要旨

最新醫學 診断と治療のABC 129
呼吸器感染症

第1章 呼吸器感染症総論
新興呼吸器ウイルス感染症の疫学情報

大石 和徳    国立感染症研究所 感染症疫学センター センター長

要旨
インフルエンザA(H1N1)pdm2009ウイルスの抗原性はpdm1918ウイルスと近似していた.ヒトの鳥インフルエンザA(H5N1),A(H5N6)が発生しており,ヒトの鳥インフルエンザA(H7N9)は2016/2017年シーズンには,約800例に及ぶ症例が報告されている.2012年以来,中東呼吸器症候群(MERS)はサウジアラビアなどの中東諸国から2,000例以上の患者が報告されている.

キーワード
新型インフルエンザ 鳥インフルエンザ 中東呼吸器症候群

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第1章 呼吸器感染症総論
呼吸器感染症の原因微生物

村田 美香    長崎大学病院 検査部
森永 芳智    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野
栁原 克紀    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野 教授

要旨
 呼吸器感染症の原因微生物は多岐にわたる.患者に合った適切な治療を行うためには,原因となる代表的な微生物を把握し,できる限り原因の特定を行うことが重要である.呼吸器感染症の原因微生物の中には,日常的な細菌検査では検出が困難なものも含まれるため,検査に臨床側からの情報や検査依頼が必要になる場合もある.また,微生物検査は,検体採取の過程が検査結果を大きく左右する.検体の採取方法,微生物検査の特徴を知ることで,呼吸器感染症の診断・治療の質を高めることができる.

キーワード
Miller&Jonesの分類 Gecklerの分類 グラム染色 迅速抗原検査

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第1章 呼吸器感染症総論
呼吸器感染症の病理

堤 寛       はるひ呼吸器病院 病理診断科 部長

要旨
 呼吸器感染症の病理学的所見について,以下の病変の代表例をアトラス風に概説する.①上気道感染症:副鼻腔真菌症,インフルエンザ菌性咽頭炎,ジフテリア,②細菌性肺炎:大葉性肺炎,日和見肺炎,肺化膿症,誤嚥性肺炎,肺放線菌症と肺ノカルジア症,非定型肺炎,劇症型肺炎,③肺抗酸菌症:肺結核症,非結核性抗酸菌症,④肺真菌症:アスペルギルス・ムーコル・カンジダ症,クリプトコックス症,ニューモシスチス肺炎,輸入真菌症,⑤ウイルス性肺炎:インフルエンザ肺炎,アデノウイルス肺炎,麻疹肺炎と巨細胞性肺炎,日和見ウイルス性肺炎,ウイルス関連リンパ球増殖症,⑥肺寄生虫症:肺吸虫症,イヌ糸状虫症,エキノコックス症,糞線虫症.

キーワード
病理診断 病理解剖 細胞診断 劇症型感染症 日和見感染症

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第1章 呼吸器感染症総論
画像診断によるアプローチ

長谷川 瑞江      埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科
酒井 文和       埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科 教授

要旨
 呼吸器感染症における画像診断の役割として,存在診断,重症度,合併症の有無,基礎疾患の有無や非感染性疾患との鑑別などが挙げられる.また,近年ではコンピュータ断層撮影(CT)による原因菌の推定に関する研究が多数報告されている.被曝やコストの問題は残るが,身体的苦痛がなく短時間で施行可能なCTは,感染症診断においても魅力的な検査法である.本稿では,感染症におけるCTの役割と代表的な画像所見を示す原因菌の推定に役立つポイントを解説する.

キーワード
呼吸器感染症 肺炎 画像診断 CT HRCT

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第1章 呼吸器感染症総論
AMR時代に求められる病原体診断法 ?迅速診断法の進歩を含めて?

舘田 一博      東邦大学医学部 微生物・感染症学講座 教授

要旨
 薬剤耐性菌の蔓延が大きな問題となっており,抗菌薬の適正使用につながる検査法の開発が求められている.新しい検査法に求められているのは,臨床的・社会的・経済的インパクトである.検体を提出してから30分以内に結果が判明する,抗菌薬の投与前に病原体あるいは耐性を推定することができる検査法の開発が期待される.薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが発表されて1年,呼吸器感染症の診断法についても,新しい展開が期待されている.

キーワード
AMR対策アクションプラン 次世代迅速診断法 Point of Care Testing

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コラム
呼吸器感染症におけるバイオマーカー

山岸 由佳    愛知医科大学病院 感染症科 教授(特任)
           愛知医科大学病院 感染制御部 副部長
三鴨 廣繁    愛知医科大学病院 感染症科 教授(主任)
           愛知医科大学病院 感染制御部 部長


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第2章 細菌感染症
成人の市中肺炎

今村 圭文     長崎大学病院 第二内科 講師
迎 寛        長崎大学病院 第二内科 教授

要旨
 市中肺炎は,院内肺炎や医療・介護関連肺炎と比較して耐性菌のリスクは低く,予後も比較的良好である.敗血症の有無,A?DROPによる重症度判定により,治療の場とエンピリック治療内容を決定する.基本的には軽症?中等症例では細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別した治療を行い,重症例では広域β?ラクタム系薬による細菌性肺炎のカバーと,マクロライド系薬またはニューキノロン系薬による非定型肺炎のカバーを行う.

キーワード
市中肺炎 成人肺炎診療ガイドライン A-DROP 敗血症 ステロイド

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第2章 細菌感染症
異型肺炎

宮下 修行    川崎医科大学 総合内科学1准教授

要旨
 マイコプラズマやクラミジア肺炎にはβ?ラクタム系抗菌薬が無効で,“異型肺炎”と呼称されている.成人肺炎診療ガイドラインでは,抗菌薬の選択に際し,市中肺炎を異型肺炎と細菌性肺炎の2つに分けて,両群を鑑別する基準を設けた.ガイドライン公表後の診断法の進歩は目覚ましく,2013年以降,非定型病原体を検出する迅速診断法が普及している.本法の活用は狭域抗菌薬の選択を可能とし,耐性菌蔓延の抑止につながる.

キーワード
市中肺炎 異型肺炎 マイコプラズマ クラミジア 迅速診断/b>

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第2章 細菌感染症
高齢者の肺炎 -医療・介護関連肺炎と誤嚥性肺炎を中心に-
関 雅文 
     東北医科薬科大学病院 感染症内科・感染制御部 教授

要旨
 高齢者では,加齢に伴うさまざまな臓器機能,身体機能の低下に加え,基礎疾患の合併や耐性菌の関与も多くなり,死亡率が高い.これらは誤嚥性肺炎や医療・介護関連肺炎として認識されるが,抗菌薬に反応が乏しいため,より迅速かつ適切な診断や治療はもとより,肺炎の成因に沿った予防的対応が重要となる.ワクチンや感染制御の考え方,栄養や口腔ケアを含めた多職種連携による包括的なチーム医療が,さらに必要となる.

キーワード
嫌気性菌 生理機能検査 オーラルマネージメント ワクチン

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第2章 細菌感染症
易感染宿主の肺炎 -院内肺炎,耐性菌肺炎-
朝野 和典
     大阪大学医学部附属病院 感染制御部 教授

要旨
 易感染宿主に起る肺炎は,ウイルスや真菌,結核などの特定の微生物に偏る傾向がある.一方,細菌性の肺炎では,繰り返すうちに薬剤耐性菌が選択され,耐性菌の分離頻度が高くなる.肺炎の原因微生物の診断は困難であり,薬剤耐性菌が分離されても,必ずしも原因菌とは限らない.繰り返す肺炎を長期的にマネジメントするためには,迅速に抗菌薬を適正化することや,できるだけ短期間に治療を終了することが求められる.

キーワード
易感染宿主 院内肺炎 人工呼吸器関連肺炎 薬剤耐性菌肺炎 ガイドライン

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第2章 細菌感染症
重症肺炎とその治療
田坂 定智
      弘前大学大学院医学研究科 呼吸器内科学講座 教授

要旨
 重症肺炎は主に集中治療室(ICU)での管理が必要な病態を指す.原因菌としては肺炎球菌が最多だが,ウイルス性肺炎でも高サイトカイン血症を合併して重症化することがある.治療に際しては重症度スコアに加え,患者背景,敗血症の有無,耐性菌のリスクなどを考慮して治療方針を決定する.重症肺炎では初期にエンピリック治療として広域スペクトラムの抗菌薬を2剤以上併用することが多く,副腎皮質ステロイド(CS)の有効性も示唆されている.

キーワード
重症肺炎 重要度スコア 患者背景 敗血症 副腎皮質ステロロイド

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第2章 細菌感染症
肺炎随伴性胸水と膿胸
酒井 俊彦
    東京労災病院 第ニ呼吸器内科 部長
戸島 洋一    東京労災病院 呼吸器内科 部長

要旨
 肺炎随伴性胸水は,胸膜付近の肺炎が進展し,滲出液が臓側胸膜から胸腔内に流出することによって生じる.肺炎の原因菌が胸腔内に侵入することで,単純性肺炎随伴性胸水から複雑性肺炎随伴性胸水,さらには膿胸へと進行する.原因菌についての最近の研究では,従来の報告より嫌気性菌の関与が多いことが分かった.抗菌薬および胸腔ドレナージによる治療でも奏功しないときは,フィブリン溶解液の胸腔内注入や外科的治療が必要となる.

キーワード
肺炎随伴性胸水 膿胸 嫌気性菌 胸腔ドレナージ フィブリン溶解薬

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第2章 細菌感染症
肺炎の適正な抗菌薬治療について
青木 洋介
   佐賀大学医学部 国際医療学講座 臨床感染症学分野 教授

要旨
 β?ラクタム系薬の抗菌スペクトルを熟知することが大切である.カルバペネム系薬は,耐性菌感染症の標的治療薬として位置づける.肺炎は,下気道感染症としての肺炎と全身感染症の肺病変としての肺炎があり,両者は初期治療薬が大きく異なる.全身の身体診察が重要である.院内肺炎は口腔咽頭領域に定着した細菌の下気道への吸引による誤嚥性肺炎であり,偏性嫌気性菌の関与はほとんどない.抗菌薬の効果指標は抗微生物作用を第1とする.

キーワード
抗菌薬 全身感染症 気道感染症 院内肺炎 効果指標

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コラム
喘息,COPDと気道感染
松瀬 厚人
    東邦大学医療センター大橋病院 呼吸器内科 教授

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第3章 ウイルス感染症
呼吸器ウイルス
皿谷 健 
  杏林大学医学部 呼吸器内科 講師

要旨
 ウイルス感染症と呼吸器疾患は,市中肺炎(CAP)のみならず,気管支喘息発作,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪までの関与がある.間質性肺炎の急性増悪とウイルス感染の関与を示すデータは乏しい.呼吸器ウイルスが関与する病態とウイルス名,特にhuman rhinovirus(HRV),human metapneumovirus(hMPV),respiratory syncytial virus(RSV)などを念頭に置きながら,流行期も意識した診察が必要となる.

キーワード
ウイルス感染症 呼吸器疾患 HRV hMOV RSV

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第3章 ウイルス感染症
インフルエンザ
川名 明彦     防衛医科大学校 内科学講座(感染症・呼吸器) 教授

要旨
 “季節性インフルエンザ”とは平素流行しているインフルエンザを指す.“鳥インフルエンザ”とは,A(H5N1)やA(H7N9)などの鳥のインフルエンザウイルスによって起るヒト感染症を指す.重症化することが多い.“新型インフルエンザ”とは,遺伝子再集合によってできた新亜型ウイルスを指し,人類のほとんどは免疫を持たないため,インフルエンザパンデミックの原因となる.治療にはノイラミニダーゼ(NA)阻害薬が重要である.

キーワード
季節性インフルエンザ 鳥インフルエンザ 新型インフルエンザ ノイラミニダーゼ阻害薬 パンデミック

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第3章 ウイルス感染症
新興呼吸器感染症 -SARS,MERSなど-
中島 一敏
    大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 教授

要旨
 新興呼吸器感染症は,国際的な感染症危機管理上重要である.重症急性呼吸器症候群(SARS)は終息したが,実験室内には保存されている.中東呼吸器症候群(MERS)は,ヒトの持続的な感染は起っていないが,中東のヒトコブラクダでウイルスは蔓延している.2016年以降,A(H5N1)は減少しているが,A(H7N9)は過去最大の発生となった.新興呼吸器感染症に立ち向かうため,One Healthの推進,国際連携が重要である.

キーワード
新興呼吸器感染症 重症呼吸器症候群 中東呼吸器症候群 鳥インフルエンザ パンデミック

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コラム
災害と呼吸器感染症
三木 祐 
    独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 呼吸器内科 部長

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第4章 真菌感染症
肺アスペルギルス症
安藤 常浩
    社会医療法人みゆき会 みゆき会病院 呼吸器内科

要旨
 真菌感染症において,肺アスペルギルス症は多様なcompromised hostに伴い増加傾向にある.血清診断といった診断法の進歩や新規抗真菌薬の登場にもかかわらず,いまだ難治性感染症と言える.近年,診断・治療に関するガイドラインが整備された.薬剤耐性菌や,まれながら存在する隠蔽種などが最近問題となっている.肺アスペルギルス症の特徴を十分理解し,最新のガイドラインを参考にして診療にあたる必要がある.

キーワード
侵襲性肺アスペルギルス症 慢性肺アスペルギルス症 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 
 薬剤耐性 隠蔽種


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第4章 真菌感染症
肺クリプトコックス症
宮﨑 義継
    国立感染症研究所 真菌部 部長
中村 茂樹    国立感染症研究所 真菌部
梅山 隆     国立感染症研究所 真菌部
上野 圭吾    国立感染症研究所 真菌部
金城 雄樹    国立感染症研究所 真菌部 室長

要旨
 クリプトコックス症は,健常者の深在性真菌症として国内では最も頻度が高い真菌感染症であり,肺クリプトコックス症は,環境から感染する市中感染症と理解されている.我が国ではCryptococcus neoformansが主な原因真菌である.中枢神経病変の原因としてはC.gattiiの例も少数確認されている.明らかな免疫不全が確認されない患者では,肺クリプトコックス症の自覚症状は乏しく,異常陰影のみが異常所見である場合が少なくない.副腎皮質ステロイドを投与している肺クリプトコックス症患者には,播種のリスクがあり,脳脊髄液の検査が推奨される.

キーワード
肺クリプトコックス症 播種性クリプトコックス症 グルクロノキシロマンナン アゾール系抗真菌薬
 アムホテリシンB


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第4章 真菌感染症
その他の肺真菌症
渡辺 哲 
    千葉大学 真菌医学研究センター 臨床感染症分野 准教授
亀井 克彦    千葉大学 真菌医学研究センター 臨床感染症分野 教授

要旨
 近年の医療の高度化,診断法の発達などにより,いわゆる新興真菌症,再興真菌症が増加している.さらに国際交流の活発化などにより,輸入真菌症に遭遇する機会も増えてくると思われる.今回取り上げた肺真菌症はいずれも確立した診断法が存在せず,確定診断は培養検査,病理組織学的検査が中心となる.ただし輸入真菌症原因菌は感染力が極めて強いものが多いため,一般の検査室での検体培養は施行しないようにすべきである.

キーワード
肺ムコール症 肺スケドスポリウム症 肺コクシジオイデス症 ヒストプラズマ症 免疫低下宿主

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第4章 真菌感染症
呼吸器感染症における抗真菌薬の選択
酒井 純 
        埼玉医科大学病院 感染症科・感染制御科
前﨑 繁文        埼玉医科大学病院 感染症科・感染制御科 教授

要旨
 深在性真菌症の治療は,抗真菌薬の感受性が原因真菌によって異なるため,適切な薬剤を十分量,十分な期間投与する.治療薬は予防投薬・経験的治療・標的治療に応じて選択する.カンジダ症には原因真菌に応じてアゾール系やエキノキャンディン系を,アスペルギルス症はボリコナゾール(VRCZ)やイトラコナゾール(ITCZ)などのアゾール系薬やエキノキャンディン系薬が選択される.ニューモシスチス肺炎には,スルファメトキサゾール/トリメトプリム(ST合剤)が第1選択薬であり,必要に応じてステロイドを併用する.

キーワード
アゾール系 エキノキャンディン系 ポリエン系 スルファメトキサゾール/トリメトプリム

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第5章 抗酸菌感染症
肺結核症の疫学
佐々木 結花
        公益財団法人 結核予防会複十字病院 呼吸器センター(呼吸器内科)
                呼吸器センター長(内科)

要旨
 結核症はヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS),マラリアと共に世界三大感染症とされ,2015年の新規結核患者数は1,040万人,男性590万人,女性350万人,小児100万人と報告されている.本邦では1998?2000年に結核罹患率が再上昇し,結核緊急事態が1999年に厚生労働大臣から宣言された.現在罹患率は緩やかに減少傾向であるが,高齢者結核,外国人結核など問題が生じており,結核対策は継続される必要がある.

キーワード
結核 多剤耐性結核 リファンピシン耐性結核 高齢者結核 外国人結核

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第5章 抗酸菌感染症
肺結核症
永井 英明
        国立病院機構 東京病院 呼吸器センター 部長

要旨
 我が国は結核の中蔓延国である.臨床現場では常に結核患者に遭遇する機会があることを認識し,結核患者を早期に診断し,適切な対応を行わなければならない.そのためには結核についての正確な知識が必要である.肺結核を疑う症例については喀痰検査を日を変えて3回行う必要がある.結核は全身のあらゆる臓器に病巣を作るので,肺に病変がなくても,診断に苦慮する症例については結核を鑑別に入れるべきであろう.

キーワード
結核 tree-in-bud インターフェロンγ遊離試験 多剤耐性結核

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第5章 抗酸菌感染症
肺非結核性抗酸菌症
長谷川 直樹
       慶應義塾大学医学部 感染制御センター 教授

要旨
 近年の疫学調査により,我が国の肺非結核性抗酸菌(NTM)症の罹患率は肺結核を上回り,著しく増加していることが示唆された.結核に類似した線維空洞型のほか,主に中高年のやせ型女性の中葉舌区に気管支拡張像と小結節性陰影を伴う病型が増加している.原因菌としてはMycobacterium avium complex(MAC)菌が90%,M.kansasii,M.abscessusが3?4%を占める.診断には喀痰培養で複数回菌を検出することが重要である.多剤併用療法を実施するが,M.kansasii症以外は難治性であり,治療の開始時期,継続期間は定まっていない.

キーワード
肺非結核抗酸菌症 MAC M.kanssasii M.abscessus complex マクロライド


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コラム
『成人肺炎診療ガイドライン2017』のポイント
藤倉 雄二
        防衛医科大学校 内科学講座(感染症・呼吸器)講師

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第6章 呼吸器感染症の予防
肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチン
石田 直 
        公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 呼吸器内科 主任部長

要旨
 肺炎球菌ワクチンは,侵襲性肺炎球菌感染症を予防し,高齢者における肺炎の発症を抑制する.莢膜多糖体ワクチンと結合型ワクチンがあるが,両者を組み合わせて接種することが勧められている.我が国では,インフルエンザワクチンは不活化ワクチンが用いられており,リスクグループに対して接種が推奨される.肺炎球菌ワクチンでは莢膜型置換が,インフルエンザワクチンでは鶏卵馴化によるワクチン効果減弱が問題となっている.

キーワード
侵襲性肺炎球菌感染症 肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン 肺炎球菌結合型ワクチン インフルエンザワクチン
 莢膜型置換


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第6章 呼吸器感染症の予防
口腔ケア
茂呂 寛 
        新潟大学医歯学総合病院 感染管理部 准教授

要旨
 高齢者肺炎の大部分を誤嚥性肺炎が占める中で,有用な予防法の1つとして,口腔ケアによる細菌叢の制御が広く実施されている.システマティックレビューの結果,誤嚥性肺炎,人工呼吸器関連肺炎(VAP)の病態で,口腔ケアによる肺炎発症の抑制効果が確認された.このたび改訂された『成人肺炎診療ガイドライン2017』でも,肺炎予防を目的とした口腔ケアが推奨されており,我が国の事情に沿った形での運用が望まれる.

キーワード
口腔ケア 誤嚥性肺炎 人工呼吸器関連肺炎 不顕性誤嚥

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第6章 呼吸器感染症の予防
呼吸器感染症の予防内服
小林 治 
        杏林大学保健学部 臨床検査技術学科 教授

要旨
 医療の高度化に伴い,医療施設内の感染管理もより繊細で高度な質が求められている.呼吸器感染症の感染管理で臨床上大切な3疾病である,インフルエンザ,ニューモシスチス肺炎,肺結核症については,それぞれ予防内服が認められている.適応症,用法用量,届出基準に留意しながら,適切に対応するのが望ましい.

キーワード
予防内服 インフルエンザ ニューモシスチス肺炎 潜在性結核菌症

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