要旨

最新醫學 診断と治療のABC 119
睡眠時無呼吸症候群

第1章 定義・病態
定義と疫学

中野 博  国立病院機構福岡病院 睡眠センター長

要旨
 睡眠時無呼吸の大多数を占める閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,睡眠中の反復性の上気道虚脱により,無呼吸,低呼吸などの呼吸イベントが生じ,睡眠分断,間欠性低酸素などを介して,眠気などの自覚症状,さまざまな合併症を呈する疾患である.疫学調査では高い罹患率が報告されているが,その値は数~数十%と変動が大きい.この変動は呼吸イベントの検出条件の違いによるところが大きく,疫学データを読む際に注意が必要である.

キーワード
睡眠時無呼吸症候群 閉塞性睡眠時無呼吸 定義 疫学 国際睡眠障害分類

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第1章 定義・病態
自覚症状とESSなどの問診を中心に

粥川 裕平    かゆかわクリニック
北島 剛司    藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学 准教授

要旨
 睡眠中の激しいいびき,睡眠中に観察される無呼吸,激しい体動,起床時の口渇,頭痛,日中の眠気,集中困難,抑うつ,倦怠感,などの症状を呈する閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の診断は,無呼吸に伴う頻回の覚醒反応や動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下を評価し,続発症も含めて重症度を判定することが,最適の治療方針につながる.眠気の評価に汎用されるエプワース眠気尺度(ESS)については,8点以下でも,不眠型の睡眠時無呼吸症候群(SAS)では熟睡感の欠如が特徴的なので,留意すべきである.

キーワード
睡眠時無呼吸 仮眠 不眠 大いびき 非回復性の睡眠

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第1章 定義・病態
睡眠呼吸障害の分類(American Academy of Sleep Medicine)

山城 義広      嬉野が丘サマリヤ人病院 院長

要旨
 睡眠呼吸障害の最新の分類は,米国睡眠学会(AASM)から2014年に,睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)が出版されている.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)やチェーン・ストークス呼吸(CSB),原発性中枢性睡眠時無呼吸症候群(primary CSA)などの診断基準の変更が行われ,複合性睡眠時無呼吸症候群(complex SAS)と呼ばれていた病態を治療起因性中枢性睡眠時無呼吸(treatment-emergent CSA)として,また肥満低換気症候群(OHS)が独立して,分類掲載された.

キーワード
睡眠障害国際分類第3版 閉塞性睡眠時無呼吸 チェーン・ストークス呼吸 治療起因性中枢性睡眠時無呼吸 肥満低換気症候群

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第1章 定義・病態
咽頭気道の構造的安定性:解剖学的メカニズム

磯野 史朗      千葉大学大学院医学研究院 麻酔科学 教授

要旨
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,睡眠中に咽頭気道が周期的に閉塞と再開通を繰り返す.咽頭の開通性は,解剖学的メカニズムと神経性調節メカニズムの相互作用で決定されるが,後者が抑制される睡眠時の咽頭閉塞性は,前者に大きく依存する.肥満や小顎は,咽頭周囲の解剖学的バランスを悪化させ,咽頭閉塞性を増し,OSA発症に大きく関与する.肥満患者では肺容量低下も病態に大きくかかわる.これらは,咽頭を1本のcollapsible tubeと考えると理解しやすい.

キーワード
閉塞圧 ube law 肥満 小顎 肺容量

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第1章 定義・病態
病態(生理的側面から)

寺田 二郎     千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学 講師

要旨
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,睡眠中に繰り返す上気道の狭窄・閉塞により生じる疾患である.主な発症メカニズムとして,上気道の解剖学的要因と神経調節による代償不全が知られているが,近年は,体位,肺容量変化,呼吸中枢の不安定性,性ホルモン,加齢,神経可塑性など,さまざまな生理学的要素の関与も明らかにされている.本疾患に対する今後の個別医療(一人ひとりの患者に合わせた,有用で快適な治療)の発展には,その理解は不可欠である.

キーワード
睡眠 上気道 低呼吸 呼吸中枢 神経調節

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第1章 定義・病態
中枢性睡眠時無呼吸症候群の病態

中山 秀章     東京医科大学 呼吸器内科学分野 准教授

要旨
 中枢性睡眠時無呼吸症候群は,睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では,8つに分類されている.病態的には,呼吸中枢の異常だけではなく,ネガティブ・フィードバック調節系における生理的反応として現れる現象でもあり,無呼吸閾値(AT)やループゲイン(LG)の呼吸調節,覚醒しやすさ,上気道虚脱性との相互関係と,また体液移動の影響で説明される.

キーワード
無呼吸閾値 ループゲイン 覚醒閾値 上気道虚脱性 体液移動

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第1章 定義・病態
睡眠時無呼吸と肺胞低換気症候群

陳 和夫      京都大学大学院医学研究科 呼吸管理睡眠制御学講座 特定教授

要旨
 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の正常値は35~45mmHgであり,45mmHg以上のときに肺胞低換気と言う.低換気の原因としては,肺機能障害,呼吸調節異常,呼吸筋力の低下・疲労,などが関与していると考えられ,これらに睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸,睡眠関連低換気障害など)も関与している.肺胞低換気を示す疾患群の中で,特に呼吸調節系の異常が主要病因である病態があれば,指定難病「肺胞低換気症候群(AHS)」を考慮する必要がある.

キーワード
肺胞低換気 呼吸調節 睡眠時無呼吸 睡眠関連低換気障害 REM睡眠

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第1章 定義・病態
睡眠時無呼吸と睡眠薬

三島 和夫    国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所・精神生理研究部 部長

要旨
 睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では,不眠症状が高率に見られる.睡眠薬の中ではメラトニン受容体作動薬の安全性が優れている.ベンゾジアゼピン系睡眠薬は慎重に用いる必要がある.軽~中等症のOSAS患者では,睡眠薬の安全性はある程度担保されているが,重症OSAS患者では経鼻持続陽圧呼吸装置(CPAP)で呼吸管理をしたうえで,慎重に用いることが望ましい.睡眠薬を適切に用いることで,不眠の改善のみならず,効果的なCPAP圧のタイトレーション,コンプライアンスの向上などの効果が期待できる.

キーワード
睡眠時無呼吸症候群 睡眠薬 持続陽圧呼吸法 メラトニン受容体作動薬 オレキシン受容体拮抗薬

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第1章 定義・病態
不眠と睡眠時無呼吸
柳原 万里子
      医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木
              東京医科大学 呼吸器内科
井上 雄一       医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木 理事長
              東京医科大学 睡眠学講座 教授

要旨
 睡眠呼吸障害(SDB)と慢性不眠障害は,共に高血圧,心血管疾患,糖尿病,肥満の増悪因子である.いずれも中年期以降に有病率が増加するため,両者の重複するケースは多いと考えられる.睡眠時無呼吸の病態が不眠の形成因子に成りうること,不眠障害を合併している場合には,並行した不眠治療を行う必要があることに留意が必要である.本稿では,不眠障害と睡眠時無呼吸の関係,SDB治療に必要な,不眠の鑑別と対応法について概説する.

キーワード
睡眠時無呼吸 不眠障害 二次性不眠 概日リズム睡眠障害 周期性四肢運動障害

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第2章 診断
問診と診察手順
赤星 俊樹
      医療法人社団 慶真記念会 新宿 睡眠・呼吸器内科クリニック 院長
伊藤 辰弥     医療法人社団 慶真記念会 新宿 睡眠・呼吸器内科クリニック
松尾 幸代     医療法人社団 慶真記念会 新宿 睡眠・呼吸器内科クリニック
遠藤 大介     医療法人社団 慶真記念会 新宿 睡眠・呼吸器内科クリニック
永岡 賢一     医療法人社団 慶真記念会 新宿 睡眠・呼吸器内科クリニック

要旨
 成人の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,単一疾病としての範疇を超えて,複合する併存症(高血圧,気分障害,認知機能の低下,冠動脈疾患,脳卒中,うっ血性心不全や2型糖尿病)との関連を有する病態である.こうした観点からも,診察時の患者評価(問診と診察手順)の重要性が再認識される.また,睡眠衛生や生活習慣の改善を促すべき問題点がないか,問診や診察手順の中で注意が向けられるべきであろう.

キーワード
問診 Mallampati score エプワース眠気尺度 ベルリン質問票 STOP=BANG質問票

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第2章 診断
閉塞性睡眠時無呼吸におけるスクリーニング検査
西島 嗣生
       岩手医科大学医学部 睡眠医療学科 准教授
櫻井 滋         岩手医科大学医学部 睡眠医療学科 教授

要旨
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)のスクリーニング検査には主観法と客観法があり,前者は睡眠中の呼吸障害に伴う睡眠分断で生じる日中の眠気について,患者本人に質問する方法である.後者は携帯型検査機器(PM)を用いて,就寝中の呼吸指標を記録する.前者はOSA以外の眠気もとらえる可能性があり,後者はOSA以外の睡眠関連疾患を見逃す可能性がある.また,いずれの方法も正確な除外診断は困難であり,陽性者検出のために用いられるべきである.

キーワード
Obstructive sleep apnea スクリーニング検査 Portable monitor out-of-Center Sleep Test Respiratory event index

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第2章 診断
ポリソムノグラフィ
八木 朝子
     太田睡眠科学センター 技師長

要旨
ポリソムノグラフィ(PSG)では,脳波,眼電図,筋電図,心電図,気流,呼吸努力,酸素飽和度など,多種類の電気生理活動を記録する.適応疾患は,睡眠関連呼吸障害(SDB),ナルコレプシー,睡眠時随伴症,周期性四肢運動障害,睡眠関連てんかんなどである.SDBでは,閉塞性睡眠時無呼吸(OSA),中枢性睡眠時無呼吸(CSA),チェーン・ストークス呼吸および睡眠時低換気の鑑別診断を行う.

キーワード
監視PSG AASM判定マニュアル マニュアルタイトレーション 無呼吸 低呼吸

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第2章 診断
画像診断
北村 拓朗
       産業医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 准教授
鈴木 雅明       帝京大学ちば総合医療センター 耳鼻咽喉科 教授
田畑 貴久       産業医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
鈴木 秀明       産業医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 教授

要旨
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の病態把握や治療方針決定のためには,補助的に画像診断を用い,上気道形態の評価を行う必要がある.セファロメトリーは,頭頸部の顎顔面の硬組織ならびに軟組織双方を,頭部矢状面上に投影し評価することが可能で,OSAの補助診断の一手法としても,その有用性が認識されている検査法である.頸部CTやMRIはセファロメトリーと比較して,OSAにおける軟部組織構造の評価に優れ,三次元解析なども応用可能で,気道閉塞部位や責任病変を,より詳細に評価することができる.

キーワード
閉塞性睡眠時無呼吸 睡眠時無呼吸症候群 閉塞部位診断 セファロメトリー 頸部側面X線写真

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第2章 診断
重症度分類
細川 敬輔
     岩手医科大学医学部 睡眠医療学科
櫻井 滋     岩手医科大学医学部 睡眠医療学科 教授

要旨
 睡眠時無呼吸症候群(SAS)を診断・治療するにあたり,診断基準および重症度分類が必要である.合併症の発症率や死亡率の予測などの医学研究を行う際には,国際的分類である米国睡眠医学会(AASM)の重症度分類が用いられる.一方,特定の問題を有する小児においては,診断基準が異なる.さらに,我が国の健康保険制度のもとで治療介入を実施する際には,社会保険の算定基準に準拠することとなる.これらを踏まえ,必要な基準を理解し,利用する必要がある.

キーワード
睡眠時無呼吸症候群 重症度 診断基準 治療開始基準 予後

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第4章 管理・治療
産業医学からみた睡眠時無呼吸症候群
三好 規子
      愛媛大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学講座
谷川 武     順天堂大学大学院医学研究科 公衆衛生学講座 教授

要旨
 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が,高血圧,糖尿病,脳卒中,虚血性心疾患ならびに交通事故などの労働災害のリスクであることが明らかにされてきたことから,産業医学においてSASは,健康と安全の両面から重視されてきた.しかし,SAS罹患者において,眠気などの自覚症状が乏しい場合も多く,職域全体での取組みは,いまだ不十分である.今後,産業医が,安全向上・健康増進の両面から,SAS対策に率先して取組むことが望まれる.

キーワード
眠気のない睡眠事務っ球 睡眠呼吸障害 交通事故 スクリーニング

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第2章 診断
非肥満の閉塞性睡眠時無呼吸
佐藤 誠 
     筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 環境生理学 教授

要旨
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,解剖学的要因である上気道の広さ(大きさ)と,生理学的要因である睡眠状態(眠りの深さ)の変化に伴う神経調節の,バランスが破綻したときに発生する.そして解剖学的要因としての上気道の広さは,①顔面頭蓋を構成する上顎骨および下顎骨から成る硬組織の大きさと,②硬組織に収納されている舌や軟口蓋などの軟組織のバランスによって決定される.肥満がOSA発症の最重要因子であることは周知の事実であるが,小顎,長顔など硬組織が小さいと,非肥満でもOSAを発症する.

キーワード
いびき 閉塞性睡眠時無呼吸 非肥満 小顎 長顎

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第2章 診断
小児の睡眠時無呼吸
神山 潤 
      公益社団法人 地域医療振興協会 東京ベイ・浦安市川医療センター 管理者

要旨
 Sleep disordersの国際分類の最新版では,閉塞性睡眠時無呼吸症の中に小児の閉塞性睡眠時無呼吸の項があり,中枢性睡眠時無呼吸症候群の中に乳幼児期の原発性中枢性睡眠時無呼吸と,未熟性に基づく原発性中枢性睡眠時無呼吸がある.さらに睡眠関連低換気疾患群の中の肥満低換気症候群,先天性中枢性肺胞低換気症候群,視床下部異常を伴う遅発性中枢性低換気にも“小児の睡眠時無呼吸”の範疇に入る患者さんがいる.

キーワード
小児の閉塞性睡眠時無呼吸症 乳幼児期の原発性中枢性睡眠時無呼吸 
未熟性に基づく原発性中枢性睡眠時無呼吸 肥満低換気症候群 視床下部異常に伴う遅発性中枢性低換気


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コラム
睡眠時無呼吸症候群の病因 -中枢性無呼吸と閉塞性無呼吸-
藤田 幸男    奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学
           奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科
山内 基雄    奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学 准教授
           奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科 准教授
木村 弘      奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学 教授
           奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科 教授

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第3章 治療
睡眠時無呼吸の治療目標
富田 康弘     国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 循環器センター内科・睡眠呼吸器科
成井 浩司     国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 睡眠呼吸器科 部長

要旨
 睡眠時無呼吸の治療目標は,無呼吸に伴う症状を改善することであるが,その症状は多様かつ主観的であり,画一的な目標を設定することは難しい.「よりよい睡眠を得る」ためという大きな目標を見据えて,睡眠衛生指導を含めた総合的な治療介入を行うと,自然と生活習慣全体の改善を目指すことになる.生活習慣病の合併が多い睡眠時無呼吸症患者にとっては,生活習慣病の予防が,最終的な治療目標ということにも成りうるだろう.

キーワード
一次予防 二次予防 生活習慣病 睡眠衛生

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コラム
CPAP機器の進歩
徳永 豊 
     医療法人 徳永呼吸睡眠クリニック内科・呼吸器内科 院長

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第3章 治療
CPAP使用におけるアドヒアランス
名嘉村 博
    名嘉村クリニック 院長
南 漁望      名嘉村クリニック
稲福 花予     名嘉村クリニック
柏本 美智緒    名嘉村クリニック
山川いずみ    名嘉村クリニック

要旨
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)治療における持続陽圧気道療法(CPAP)の効果は,アドヒアランスで決定される.アドヒアランス決定因子は多岐であり,医療専門職の連携による,個別的で的確なトラブルシューティングが必要である.開始から初回受診までの使用状況は以後のアドヒアランスを反映するので,開始前教育と初期の対応が重要となる.固定CPAPに代わる新しい機器の優位性について,今のところ結論が出ていない.アドヒアランスモニターを含む遠隔医療(テレメディシン)が導入されつつある.

キーワード
閉塞性睡眠時無呼吸 持続陽圧気道療法 アドヒアランス 自動気道陽圧

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第3章 治療
口腔装置とCPAP補完療法
河野 正己
     本歯科大学新潟病院 睡眠歯科センター センター長

要旨
持続陽圧呼吸治療(CPAP療法)に不安や不満をもつ患者がいる.また情報化社会となって多様性を好む患者が増えており,口腔装置治療(OA治療)を強く望む患者もいる.確かにOA治療は不満の対象になりにくいが,効果に限界があるので,CPAPの代替となることはまれである.そこでCPAPの補完療法として,交代併用療法や同時併用療法が考えられた.補完療法では医師と歯科医師が互いに指導監督義務を負うため,医師はOA治療を熟知しなければならない.

キーワード
口腔装置 歯科医師との連携 時速陽圧呼吸治療の補完療法 交代併用 同時併用

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第4章 管理・治療
手術療法,アデノイド扁桃摘出術
新谷 朋子
     とも耳鼻科クリニック 院長
            札幌医科大学 耳鼻咽喉科
坪松ちえ子     札幌医科大学 耳鼻咽喉科

要旨
 小児の睡眠時無呼吸症候群(SAS)は,アデノイド,扁桃肥大が主因である.4~6歳ごろが肥大のピークで,手術の効果は60~80%と高いが,ロイコトリエン拮抗薬やステロイド点鼻での保存治療が有効な症例もあるため,数ヵ月の保存治療を先行する.小児のSASの治療が不十分だと,開口や小下顎などの顎顔面形態異常が,成人のSASの一因となる可能性があり,適切な対応が必要となる.成人SASは扁桃肥大が主因となることは少なく,肥満や小下顎,鼻疾患などの解剖学的要因のほかに,上気道の維持や呼吸の不安定性,加齢など,機能的要因も関連するため,重症SASの治療は経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)である.しかし,CPAPの有効使用率は70%程度と高くはないため,上気道狭窄の評価の後,手術療法は根本治療として,またはCPAP治療が有効に使えない症例のサポートとして行われる.

キーワード
アデノイド 扁桃肥大 アデノイド切除術 扁桃摘出術

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第3章 治療
併存内分泌疾患に対する治療の重要性(甲状腺機能低下症・先端巨大症)
山内 基雄
    奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学 准教授
           奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科 准教授
木村 弘      奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学 教授
           奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科 教授

要旨
 睡眠時無呼吸症候群に起因する続発症はさまざま存在するが,逆手に見て,併存疾患に起因する睡眠時無呼吸症候群もまた,存在する.内分泌疾患,とりわけ甲状腺機能低下症と先端巨大症は,睡眠時無呼吸症候群の原因となる代表的な疾患であり,主に咽頭喉頭周囲軟部組織や舌の肥大が,閉塞性無呼吸を引き起すと考えられている.これら内分泌疾患に対する治療が,睡眠時無呼吸症候群を改善させる可能性があるため,両者の関連を知っておくことは重要である.

キーワード
睡眠時無呼吸症候群 内分泌疾患 先端巨大症 甲状腺機能低下症

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第3章 治療
心不全に合併する中枢性無呼吸の治療
義久 精臣
    福島県立医科大学医学部 循環器内科学講座
           福島県立医科大学医学部 心臓病先進治療学講座 特任教授
横川 哲郎     福島県立医科大学医学部 循環器内科学講座
            福島県立医科大学医学部 心臓病先進治療学講座
鈴木 聡      福島県立医科大学医学部 循環器内科学講座
竹石 恭知     福島県立医科大学医学部 循環器内科学講座 教授

要旨
 心不全に合併する閉塞性無呼吸に対しては,持続気道陽圧(CPAP)を中心とした加療が一般に推奨される.一方,中枢性無呼吸(CSA)を標的とした治療が心不全予後を改善するかどうかは明らかでない.適応補助換気(ASV)はCSAを合併した心不全患者を中心に開発された機器であるが,SERVE-HF研究の結果を受けて,その長期安全性については再度検証が必要である.また,横隔膜神経刺激など新たな介入も検討されている.心不全に合併するCSA治療における現状と,今後の展望について概説する.

キーワード
心不全 陽圧呼吸療法 持続気道陽圧 適応補助換気 SERVE-HF研究

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第3章 治療
高齢者の睡眠時無呼吸
寺本 信嗣
    和光駅前クリニック 内科

要旨
 超高齢社会を迎えて,高齢者の睡眠時無呼吸も増加している.無呼吸指教(AI)5(/時間)以上を診断基準とすると,65歳以上では20%以上に睡眠時無呼吸症候群(SAS)が認められる.しかし,その多くが無症状であり,生存者効果により,SASの予後に対する影響は限定的である.そこで,治療は持続陽圧呼吸(CPAP)が有効であるが,義歯,下顎の不安定性などで不適合患者も存在する.側臥位寝などの代替療法についても,十分考慮する必要がある.

キーワード
高齢者 睡眠時無呼吸 加齢 経鼻持続陽圧呼吸法 遵守率

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コラム
睡眠時無呼吸に対する新たな治療法 -電気刺激法の現状と展望-
飛田 渉 
    KKR 東北公済病院 健康医学センター 所長

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
メタボリックシンドローム
立川 良 
     京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学
陳 和夫      京都大学大学院医学研究科 呼吸管理睡眠制御学講座 特定教授

要旨
 メタボリックシンドローム(MetS)と閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,相互に合併率が高く,男性の中等症以上のOSA患者の約半数はMetSに該当する.MetS(内臓肥満)とOSAは,共に全身性炎症や交感神経活動亢進を介して,高血圧やインスリン抵抗性を惹起し,心血管疾患のリスクを相加的に上昇させる.MetS患者においては,腹部肥満の改善に加えてOSAの適切な診断と治療が,心血管疾患予防の観点から不可欠である.

キーワード
心血管疾患 内臓脂肪 閉塞性睡眠時無呼吸 メタボリックシンドローム

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
高血圧
石橋 和世
     自治医科大学医学部 内科学講座 循環器内科部門
苅尾 七臣     自治医科大学医学部 内科学講座 循環器内科部門 教授

要旨
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,『高血圧治療ガイドライン』において,治療抵抗性高血圧や二次性高血圧の原因として挙げられている.OSAを有する高血圧患者は,早朝や夜間の血圧上昇を呈することが多く,それらは臓器障害の進行や心血管イベントの重要なリスクとなる.高血圧症例にOSAを見つけ,持続気道陽圧(CPAP)などの治療を行っても,十分な降圧や臓器障害の進行,心血管イベントの抑制が得られない場合もあり,OSAの背景にある肥満などにも,十分な介入を行う必要がある.

キーワード
睡眠時無呼吸 交感神経亢進 治療抵抗性高血圧 二次性高血圧 血圧スリープサージ

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
虚血性心疾患と不整脈
比企 優 
      順天堂大学医学部 循環器内科
葛西 隆敏     順天堂大学医学部 循環器内科 准教授
            順天堂大学大学院医学研究科 心血管睡眠呼吸医学講座 准教授

要旨
 睡眠時無呼吸(SA)は,日中の眠気などの自覚症状に関連した交通事故などの社会問題を引き起すだけではなく,さまざまな循環器疾患と密接に関連することが知られている.疫学研究や病態生理に関する研究から,SAは単なる循環器疾患の並存疾患ではなく,その発症・進展に直接的に関与すると考えられている.このような背景もあり,我が国では循環器領域におけるSAの診断・治療が,他国に比べ積極的に行われているが,まだまだ普及・啓発が必要である.本稿では循環器疾患,特に虚血性心疾患や不整脈と,SAの関連について解説する.

キーワード
閉塞性睡眠時無呼吸 中枢性睡眠時胃無呼吸 急性冠症候群 心房細動 心室性不整脈

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
心不全
百村 伸一
    自治医科大学附属さいたま医療センター 循環器科 教授

要旨
 心不全は睡眠時無呼吸を高率に合併する.心不全の発症・進展における閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の役割は異なるが,いずれの睡眠時無呼吸を合併すると,心不全の予後は悪化する.心不全に合併する睡眠時無呼吸を治療することにより心不全の予後が改善するのではないかと考えられ,治療の試みがなされてきた.心不全に合併するOSAに対しては持続気道陽圧(CPAP)治療が第1選択となるが,CSAに関しては,順応性自動制御換気(ASV)の大規模臨床試験の結果がネガティブに終わったこともあり,一定の見解がない.

キーワード
心不全 閉塞性睡眠時無呼吸 チェーン・ストークス呼吸 持続気道陽圧 ASV

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
脳血管障害
篠邉龍二郎
    愛知医科大学病院 睡眠科・睡眠医療センター 准教授
塩見 利明     愛知医科大学病院 睡眠科・睡眠医療センター 教授

要旨
 脳血管障害のリスクは,高血圧,糖尿病,脂質異常症,心房細動などである.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は,肥満を基礎に発症,増悪してくるが,高血圧,糖尿病や心房細動の発症憎悪に関連している.脳血管障害を発症させないために,OSASの治療が必要である.

キーワード
閉塞性睡眠時無呼吸症候群 高血圧 心房細動 虚血性心疾患 心不全

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
糖尿病
太田 浩世
     奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学
            奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科
木村 弘      奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学 教授
            奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科 教授

要旨
 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は,肥満や糖尿病を合併することが多い.近年,SASが独立した糖尿病の発症や悪化の危険因子であることが報告された.その原因として,繰り返す無呼吸による間欠的低酸素(IH)や睡眠の分断化による交感神経の活動亢進,炎症性機序の活性化などが考えられており,疫学,実験レベルでの研究が進みつつある.本稿では,SASと糖尿病のかかわりについて概説する.

キーワード
睡眠時無呼吸症候群 糖尿病 間欠的低酸素 膵β細胞 インスリン抵抗性

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
呼吸器疾患
川田 奈緒子
    千葉大学 呼吸器内科

要旨
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息は,罹患率の高い疾患である.COPDを合併する睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者では,気流制限の重症度が高くなるにつれ,睡眠時の低酸素血症が顕著に悪化する.喘息を合併する場合,SASが喘息の症状,特に夜間症状を悪化させる因子となる.SAS患者の診療の際に,これらの疾患が併存する可能性に留意し,両者それぞれを適切に診断治療することにより,互いの症状を改善させることが可能である.

キーワード
慢性閉塞性肺疾患 喘息

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
血栓症
児山 紀子
    市立奈良病院 呼吸器内科 部長
木村 弘      奈良県立医科大学大学院医学研究科 呼吸器病態制御医学 教授
           奈良県立医科大学附属病院 呼吸器・アレルギー・血液内科 教授

要旨
 大規模疫学研究などにより,睡眠時無呼吸症候群は心血管疾患や深部静脈血栓症といった血栓性疾患の危険因子であることが明らかとなってきた.睡眠時無呼吸症候群に合併する血栓症の病態についてはさまざまな研究成果が報告され,血栓性疾患進展への機序が明らかとなりつつある.本稿では,閉塞性睡眠時無呼吸症候群と血栓症の関連について,主に血栓形成機序の面から検証するとともに,解説を試みる.

キーワード
睡眠時無呼吸症候群 血栓症 全身炎症 動脈硬化

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
神経疾患と睡眠関連呼吸障害
松山 菜穂
    国立病院機構西新潟中央病院 呼吸器内科
大平 徹郎    国立病院機構西新潟中央病院 呼吸器内科 副院長
大嶋 康義    新潟大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器・感染症内科学分野
下畑 享良    新潟大学脳研究所 神経内科 准教授

要旨
 神経疾患に合併する睡眠関連呼吸障害群(SRBDs)は,一般的な閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とは異なる対応を要する場合がある.多系統萎縮症では,各種睡眠検査に加えて麻酔下喉頭内視鏡検査による病態評価が望ましい.治療介入後の突然死にも注意を要する.パーキンソン病(PD)では多様な睡眠障害が高頻度に見られるが,肥満や日中眠気などの典型的所見に欠ける例も多い.てんかんとOSAは高率に合併し,OSA治療がてんかんのコントロールを良好にしうる.

キーワード
睡眠関連呼吸障害 神経疾患 多系統委縮症 パーキンソン病 てんかん

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第4章 睡眠時無呼吸症候群と各種疾患
胃食道逆流症
上村 理沙
    大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学教室
須川 貴史     大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学教室
藤原 靖弘     大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学教室 教授

要旨
 本邦では,胃食道逆流症(GERD)患者は増加傾向であり,睡眠障害を併発している患者が半数以上と頻度は高い.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とGERDは共通のリスク因子を有するため合併が多いが,病態の関連については未確定である.持続気道陽圧呼吸(CPAP)は逆流を減少させることから,GERDを合併しているOSASに対しては有効であり,またプロトンポンプ阻害薬(PPI)投与も,考慮されるべき治療法の1つである.

キーワード
胃食道逆流症 睡眠時無呼吸症候群 睡眠障害 プロトンポンプ阻害薬 持続気道陽圧呼吸

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コラム
生活習慣病における睡眠呼吸障害
横江 琢也
    昭和大学医学部内科学講座 呼吸器アレルギー内科 講師
相良 博典     昭和大学医学部内科学講座 呼吸器アレルギー内科 教授

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