要旨

最新醫學 診断と治療のABC 124
糖尿病合併症

第1章 急性合併症の病態・診断・治療
ケトアシドーシスの病態・診断・治療

真田 淳平   川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学
木村 友彦   川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学
金藤 秀明   川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授

要旨
 糖尿病ケトアシドーシスは,初期治療を誤ると生命にかかわる.病態の根幹はインスリン欠乏であり,インスリン投与と脱水補正が重要である.劇症1型糖尿病は2000年に本邦で確立された1型糖尿病の新たなサブタイプであり,成因には遺伝素因が関与し,ウイルス感染を契機に免疫応答が惹起され,β細胞が破壊されるという仮説が立てられている.また,Na+/グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬使用中も,症例によっては注意が必要となる.

キーワード
ケトアシドーシス 劇症1型糖尿病 急性発症1型糖尿病 SGLT2阻害薬

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第1章 急性合併症の病態・診断・治療
高血糖高浸透圧症候群の病態・診断・治療

麻生 好正    獨協医科大学 内科学(内分泌代謝)教授
           獨協医科大学病院 副院長

要旨
 高血糖高浸透圧症候群(HHS)は,主に高齢2型糖尿病患者で発症する,著明な高血糖,高度の脱水,高浸透圧を特徴とした,精神神経症状も伴う予後不良な疾患である.HHSは,糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と共に急性高血糖クリーゼとして知られているが,生命予後はDKAより不良である.診断基準として,①血糖>600mg/dL,②血漿浸透圧>320mOsm/L,③ケトアシドーシスを認めない,を満たすことで診断される.高度の脱水が基本病態であり,十分な輸液(0.9%食塩水)が最優先されるが,同時にインスリンの少量持続静脈投与も必要になる.

キーワード
高血糖 高浸透圧 脱水 感染症 昏睡

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第1章 急性合併症の病態・診断・治療
乳酸アシドーシスの病態・診断・治療
  -ビグアナイド薬による乳酸アシドーシス発症予防のために-

後藤 広昌      順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学
綿田 裕孝      順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学 教授

要旨
 乳酸アシドーシスは,組織の酸素化障害に伴う乳酸産生増加や,主に肝臓および腎臓での乳酸クリアランス低下による血中乳酸蓄積により生じ,死亡率は50%程度と重篤な病態である.糖尿病患者では肝臓での乳酸処理能が低下しており,特に血中乳酸上昇の可能性のあるビグアナイド薬投与中ではSick dayルールの構築を行い,本症の予防に注意しなくてはならない.重篤な腎機能障害をもつ患者では,ビグアナイド薬投与自体が禁忌である.

キーワード
ビグアナイド薬 腎機能障害 慢性腎臓病 重炭酸塩投与

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第1章 急性合併症の病態・診断・治療
低血糖の病態・診断・治療

森岡 紘子      東邦大学医療センター大森病院 糖尿病・代謝・内分泌センター
弘世 貴久      東邦大学医療センター大森病院 糖尿病・代謝・内分泌センター 教授
内野 泰        東邦大学医療センター大森病院 糖尿病・代謝・内分泌センター 講師

要旨
 糖尿病治療における急性合併症である低血糖症は,臨床で多く遭遇するものである.近年,低血糖症が身体に与える影響は,短期的なものだけでなく中長期的なものがあることが示され,いかにして低血糖症を防ぐかが議論されている.インスリン分泌機構の概説と低血糖症を防ぐための血糖コントロール指標,診断,ポリファーマシーについて述べる.

キーワード
インスリン分泌機構 血糖変動 ポリファーマシー

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網膜症1.病態・病期分類・眼科的治療

向後 二郎    聖マリアンナ医科大学 眼科学 講師
高木 均      聖マリアンナ医科大学 眼科学 講座代表教授

要旨
 糖尿病における細小血管合併症である網膜症は,我が国における中途失明原因2位である.さまざまな治療法によりここ10年で1位ではなくなったが,いまだ重要な疾患である.早期発見・早期治療が望ましいが,その理由は病態・病期を理解することで明白になる.微小血管障害から始まり増殖性変化が起るまでの時系列を後述する.

キーワード
pericyte loss 網膜内細小血管異常 血管内皮増殖因子 増殖網膜症

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第2章 細小血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療br> 網膜症2.内科的治療

柴 輝男       東邦大学医療センター 大橋病院 糖尿病・代謝内科 教授
坂本 健太郎    東邦大学医療センター 大橋病院 糖尿病・代謝内科 助教

要旨
 糖尿病網膜症は,網膜組織の高血糖への曝露に伴い発症と進行が規定される.1型糖尿病では,DCCTとEDICの追跡により,強化インスリン療法による平均6.5年にわたる血糖コントロール効果が約25年間,全体を通じて視力の保持や眼科手術の減少につながった.高血圧や脂質異常症を高率に合併する2型糖尿病においても,4?10年程度続くHbA1cの差1?2%程度の厳格な血糖改善は,網膜症の発症と進行を有意に抑制した.しかし,収縮期血圧の140mmHg程度への降圧は網膜症進行を抑制したが,120mmHg程度への厳格コントロールはそれ以上の効をなさなかった.平均4年にわたるフェノフィブラート(Feno)の短期治療は既発網膜症の進行を有意に抑制し,必要となるレーザー治療を有意に減少させた.以上の結果をまとめると,糖尿病発症早期からの厳格な血糖コントロールが重要であることや,既発網膜症ではFenoの適応の検討がエビデンスに基づく医療(EBM)として挙げられる.

キーワード
糖尿病網膜症 血糖 血圧 フェノフィブラート レニン・アンジオテンシン系阻害薬

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第2章 細小血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
腎症 1.早期腎症?顕性腎症:病態・診断・治療

荒木 信一     滋賀医科大学 内科学講座(糖尿病内分泌・腎臓内科)准教授

要旨
 慢性腎臓病(CKD)の代表的疾患である糖尿病腎症は,尿アルブミン値と糸球体濾過量(GFR)により病期が定義される.腎症は,慢性的な高血糖により惹起される疾患であるが,その病態と成因にはさまざまな因子が関与する.そのため,血糖のみを管理するのではなく,チーム医療による包括的リスク管理が重要となる.また,腎症の進行経過は,必ずしも段階的で進行性ではないため,アルブミン尿を定期的に測定し,その変動を評価することが必要である.

キーワード
糖尿病腎症病期分類 アルブミン尿 寛解 酸化ストレス 糸球体過剰濾過

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第2章 細小血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
腎症 2.腎不全期~透析療法期:病態・診断・治療

三瀬 広記     岡山大学病院 腎臓・糖尿病・内分泌内科
和田 淳      岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学 教授

要旨
 本邦の統計調査結果によれば,慢性腎臓病(CKD)患者のみならず透析患者においても糖尿病患者数は増えてきている.したがって,腎不全期?透析導入期および導入後における,糖尿病患者の管理を的確に行うことが求められる.糖尿病腎不全患者における管理で特に重要とされるのは,血糖コントロール,体液コントロール,高K血症である.本稿では,この3点について,現在における問題点や対策,管理のポイントについて概説する.

キーワード
糖尿病腎症 透析 腎不全 合併症

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第2章 細小血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
神経障害 1.感覚・運動神経障害の病態・診断・治療
姫野 龍仁
     愛知医科大学医学部 内科学講座 糖尿病内科
中村 二郎     愛知医科大学医学部 内科学講座 糖尿病内科 教授

要旨
 糖尿病神経障害(DN)は,糖尿病に特有の代謝障害と細小血管障害が関与して生じる末梢神経障害であり,多彩な臨床徴候を呈し,患者の生活の質(QOL)を低下させ生命予後をも左右する重要な合併症であることから,できる限り早期に治療することが重要である.厳格な血糖コントロールが重要であり,高血糖に起因する成因に則って開発された薬剤であるアルドース還元酵素阻害薬,有痛性DNに対する対症療法薬が汎用されている.

キーワード
糖尿病多発神経障害 有痛性神経障害 表皮内神経線維密度 角膜共焦点顕微鏡 
糖尿病多発神経障害の簡易診断基準


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第2章 細小血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
神経障害 2.自律神経障害の病態・診断・治療
松野 正平 
       和歌山県立医科大学 内科学第一講座 講師
中 啓吾          和歌山ろうさい病院 内科部長
佐々木 秀行       和歌山県立医科大学附属病院 紀北分院 内科 教授

要旨
 『糖尿病診療ガイドライン2016』では,糖尿病自律神経障害(DAN)は遠位性対称性の多発神経障害(DPN)の部分症状で,多彩な病態を呈し,しばしば患者の日常生活を大きく損ない,診断法には心拍変動検査が簡便で有用と記載されている.重症例では無痛性心筋虚血や不整脈が生命予後も悪化させる.治療は個々の臓器障害に対する対症療法が中心となる.立ちくらみや腹部症状,排尿障害,発汗異常などの非特異的な症状が,DANである可能性を念頭に置いて診療する必要がある.

キーワード
糖尿病自律神経障害 糖尿病多発神経障害 心拍変動検査 起立性低血圧

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第2章 細小血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
筋萎縮症の病態・診断・治療
出口 尚寿
    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学
西尾 善彦    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授

要旨
 糖尿病患者では糖尿病神経障害の臨床病期の進行に伴い,下肢遠位筋(足部)の筋萎縮が緩徐潜行性に進行する.一方,体幹や近位部に近い筋群(特に臀部・大腿)に急性・亜急性に疼痛を伴う筋萎縮・筋力低下が生じることがある.このまれな病態は“糖尿病性筋萎縮症”として知られるが,腰仙髄神経根・神経叢を病変主座とする非全身性血管炎性神経障害(NSVN)であり,免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)など,免疫療法の有効性が報告されている.

キーワード
糖尿病腰仙髄根神経叢障害 多巣性糖尿病神経障害 非全身性血管炎性神経障害 
免疫グロブリン大量静注療法


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コラム
糖尿病合併症を有する高齢者糖尿病治療のポイント
川田 伊織
      信州大学医学部 糖尿病・内分泌代謝内科
駒津 光久      信州大学医学部 糖尿病・内分泌代謝内科 教授

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第3章 大血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
脳血管障害の病態・診断・治療
真田 充 
    金沢医科大学 神経内科 准教授

要旨
 糖尿病は,脳血管障害で最も頻度の高い脳梗塞の危険因子であり,特に重症化するアテローム血栓性梗塞の頻度が増えている.脳血管障害が疑わしい場合は,的確に診断を行う必要がある.特に遺伝子組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rt?PA)療法を行う場合には,発症から4.5時間以内に限定されているため,制限された時間内で問診,診察,画像検査などを遂行する必要がある.本稿では脳血管障害の病態について概説した後,診断および推奨される治療法について解説する.

キーワード
ラクナ梗塞 アテローム血栓性梗塞 心原性脳塞栓症 CT/MRI 遺伝子組換え組織プラスミノーゲン活性化因子

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第3章 大血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
虚血性心疾患の診断・治療
坪井 秀太
    順天堂大学医学部附属 静岡病院 循環器科
代田 浩之    順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 教授

要旨
 糖尿病患者において,虚血性心疾患の発症は予後不良因子であるが,無症状に進行する無症候性心筋虚血をしばしば認め,自覚症状の乏しい患者に対しても早期に診断を行い,治療介入が必要である.治療のアプローチとしては,まずは至適薬物治療(OMT)を優先し,そのうえで血行再建を行うか検討する.経皮的冠動脈形成術(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG),どちらの方法で血行再建を行うかは,虚血性心疾患の重症度だけではなく,全身状態,患者背景を考慮することが重要である.

キーワード
無症候性心筋虚血 至適薬物治療 経皮的冠動脈形成術 冠動脈バイパス術

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第3章 大血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
糖尿病心筋症の病態
室原 豊明
    名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座 循環器内科学 教授

要旨
 糖尿病と心不全が併発すると患者の予後は著しく悪化する.糖尿病患者では冠動脈疾患を契機に心機能が低下し,心不全におちいるケースも多いが,必ずしも冠動脈の狭窄病変がなくても心機能が低下する例が見られ,このような病態を“糖尿病心筋症”と呼んでいる.糖尿病心筋症の詳細な機序についてはいまだ不明な点が多く,今後の研究が待たれる.本稿では,現状考えられている“糖尿病心筋症”の機序や病態を概説した.

キーワード
糖尿病 心不全 心筋エネルギー代謝 血管新生 毛細血管障害 


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第3章 大血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
糖尿病患者のPADの病態・診断・治療
小野 剛     東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科
中村 正人    東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 教授

要旨
 糖尿病患者に末梢動脈疾患(PAD)は,無症候性も含め高率に発症することが知られている.PADは予後不良のpolyvascular diseaseであることから,早期に発見し,積極的なリスク管理,薬物療法,運動療法を行っていく必要がある.血行再建術は必須ではなく,症状,病態に応じて行う.重症下肢虚血による潰瘍形成症例の場合は,多面的かつ包括的治療が必要になるため,多職種で対応しなくてはならない.

キーワード
polyvascular disease 末梢動脈疾患 足関節上腕血圧比 間欠性跛行 重症下肢虚血

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第3章 大血管合併症とその関連疾患の病態・診断・治療
神戸分類に基づく糖尿病足潰瘍の診断と治療
藤井 美樹
    北播磨総合医療センター 形成外科 主任医長
           北播磨総合医療センター 重症虚血肢センター センター長
寺師 浩人    神戸大学医学部附属病院 形成外科 教授

要旨
 糖尿病の合併症の1つに,足潰瘍がある.難治性であり,患者の生活の質(QOL)を下げるのみならず,医療経済上も大きな問題となっている.足を専門に診る医師の存在しない本邦では,これまで確立された治療法はなく,適切な治療を受けられずに切断に至った症例も少なくない.簡便で治療に結びつきやすい神戸分類に基づき,糖尿病足潰瘍の病態と治療方針を述べるとともに,今後の課題を提示する.

キーワード
糖尿病足潰瘍 神戸分類 胼胝下潰瘍 重症下肢虚血 footwear

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コラム
大規模臨床試験から見た糖尿病治療薬の心血管合併症抑制効果
植木 浩二郎
      国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長

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第4章 その他の関連疾患
認知症
小林 由佳
     東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科
鈴木 亮      東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 講師

要旨
 日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が2016年に「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を発表し,特に認知症を合併した高齢者糖尿病の早期発見や治療目標に注目が集まっている.本稿では,糖尿病患者の認知症発症疫学,リスク因子,1型と2型の違い,発症抑制や進行抑制,スクリーニングおよび診断,血糖コントロール目標,治療のポイントなどをまとめた.

キーワード
認知症 日常生活動作 低血糖 長谷川式認知スケール 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標

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第4章 その他の関連疾患
フレイル,サルコペニア
杉本 研 
     大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 講師
楽木 宏実    大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 教授

要旨
 フレイル,サルコペニアと糖尿病とは,互いに影響しあい悪循環を形成しており,その基盤に炎症やインスリン抵抗性の関与が示唆されている.そのためフレイル,サルコペニアを早期に同定し,対策を講じることが求められる.フレイル,サルコペニアの予防または治療として,運動と栄養補充の有用性は確立されつつあるが,糖尿病患者を対象にしたエビデンスはまだなく,糖尿病治療薬の有用性を含め,今後の研究が期待される.

キーワード
フレイル サルコペニア サルコペニア肥満 インスリン抵抗性 炎症

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第4章 その他の関連疾患
糖尿病と睡眠障害(うつ病を含む)
笹岡 利安
    富山大学大学院医学薬学研究部 病態制御薬理学 教授
恒枝 宏史    富山大学大学院医学薬学研究部 病態制御薬理学 准教授

要旨
 不眠症はうつ病と関連が深く,2型糖尿病の発症リスクを高めて血糖コントロールの悪化を招く.不眠により摂食量が亢進して肥満となり,交感神経活性の亢進やインスリン拮抗ホルモンの不適切分泌によりインスリン抵抗性や耐糖能異常を引き起す.睡眠と覚醒をつかさどるオレキシンは,肝糖産生を制御することでエネルギー・糖代謝の恒常性維持に寄与することから,オレキシンの概日リズムに即したオレキシン系の活性化あるいは抑制は,不眠症を伴った糖代謝異常の改善につながる可能性が期待される.

キーワード
不眠症 うつ病 インスリン抵抗性 オレキシン 睡眠薬

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第4章 その他の関連疾患
歯周病と口腔機能の維持
西村 英紀
       九州大学大学院歯学研究院 口腔機能修復学講座 歯周病学分野 教授

要旨
 歯周病はグラム陰性嫌気性菌の感染で惹起される.そのため,内毒素を始めとした種々の病原因子を産生する.歯周病細菌は基本的に歯周ポケット(生体外)で増殖するため,防御が働かず毒素を産生し続ける.この状況が持続することで,生体に慢性炎症が惹起され,耐糖能に影響を及ぼすことが示された.ここでは,歯周病による慢性炎症が糖尿病の病態に及ぼす影響に加え,代謝学の観点から考える栄養の経口摂取の意義について概説する.

キーワード
グラム陰性嫌気性菌 軽微な慢性炎症 高感度CRP インクレチン 咀嚼

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第4章 その他の関連疾患
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
国府島 庸之
        九州大学病院 肝臓・膵臓・胆道内科
                九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学(第三内科)
小川 佳宏          九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学(第三内科)教授
                東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 分子内分泌代謝学分野 教授

要旨
 糖尿病・糖代謝異常において,非アルコール性肝疾患(NAFLD)は高頻度に合併し,両者の病態は密接に関与している.NAFLD肝においては,インスリン抵抗性,脂質の過剰蓄積を背景とした脂質代謝異常,生体防御反応としての炎症が見られる.現時点での治療としては食事・運動療法が中心であるが,今後のNAFLDの病態解明と新たな治療標的の開発による進歩が望まれる.

キーワード
脂肪性肝障害 メタボリックシンドローム インスリン抵抗性 脂質代謝異常 慢性炎症

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第4章 その他の関連疾患
糖尿病とがん
浜口 哲矢
      神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学
廣田 勇士      神戸大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科 助教
小川 渉       神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授

要旨
 近年,糖尿病とがん罹患リスクには関連があることが示されている.がん罹患リスクが高まる機序として,インスリン抵抗性とそれに伴う高インスリン血症や,高血糖による酸化ストレスの亢進,肥満の脂肪組織において認められる慢性炎症や,アディポサイトカインの産生・分泌異常,性ホルモンを介した機序の関与,が指摘されている.本稿では,糖尿病とがんの疫学に加え,糖尿病によるがん発生リスク増加のメカニズムについて概説する.
キーワード
インスリン抵抗性 高インスリン血症 IGF-1 慢性炎症 性ホルモン

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第4章 その他の関連疾患
糖尿病患者に起る皮膚疾患
高山 かおる
    済生会川口総合病院 皮膚科 主任部長

要旨
 糖尿病患者にはさまざまな皮膚症状が出現する.糖尿病などの特定の内側疾患であることを疑わせる皮膚症状を,デルマドロームと呼ぶ.その中でも血流障害の可能性を疑わせる前脛骨部色素沈着などの症状は見逃せない.また糖尿病の合併症として生じる皮膚疾患としては糖尿病壊疽があり,切断の危険性に結びつくため,予防的管理が必要である.さらに,高血糖がもたらす重篤な細菌感染症にも注意が必要である.
キーワード
デルマドローム 前脛骨部色素沈着 糖尿病壊疽 フットケア

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第4章 その他の関連疾患
糖尿病と骨粗鬆症
山本 昌弘
     島根大学医学部 内科学講座 内科学第一 講師
杉本 利嗣     島根大学医学部 内科学講座 内科学第一 教授

要旨
 糖尿病患者では,対照群よりも有意に骨折リスクが高い.骨密度から予測される以上に骨折リスクが高いことから,骨質劣化により骨脆弱性が亢進していると考えられている.骨コラーゲンの過剰糖化や,骨形成の低下,細くて多孔化のある皮質骨形状のような,骨の材質的・構造的変化が骨質劣化に関与している.骨折リスクが増加する血糖降下薬があり,糖尿病治療時には,骨代謝への影響を考慮する必要がある.
キーワード
骨密度 骨質 ペントシジン 骨代謝回転 チアゾリジン

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第4章 その他の関連疾患
糖尿病と結核症
貫和 敏博
       公益財団法人結核予防会 常務理事

要旨
 糖尿病における易感染性はよく知られているが,その機序はなお不明である.結核合併もその範疇と理解される.低蔓延期の我が国では,新規登録結核患者の2/3は65歳以上であり,その20%が糖尿病を合併する.これら患者は,高蔓延期の出生者が潜在性結核で経緯し,高齢期に糖尿病発症とともに再燃したと考えられる.我が国の結核は低蔓延化後も当面は終焉せず,高齢潜在性結核感染(LTBI)患者の再燃として,糖尿病患者の中に顕在化する事実の認識が必要となる.
キーワード
糖尿病合併結核症 潜在性結核感染 結核再燃 高齢者結核 低蔓延期

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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
生活習慣の修正 1.食事療法
河合 俊英
    東京都済生会中央病院 糖尿病・内分泌内科 部長

要旨
 運動療法は2型糖尿病の発症予防に有用である.また,運動療法による2型糖尿病症例での血糖・代謝改善効果は明らかであり,治療的側面からは有酸素運動・レジスタンス運動共に推奨される.運動療法が糖尿病症例における心血管イベント・微小血管障害(網膜症,腎症,神経障害)の発症抑制に有効であるかどうかは,今後のエビデンスの蓄積が待たれる.運動療法は1型糖尿病症例に対しても,リスクファクターの改善を期待して推奨される.

キーワード
食事療法 三大栄養素 食塩 アルコール 糖尿病合併症

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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
生活習慣の修正 2.運動療法
河合 俊英
    東京都済生会中央病院 糖尿病・内分泌内科 部長

要旨
 運動療法は2型糖尿病の発症予防に有用である.また,運動療法による2型糖尿病症例での血糖・代謝改善効果は明らかであり,治療的側面からは有酸素運動・レジスタンス運動共に推奨される.運動療法が糖尿病症例における心血管イベント・微小血管障害(網膜症,腎症,神経障害)の発症抑制に有効であるかどうかは,今後のエビデンスの蓄積が待たれる.運動療法は1型糖尿病症例に対しても,リスクファクターの改善を期待して推奨される.

キーワード
運動 身体活動量 有酸素運動 レジスタンス運動 予防と治療


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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
生活習慣の修正 3.禁煙
能登 洋
    聖路加国際病院 内分泌代謝科 部長

要旨
 喫煙により糖尿病発症リスクが用量依存的に増加することが示されている.また,喫煙により糖尿病患者の血糖コントロールは悪化し,大血管症リスクや発がんリスクも有意に増加する.一方,これらのリスクは禁煙により可逆的であるものが多い.禁煙に伴い体重増加を来すことが多いが,体重増加やそれに伴う悪影響は一時的であり,長期的にはベネフィットがある.日常診療においても,個別化を図った禁煙指導を心がけたい

キーワード
喫煙 糖尿病合併症 がん 体重

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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
血糖管理による合併症予防
堀川 修 
    滋賀医科大学 内科学講座 糖尿病内分泌・腎臓内科
前川 聡     滋賀医科大学 内科学講座 糖尿病内分泌・腎臓内科 教授

要旨
 糖尿病による慢性的な高血糖をコントロールすることは,さまざまな糖尿病細小血管合併症の抑制や大血管合併症の抑制に寄与し,生活の質(QOL)の低下や健康寿命の短縮の抑制につながる.これらは1990年代に行われたDCCT,Kumamoto study,UKPDSにより証明され,またこれらの長期予後追跡試験は,良好な血糖コントロールが合併症の発症予防と進展抑制を期待でき,早期から血糖改善が重要であることを明らかにした.さらに2000年代のACCORDを始めとした試験からは,低血糖を来すほどの厳格治療は,むしろ合併症の悪化や健康寿命の短縮を招くことから,低血糖なく個々の症例に応じた適切な血糖コントロールが重要であることが明らかになった.本稿では,血糖コントロールによる合併症予防・進展抑制効果のエビデンスをこれまでの経緯とともに概説し,血糖降下作用だけにとどまらない,薬剤自身のもつ効果も,近年重要な点となっていることから,今後の展望としてご紹介したい.

キーワード
糖尿病合併症 糖尿病網膜症 糖尿病腎症 糖尿病神経障害 大血管障害

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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
血圧管理による合併症予防
宇津 貴
    公益財団法人 日本生命済生会付属日生病院 腎臓内科 部長/腎臓・透析センター センター長

要旨
 血圧管理を行うには,まず正しく血圧を測定することが必要である.糖尿病患者の合併症に関し,最もエビデンスレベルが高いのは診察室血圧だが,実臨床の場では正しく測定することが難しい.また,糖尿病患者には仮面高血圧が多いため,家庭血圧測定による評価は欠かせない.微量アルブミン尿や持続性蛋白尿を有する場合,目標血圧を<130/80mmHgに設定し,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を第1選択薬とするのは多くのガイドラインで一致しているが,正常アルブミン尿患者や血管合併症を有する患者での見解は一定しておらず,個々の病態に応じた治療が望まれる.生活習慣に対する指導は,収縮期血圧が≧120mmHgであれば行う.なお,ACEIまたはARBで治療されている患者に対する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与には,十分な留意が必要である.

キーワード
血圧評価 目標血圧 降圧薬選択 急性腎障害

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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
脂質管理による合併症予防
山田 穂高
    自治医科大学附属さいたま医療センター 内分泌代謝科 助教
平野 勉      昭和大学医学部 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科部門 教授

要旨
 糖尿病患者ではインスリン作用不足を基盤病態とした,高中性脂肪(TG)血症,低高比重リポタンパクコレステロール(HDL?C)血症,高small dense低比重リポタンパク(sd?LDL)血症を高頻度に認め,atherogenic lipid triadとして知られている.糖尿病合併脂質異常症は,心血管イベント発症のハイリスクグループである.糖尿病患者に対するスタチン系薬投与のベネフィットは日本人を含め,確立している.

キーワード
糖尿病 インスリン作用 リポタンパクリパーゼ 心血管イベント

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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
包括的治療による合併症予防
横山 宏樹
    自由が丘横山内科クリニック 院長

要旨
 2型糖尿病への包括的治療の浸透に伴い,2013年のJDDM集計(9,956人)として,血糖・血圧・脂質の管理目標達成率は52.9%・46.8%・65.5%,腎症・網膜症・神経障害の罹患率は29.5%・26.4%・27.7%,虚血性心疾患・脳梗塞・末梢動脈疾患の罹患率は7.0%・6.2%・1.3%を明らかにした.末期腎不全発症率も,1型・2型糖尿病ともに日本人データとして改善を認めた.糖尿病患者の長寿化に伴い,歯周病・認知症・がんを含む包括的治療の重要性が増しており,歯周病に関して文献的に考察した.

キーワード
糖尿病合併症 治療管理目標達成率 予後 大規模研究 JDDM

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第5章 合併症治療のエビデンスと今後の展望
糖尿病合併症重症化予防対策 -佐賀県での取組み-
井上 佳奈子
    佐賀大学医学部 肝臓・糖尿病・内分泌内科
安西 慶三      佐賀大学医学部 肝臓・糖尿病・内分泌内科 教授

要旨
 糖尿病患者数は年々増加し,糖尿病腎症による透析患者数は増加傾向にある.佐賀県は糖尿病合併症の重症化予防対策として,2012年から佐賀県糖尿病コーディネート看護師育成・支援事業を開始し,成果を上げている.佐賀県では特定健診のデータを活用した「ストップ糖尿病対策事業」や「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を組織し,医療機関や各自治体,多職種の協働により,さらなる新規透析導入患者の減少を図っていく.

キーワード
地域連携 糖尿病腎症 合併症 糖尿病性腎症重症化予防プログラム 佐賀県

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コラム
糖尿病および合併症治療におけるiPS細胞の可能性
長船 健二
    京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 教授

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