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最新医学54巻2号

特集要旨

アプローチ 治癒率向上のための工夫
浜松医科大学 第三内科 教授   大野 竜三

要旨
急性白血病で治癒を得るためには,完全寛解 (CR) に導入することが必要条件であり,90%以上,できれば95%以上の CR を目指す必要がある.CR になっても10の9乗レベル以下の白血病細胞が存在しているので,後療法が絶対必要である.造血幹細胞移植療法は最強力の寛解後療法である.治癒を得るためには,形態学的 CR ではなく分子的 CR に導入する必要があり,微量残存白血病細胞を指標に化学療法の中止基準が設定されるべきであろう.CR 後に残存する白血病細胞は,使用された抗がん薬に対して耐性となっている細胞であることを認識しておく必要がある.

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急性白血病における遺伝子異常と治療戦略
名古屋大学医学部附属病院 難治感染症部   清井 仁
同 助教授  直江 知樹


要旨

白血病は,正常の細胞分化・増殖機構が破綻している状態であり,そこには必ず幾つかの遺伝子異常が存在しているが,その多くはシグナル伝達物質および細胞周期調節因子に関係している.このシグナルカスケードの詳細な解明は,分子基盤に基づく白血病の層別化を可能とし,異常分子を標的とした特異的な治療法 (分子標的療法) の選択へとつながっていくと期待される.

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FISH 法とその応用技術による造血器腫瘍の染色体異常の解析
東京医科歯科大学難治疾患研究所 遺伝疾患研究部門 分子細胞遺伝 教授 稲澤 譲治

要旨
過去精力的に染色体分析が行われ,造血器腫瘍では多くの病型特異的な染色体転座異常が明らかにされてきた.しかし,正常核型やランダムな染色体異常と判定されている症例の中には,古典的な分染法では見つけだすことのできない潜在的な病型特異的異常が存在している可能性がある.この潜在的な異常の探索に FISH 法とその応用技術の SKY 法や CGH 法は,極めて有効な手段となるであろう.

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WT1アッセイによる微小残存病変モニタリングに基づいた白血病治療の個別化
大阪大学医学部 病態生体情報学   尾路 祐介
同 教授   杉山 治夫
同 分子病態内科学 助教授   小川 啓恭

要旨
WT1アッセイを用いることにより,ほとんどすべての白血病患者において微小残存病変をモニタリングすることができるようになった.これにより治療効果の的確な判定,再発の早期診断,白血病の発症前診断が可能となり,白血病の治療は従来のプロトコルにのっとった画一的治療から,患者によって個別化された治療へと変わろうとしている.

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白血病治療とアポトーシス
名古屋大学医学部 第一内科   横澤 敏也 宮村 耕一

要旨
白血病の治療は近年,化学療法,放射線療法,免疫療法の単独またはその組合わせにより,その治療成績を向上させてきた.しかし,今まで細胞レベルでの各治療法の仕組みは不明であったものの,最近各治療の細胞死誘導の分子レベルでの解明がなされ,その一部は共通の経路を利用していることが分かってきた.細胞外からの抗白血病治療の刺激を受け取る分子群,最終的に細胞を破壊する分子群と,それらの間をつなぐシグナル伝達分子群について解明されつつある.すなわち各アポトーシスのシグナルはカスパーゼ3に集まり,それから DNA 分解と細胞膜や細胞骨格破壊へとシグナルが流れていく.このことが理解されることにより,各治療法を有機的に組み合わせることが可能となり,さらに新しい治療法の開発が期待される.

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薬剤耐性とその克服法
東京女子医科大学 血液内科 助教授 泉二 登志子

要旨
薬剤耐性に関与する因子の代表的なものは,薬剤耐性遺伝子 mdr 1 とその産物であるP糖タンパク質 (Pgp) である.Pgp は抗がん薬の細胞外排出作用を有し,急性白血病細胞における細胞内薬剤含有量の低下,ひいては抗がん効果の低下をもたらす.この結果,mdr 1 遺伝子または Pgp の発現例では寛解率の低下,生存期間の短縮が見られる.耐性克服薬は Pgp と結合して薬剤の細胞外排出を阻害し,in vitro では細胞内薬剤含有量,薬剤感受性の回復が確認されている.急性白血病症例に対して,現在行われているこれらの臨床試験の成果に期待したい.

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急性骨髄性白血病の今後の治療戦略
済生会前橋病院 血液内科 部長   宮脇 修一

要旨
急性骨髄性白血病 (AML) は,化学療法,幹細胞移植療法とこれらを補助する支持療法の進歩により治癒が望める疾患となった.しかし,成人 AML の中で,急性前骨髄球性白血病の50%以上に長期生存が望めるようになったものの,その他の病型では長期生存例の割合は30%前後にとどまっている.今後は多施設共同研究を進め,症例を層別化し,それぞれの層ごとに最適の治療法を確立する必要がある.

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急性前骨髄球性白血病の今後の治療戦略
熊本大学医学部第二内科 講師   麻生 範雄

要旨
急性前骨髄球性白血病 (APL) における全 trans-レチノイン酸 (ATRA) と化学療法の併用による多施設共同研究の成績を紹介し,今後の課題について概説する.ATRA 療法は APLの寛解率を大きく向上させた.非寛解の主因は,播種性血管内凝固症候群による臓器出血である.APLにおける無病生存率は併用する化学療法に依存するので,有効な化学療法の併用が治癒率向上のキーポイントである.

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成人急性リンパ性白血病の治療戦略
長崎大学医学部 原研内科   陣内 逸郎

要旨
急性リンパ性白血病 (ALL) の治療成績は,白血病細胞の表現型,染色体・遺伝子異常に基づいた病型と密接な関係が見られる.よって成人 ALLの今後の治療戦略としては,病型による層別化治療の開発が必要である.治療成績の向上のためには新規の薬剤の開発を必要とするが,臨床研究においては微小残存病変に基づく治療法の研究,無作為比較試験,小児 ALLとの共同研究などを積極的に取り入れる必要がある.

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レチノイン酸耐性急性前骨髄球性白血病の治療戦略
浜松医科大学第三内科    竹下 明裕

要旨
全trans-レチノイン酸 (ATRA) は急性前骨髄球性白血病において第1選択薬となったが,比較的早期に耐性が出現する.また ATRA 単独の継続投与では,短期間に再発が認められる.ATRAに対する耐性メカニズムに関しては,多くの報告があるものの定説はない.9-cis-レチノイン酸,合成レチノイドAm-80,そしてヒ素 (As2O3) に ATRA耐性克服の可能性がある.

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高齢者急性白血病の治療戦略
名古屋市立大学 医学部 第二内科   脇田 充史
同 教授   上田 龍三

要旨
近年高齢者白血病は増加しつつあるが,確立した治療方法が未だになく,治療成績は悪いのが現状である.高齢者白血病の治療成績向上のためには,強力な寛解導入が可能な症例を正しく層別化し,強力治療群にはG-CSFの有効な投与法などの好中球減少期の感染症を回避する方法の確立が必要である.さらに,低形成性白血病などの予後不良群については,治療の標的となる新しい分子の同定による治療法の確立や,治療効果モニタリングの可能なマーカーを指標として,患者のQOL向上を目指した治療法の確立が急務である.

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同種造血幹細胞移植法による第1寛解期急性白血病の治療戦略
東京都立駒込病院 血液内科 部長   坂巻 壽

要旨
急性骨髄性白血病,急性リンパ性白血病ともに,第1寛解期における同種造血幹細胞移植の適応が明確になっているわけではない.欧米の prospective study では,同種移植が必ずしも化学療法より優れているとは限らないが,ハイリスク患者ではその優位性を示す論文が多い.我が国の非血縁者間移植の成績は良好であり,急性白血病の第1寛解期において,同胞間移植と同様の適応として位置づけられると思われる.

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末梢血幹細胞移植療法による第1寛解期急性骨髄性白血病の治療戦略
京都府立医科大学第二内科 講師   島崎 千尋
同 教授   中川 雅夫

要旨
急性骨髄性白血病 (AML) における寛解後療法として,化学療法,自家骨髄移植 (auto-BMT) および同種骨髄移植 (allo-BMT) が行われているが,いずれの治療法が優れているか,結論は得られていない.自己末梢血幹細胞移植 (auto-PBSCT) は auto-BMT に取って替わりつつあり,最近の報告では AML 第1寛解期において化学療法と同等かそれ以上の無病生存が得られている.現在進行中の化学療法と PBSCT との無作為割付試験により,本療法の有用性が明らかにされるであろう.

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急性白血病強力治療後の感染症と対策
帝京大学医学部附属溝口病院 第四内科 助教授   吉田 稔

要旨
JALSG の急性骨髄性白血病 577例の強力治療後に,敗血症が68例 (11.8%),肺炎が113例 (19.6%) に見られた.敗血症の起炎菌は緑膿菌が多く,予後は真菌血症が特に不良である.肺炎の起炎菌は,緑膿菌,アスペルギルス,黄色ブドウ球菌などが多い.感染の予防には,抗生物質や抗真菌薬の内服や簡易無菌装置の使用が行われる.治療のガイドラインも公表されているが,血清診断の臨床応用や CSF 製剤の投与法など検討すべき課題も多い.

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