要旨

最新醫學 診断と治療のABC 117
糖尿病

第1章 概念・定義
糖尿病の概念・定義

春日 雅人  国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長 総長

要旨
 糖尿病は紀元前から存在していた疾患であるが,医学の進歩に伴い,その概念は変遷してきた.現在では,糖尿病はインスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖を主徴とする代謝疾患群であると定義されている.すなわち,慢性の高血糖を引き起す成因は非常に不均一であり,糖尿病は1つの疾患ではなく,“代謝疾患群”と考えられている.今後,それぞれの成因が明らかにされ,糖尿病の疾患概念がより明確になることが期待される.

キーワード
環境要因 遺伝素因 エピジェネティックス

目次に戻る



第1章 概念・定義
糖尿病の疫学

山田 貴穂    新潟大学大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科学
曽根 博仁    新潟大学大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科学 教授

要旨
 糖尿病は世界的に増加しており,成人の11人に1人が有病者と推定される.我が国を含む西太平洋地域は,最大の糖尿病人口を抱え,かつ近年の有病者・有病率の急増が問題である.我が国で糖尿病が強く疑われる人は2010年以降緩やかな増加にとどまっており,糖尿病の可能性が否定できない人は減少傾向にある.日本人糖尿病患者は,一般人より10歳前後短命である.現在は血管障害よりもがんによる死亡が多く,糖尿病の治療と共にがん検診受診が推奨される.

キーワード
疫学 糖尿病 有病率 発症率 死因

目次に戻る



コラム
糖尿病治療薬とがん

能登 洋     聖路加国際病院 内分泌代謝科 部長
東京医科歯科大学 医学部 臨床教授

目次に戻る



第2章 成因・病態
1型糖尿病の成因と病態

花房 俊昭      堺市立総合医療センター 院長

要旨
 1型糖尿病は,HLA遺伝子,ウイルスなどが発症に関与し,自己免疫性1型糖尿病では,最終的にT細胞によって膵β細胞が破壊される.β細胞の破壊速度は,急性発症1型糖尿病では週~月の単位,緩徐進行1型糖尿病では年の単位,劇症1型糖尿病では日の単位で進行する.インスリン欠乏が著明になれば,ケトーシスないしケトアシドーシスを来す.特に劇症1型糖尿病は進行速度が速く,診断・治療の遅れは患者の生命にかかわる.

キーワード
膵島関連自己抗体 HLA遺伝子 ウイルス 緩徐進行1型糖尿病 劇症1型糖尿病

目次に戻る



第2章 成因・病態
2型糖尿病の成因と病態

近藤 学       山口大学大学院医学系研究科 病態制御内科学 助教
谷澤 幸生     山口大学大学院医学系研究科 病態制御内科学 教授

要旨
 糖尿病は「インスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群」と定義付けられており,その原因はインスリンの分泌不足とインスリン抵抗性にある.2型糖尿病において,インスリン分泌やインスリン抵抗性は,遺伝因子,環境因子,エピゲノムによって決定されており,両者のバランスで個々の病態が形成される.したがって,適切な治療戦略を立てるためには,成因と病態を把握することが重要である.

キーワード
遺伝因子 環境因子 エピゲノム インスリン分泌 インスリン抵抗性

目次に戻る



第2章 成因・病態
その他の特定の機序・疾患による糖尿病

室橋 祐子     横浜市立大学附属病院 内分泌・糖尿病内科
寺内 康夫     横浜市立大学附属病院 内分泌・糖尿病内科 教授

要旨
 二次性糖尿病は,明らかなほかの原因で起る糖尿病を指す.日本糖尿病学会成因分類では,その他特定の型の糖尿病の中の「他の疾患,条件に伴うもの」として分類される.代表的な疾患について概説する.

キーワード
二次性糖尿病 膵性糖尿病 内分泌疾患による糖尿病 肝性糖尿病

目次に戻る



コラム
J-DREAMS

大杉 満       国立国際医療研究センター研究所・糖尿病研究センター・糖尿病情報センター長
植木 浩二郎    国立国際医療研究センター研究所・糖尿病研究センター長


目次に戻る



第3章 診断
糖尿病の診断基準

黒瀬 健     関西電力病院 糖尿病・代謝・内分泌センター センター長
清野 裕     関西電力病院 総長

要旨
 糖尿病の診断には,インスリン作用の不足による慢性高血糖の確認が重要で,その発症には遺伝因子と環境因子が関与する.代謝異常によって,無症状から昏睡に至る幅広い病態を示す. 分類:成因分類と,インスリン作用不足の病態(病期)を併記する.成因は①1型,②2型,③その他の特定の機序,疾患によるもの,④妊娠糖尿病,がある.③は遺伝因子が関与するものと,他の病態に伴うものがある.

キーワード
診断基準 1型糖尿病 2型糖尿病 妊娠等尿病 二次性糖尿病

目次に戻る



第3章 診断
1型糖尿病の診断基(急性,SPIDDM,劇症を含む)
細川 吉弥
      大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
今川 彰久      大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 准教授

要旨
 本邦において1型糖尿病は,急性発症1型糖尿病,緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM),劇症1型糖尿病,それぞれの診断基準が策定されている.発症時のケトーシスの有無,高血糖症状の発現からケトーシスに至るまでの期間,発症時からのインスリン加療の必要性,膵島関連自己抗体の有無,などで各診断がなされる.

キーワード
急性発症1型糖尿病 緩徐進行1型糖尿病 劇症1型糖尿病

目次に戻る



第3章 診断
妊娠中の糖代謝異常の診断
楠 宜樹 
      兵庫医科大学 先進糖尿病治療学 特任講師
難波 光義     兵庫医科大学病院 病院長

要旨
 妊娠中に取り扱う糖代謝異常(hyperglycemic disorders in pregnancy)には,①妊娠糖尿病(GDM),②妊娠中の明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy),③糖尿病合併妊娠(pregestational diabetes mellitus)の3つがあり,75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT),HbA1c,および臨床所見に基づいて診断する.また,妊娠中に発症する1型糖尿病として劇症1型糖尿病があるが,母児の生命にかかわる救急疾患であり,早期発見・早期治療が重要である.

キーワード
妊娠糖尿病 妊娠中の明らかな糖尿病 糖尿病合併妊娠 劇症1型糖尿病

目次に戻る



第3章 診断
メタボリックシンドローム・肥満症の診断と糖代謝異常
庄嶋 伸浩
      東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科
山内 敏正      東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 准教授
門脇 孝        東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授

要旨
肥満は,インスリン抵抗性に伴い糖代謝を悪化させ,糖尿病のリスクを約3~7倍に上昇させる.さらに肥満は,高血圧,脂質異常の合併のリスクを高めることから,メタボリックシンドロームの原因となり,大血管合併症の発症および進展のリスクとなる.一方で,肥満症において3%の体重減少でも,耐糖能異常を含めてさまざまな健康障害の改善が包括的に得られることが明らかとなった.肥満の改善は,耐糖能異常・糖尿病の治療の基本と考えられる.

キーワード
メタボリックシンドローム 肥満症 診断基準 糖尿病 耐糖能異常

目次に戻る



コラム
膵島移植アップデート
霜田 雅之
      国立国際医療研究センター研究所 膵島移植プロジェクト プロジェクト長

目次に戻る



第4章 管理・治療
治療の目標と指針
荒木 栄一
       熊本大学大学院生命科学研究部 代謝内科学分野 教授

要旨
 糖尿病治療の目標は,健常者と変わらぬ生活の質(QOL)や寿命を確保することであり,そのために合併症の発症・進展を阻止する必要がある.血糖コントロールの指針として,多くの患者にはHbA1cの目標値を7%未満,適切な食事・運動療法だけ,あるいは薬物療法中でも,低血糖などの副作用がなく達成可能であれば,6%未満,低血糖などの理由で治療強化が難しい場合には,8%未満を目標とする.高齢者の目標では,患者の特徴・健康状態を,認知機能障害の有無や程度,日常生活動作(ADL)自立の程度により3つのカテゴリーに分類し,さらに同じカテゴリーの中で,重症低血糖を起す危険性のある薬剤使用の有無によって,その目標値を区別している.

キーワード
糖尿病 HbA1c 血糖コントロール目標 高齢者糖尿病 日本糖尿病学会

目次に戻る



第4章 管理・治療
食事療法の基本と最近の話題
宇都宮 一典
      東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授

要旨
 食事療法は2型糖尿病の治療の基本であり,その目的は,総エネルギー摂取量の適正化によって,代謝状態を改善することにある.一方,最近の日本人の食習慣の変貌と病態の多様性から,患者個々に対する個別化が求められている.従来のエネルギー摂取量の設定は,一律に目標体格指数(BMI)22を目指すものであって,実際的ではない.今後,現体重からどのくらい減量すればよいかについて,科学的検証が必要である.

キーワード
糖尿病 食事療法 スエネルギー摂取量 糖尿病診療ガイドライン2016 

目次に戻る



第4章 管理・治療
運動療法の基本と最新の話題
田村 好史
     順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター
            順天堂大学国際教養学部 グローバルヘルスサービス
加賀 英義    順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター
染谷 由希    順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター

要旨
 2型糖尿病における運動療法は,主にインスリン抵抗性改善による血糖コントロールの改善と同時に,さまざまな予後改善効果も期待される.運動は大きく,有酸素運動とレジスタンス運動に分けられ,リスクに問題がなければ両方行うことが推奨される.近年では,座位時間を減らすことも身体活動の指針に加えられつつあり,患者に合わせた指導を心掛けたい.

キーワード
身体活動 インスリン抵抗性 脂肪筋

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬物療法アップデート 1.インスリン分泌促進系
スルホニル尿素薬・速効型インスリン分泌促進薬
本田 彬 
    順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学
綿田 裕孝    順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学 教授

要旨
 スルホニル尿素(SU)薬と速効型インスリン分泌促進薬は,インスリン分泌惹起経路に作用し,インスリン分泌を促進する薬剤である.高齢者を始めとして低血糖には十分留意して使用しなければならないものの,インスリン依存まで達していないインスリン分泌が低下した症例では,病態に即した有効な薬剤であり,豊富なエビデンスと薬価面でメリットが享受できる.症例選択や薬剤機序の知識を正しく行使して,このメリットを最大限活用すべきである.

キーワード
スルホニル尿素薬 速効型インスリン分泌促進薬 低血糖 インスリン分泌機序 高齢者糖尿病治療目標

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬物療法アップデート 2.インスリン抵抗性改善系
ビグアナイド薬・チアゾリジン薬
渡邊 善之
      富山大学付属病院第一内科
戸邉 一之      富山大学付属病院第一内科 教授

要旨
 高脂肪食および運動不足のエネルギー過剰の環境による肥満症が増加し,インスリン抵抗性を主体とした2型糖尿病患者が増加傾向にあり,インスリン抵抗性改善薬の役割は大きくなっている.ビグアナイド薬は腎機能低下のない患者での第1選択薬として使われるが,乳酸アシドーシスなどの危険な副作用も報告されている.チアゾリジン薬は,内臓脂肪蓄積メタボ型で心血管イベントハイリスク糖尿病患者が対象であるが,投与時に膀胱がんの説明,心不全や骨折リスクの増加などがある.本稿では,この2剤の作用,使用方法,副作用,高齢者での注意点などについて解説する.

キーワード
ビグアナイド薬 チアゾリジン薬 メトホルミン ピオグリタゾン 乳酸アシドーシス

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬物療法アップデート3.糖吸収・排泄調節系
α-グルコシダーゼ阻害薬・SGLT2阻害薬
窪田 直人
    東京大学医学部附属病院 病態栄養治療部 部長
門脇 孝      東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授

要旨
 α-グルコシダーゼ阻害薬・Na+/グルコース共役輸送体2(SGLT2)阻害薬は,共に糖吸収・排泄調節系に分類され,腸管からの糖の吸収,腎近位尿細管からの糖の再吸収を抑制することで,血糖コントロールを改善する.どちらもそのユニークな作用機構から,インスリンも含めたほぼすべての薬剤との併用が可能となっており,また単剤では低血糖や体重増加を来しにくいという特徴を有する.

キーワード
α―グルコシダーゼ α―グルコシダーゼ阻害薬 食後高血糖 SGLT2 SGLT2阻害薬

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬物療法アップデート4.インクレチン関連薬
原田 範雄
       京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 助教
稲垣 暢也      京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 教授

要旨
 インクレチン関連薬には,グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬とジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬がある.5種類のGLP-1受容体作動薬と9種類のDPP-4阻害薬が,本邦で使用されている.インクレチン関連薬は,単独使用で低血糖を来さない,グルカゴン分泌抑制を介してインスリン感受性を高める,体重増加がない,ことを特徴とする.最近では,インクレチン関連薬の心血管に対する影響や急性膵炎,膵がんの発症について,大規模臨床試験の結果が報告されている.

キーワード
GLP-1 GIP インクレチン関連薬 GLP-1受容体作動薬 DPP-4阻害薬

目次に戻る



第4章 管理・治療
薬物療法アップデート5.インスリン療法
伊藤 裕進    近畿大学医学部 内分泌・代謝・糖尿病内科 医学部講師
池上 博司    近畿大学医学部 内分泌・代謝・糖尿病内科 主任教授

要旨
 インスリン療法は,糖尿病治療において重要な位置を占めている.最近,新しいインスリン製剤や,新しいインスリンポンプも使用可能となり,インスリン療法は著しく進歩している.症例ごとに適切な治療目標を設定し,適切な製剤とデバイスを選択することで,個々の症例に最適な治療(テーラーメイド治療)が可能になりつつある.

キーワード
1型糖尿病 2型糖尿病 インスリン療法 高齢者

目次に戻る



第4章 管理・治療
糖尿病細小血管合併症を伴う症例に対する血糖管理の注意点
北田 宗弘    金沢医科大学医学部 糖尿病・内分泌内科学 准教授
古家 大祐    金沢医科大学医学部 糖尿病・内分泌内科学 教授

要旨
 良好な血糖管理は,糖尿病細小血管合併症の発展・進展阻止のために,最も基本かつ重要である.しかし厳格な血糖管理は,特に高齢者,腎機能低下症例では低血糖の危険が高いため,緩やかな血糖管理目標の設定と腎機能に応じた薬剤選択を要する.また長期間血糖管理が不良で,すでに進行した網膜症・末梢神経障害を有する症例における急速な血糖改善は,網膜症の悪化あるいは治療後有痛性神経障害を生じる可能性があるため,注意が必要である.

キーワード
糖尿病細小血管合併症 低血糖 腎症 網膜症 末梢神経障害

目次に戻る



第4章 管理・治療
糖尿病大血管症を伴う血糖管理
関根 理 
    滋賀医科大学 糖尿病内分泌・腎臓内科
前川 聡     滋賀医科大学 糖尿病内分泌・腎臓内科 教授

要旨
 これまでの大規模臨床試験の結果から,糖尿病大血管症を伴う血糖管理として,より早期から治療を開始し,ほかの危険因子への介入も多面的に行い,そして低血糖に留意したより質の良い治療を行うことが求められてきた.特に高齢者糖尿病患者に対しては,患者中心の個別性を重視した治療が提唱されている.最近インクレチン関連薬やNa+/グルコース共役輸送体(SGLT)2阻害薬を用いた大規模臨床試験の結果が発表されており,心血管疾患への影響について議論されている.

キーワード
糖尿病大血管症 質の良い血糖管理 インクレチン関連薬 SGLT2阻害薬 高齢者糖尿病

目次に戻る



第4章 管理・治療
妊娠中の糖代謝異常の血糖管理
平松 祐司
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 産科・婦人科学教室 教授

要旨
 糖代謝異常妊婦の管理目標は,①妊娠中の母児の合併症予防,②妊娠糖尿病(GDM),妊娠時の明らかな糖尿病妊婦およびその児の将来の肥満,糖尿病,メタボリックシンドローム発症予防である.この目的達成のためには,妊娠前にはハイリスク女性に対するスクリーニングと計画妊娠,妊娠中の厳重な血糖管理,産後の厳重フォローアップが重要で,関係各科,メディカルスタッフでチームを作り,チーム診療をしていくことが大切である.

キーワード
妊娠糖尿病 妊娠中の明らかな糖尿病 糖尿病合併妊娠 診断 管理
目次に戻る



第4章 管理・治療
小児・思春期における糖尿病
内潟 安子
     東京女子医科大学 糖尿病センター センター長
             東京女子医科大学医学部 内科学(第三)教授・講座主任

要旨
 小児・思春期における糖尿病は,成人における糖尿病と異なる.自己管理能力が不足しているうえに,思春期特有の反抗期を持ち,小児科から内科への移行する時期にもあたり,1型糖尿病と2型糖尿病患児数がほぼ同数であるために,お互いの病態を誤って理解されやすく,この時期の高血糖状態は将来の合併症への危険因子と成りうる.そして成人より長い人生を,糖尿病とともに過ごしていくことになる.

キーワード
小児糖尿病 思春期糖尿病 第二反抗期 食欲 糖尿病性合併症

目次に戻る



第4章 管理・治療
高齢者糖尿病の血糖管理
鈴木 亮 
    東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 講師
要旨
 高齢者糖尿病とは,後期高齢者と機能低下がある一部の前期高齢者の糖尿病を指す.2016年5月「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が発表された.患者の特徴や健康状態を3段階に区分し,重症低血糖が危惧される薬剤を使用しているか否かで目標値を分け,使用している場合のみ目標値に下限を設けた点が,大きな特徴である.食事・運動・薬物療法における留意点を述べる.

キーワード
高齢者糖尿病 低血糖 認知機能 手段的ADL 基本的ADL

目次に戻る



第4章 管理・治療
急性代謝失調・シックデイの対応
入江 慎太郎
    川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学
下田 将司      川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 講師
金藤 秀明      川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授

要旨
 急性代謝失調は,すべての糖尿病患者で起る可能性があり,初期治療を誤ると生命にかかわる.糖尿病ケトアシドーシス(DKA),高血糖高浸透圧症候群(HHS)は,共に高度なインスリン作用不足と脱水が病態の根幹であり,低血糖はインスリン製剤・インスリン分泌促進薬投与中の患者で,糖質摂取量が減少した際に起りやすい.これらの発症や重症化を予防するには,患者へのシックデイ対応の事前指導が極めて重要である.

キーワード
糖尿病ケトアシドーシス 高血糖高浸透圧症候群 低血糖 シックデイ

目次に戻る



第4章 管理・治療
自己管理教育と療養支援
石井 均 
    奈良県立医科大学 糖尿病学講座 教授

要旨
 糖尿病は,持続する高血糖による慢性合併症の発症と,寿命の短縮,生活の質(QOL)の低下が問題である.それらは適切な自己管理によって予防することができる.したがって,患者にとっては自己管理,医療者にとっては教育法や療養支援の仕方が課題である.教育や療養支援には,提供側の構造,チームの構成,内容,継続性などを考慮する必要がある.また,教育や支援がどの程度有効かというエビデンスを知っておく必要がある.さらに,エビデンスを実際の診療場面に適用していく原則を説明した.

キーワード
自己管理行動 心理社会的要因 自己管理教育と支援

目次に戻る



コラム
CGMCSIIアップデート
西村 理明
    東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 准教授
            米国ピッツバーグ大学公衆衛生大学院 adjunct assistant professor


目次に戻る



第5章 ガイドライン
糖尿病診療ガイドライン2016
羽田 勝計
    旭川医科大学 名誉教授・客員教授
           AMC西梅田クリニック 理事

要旨
 『糖尿病診療ガイドライン2016』の主な策定概要を示す.1.これまでのガイドラインの基本コンセプトに従うこと,2.Clinical Question(CQ)方式を採用し,推奨グレードを変更したこと,3.統括委員会,システマティックレビュー(SR)サポートチームなど,新たな委員会を設立したこと,4.書名から「科学的根拠に基づく」を削除したこと,などである.また,新たに策定された高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を掲載した.

キーワード
EBM Clinical Question 推奨グレード 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標

目次に戻る