最新医学54巻11号(絶版売切)

特集要旨


アプローチ:樹状細胞の基礎的研究とその臨床応用の可能性

片 山 直 之
三重大学医学部 第二内科

要旨
 免疫細胞生物学の研究は樹状細胞 (DC) の腫瘍免疫における役割と重要性を明らかにし,その ex vivo での調製を可能にした.一方,分子生物学的手法により,細胞傷害性 T 細胞によって認識される幾つかの腫瘍抗原分子,およびそれらの分子由来の MHC クラスI分子と結合する抗原エピトープが同定された.これらのことが,DC を用いた腫瘍抗原特異的免疫細胞療法を試験的に開始させている.本療法をがんに対する治療法の1つとして定着させるためには,その試験計画や評価法の樹立を科学的に推進していかなければならない.

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樹状細胞の生物学的特性

稲 葉 カ ヨ*1  稲 葉 宗 夫*2

*1 京都大学大学院生命科学研究科 高次生命科学専攻生体応答学分野 教授
*2 関西医科大学 病理学第一講座 助教授

要旨

 強力な抗原提示細胞として免疫応答の誘導に働くことが知られる樹状細胞について,T 細胞への抗原提示に加えて,新たに未熟な前駆細胞からの増殖分化に関するサイトカイン要求性や分化経路の詳細とサブセットの存在,生体内での移動に必要と考えられるケモカイン受容体の発現とリンパ球を誘引するケモカインの産生,成熟に伴う抗原捕食・分解能など,生理活性の変化に関する多くの知見が得られている.

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樹状細胞の Ontogeny

橋 本 真 一*   松 島 綱 治**
* 東京大学医学部 衛生学教室 ** 同 教授

要旨
 樹状細胞は強力な抗原提示細胞であり,免疫系において非常に重要な細胞である.リンパ系および非リンパ組織の樹状細胞は,おのおのの機能や表面マーカーが異なっており,異なった呼称がなされている.これら樹状細胞の多様性はそれぞれの細胞の発生起源に由来していると考えられ,ヒトとマウスの研究から,少なくとも幾つかの樹状細胞サブセットは造血前駆細胞から骨髄系とリンパ系の2つの異なった分化過程を経て,成熟樹状細胞に分化すると考えられている.

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樹状細胞と破骨細胞

赤 川 清 子
国立感染症研究所 免疫部 免疫工学室長

要旨
 ヒト単球は,マクロファージのみならず,樹状細胞 (DC) や骨の形成と吸収作用を持つ破骨細胞様の多核巨細胞に分化する.DC もその分化段階のあるステップではマクロファージに変換可能なこと,また成熟マクロファージもある条件では DC に分化可能なことも知られた.さらに,樹状細胞の生存を促す分子 TRANCE/RANKL は,破骨細胞の分化を誘導する分化因子 ODF/OPGL と同一の分子であることが知られた.

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単球由来の樹状細胞

三 谷 英 嗣   荒 木 裕 登

三重大学医学部 第二内科

要旨
 樹状細胞 (DC) は生体内で最も中心的な抗原提示細胞であり,末鞘血単球からもサイトカインにより誘導できる.単球由来の DC の in vitro での生物学的活性は従来の DC と同等である.単球由来の未熟な DC は Langerhans 細胞,マクロファージに形質変換でき,マクロファージも DC へ変わりうる.また,単球から DC への分化における血管内皮細胞のかかわりも示唆されている.

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白血病細胞由来樹状細胞

長 山 人 三*   佐 藤 克 明*   高 橋 恒 夫**
*東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング研究部門 ** 同 教授

要旨
 樹状細胞は強力な抗原提示細胞である.我々は白血病患者の “アネルギー” を解除する目的で,骨髄球系白血病患者の CD34 陽性細胞を GM-CSF,IL-4,TNF-アルファの存在下で in vitro で培養し,樹状細胞への分化誘導を試みた.骨髄球系白血病,とりわけ急性単球性白血病や慢性骨髄性白血病の急性転化例,骨髄異形成症候群では形態学的に樹状突起を持ち,細胞表面化学的にも CD1a,CD11c,CD40,CD83,CD86,HLA-DR 等を発現した白血病細胞由来樹状細胞が得られた.同種リンパ球混合反応や抗原取り込み能,遊走能等の細胞生物学的特徴も,健常人の樹状細胞と同様の性質を示した.今後,白血病細胞由来樹状細胞の腫瘍ワクチンとしての有用性に興味が持たれる.

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樹状細胞とがん細胞の融合細胞を用いた特異的がん免疫の誘導

本 間 定*1*2 大 野 典 也*2
戸田 剛太郎**1  Donald Kufe*3

*1 東京慈恵会医科大学 内科学講座第一 講師 
**1 同 教授
*2 同 DNA 医学研究所 悪性腫瘍治療研究部門 教授
*3 Dana-Farber Cancer Institute, Harvard Medical School

要旨
 強力な抗原提示細胞 (APC) である樹状細胞とがん細胞の融合細胞を,ポリエチレングリコール処理によって作製した.この融合細胞は樹状細胞の発現する MHC 分子や共刺激分子とがん細胞の抗原を発現し,APC 化されたがん細胞と考えられる.マウスを用いた基礎的検討では,融合細胞の宿主への投与により,がん細胞特異的な細胞傷害性 T 細胞が誘導され,予防・治療効果を示す抗腫瘍免疫が得られたことが報告されている.自己の樹状細胞とがん細胞の融合細胞を用いれば,がん抗原が未同定ながんに対しても特異的な免疫療法を施行しうる可能性が考えられる.


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樹状細胞への遺伝子導入による免疫療法


石 田 禎 夫*   今 井 浩 三**
* 札幌医科大学 第一内科 ** 同 教授

要旨
 樹状細胞とがん抗原ペプチドを用いた免疫療法は,実際に患者の治療に応用されつつある.この樹状細胞にさまざまな抗原遺伝子を導入し,免疫療法に応用しようとする試みが盛んに行われ,マウスでは細胞傷害性 T 細胞 (CTL) が誘導され,抗腫瘍効果が得られている.現在アデノウイルスを用いた遺伝子導入方法が最も臨床応用に近いと思われるが,レトロウイルスやプラスミド DNA を用いたさまざまな方法が検討されている.

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樹状細胞と腫瘍抗原由来ペプチドを用いた細胞傷害性 T 細胞の誘導

贄 田 美 江
日本赤十字社中央血液センター 研究部

要旨
 樹状細胞 (DC) に腫瘍抗原もしくは腫瘍抗原由来のペプチドを感作させ,この感作 DC を患者に輸注して,in vivo でがん細胞を傷害する CD8+ 細胞傷害性 T 細胞 (CD8+ CTL) を誘導しようとする,DC を用いた細胞治療が注目を浴びている.ここでは,in vitro で DC と腫瘍抗原由来のペプチドを用いて効率良く CD8+ CTL を誘導する方法について,メラノーマ抗原,MART-1 由来のペプチドと BCR-ABL 融合タンパク質由来の b3a2 ペプチドを用いた具体例について概説する.


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樹状細胞を用いた細胞療法の実施に向けて


田野崎 隆二*   高 上 洋 一**
* 国立がんセンター中央病院 薬物療法部 ** 同 医長

要旨
 世界中ではすでに幾つかの樹状細胞 (DC) を用いた臨床試験が開始されている.DC 療法の臨床試験における幾つかの問題点を解説し,GMP レベルの細胞調製システムや臨床評価体制の確立の必要性を述べた.また,間もなく国立がんセンターで開始される前立腺がんの臨床試験にも言及した.科学的に系統立って DC の臨床試験が実施されていくことが望まれる.

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樹状細胞を用いた細胞療法−乳がんに対する HER2/neu 由来ペプチドによる免疫的治療の展開−


影 山 慎 一*   生 田 安 司*   渡 辺 正 人*
日 浅 厚 則*   珠 玖 洋**

* 三重大学医学部 第二内科 ** 同 教授


要旨
 腫瘍細胞内抗原タンパク質は,ペプチドに分解され細胞表面の HLA クラスIに提示される.CD8+ 細胞傷害性 T 細胞 (CTL) がこれを認識し,腫瘍細胞傷害性を発揮する.HER2/neu は乳がんの 20 〜 30 % に強発現され,予後不良因子とされている.HER2/neu 由来ペプチド (p63-71,p780-788) が同定され,日本人に多い HLA-A2402 系で CTL,腫瘍細胞株の細胞傷害が誘導された.これは,これらペプチドを用いた乳がんの能動的免疫的治療 (がんワクチン,細胞療法) の臨床展開を強く支持するものである.

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樹状細胞を用いた細胞療法−造血器腫瘍−

千 葉 滋*1*2 高 橋 強 志*1*2*3
*1 東京大学医学部 血液・腫瘍内科
*2 同 無菌治療部 *3 同 輸血部


要旨
 B 細胞性腫瘍における免疫グロブリンのイディオタイプや,慢性骨髄性白血病における BCR/ABL タンパク質は,腫瘍特異的抗原になりうる.これらのタンパク質あるいはペプチドを患者本人の樹状細胞の HLA に強制的に結合させ,これによって腫瘍細胞特異的な細胞傷害性 T 細胞を誘導すれば,極めて特異的な抗腫瘍免疫療法が成立しうる.


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樹状細胞を用いた細胞療法−悪性黒色腫−


木 庭 幸 子*   河 上 裕**
* 慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 細胞情報研究部門
** 同 教授


要旨
 樹状細胞 (DC) は生体内で最も T 細胞活性化能の強い抗原提示細胞であり,動物の腫瘍モデルでは腫瘍抗原を発現させた DC の投与により抗腫瘍効果が認められている.欧米では多数の T 細胞認識抗原が同定されているメラノーマを中心に DC を用いた免疫療法の臨床試験が進行中であり,一部に抗腫瘍効果も認められている.しかし DC の最適な使用法はまだ確立されていないので,今後の基礎研究に基づく改良が必要である.

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樹状細胞を用いた免疫療法−消化器がん−


角 田 卓 也*   谷 村 弘**  松 田 健 司*
田 中 一*   馬 野 泰 一*

* 和歌山県立医科大学 第二外科 ** 同 教授

要旨
 消化器がんに対して,樹状細胞とがん胎児性抗原 (CEA) 由来のエピトープペプチドを用いたがんワクチン療法を開発し,第I相臨床試験を施行した.がんワクチン療法後,副作用は全くなく,CTL 反応も得られた.また,前駆体頻度の増加を認めた症例では著明な CEA の減少も認め,CEA 特異的がんワクチン療法は抗腫瘍免疫を誘導することが示唆され,がんワクチン療法の確立に新たな展開をもたらした.

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