要旨

最新醫學 診断と治療のABC 122
変形性関節症

第1章 概念・定義と疫学
変形性関節症の分類

村木 重之   むらき整形外科クリニック 院長

要旨
 変形性関節症(OA)は,日常生活動作(ADL)障害,生活の質(QOL)低下を来す重大な疾患である.OAは,あらゆる関節に起り,特に膝,腰椎,手における有病率は非常に高いが,すべての人が症状を有するわけではない.OAは一次性と二次性に分類され,さらに部位によって細分化されるが,全身性のOAも存在する.痛みやこわばり,可動域制限などが主な症状である.診断はX線像が主であるが,MRIを用いた研究も進んでいる.

キーワード
一次性 二次性 X線 外傷 関節液

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第1章 概念・定義と疫学
変形性関節症の診断基準

須藤 啓広    三重大学大学院医学系研究科 整形外科学 教授

要旨
 現在,世界的にコンセンサスの得られている変形性関節症の診断基準はない.Kellgren‐Lawrence classificationは,客観性に乏しいもののその簡便さから,現在でも広く用いられている.そのほか,さまざまな部位の変形性関節症に共通して使用できる診断基準,部位特有の変形性関節症診断基準,あるいは早期変形性関節症診断基準など,多くの診断基準が報告されている.疫学研究,観察研究など,使用目的に応じて使い分けられているのが現状である.

キーワード
変形性関節症 診断基準 Kellgren-Lawrence classification 米国リウマチ学会 早期変形性膝関節症

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第1章 概念・定義と疫学

吉村 典子      東京大学医学部附属病院22世紀医療センターロコモ予防学講座 特任教授

要旨
 地域住民コホートの追跡結果から,変形性膝関節症(KOA)の有病率は54.6%,変形性腰椎症(LS)は70.2%,変形性股関節症(HOA)は15.7%(男性18.2%,女性14.3%)であることが分かった.また変形性関節症は合併が多く,関節別に見ると特にKOAとLSの合併が多いことを示した.KOAの累積発生率は年間2.9%,LSは年間11.4%と推定された.

キーワード
変形性膝関節症 変形性腰椎症 変形性股関節症 疫学指標 ROADスタディ

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第2章 基礎
関節軟骨の構造と発生

伊藤 宣       京都大学大学院医学研究科 整形外科学 准教授

要旨
 関節軟骨は,体重の10倍にも達する荷重を受けながら,極めて低磨耗を維持して,ヒトでは80年以上関節機能を維持する.また強度をもたらすⅡ型コラーゲンと保水性に富むプロテオグリカンから成っており,水分の出し入れによってその機能を発揮している.関節の発生についてはよく分かっていないが,WntおよびBMPシグナルとその阻害のバランスによって関節形成が起り,その維持が行われていることは間違いない.

キーワード
関節軟骨 Ⅱ型コラーゲン プロテオグリカン 骨形成タンパク Wnt

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第2章 基礎
変形性関節症の病態

福井 尚志     東京大学大学院総合文化研究科 生命環境科学系 教授
            国立病院機構相模原病院臨床研究センター

要旨
 変形性関節症(OA)は,軟骨や半月板の加齢性の変化を素因として発症し,軟骨基質の緩徐な変性・消失を特徴とする疾患である.この疾患は従来,軟骨の変性・摩耗が病態の中心と考えられてきたが,近年では関節を構成するそれぞれの組織が,病態において一定の役割を果たしていることが知られてきた.特に軟骨下骨と滑膜の病変は,症状の発現や疾患の進行と密接に関係し,OAの病態で中心的な役割を果たしていると考えられている.

キーワード
軟骨細胞 軟骨基質 軟骨下骨 滑膜 半月板

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第2章 基礎
変形性関節症の動物モデル

齋藤 琢      東京大学大学院医学系研究科 整形外科学 准教授

要旨
 変形性関節症を実験的に研究するため,古くから大型動物を用いたモデルが用いられてきたが,近年の分子生物学の発展を受けてマウスモデルの需要が高まり,2005年に,手術によって膝関節の不安定性を惹起することで早期に変形性関節症を誘発するマウスモデルが,相次いで発表された.これらのモデルを遺伝子改変マウスに適用することにより,これまで数多くの遺伝子やシグナルが関節軟骨の維持や変形性関節症の発症,進行に関与することが示されてきた.手術モデルのほか,関節外からの力学負荷によって軟骨変性を起すモデルや,薬剤を注射するモデル,自然発症モデルなどがあり,それぞれのモデルの長所と短所を理解したうえでうまく組み合わせて検証を進めることが,複雑なヒト変形性関節症の病態を解明していくうえで重要である.

キーワード
変形性関節症 動物モデル

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第2章 基礎
関節軟骨のイメージング

西田圭一郎     岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 整形外科学 准教授
大橋 俊孝      岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 分子医化学分野 教授

要旨
 変形性関節症(OA)の早期診断,新規OA治療薬開発においては,動物モデルの治療前および治療中の関節軟骨に対する非侵襲的イメージング技術の開発が重要課題である.非侵襲性軟骨イメージング技術の開発においては,Ⅱ型コラーゲンやグリコサミノグリカン(GAG)といった軟骨基質をターゲットとした造影剤との併用で,マイクロコンピュータ断層撮影(CT)や磁気共鳴画像法(MRI)での撮像が試みられている.

キーワード
関節軟骨、早期診断、Ⅱ型コラーゲン、グリコサミノグリカン

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コラム
軟骨マーカー

斎藤 充      東京慈恵会医科大学 整形外科 准教授
丸毛 啓史    東京慈恵会医科大学 整形外科 教授


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第3章 診断
変形性関節症の画像診断1.X線
池内 昌彦
     高知大学医学部 整形外科 教授

要旨
 変形性関節症(OA)の画像検査として,X線検査が広く行われている.X線像では,骨棘や軟骨下骨の硬化像,骨?胞,関節裂隙の狭小化などが観察され,これらの所見によってOAの診断および病期分類が行われる.撮影の仕方によってX線所見は大きく異なることがあるため,注意を要する.本稿では,OAに対するX線検査について,診断的意義,撮影法,評価法について基本的事項を中心に概説する.

キーワード
変形性関節症 X線 撮影法 病期評価

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第3章 診断
変形性関節症の画像診断2.MRI
岡 敬之 
       東京大学医学部附属病院22世紀医療センター
             運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座 特任准教授

要旨
本稿では,筆者が推奨する変形性膝関節症(膝OA)の関節軟骨の形態学的評価用磁気共鳴画像法(MRI)撮像のポイントと,OAの早期発見を目指した関節軟骨の質的評価用MRI撮像法に関して概説する.評価法として,膝組織全体を評価する半定量的評価は,より高い再現性を目指し,筆者が開発した軟骨定量評価ソフトウエアを紹介する.本稿の内容を,日常診療における膝OAのMRI撮像に役立てていただければ幸いである.

キーワード
変形性関節症 磁気共鳴画像法 定量評価法

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第3章 診断
変形性関節症の画像診断3.その他(エコー)
大橋 暁 
       独立行政法人 国立病院機構相模原病院 整形外科

要旨
変形性関節症の画像診断は,日常診療においては単純X線像にて行われることが多い.軟骨摩耗の程度を関節裂隙の狭小化によって評価され,骨棘形成・軟骨下骨の骨硬化などの評価も行われる.超音波画像による関節評価においては,関節軟骨を直接視認し評価可能であり,関節軟骨の変性の程度も評価が可能である.本稿では,エコー,すなわち,超音波画像を用いた変形性関節症の評価法について紹介する.

キーワード
変形性膝関節症 超音波 エコー

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第3章 診断
変形性関節症の鑑別診断
木村 文彦
       埼玉医科大学病院 整形外科・脊椎外科
門野 夕峰       埼玉医科大学病院 整形外科・脊椎外科 教授

要旨
変形性関節症(OA)と鑑別すべき疾患の中には,関節破壊や全身状態の悪化を招くものがあり,注意が必要である.代表的な疾患として,関節リウマチ(RA),感染性関節炎,結核性関節炎,骨壊死,痛風,偽痛風,強直性脊椎炎,乾癬性関節炎,神経病性関節症,血友病性関節症を本稿で取り上げるが,多くの疾患は注意深い問診と診察で鑑別可能である.たとえ確定診断に至らなかった場合でも,経過をしっかりと追うことが大切である.

キーワード
変形性関節症 鑑別

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第4章 治療
変形性関節症治療ガイドライン
石黒 直樹
      名古屋大学医学部附属病院 病院長
             名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター センター長
             名古屋大学医学部附属病院 整形外科学 教授

要旨
 ガイドライン作成過程での文献評価から,全般的なエビデンスレベルは良好とは言えない点,コンセンサス的勧告であってもエビデンスによる科学的基盤が脆弱である点が明白となった.そこで,エキスパートの見解とエビデンスとを集約した複合的ガイドラインが質的な保証につながると判断し,その体裁となっている.このガイドラインは,一般整形外科医,または運動器疾患治療に従事する医師全般の治療に参考とされることを前提としている.

キーワード
変形性関節症 日本整形外科学会 科学的根拠に基づく医療 薬物療法 非薬物療法

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第4章 治療
保存療法 1.リハビリテーション(理学療法,運動療法,作業療法)
帖佐 悦男
    宮崎大学医学部 整形外科 教授
           宮崎大学医学部附属病院 リハビリテーション科 科長

要旨
 変形性関節症の保存療法として,理学療法は重要な位置を占める.関節症の予防には運動療法が効果的であり,疼痛や機能障害が少ない早期の場合は,理学療法のみで症状が軽快する.理学療法実施の際には,評価やゴールの設定が必要である.物理療法,運動療法,装具療法といった理学療法に加え,作業療法など,各分野のメディカルスタッフが専門性を生かし,ケアの観点からも多職種連携によるチームアプローチが重要である.

キーワード
リハビリテーション 理学療法 物理療法 運動療法 作業療法

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第4章 治療
保存療法 2.薬物療法
冨田 哲也
    大阪大学大学院医学系研究科 運動器バイオマテリアル学 准教授

要旨
 変形性膝関節症(膝OA)患者に対する薬物療法の主目的は,疼痛に代表される関節症状を軽減させることである.これまで非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が主に使用されてきたが,近年慢性疼痛の病態解明が進み,膝OAを慢性疼痛としてとらえ,進行例やNSAIDsのみでは十分な症状の改善が認められない例では,作用機序の異なる薬剤を,症状に合わせ使い分けることが肝要である.

キーワード
変形性膝関節症 薬物療法 慢性疼痛

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第4章 治療
保存療法 3.装具療法
中川 匠 
    帝京大学医学部 整形外科学講座 教授

要旨
 上下肢の変形性関節症(OA)に伴う疼痛の軽減や関節機能の改善を目的に,装具療法が行われる.さまざまな種類の装具の選択肢があり,母指手根中手(CM)関節症に対するスプリント固定,変形性膝関節症(膝OA)に対する軟性・硬性膝装具,外側楔状足底装具が代表的である.装具を処方する際は,その機能や限界に関して十分に患者に説明するとともに,コンプライアンスの向上や治療成績の向上のために,医療従事者が定期的に経過観察することが重要である.

キーワード
母指手根中手関節スプリント固定 膝軟性装具 膝硬性装具 外側楔状足底装具

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第4章 治療
保存療法 4.関節内注射
内尾 祐司
    島根大学医学部 整形外科学 教授

要旨
 変形性関節症(OA)に対する薬物療法である関節内注射薬には,主にヒアルロン酸とステロイドが用いられる.これまでのメタ解析から,これらの有効性と安全性の医学的根拠が示されつつつある.しかし,OAの病態は多岐に及ぶため,これらの実際の効果は個々の患者によって異なる.今後,患者背景,病期,病型などを細分化した臨床研究の蓄積によるメタ解析が,関節内注射を含めたOA治療体系の確立ために必要である.

キーワード
変形性関節症 関節内注射 ヒアルロン酸 ステロイド 多血小板血漿 


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第4章 治療
保存療法 5.サプリメント,疾患修飾性治療薬(DMOAD)
高橋 謙治     日本医科大学大学院医学研究科 整形外科学 臨床准教授
中村 洋       国際医療福祉大学 教授
            医療法人財団順和会山王病院 整形外科 リウマチ科部長

要旨
 セルフメディケーションの高まりから,変形性膝関節症(膝OA)に対するサプリメントのマーケットが拡大している.特に流通量の多いグルコサミンおよびコンドロイチンの疾患修飾性治療薬(DMOAD)としての医学的エビデンスは,近年のMRIを用いた研究によって高まっている.整形外科医は膝OA治療におけるグルコサミンおよびコンドロイチン療法の最新の情報を収集し,的確に患者に説明する必要がある.

キーワード
グルコサミン コンドロイチン サプリメント 疾患修飾性治療薬 変形性膝関節症

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コラム
変形性関節症の遺伝子治療
大庭 伸介
    東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 特任准教授

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第5章 外科療法
上肢の変形性関節症 1.変形性肩関節症,肘関節症の治療
永瀬 雄一
   東京都立多摩総合医療センター リウマチ膠原病科(外科系)

要旨
 変形性肩関節症に対する人工肩関節置換術では,腱板が保たれており,骨頭が良好な求心位を保つことができるならば解剖学的人工肩関節全置換術(TSA)を,腱板断裂を伴い良好な求心位が保てず,高齢な症例に対してはリバース型人工肩関節置換術(RSA)または小径骨頭を用いた人工骨頭置換術を行う.変形性肘関節症に対しては,初期から中期において骨棘形成や関節内遊離体に伴う可動域低下や最大伸展,屈曲時に痛みがある場合は関節鏡視下関節形成術が適応となり,後期では人工肘関節全置換術(TEA)の適応となる.

キーワード
解剖学的人工肩関節全置換術 リバース型人工肩関節置換術 腱板 関節鏡視下化肘関節形成術 人工肘関節全置換術

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第5章 外科療法
変形性膝関節症 1.鏡視下手術
神戸 克明
     東京女子医科大学東医療センター 整形外科・リウマチ科 准教授

要旨
 変形性膝関節症(膝OA)に対する鏡視下手術では,その適応が最も重要である.膝半月板症状を主症状とする変形や,可動域制限のない若年膝OA症例に,良好な成績が得られるとされている.高年齢で進行膝OAには適応ではなく,むしろ人工膝関節置換術が推奨される.鏡視下半月板部分切除により屈曲制限を解除し,可動域制限を改善させることが,日常生活動作(ADL)向上につながる.関節リウマチにおける鏡視下滑膜切除とは異なり,炎症性病変の切除よりも個々の症例に応じた,鏡視下手術によるメカニカルな疼痛発生機序の回避が望ましい.

キーワード
変形性膝関節症 鏡視下手術

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第5章 外科療法
変形性膝関節症 2.人工膝関節全置換術(TKA)
眞島 任史
     日本医科大学医学部 整形外科 教授

要旨
 変形性膝関節症(膝OA)に対する表面置換型人工膝関節全置換術(TKA)の機種選択においては,膝可動域や変形を指標に十字靭帯の状態を把握し,後十字靭帯(PCL)温存型(CR)とPCL切除型(PS)の使い分けをする.120度以上曲がる膝はCRの良い適応になる.現在,新しいコンセプトのTKAが開発されている.正常膝の動き(medial pivot motion)をインプラントで誘導させる機種や,anterior cam‐postにより前方安定性を獲得させposterior stabilizerと組み合わせることにより前十字靭帯(ACL)とPCLの機能を共に代償させるBi‐Cruciate Stabilized(BCS)TKAである.また,1970年代に使用されなくなったACLとPCLを温存する機種も,進化して再登場した.

キーワード
人工膝関節全置換術 後十字靭帯温存型 後十字靭帯切除型 コンセプト

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第5章 外科療法
変形性膝関節症 3.人工膝関節単顆置換術(UKA),他
乾  洋
    東京大学医学部附属病院 整形外科 特任講師

要旨
 変形性膝関節症(膝OA)の治療としては,症状が軽度であれば運動療法,薬物療法などを中心とした保存加療が望ましい.しかし効果が十分得られない場合には,手術治療も考慮しなければならない.手術としては関節鏡手術,人工関節手術,骨切り手術が挙げられる.本稿では,人工関節手術の中でも単顆の損傷に対して行う,人工膝関節単顆置換術(UKA)の,特にその手術適応を中心に,術式,術後成績,そのほかの部分置換術の現状について述べる.

キーワード
前内側型変形性膝関節症 人工膝関節単顆置換術 靭帯温存手術 手術適応

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第5章 外科療法
変形性膝関節症 4.骨切り術
久保田光昭
      順天堂大学医学部 整形外科学講座
              越谷市立病院 整形外科 副科部長
石島 旨章       順天堂大学医学部 整形外科学講座 准教授
金子 晴香       順天堂大学医学部 整形外科学講座
金子 和夫       順天堂大学医学部 整形外科学講座 教授

要旨
 変形性膝関節症(膝OA)に対する骨切り術は関節温存手術であり,近年術後成績が向上している.変形が比較的軽度で,症状が膝内側または外側に限局した疼痛を認める活動性の高い患者が,よい適応である.通常内側型膝OAに対しては高位脛骨骨切り術(HTO)が,外側型膝OAに対しては遠位大腿骨骨切り術(DFO)が適応となる.本稿では,術前計画,手技のコツとピットフォール,術後後療法そして術後成績について概説する.

キーワード
変形性膝関節症 高位脛骨骨切り術 遠位大腿骨骨切り術 下肢機能軸

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第5章 外科療法
変形性股関節症 1.鏡視下手術
杉山 肇 
        神奈川リハビリテーション病院 整形外科 病院長
金子 和夫        順天堂大学医学部 整形外科学講座 教授
戸野塚久紘       神奈川リハビリテーション病院 整形外科 部長

要旨
 変形性股関節症(以下,股関節症)に対する鏡視下手術は,関節内の病態把握や手術法の決定に有用なほか,前・初期股関節症に対する関節唇の部分切除術や縫合術として,優れた治療効果が認められている.さらに,進行期・末期股関節症に対しては,関節デブリドマンや関節授動術が関節温存手術として行われ,一定の成績が報告されており,治療の選択肢が人工股関節全置換術(THA)に偏る中で,鏡視下手術には重要な役割がある.

キーワード
変形性股関節症 股関節鏡 関節デブリドマン

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第5章 外科療法
変形性股関節症2.人工股関節全置換術(THA)
稲葉 裕 
       横浜市立大学医学部 整形外科学 准教授
池 裕之        横浜市立大学医学部 整形外科学
齋藤 知行       横浜市立大学医学部 整形外科学 教授

要旨
 Charnleyにより1960年代に骨セメントを使用する人工股関節全置換術(THA)が導入され,THAは飛躍的な発展を遂げた.機械工学・材料力学の発展や手術支援技術の発達,手術手技の向上に伴って,治療効果と長期成績はさらなる改善を認め,THAは整形外科分野において20世紀で最も成功した手術とされる.本稿では,セメントレスTHAとセメントTHA,THAの適応,臨床成績評価法,合併症,インプラント設置角とナビゲーションシステムについて概説する.
キーワード
人工股関節全置換術 手術適応 合併症 インプラント設置角 ナビゲーションシステム

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第5章 外科療法
変形性股関節症 3.骨切り術
中島 康晴
     九州大学医学部 整形外科学教室 教授

要旨
 我が国では寛骨臼形成不全による二次性の変形性股関節症が圧倒的に多い.本症は若年で発症することも多く,骨切り術による矯正手術はその治療体系の中に大きな役割を担ってきた.一般に前~初期股関節症には寛骨臼移動術・寛骨臼回転骨切り術に代表される骨盤骨切り術が治癒的効果を期待して行われる.一方,大腿骨外反骨切り術やキアリ骨盤骨切り術は進行~末期股関節症を適応とし,将来の人工股関節置換術を視野に入れたtime saving的な意味合いを持つ.
キーワード
変形性股関節症 寛骨臼形成不全 骨切り術 寛骨臼移動術

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第5章 外科療法
変形性足関節症 1.変形性足関節症の外科的治療
松本 卓巳
     東京大学大学院医学系研究科 整形外科学 特任准教授

要旨
 欧米では外傷性の変形性足関節症(足関節OA)が多いが,日本人では内反型の足関節OAが多数を占める.外科的治療の方針決定には,Takakuraの病期分類が有用である.初期で軟骨損傷の進んでいないものに対しては,鏡視下デブリドメントが行われることがある.中間期の症例では下腿の矯正骨切りによるアラインメント調節が主体となる.進行期から末期には,足関節固定術あるいは人工足関節全置換術(TAA)が,個々の症例の事情に合わせて選択される.
キーワード
変形性足関節症 病期分類 矯正骨切り 関節固定 人工関節

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第5章 外科療法
再生医療 1.滑膜幹細胞移植
関矢 一郎
     東京医科歯科大学 再生医療研究センター センター長

要旨
 筆者らは,患者さん自身の滑膜から幹細胞を採取・培養して,軟骨の欠損部に細胞浮遊液を10分間静置して移植し,軟骨を再生させる臨床研究を2008年に開始し,有害事象を生じず,自覚症状や画像所見が改善することを確認した.また半月板の変性断裂に対して,縫合後に滑膜幹細胞を移植し,半月板を温存する臨床研究を実施した.さらに,逸脱した外側半月板を整復・制動後,欠損・摩耗した軟骨・半月板に滑膜幹細胞を移植することにより,外側型変形性膝関節症を再生させる臨床研究を開始している.
キーワード
滑膜 間葉系幹細胞 軟骨 半月板 再生医療

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第5章 外科療法
再生医療 2.自家培養軟骨細胞移植術
中佐 智幸
      広島大学大学院医歯薬保健学研究院 整形外科学
安達 伸生      広島大学大学院医歯薬保健学研究院 整形外科学 教授
越智 光夫      広島大学 学長

要旨
 関節軟骨は,自然治癒力に乏しく,損傷すると周囲の軟骨変性が生じ,変形性関節症へと進行してしまう.アテロコラーゲン包埋自家培養軟骨細胞移植術(ACI)は,軟骨細胞をアテロコラーゲンに包埋・培養して作製した軟骨様組織を,軟骨欠損部に移植する方法で,1996年から臨床応用を開始し,良好な臨床成績を報告している.この手法は現在,保険収載となり,全国の施設で治療を行うことが可能となっている.

キーワード
軟骨損傷 軟骨細胞 培養軟骨細胞移植

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