要旨

最新醫學 診断と治療のABC 132
老年精神医学

第1章 総論
高齢者の身体的特性

櫻井 博文   東京医科大学 高齢総合医学分野 教授

要旨
 高齢者疾患の特徴は,多くの臓器に疾患を有していること,症状や経過が非定型的であること,個人差が大きいこと,治療薬による副作用が出やすいことなどである.高齢者疾患では治癒を目指す医療だけでは対応できないことが多く,身体的,精神心理的,家庭・社会的などの生活機能障害を総合的に評価(高齢者総合機能評価(CGA))し,日常生活動作(ADL)の維持や改善を目指すといった生活機能を重視することが,健康寿命の延長に重要である.

キーワード
生理的老化 病的老化 フレイル 生活機能改善 高齢者総合機能評価

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第1章 総論
高齢者の心理特性

松田 修    上智大学総合人間科学部 心理学科 教授

要旨
 老年期の主たる発達課題は統合性と世代性である.高齢者は加齢に伴う変化に適応するための補償プロセスを発達させることで,その影響を減弱させている.老年期の性格変化はさほど大きくはない.知能や認知機能の加齢変化は,処理速度,処理容量,抑制機能の低下と関連するらしい.高齢者の心理的特性は,複数の要因による影響を受けながら,個々の人生の歴史のうえに成り立っている.このことを忘れて高齢者を理解することはできない.

キーワード
選択最適化補償理論 社会情動的選択性理論 老年的超越理論 性格 知能・認知機能

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第1章 総論
高齢者への心理療法

樫村 正美      日本医科大学 医療心理学教室 講師

要旨
 高齢者を対象としたさまざまな心理療法が存在するが,ほかの世代に比べて,高齢者の心理療法研究への関心は,これまであまり多く集まることはなかった.高齢者には不安症状やうつ症状といった精神症状が広く見られることが分かっており,薬物療法だけではなく,非薬物療法の適用も重要である.本稿では,これまでの高齢者を対象とした心理療法研究を概観し,現在注目を集める認知行動療法(CBT)を中心に,そのほかの心理療法も紹介する.

キーワード
高齢者 心理療法 非薬物療法 認知行動療法 介護家族

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第1章 総論
高齢者への薬物療法 1.一般的注意

秋下 雅弘      東京大学大学院医学系研究科 加齢医学講座 教授

要旨
 高齢者で薬物療法を安全かつ有効に実施することは困難である.実際に,薬物動態の加齢変化やポリファーマシー(polypharmacy)を背景として,薬物有害事象のリスクは高齢者ほど高く,残薬や嚥下障害など服薬管理の問題もある.特にポリファーマシー対策は喫緊の課題であり,身体疾患治療薬を含めた処方の適正化,抗コリン作用を有する薬物や生活習慣病の管理目標への配慮を十分に行う必要がある.

キーワード
薬物有害事象 ポリファーマシー アドヒアランス

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第1章 総論
高齢者への薬物療法 2.向精神薬・漢方薬

水上 勝義      筑波大学大学院人間総合科学研究科 スポーツ健康システム・マネジメント専攻 教授

要旨
 高齢者への薬物療法について,睡眠薬・抗不安薬,抗うつ薬,抗精神病薬,漢方薬を使用する場合の注意点を中心に述べた.いずれの薬物療法も,まずは非薬物療法を十分に行い,効果が不十分の場合に適否を検討したうえで実施する.薬物療法に際しては,より安全性が高い薬剤を少量から使用するのが原則である.ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬,三環系抗うつ薬,定型抗精神病薬の使用は,できるだけ控えるべきである.

キーワード
睡眠薬 抗不安薬 抗精神病薬 抗うつ薬

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コラム
高齢者への電気けいれん療法

金野 倫子    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 教授


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第1章 総論
高齢者への社会的支援

新村 秀人       慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 専任講師

要旨
 高齢者および精神保健福祉に関する社会的な支援には,地域包括ケア(認知症疾患医療センター,地域包括支援センター),介護保険サービス,障害福祉サービス(障害者総合支援法,精神障害者保健福祉手帳),権利擁護制度(成年後見制度,高齢者虐待防止法),経済的支援(障害年金)など,さまざまなものがある.どのような社会的支援があるのかを理解し,状況に応じた適切な支援を受けられるようにすることが大切である.

キーワード
地域包括ケア 介護保険 障害者総合支援法 成年後見制度  高齢者虐待防止法

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第1章 総論
高齢者の自殺

水野 康弘    帝京大学医学部附属溝口病院 精神科
張賢 徳      帝京大学医学部附属溝口病院 精神科 教授

要旨
 高齢者の主な自殺の危険因子として,精神障害(うつ病),自殺企図歴,希死念慮,喪失感と孤立感を伴う否定的ライフイベント,老年期の発達課題の失敗に伴う絶望感および周囲に対して抱く負担感や孤立感,が挙げられる.これらを自殺プロセスとしてとらえ,うつ病の早期発見と治療,自殺リスク評価と介入,社会的サポートシステムの構築と連携による自殺予防を展開することが重要である.高齢者を尊重して地域で支え,彼らがつながり・役割・存在価値を実感することも不可欠である.

キーワード
高齢者 自殺 危険因子 自殺対策

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コラム
高齢者の医療同意能力評価
成本 迅 
     京都府立医科大学大学院医学研究科 精神機能病態学 教授


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第2章 各論
アルツハイマー型認知症 1.概念,疫学,病態,診断
粟田 主一
     東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長

要旨
 アルツハイマー型認知症とは,老人斑,神経原線維変化,神経細胞の脱落を特徴とする脳の病的変化に起因する認知症である.潜行性に発症し,緩徐に進行し,初期には近時記憶障害が目立ち,経過とともに多様な認知機能障害と生活障害を呈する.高齢者の認知症の中では最も頻度が高い.アミロイドβタンパク(Aβ)凝集体が神経原線維変化,神経細胞死を誘発するというアミロイド・カスケード仮説が提唱されている.臨床的には精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM?5)の診断基準が使用されている.

キーワード
老人斑 神経原線維変化 近時記憶障害 アミロイド・カスケード仮説 DSM-5診断基準

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第2章 各論
アルツハイマー型認知症 2.治療・ガイドライン
福井 俊哉
      かわさき記念病院 病院長
              昭和大学 神経内科 客員教授

要旨
 アルツハイマー型認知症(DAT)の疾患修飾薬がいまだ実用化されていない現状では,入手可能な対症療法薬を正しい薬理学的知識に基づいて使いこなすことが肝要である.本稿では『認知症疾患診療ガイドライン2017』におけるDAT治療指針を紹介しつつ,コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)の薬理学的背景,軽度認知障害(MCI)に対する薬物治療の問題点,薬物治療開始のタイミング,重症化に対する増量の至適時期,薬剤交換方法,N?メチル?D?アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬の使い方,治療中止時期について概観する.

キーワード
アルツハイマー型認知症 軽度認知障害 コリン仮説 コリンエステラーゼ阻害薬 NMDA受容体拮抗薬

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コラム
認知症の自動車運転-本当にあったヒヤリ体験-
玉井 顯 
    敦賀温泉病院 認知症疾患医療センター
           介護老人保健施設ゆなみ 理事長・院長


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第2章 各論
軽度認知障害(MCI)
野崎 一朗
   金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 医学専攻 脳老化・神経病態学(神経内科学)
山田 正仁   金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 医学専攻 脳老化・神経病態学(神経内科学)教授

要旨
 軽度認知障害(MCI)は,正常と認知症の中間に位置する概念であり,認知症の早期診断のうえで重要である.MCIそのものは臨床診断であるが,その背景疾患・病態を検索する必要があり,頭部磁気共鳴画像(MRI),陽電子放射断層撮影(PET),脳脊髄液検査などが有用である.現時点で,アルツハイマー病(AD)によるMCIから認知症への進展を抑制したというエビデンスのある薬剤はない.MCIから認知症へと移行する例をコンバーターと呼ぶが,一方でMCIから改善する例(リバーター)も存在し,背景疾患・病態による.MCIは背景疾患・病態に基づき,適切な治療介入を行っていく必要がある.

キーワード
経度認知障害 アルツハイマー病 アミロイドβタンパク タウタンパク 陽電子放射断層撮影

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第2章 各論
レビー小体型認知症
長濱 康弘
    医療法人花咲会 かわさき記念病院 副院長

要旨
 レビー小体型認知症(DLB)の主要な症状は,認知機能低下,パーキンソニズム,幻視などの精神症状,レム睡眠行動異常症(RBD),抑うつ,自律神経症状などである.症状が典型的でない症例では誤診しやすいので,指標的バイオマーカーも利用して診断を行う.適切な治療とケアを行うには,精神症状を含め正確な症状の把握と理解が重要である.認知障害,精神症状,身体症状に対する薬物治療は有効であるが,DLBでは薬剤の副作用を生じやすいので注意が必要である.患者の生活の質(QOL)を維持するためには,リハビリや介護環境調整,介護者への心理教育やサポートも大切である.

キーワード
レビー小体型認知症 神経症状 BPSD パーキンソン病 コリンエステラーゼ阻害薬

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第2章 各論
前頭側頭型認知症
品川 俊一郎
       東京慈恵会医科大学 精神医学講座 講師

要旨
 前頭側頭型認知症(FTD)は,前頭葉や側頭葉前方に病変の主座のある変性性認知症の総称である.多様な背景病理をもつヘテロジニアスな疾患群であり,その分類や呼称には幾つかの変遷があった.病理学的な用語として前頭側頭葉変性症(FTLD)と呼ばれることもある.FTDは臨床症候群として,行動型FTD(bvFTD),非流暢/失文法型原発性進行性失語症(nfvPPA),意味型原発性進行性失語症(svPPA)の3つの類型に大分される.中核となるbvFTDは若年発症例が多く,脱抑制や常同行動,自発性の低下といった特徴的な行動症状を呈するため,介護者の負担が大きい.現時点では有効な薬物療法が確立されておらず,介護者援助を含めた非薬物的な介入が重要である.

キーワード
前頭側頭型認知症 前頭側頭葉変性症 若年認知症 行動症状

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第2章 各論
そのほかの変性性認知症
渡辺 亮平     筑波大学医学医療系 臨床医学域 精神医学
東 晋二       筑波大学医学医療系 臨床医学域 精神医学 講師
田村 昌士     茨城県立こころの医療センター 精神科
新井 哲明     筑波大学医学医療系 臨床医学域 精神医学 教授

要旨
 進行性核上性麻痺(PSP),皮質基底核変性症(CBD),嗜銀顆粒病(AGD),原発性加齢性タウオパチー(PART)の臨床症状,診断,病理所見,治療法などについて解説した.いずれも,タウの凝集・蓄積が神経変性を誘導する原発性タウオパチーに属する.臨床像の多様さ,有効なバイオマーカーや治療薬の不足などから,これらの臨床診断・治療はしばしば困難であり,今後のさらなる研究の進歩が待たれる.

キーワード
変性性認知症 進行性核上性麻痺 皮質基底核変性症 嗜銀顆粒病 原発性加齢性タウオパチー

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第2章 各論
血管性認知症
長田 乾 
    横浜総合病院 臨床研究センター センター長
要旨
 血管性認知症(VaD)は,脳梗塞,脳出血,低灌流など,さまざまな脳血管障害(CVD)を基盤とする認知症の総称であるが,疾病概念も時代と共に大きく変化している.特に認知症高齢者では,アルツハイマー病(AD)の病理所見と脳血管病変が高率に併存すること(AD with CVD)から,脳卒中後認知症のみならず,脳卒中イベントを起さないような比較的軽微なCVDであっても,ADの病態を修飾する危険因子として再認識されている.

キーワード
血管性認知症 アルツハイマー病 血管性認知障害 脳血管障害 複合病理

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第2章 各論
特発性正常圧水頭症
數井 裕光
    高知大学医学部 神経精神科学講座 教授

要旨
 特発性正常圧水頭症(iNPH)は,治療可能な認知症の代表疾患であり,近年,高頻度の病態であることが明らかになってきた.本疾患については診療ガイドラインを基本として,認知障害,歩行障害,排尿障害を評価し,かつ頭部磁気共鳴画像法(MRI)で脳室拡大とくも膜下腔の不均衡な拡大を伴う水頭症(DSEH)所見を確認する.そして脳脊髄液(CSF)排除試験を行い,症状に改善を認めたらシャント術を考慮する.早期に診断し,適時にシャント術を実施することが重要で,約70%の症例で改善が認められる.

キーワード
特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 3徴 DESH シャント術 脳脊髄液排除試験
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第2章 各論
プリオン病
髙尾 昌樹
    埼玉医科大学国際医療センター 神経内科・脳卒中内科 教授

要旨
 プリオン病に関して,基礎,臨床,病理所見に関してまとめた.クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)が代表的疾患であるが,プリオンタンパク遺伝子変異による遺伝性プリオン病もあり,その表現型は多様である.いったん発症すると,有効な治療法はなく,致死的疾患である.近年,プリオン病の病態機序とアルツハイマー病やレビー小体病との関連も注目され,本疾患の解明は神経変性疾患の克服へ,大きくつながるものである.

キーワード
プリオン プリオン遺伝子 クロイツフェルト・ヤコブ病 MRI 病理

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第2章 各論
中枢神経の感染症
本田 真也
    山口大学大学院医学系研究科 神経内科学
神田 隆      山口大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授

要旨
 高齢者は,免疫能の低下により感染症が生じやすい状態となっている.髄膜炎や脳炎などの中枢神経の感染症は,診断と治療の遅れが,生命予後はもちろんのこと,機能予後にも影響する.高齢者の中枢神経の感染症では,頭痛や発熱といった典型的な症状がなく,全身倦怠感や認知機能障害などの非特異的な症状を呈している場合があり,感染症を疑って診療に臨まなければ,見逃す可能性がある.

キーワード
髄膜炎 脳炎 肺炎球菌 単純ヘルペスウイルス

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第2章 各論
治療可能な認知症
村松 和浩
      東京歯科大学市川総合病院 神経内科 部長・教授

要旨
 物忘れを主訴として,さまざまな原因をもつ認知症を疑われる患者が外来を訪れる.いまだ根本的治療法のないアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患以外に,適切な対処,治療により回復しうる“治療可能な認知症”が少なからず存在する.患者の高齢化のため,その中でもてんかん性機序,多剤併用による薬物誘発性機序による認知症が増えているが,治療への反応性が良く,その鑑別診断は重要であり,見逃せない.

キーワード
治療可能な認知症 鑑別診断 てんかん性健忘 薬物による認知機能障害 非けいれん性てんかん性重積状態

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第2章 各論
せん妄・症状精神病
西村 勝治
         東京女子医科大学医学部 精神医学講座 教授

要旨
 せん妄は,急性に生じる注意と認知の障害を主徴とした症候群であり,さまざまな身体疾患や物質(医薬品を含む)が原因となって生じる“急性脳不全”である.特に高齢者に頻繁に生じるが,認知症やうつ病と誤診され,見逃されることが多い.マネジメントの基本的な戦略は,①安全の確保,②原因の探索・同定と介入,③非薬物療法,④薬物療法,⑤患者・家族への説明,である.このうち,非薬物療法のアプローチは予防的な介入にも用いられる.

キーワード
せん妄 症状精神病

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コラム
精神科リエゾンチームの実際
河野 佐代子
           慶應義塾大学病院 看護部 精神看護専門看護師(リエゾン)


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第2章 各論
老年期うつ病 -亜型分類とその治療-
上田 諭 
         東京医療学院大学保健医療学部 リハビリテーション学科 教授

要旨
 老年期うつ病は,制止型,不定愁訴型,焦燥型の3つの亜型がある.前2者は抗うつ薬がよく奏効するが,焦燥型のほとんどは,抗うつ薬は有効ではない.焦燥型は,病識があり治療を強く求める「身体感情中心型」,微小妄想を生じ自殺リスクの高い「退行期メランコリー」,さらに「うつ病性混合状態」に分けられる.焦燥型の治療は,主に非定型抗精神病薬または炭酸リチウムまたはバルプロ酸,電気けいれん療法(ECT)が適当である.

キーワード
老年期うつ病 亜型分類 焦燥型うつ病 抗うつ薬 電気けいれん療法

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第2章 各論
老年期双極性障害
武島 稔
       Jクリニック 院長

要旨
 人口高齢化に伴い,精神疾患に罹患した高齢者の数も劇的に増加することが予測されるが,認知症や老年期うつ病と比べて老年期双極性障害を対象とした研究は乏しい.本稿では老年期双極性障害の特性をまとめてみたが,過去の研究から得られる知見の大部分は,躁病相や双極Ⅰ型障害の入院症例の特徴に関するものである.うつ病相,双極Ⅱ型障害,適正な薬物療法については不明な点が多く,今後の研究の進展が待たれる.

キーワード
双極性障害 うつ病 高齢 老年期 気分障害


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第2章 各論
老年期の非器質性幻覚妄想状態
古茶 大樹
       聖マリアンナ医科大学 神経精神科 教授

要旨
 老年期の非器質性幻覚妄想状態を取り上げる.“非器質性”とは,臨床的な水準で“明らかな身体疾患が見つからない”という意味である.高齢者の症例で,器質性・非器質性を厳密に鑑別しようとすることは難しい.老化性器質変化を,症状に無関係であると断言することも難しいし,その一方で,あらゆる高齢者の幻覚妄想状態を,背景にある脳器質的変化に還元できる確たる保証もない.代表的な類型について,その症候学的特徴を中心に論じた.

キーワード
遅発パラフレニー 遅発性統合失調症 接触欠損パラノイド 遅発緊張症 退行期メランコリー

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コラム
老年期うつ病のPET
佐野 康徳
       慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室


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第2章 各論
老年期不安障害・身体表現性障害
稲村 圭亮
       東京慈恵会医科大学附属柏病院 精神医学講座
繁田 雅弘       東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授

要旨
 老年期における不安障害および身体表現性障害は、若年者とは異なる背景基盤が存在する。そのことが症候学的な差異を生じさせる要因にもなっている。したがって、老年期におけるこれらの疾患群に対する介入の前提として、老年期特有の背景基盤の理解が必要となる。本稿では老年期の不安障害および身体表現性障害の疫学・背景因子など包括的な知見を概説したうえで、さらに老年期特有である認知機能障害との関連についても言及した。

キーワード
高齢者 老年期 不安障害 身体表現性障害

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第2章 各論
高齢者の睡眠障害
遠藤 拓郎
       慶應義塾大学医学部 睡眠医学研究寄附講座 特任教授
             スリープクリニック調布 院長

要旨
 高齢者の睡眠障害を正しく診断することは容易ではなく,適切な生活指導や薬物療法を選択するのも難しい.不眠症は,定年退職後から急増し,睡眠時間が急激に延び,睡眠薬の処方率が急激に上がる.高齢者の睡眠障害の中で頻度の高い,不眠症,睡眠時無呼吸症候群,夜間頻尿,レム睡眠行動障害,甲状腺機能低下症を紹介し,治療法について説明した.睡眠障害にもさまざまな背景があるため,原因を無視して睡眠薬のみを処方することは問題である.

キーワード
不眠症 睡眠時無呼吸症候群 夜間頻尿 レム睡眠行動障害 甲状腺機能低下症

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