧治療に対する知識や経験の共有を行い,意欲を高める.日本人では食塩摂取量が多いため,利尿薬を適切に使う.アルドステロン拮抗薬を考慮する.③減塩,運動,節酒,減量といった生活習慣の改善を行う.④併用薬剤を確認し,血圧を上げる薬剤や相互作用により血圧を上げる薬剤は,可能なら減量する.⑤若年や急激な高血圧発症,原因が不明の治療抵抗性高血圧では,二次性高血圧を疑う.原発性アルドステロン症や閉塞性睡眠時無呼吸症候群は頻度が高いので,特に注意を要する.

キーワード
治療抵抗性高血圧 アルドステロン拮抗薬 生活習慣 二次性高血圧 アドヒアランス

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コラム
走り出したSGLT2阻害薬のこれから
田中 敦史
    佐賀大学医学部内科学 循環器内科
野出 孝一    佐賀大学医学部内科学 循環器内科 教授


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第6章 ガイドライン
本邦のガイドラインの特徴と各国比較・今後の展望
山本 浩一
    大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 講師
楽木 宏実    大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 教授

要旨
 本邦の『高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)』を欧米の高血圧ガイドラインと比較すると,特に合併症を有する高血圧患者や,高齢者における降圧目標値の設定に独自性がある.この要因として,大規模臨床試験の結果の解釈の違いや,欧米に比し脳卒中の罹患率が高いことなどが挙げられる.最近のSPRINT研究では,積極的な降圧療法の有用性を示す結果が得られ,今後のガイドラインに影響を及ぼすエビデンスとして重要である.

キーワード
JSH2014 大規模臨床試験 脳卒中 高齢者 SPRINT

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