要旨

最新醫學 診断と治療のABC 123
呼吸器腫瘍

第1章 疫学
肺がんの疫学

雑賀 公美子   国立がん研究センター 社会と健康研究センター 検診研究部
祖父江 友孝   大阪大学大学院医学系研究科 社会医学講座 環境医学 教授

要旨
 肺がんの年齢調整罹患率(基準人口は昭和60年モデル人口,人口10万対)の1975年から2014年までの年次傾向は,男性では1975年から1990年までの大きな増加後,増加傾向は緩やかになっており,女性では1975年以降緩やかな増加傾向が続いている.1975年から2014年までの年齢調整死亡率は,男性では1990年代後半までは大きく増加しているが,1990年代後半以降は減少に転じている.一方,女性では2000年まで増加傾向であったのが,以降は増加減少なく,安定している.生存率の年次推移については,1993?1996年に診断された患者の5年相対生存率が,22.5%(男性20.8%,女性27.1%)であったのが,2003?2005年では29.7%(男性25.0%,女性41.0%)と,男女ともに増加している.

キーワード
罹患率 死亡率 生存率 危険因子

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第2章 病理・病態
病理分類(WHO分類第4版,肺癌取扱い規約第8版)

鍋島 一樹    福岡大学医学部 病理学講座・病理部/病理診断科 教授
木下 義晃    福岡大学医学部 病理学講座・病理部/病理診断科
吉村 雅代    福岡大学医学部 病理学講座・病理部/病理診断科

要旨
 世界保健機関(WHO)分類第4版では,一方では臨床病理学的進歩によって上皮内腺癌(AIS)などの新たな亜型が加わり,神経内分泌腫瘍もまとめられた.他方では,近年の薬物および分子標的療法の進歩に対応して,組織亜型の定義に免疫組織化学が導入され,生検検体での診断用語も提唱された.病理診断も遺伝子変異や分子マーカーによる患者の層別化に対応すべき時代に入り,病理医による正確な診断と共に,臨床医・病理医相互の連携が不可欠となっている.

キーワード
病理組織分類 免疫組織化学 遺伝子検査 腺癌 扁平上皮癌

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第2章 病理・病態
病期分類

中島 淳      東京大学大学院医学系研究科 呼吸器外科学 教授

要旨
 肺がん(原発性肺がん)の病期分類を定めた国際対がん連合腫瘍病期分類(UICC?TNM分類)が第8版に改まり,2017年1月から適用された.本分類は国際肺癌学会(IASLC)の肺がんデータベースを解析して得られた患者生命予後に基づいている.日本肺癌学会編『肺癌取扱い規約』もUICC?TNM分類に準拠し改訂された.特にT?原発腫瘍の分類は第7版から大幅な変更が加えられ,T,N,M各因子と病期との対応も変更された.

キーワード
病期分類 TNM分類 肺がん 国際対がん連合 肺癌取扱い規約

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第2章 病理・病態
バイオマーカー

秋田 弘俊      北海道大学大学院医学研究院 腫瘍内科学教室 教授

要旨
 非小細胞肺がん診療においては,分子標的治療薬の治療効果予測因子の研究・開発の進歩が著しく,検査として保険診療のもとで実施されている.Ⅳ期あるいは術後再発の非小細胞肺がんにおいては,初回薬物療法の選択のために,EGFR遺伝子変異検査,ALK融合遺伝子検査,ROS1融合遺伝子検査,プログラム細胞死リガンド1(PD?L1)免疫組織化学検査が実施されている.今後の方向性としては,次世代シークエンス解析法(NGS)を用いたがん関連遺伝子・マルチプレックス遺伝子検査が挙げられる.

キーワード
EGFR遺伝子変異 ALK融合遺伝子 ROS1融合遺伝子 PD-L1タンパク質 次世代シークエンス解析法

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コラム
がんアドボカシーと患者向けガイドライン

澤 祥幸     岐阜市民病院がんセンター 診療局長


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第3章 診断
診断のアルゴリズム

丹保 裕一     金沢大学附属病院 呼吸器内科
笠原 寿郎     金沢大学附属病院 呼吸器内科 病院臨床教授

要旨
 肺がんの確定診断は,気管支鏡検査,経皮針生検などによる病理診断,およびコンピュータ断層撮影(CT),磁気共鳴画像法(MRI),フルオロデオキシグルコースポジトロン断層撮影(FDG?PET)などによる病期診断により行われる.進行期非小細胞肺がんにおいては,EGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子,プログラム細胞死リガンド1(PD?L1)発現の分子診断も必要となる.肺がんの組織診断,病期診断および分子診断を正確に行うことは,適切な治療方針を決めるうえで,最も重要である.本稿では,肺がんの病理診断,病期診断,分子診断のために,行うべき検査の選択や手順に関して述べる.

キーワード
病理診断 病期診断 分子診断

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第3章 診断
肺がんの画像 1.胸部X線・CT・MRI

芦澤 和人     長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野 教授
林 秀行      JCHO諫早総合病院 放射線科 部長

要旨
 肺がん診療において,画像診断は極めて重要な役割を担っているが,適切に検査を行うことが重要である.胸部単純X線写真,コンピュータ断層撮影(CT),磁気共鳴画像法(MRI)の役割,限界などについて,『画像診断ガイドライン』に準拠し概説を行った.特にCTは,病変の検出,良悪性の鑑別,病期分類,のいずれにおいても重要な位置を占める.昨年12月に『肺癌取扱い規約第8版』が刊行されたが,変更されたT因子についても解説を加えた.

キーワード
肺がん 画像診断 ガイドライン 胸部単純X線写真 胸部CT

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第3章 診断
肺がんの画像 2.核医学・PET

坂井 修二      東京女子医科大学 画像診断学・核医学講座 教授・講座主任
阿部 光一郎    東京女子医科大学 画像診断学・核医学講座 教授

要旨
 肺がん診療における18F?フルオロデオキシグルコース?ポジトロン断層撮影/コンピュータ断層撮影(FDG?PET/CT)は,N因子診断で大変重要な位置を占めている.また,治療早期の効果判定と予後予測での有用性も,最近では重要視されつつある.スペクト(SPECT)/CTでは肺血流シンチとCTの融合画像を作成することで,術後の残存肺機能予測を区域ごとに行えるようになってきた.また,これから期待されるものとして,神経内分泌腫瘍でのオクトレオスキャンやPETのアミノ酸製剤が挙げられる.

キーワード
肺がん スクリーニング 病期診断 PET 核医学

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第3章 診断
気管支鏡検査
品川 尚文
     北海道大学病院 内科Ⅰ講師

要旨
 気管支鏡検査は,肺がん診断において中心的な役割を果たしているが,再生検を求められる場面が近年増加しており,その役割はますます大きくなっている.高い精度で検体を採取するための技術として,ナビゲーションシステム,気管支腔内超音波断層法(EBUS),超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS?TBNA)を挙げた.それぞれのこれまでの知見,今後の開発の展開,さらに,技術的な注意点について述べる.

キーワード
気管支鏡 ナビゲーションシステム 気管支腔内超音波断層法 超音波気管支鏡ガイド下針生検

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第3章 診断
喀痰検査・胸水検査
三窪 将史
       北里大学医学部呼吸器外科学
佐藤 之俊       北里大学医学部呼吸器外科学 教授

要旨
喀痰および胸水は,呼吸器診療において最も検査に提出する機会の多い検体の1つであり,少ない侵襲で多くの情報を得ることができる有用な検査である.良悪性の鑑別のみならず,腫瘍性病変ではその組織型の推定や遺伝子診断への応用も可能である.本稿では,呼吸器診療で行われる喀痰・胸水検査の検査法や結果の解釈,実際の臨床での運用方法などについて概説する.

キーワード
肺がんスクリーニング 喀痰細胞診 胸水細胞診 セルブロック 液状化細胞診

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コラム
肺がん患者の立場から
長谷川 一男
      日本肺がん患者連絡会


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第4章 治療
肺がん治療の歴史と展望 -非小細胞肺がんを中心に-
光冨 徹哉
    近畿大学医学部外科学教室 呼吸器外科部門 教授

要旨
 20世紀当初は肺がんの診断は即,死を意味していたが,まず外科治療,次いで放射線や薬物治療が開発され,肺がんの予後は徐々に改善していった.21世紀に入ってからは肺がんの分子生物学的理解による分子標的治療の発展は目覚ましく,治癒は困難としても,より慢性的な疾患へ変貌させることが可能となった.さらに2010年以降,免疫チェックポイント阻害薬による治療が,一部の肺がんで目覚ましい治療効果を挙げることが明らかにされた.

キーワード
外科治療 放射線治療 殺細胞性化学療法 分子標的治療 免疫治療

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第4章 治療
肺がんに対する外科療法
鈴木 健司
    順天堂大学医学部 呼吸器外科学講座 教授

要旨
 早期肺がんに対する根治的治療の根幹を成すのは,外科治療である.この場合の早期と言うのは,主に臨床病期ⅠまたはⅡ期を指す.ⅢA期より進行している肺がんに対する手術の適応に関しては,議論の多いところである.現在,手術療法で議論されているのはⅠ期に対する縮小切除の検討であり,近々中間報告が出る予定である.進行がんに対する外科治療の意義は,今後よくコントロールされた臨床試験で解決すべき問題であろう.

キーワード
気管支形成 区域切除 術後合併症 salvage

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第4章 治療
気道狭窄の治療 -内視鏡下インターベンション-
平塚 昌文
    福岡大学病院 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科 講師
岩﨑 昭憲    福岡大学病院 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科 教授

要旨
 内視鏡下インターベションは,気管支鏡を用いた気道病変に対する治療行為の総称である.治療対象は症状を有する良悪性の気道狭窄で,軟性気管支鏡や硬性気管支鏡を駆使し,呼吸困難から患者を解放し,生活の質(QOL)の向上を目指すものである.その方法は,レーザー治療,バルーン拡張,硬性気管支鏡下腫瘍core out,ステント留置など,多岐にわたる.症例によっては複数の手技を組み合わせて治療にあたる必要がある.本稿では,各手技の説明に加え,インターベンションを行うにあたり,注意すべき事項を概説する.

キーワード
気管支狭窄 硬性気管支鏡 軟性気管支鏡 ステント

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第4章 治療
放射線療法(SBRT・粒子線治療を含む)
松本 圭司
    九州国際重粒子線がん治療センター
塩山 善之    九州国際重粒子線がん治療センター センター長
末藤 大明    九州国際重粒子線がん治療センター
篠藤 誠      九州国際重粒子線がん治療センター
戸山 真吾    九州国際重粒子線がん治療センター

要旨
 肺がん領域における放射線治療の主な適応は,非小細胞肺がんでは,Ⅰ期肺がんに対する定位放射線治療,局所進行肺がんに対する化学放射線療法,小細胞肺がんでは,限局型(LD)症例に対する化学療法同時併用加速過分割照射,LD症例の初期治療完全寛解(CR)例における予防的全脳照射(PCI)などである.従来,手術不能症例に対する治療との位置付けであったが,Ⅰ期肺がんに対する定位放射線治療は手術との比較試験も行われるなど,治療成績は大きく向上してきている.

キーワード
肺がん 放射線治療 定位放射線治療 粒子線治療 画像誘導放射線治療 


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第4章 治療
ガイドラインから肺がん薬物療法の概要を俯瞰する
赤松 弘朗    和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内科

要旨
 免疫チェックポイント阻害薬の臨床導入によって治療選択肢が増えた反面,どのタイミングでどの薬剤を用いるのかは,臨床家にとって大きな問題である.本稿では細胞傷害性薬剤,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬を使用するにあたって,どのようなバイオマーカーや臨床背景が重要なのか,また2次治療以降の治療を,どのような考えをもとに行うべきかについて概説する.

キーワード
肺癌診療ガイドライン PD-L1 ペムブロリズマブ EGFR ALK ROS1

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第4章 治療
限局型小細胞肺がんの治療
駄賀 晴子
    大阪市立総合医療センター 腫瘍内科 部長

要旨
 限局型小細胞肺がんにおける治療目標は根治である.治療の主体は化学療法と放射線療法であるが,臨床病期I期症例においては,手術+術後化学療法で良好な成績が得られている.I期以外の限局型小細胞肺がんの標準治療は化学療法と放射線療法の併用療法であり,放射線療法は早期同時併用,加速過分割照射が推奨されている.初回治療で完全寛解(CR)が得られた症例には,予防的全脳照射(PCI)を行うことで,生存期間の延長が示されている.

キーワード
小細胞肺がん 限局型 化学放射線療法 加速過分割照射 予防的全脳照射

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第4章 治療
進展型小細胞肺がんの治療
内野 順治
    京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科 講師
髙山 浩一    京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科 教授

要旨
 進展型小細胞肺がん(ED?SCLC)の標準治療は長らくシスプラチン(CDDP)+エトポシド(ETP)併用[PE]療法であったが,本邦から同併用療法を上回る治療法としてCDDP+イリノテカン(CTP?11)併用[IP]療法が報告され,本邦のガイドラインにおいては,耐用可能な症例に対してはIP療法が第1選択である.また,2次治療においても,本邦にて開発されたアムルビシン(AMR)を始めCDDP+ETP+CTP?11併用[PEI]療法の有用性も日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)から報告されており,小細胞肺がん治療において,本邦の果たしてきた役割は大きい.現在免疫チェックポイント阻害薬による治療が有望視されており,今後の発展が期待される.

キーワード
進展型小細胞肺がん PE療法 IP療法 CDDP+ETP+CPT11併用療法

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第4章 治療
術後アジュバント療法
鈴木 秀海
     千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学
吉野 一郎     千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学 教授

要旨
 早期肺がんは手術が標準治療だが,完全切除された症例でも一定の頻度で再発し,その形式は遠隔転移が主体である.予防策として,術後補助療法がさまざまに考案されてきた.完全切除後の病理病期Ⅰ期の腫瘍径2cm以上にはテガフール・ウラシル配合剤(UFT)が,Ⅱ?Ⅲ期にはシスプラチン(CDDP)併用化学療法が推奨される.補助放射線治療は,勧める根拠が不十分である.分子標的治療薬や免疫療法による臨床試験が進行中で,遺伝子変異やバイオマーカーを考慮した個別化治療が重要になる.

キーワード
肺がん 術後補助化学療法 術後補助放射線療法 バイオマーカー 免疫療法

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第4章 治療
縦隔リンパ節転移を伴うⅢ期非小細胞肺がんの治療戦略
宮田 義浩
     広島大学病院 呼吸器外科 准教授
            広島大学 原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科
岡田 守人    広島大学病院 呼吸器外科 教授

要旨
 縦隔リンパ節転移を伴うN2,Ⅲ期非小細胞肺がんの予後は,現在標準とされているプラチナ併用術後補助化学療法による上乗せはわずかであり,いまだ満足できるものではない.本稿では,この集団に対する術前,術後治療を加えた手術を含む集学的治療のエビデンスについて概説し,さらに個別化による予後向上を目指した最新の取組みについて報告する.

キーワード
非小細胞肺がん 導入療法 補助療法

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第4章 治療
進行期非小細胞肺がんの薬物療法 1.ドライバー遺伝子変異陰性症例
浦田 佳子
    兵庫県立がんセンター 呼吸器内科 医長

要旨
 プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現50%未満,ドライバー遺伝子変異陰性の進行期非小細胞肺がんの1次治療では,プラチナ併用療法が検討される.扁平上皮がんには,ペメトレキセド以外の第3世代抗がん剤との併用を考慮し,非扁平上皮がんであればリスクを評価のうえ,ベバシズマブの併用も可能である.2次治療以降ではドセタキセル±ラムシルマブ,ペメトレキセド,S?1や,抗PD?1抗体が使用可能で,PD?L1の発現率や背景因子を考慮し,選択する.

キーワード
細胞障害性抗がん剤 第3世代抗がん剤 プラチナ併用療法 維持療法 血管新生阻害薬

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第4章 治療
進行期非小細胞肺がんの薬物療法 2.ドライバー遺伝子変異陽性症例
池松 祐樹
      九州大学病院 呼吸器科
岡本 勇        九州大学病院 呼吸器科 診療准教授

要旨
 がん細胞に認められる複数の遺伝子変異の中には,がんの進展・発育に深く寄与するものがある.このような遺伝子変異をドライバー遺伝子変異と呼び,肺腺がんにおける解析が進んでいる.ドライバー遺伝子変異のうち,EGFR遺伝子変異,EML4?ALK融合遺伝子に対し,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の有効性が証明されている.

キーワード
ドライバー遺伝子変異 EGFR遺伝子 ALK融合遺伝子 分子標的治療薬

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第4章 治療
進行期非小細胞肺がんの薬物療法 3.免疫チェックポイント阻害薬
神山 潤二
        公益財団法人 がん研究会有明病院 呼吸器内科
北園 聡          公益財団法人 がん研究会有明病院 呼吸器内科 副医長
西尾 誠人         公益財団法人 がん研究会有明病院 呼吸器内科 部長

要旨
 2012年に,進行固形がんに対するニボルマブの忍容性と効果,特に,長期に奏功を維持する症例もあることが報告され,以後,さまざまな免疫チェックポイント阻害薬が開発されている.免疫チェックポイント阻害薬は,非小細胞肺がん患者の生存期間を延長することが示され,肺がん診療に大きな変革をもたらした.一方で従来の化学療法とは異なる毒性対策の必要性や,医療費負担の問題もあり,実地診療では薬剤の適正使用を心がける必要がある.

キーワード
非小細胞肺がん 免疫チェックポイント阻害薬 抗PD-1抗体 ニボルマブ ペムブロリズマブ

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第4章 治療
肺がん患者に必要な緩和ケア
井上 彰 
      東北大学大学院医学系研究科 緩和医療学分野 教授

要旨
 予後が厳しく,さまざまな苦痛症状が生じやすい肺がん患者の主治医には,基本的な緩和ケア(がん疼痛に対する3段階除痛ラダーに沿った鎮痛剤の使用,呼吸困難への対処法,せん妄の評価と治療など)が必要とされる.抗がん剤治療の意義を真に理解し,無為な治療を提示しないのも重要であり,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含め,終末期に向けて専門的緩和ケアにスムーズに移行させるのも,主治医の重要な役目である.
キーワード
3段階除痛ラダー 神経障害性疼痛 Pilliactive Prognostic Index せん妄 アドバンス・ケア・プランニング

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コラム
高額医薬品と国民医療・国民皆保険
和田 勝 
     国際医療福祉大学大学院 客員教授


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第5章 管理
予後と経過観察
杉尾 賢二
     大分大学医学部 呼吸器・乳腺外科 教授

要旨
 予後とは,がんの進行程度,治療効果,生存に対する見通しなど,医学総合的な結果であり,予後因子には,組織型,病期,全身状態(PS),臓器機能,基礎疾患,およびドライバー遺伝子の有無などがある.術後経過観察の目的は,①患者状態の把握と術後合併症対策,②再発対策,③二次肺がんの発見,④精神的支援,などである.肺がん患者の適切な管理と予後を推定するには,生物学的な特性を把握することが必要で,適切な経過観察を行うことが求められる.
キーワード
予後因子 経過観察 再発形式 ドライバー遺伝子

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第5章 管理
禁 煙
鰤岡 直人
       鳥取大学医学部保健学科 検査技術科学専攻 病態検査学講座 教授
清水 英治       鳥取大学医学部医学科 分子制御内科学分野 教授

要旨
 喫煙は多くの疾患の原因となる.受動喫煙による影響も注目されている.喫煙習慣はニコチン依存症という病態を形成し,自力での禁煙は困難になる.ニコチン依存症に対して禁煙補助薬が使用可能であり,医療機関が一定の条件を満たせば,ニコチン製剤やα4β2ニコチン受容体部分作動薬を保険適用して使用できる.また喫煙は,シトクロムP450(CYP)1A2などの薬物代謝酵素を誘導して薬物の体内動態に影響を及ぼす.本稿において喫煙の肺がんに対する危険性,薬物代謝に対する影響および禁煙補助薬の使用法などに関して解説する.
キーワード
禁煙 喫煙 肺がん バレニクリン CYP1A2

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第5章 管理
肺癌登録合同委員会による肺癌登録事業の意義と成果
奥村 明之進
    大阪大学外科学講座 呼吸器外科学 教授
新谷 康        大阪大学外科学講座 呼吸器外科学 准教授

要旨
 肺癌登録合同委員会は,定期的に日本全国の肺がん症例を集計し,retrospective databaseにより年次的推移と治療成績を解析している.手術症例全体の5年生存率は1989年から2004年にかけて47.8%から69.6%へ上昇しており,その間に女性,腺がん,小型の早期がんの手術症例が増え,縮小手術も増加している.また,本邦のデータベースは国際対がん連合(UICC)による腫瘍病期分類(TNM分類)の更新を通じて,国際貢献もしている.

キーワード
臓器別がん登録 データベース 国際肺癌学会 国際対がん連合

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