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最新医学54巻3月増刊号

特集要旨

腸チフス・パラチフス
東京都立駒込病院感染症科 増田 剛太

要旨
腸チフスとパラチフスは,持続する発熱,比較的徐脈,バラ疹,脾腫などを主症状とする.これらの疾患は,腸管感染症であるがその経過中に菌血症を伴うため発熱が主体となり,腸性発熱 (enteric fever) としての臨床像を示す.多くの発熱を伴う感染症,熱帯病,膠原病や悪性腫瘍などが鑑別診断の対象となる.診断は血液,骨髄液,糞便や胆汁からのチフス菌・パラチフスA菌の検出により行なわれる.合併症として特に重要なのは,腸出血と腸穿孔である.第1選択薬はクロラムフェニコールあるいはニューキノロン系抗菌薬である.

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サルモネラ症
東京都立墨東病院 感染症科 大西 健児


要旨

サルモネラは人畜共通感染症の起因菌の1つで,人には経口的に感染する.サルモネラ感染では急性の腸炎が最も多いが,腸炎以外の感染症も引き起こす.腸炎の程度は症例によりさまざまであり,重症例では急性腎不全を合併することがある.すべてのサルモネラ腸炎に抗菌薬を投与する必要はないが,抗菌薬を使用する場合はニューキノロン系抗菌薬が優れている.急性腎不全の合併があれば,早期に十分な輸液が必要である.腸管外感染症では抗菌薬の静脈内投与が望ましい.最近,鶏卵から感染する症例が増加している.

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毒素原性大腸菌感染症
静岡赤十字病院 内科 森下 鉄夫
新潟大学医学部 第三内科 朝倉 均

要旨
毒素原性大腸菌 (ETEC) 感染症は,菌が産生するエンテロトキシンによる水様性下痢と腹痛を主症状とする感染性下痢症であり,旅行者下痢の代表的疾患である.エンテロトキシンには易熱性 (LT) と耐熱性 (ST) があり,腸管上皮細胞の受容体に結合し,セカンドメッセンジャー (LT では cAMP,STI では cGMP) を介し細胞内反応を起こし,腸液分泌をもたらす.しかし,脱水など全身反応を伴うヒト ETEC 下痢症は,必ずしも上記の機構だけでは説明しにくく,小腸粘膜のびらん,上皮下水泡,杯細胞の増殖,中心リンパ管の拡大などの内視鏡的・組織学的異常も深く関与する.

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腸管出血性大腸菌感染症
埼玉県立小児医療センター 城 宏輔

要旨
腸管出血性大腸菌感染症は,激しい腹痛と著しい腸管出血を特徴とし,経過中,溶血性尿毒症症候群や脳症など重篤な合併症を伴い後遺症や死亡の原因ともなるため,最近特に注目されている感染症である.発症の主役は菌の産生する志賀毒素群で,治療は毒素の影響をいかに抑えるかに主点が置かれる.治療法はまだ確立されていないが,新しい知見や経験の蓄積と多くの論議の結果,最近次第におおよその合意ができ,新しい治療法も開発されつつある.

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細菌性赤痢
横浜市立市民病院 感染症部 相楽 裕子

要旨
細菌性赤痢は感染症新法で2類感染症に類型化された.旅行者下痢症としての感染が圧倒的に多いが,国内では小児関連施設での集団事例,食中毒型の発生が問題である.ニューキノロン系抗菌薬あるいはホスホマイシンの5日間投与が効果的であるが,再排菌があるので除菌の確認が必要である.

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コレラ
新潟大学医学部 第三内科  朝倉 均  田代 和徳 杉村 一仁

要旨
コレラ症の原因菌には,古典的コレラ菌,エルトールコレラ菌,O139 (ベンガル型) 菌があり,エンテロトキシンのコレラ毒素,zonula occludens toxin,ACE 毒素,hemolysin/cytolysin など様々な毒素を産生し,分泌性下痢を来す.小腸粘膜に定着するのには toxin-coregulated pili (TCP) が必要である.これらの病原性を惹起する毒素遺伝子はバクテリオファージが保有し,このファージを介して非病原性菌が病原性を獲得する可能性が示唆されている.また,コレラの臨床像と治療について,著者の東南アジアにおける経験を交えて考察した.

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腸炎ビブリオ感染症
日本橋保健所  村田 三紗子

要旨
腸炎ビブリオは海水に生息し,魚介類の生食を好む日本人にとって古来主要な食中毒菌である.急性胃腸炎の発症には,神奈川現象陽性株が産生する耐熱性溶血毒 (TDH) や陰性株が産生する耐熱性溶血毒類似毒素 (TRH) などの溶血毒素に加え,腸管上皮細胞への侵入性の関与も示唆されている.一般的には予後良好であるが,突然に血圧低下を来し死亡することがあり,TDH による心臓障害と考えられている.易感染性宿主 (compromised host) では創傷感染,敗血症等の腸管外感染の危険がある.

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Vibrio vulnificus 感染症
長崎大学医学部 第二内科  黒木 美鈴  河野 茂

要旨
Vibrio vulnificus はビブリオ属の好塩基性グラム陰性桿菌で,コレラ以外のビブリオ属の中で病原性の強い菌種である.感染症型は原発性敗血症,創傷感染型,胃腸型に大別され,原発性敗血症では多発性転移性皮膚病変を伴うことが特徴的であり,診断に有用である.胃腸型を除き健常人に発症することはまれで,ほとんどは肝硬変やその他の慢性疾患を持ったいわゆる易感染性宿主 (compromised host) に発症する.潜伏期間は18時間と短く,いったん発症すると経過は急激で診断,治療の遅れが死に至らせる場合も多い.ほぼ全例で血液培養が陽性となる.治療はテトラサイクリン系抗生物質や胆汁排泄型の第3世代セフェム系抗生物質が優れた抗菌活性を示し,併用による治療も推奨されている.

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Campylobacter jejuni 腸炎と自己免疫性神経疾患
獨協医科大学 神経内科  古賀 道明*   結城 伸泰
*山口大学医学部神経内科 

要旨
自己免疫性末梢神経疾患である Guillain-Barre 症候群の発症に,下痢の主要な起炎菌である Campylobacter jejuni が関与することが近年注目されている.著者らは,菌体上に存在するリポ多糖と,末梢神経に存在するガングリオシドとの間に分子擬態 (molecular mimicry) が存在することを明らかにした.さらに,Guillain-Barre 症候群の発症を規定する病原体側因子と宿主側因子が次第に解明されてきた.

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Helicobacter pylori 感染症
大分医科大学 第二内科   藤岡 利生 村上 和成

要旨
H. pylori 感染症の治療には少なくとも2種類〜3種類の薬物の併用が必要である.最も標準的な組み合わせは,プロトンポンプ阻害薬にアモキシシリンとクラリスロマイシンを併用する3剤併用療法であり,約90%の除菌効果が得られる.しかし,耐性菌の出現が除菌の成否に影響を及ぼすことが知られており,今後の除菌治療において注意が必要である.
 本菌に対する治療ワクチンあるいは予防ワクチンが検討されているが,実用化には少し時間を要する.

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ペスト
愛知県衛生研究所  宮崎 豊

要旨
ペストは現在も世界に感染地域が存在し,そのほとんどが抗生物質により治療可能であるが,診断の遅れ,抗生物質選択の誤りが致命的な結果をもたらす.日本国内でペストを診断・治療する際には,世界のペスト汚染地域の把握や患者の旅行歴などの疫学的証拠をも参照し,ペストの可能性を科学的に疑うことから始めるべきであり,ペストが疑われた場合には,即座にストレプトマイシンなどの抗生物質を用いて治療を開始すべきである.

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レジオネラ症
琉球大学医学部 第一内科  小出 道夫 斎藤 厚

要旨
臨床症状が急性細菌性肺炎の病型をとり,かつレジオネラが培養で検出されるか血清抗体価が陽性である患者をレジオネラ肺炎確診症例とする.補助診断としては,直接蛍光抗体法,尿中菌体抗原検出法,遺伝子増幅法がある.本症は進展が速く,治療が遅れると致命的になるので,検査結果を待たず,臨床的に本症を疑った時点で有効抗菌薬の投与を始めるべきである.現在のところエリスロマイシンとリファンピシンの併用が最も推奨される.

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レンサ球菌感染症−劇症型A群レンサ球菌感染症を中心に−
鹿児島大学医学部小児科  吉永 正夫

要旨
A群レンサ球菌感染症は,一般的に学童期の疾患であり,抗菌スペクトラム,良好な MIC,安価なことからペニシリン系 (PCs) 抗生物質の10日間の投与が推奨される.一方,劇症型A群レンサ球菌感染症は,同じA群レンサ球菌による感染症でありながら成人に多く,PCs 抗生物質は効果が悪く,劇症かつ極めて進行性の疾患である.適切な支持療法,外科的処置,クリンダマイシンの使用, グロブリン大量療法などにより予後はやや改善されつつあるが,今後の治療法に関する臨床的研究が待たれる.

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ジフテリア
国立小児病院小児医療研究センター 感染症研究部  中尾 浩史

要旨
1990年よりロシアを中心として起こったジフテリアの再流行は,忘れかけていたジフテリアに対する注意を呼び起こした.ワクチン摂取率の低下がこの再流行の主原因と考えられることから,たとえまれになった感染症であっても,予防を怠ると恐ろしい大流行になるという良い教訓となった.我が国のワクチン摂取率を高いまま維持していく必要がある.

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破傷風
日本熱帯医学協会(財)  海老沢  功

要旨
破傷風は地球上で2番目に強力な毒素による中毒性感染症である.起因破傷風菌は,土の中の常在菌で,1mg の土からも容易に分離されることがある.破傷風治療の原則は遊離毒素の中和と,全身の横紋筋の強直,中枢神経系の異常な興奮状態と自律神経系の失調に対する薬物療法である.重要な死因である窒息と呼吸困難を防ぐため,気管切開〜気管内挿管と人工呼吸を数週間にわたって行い,自発呼吸ができるようになるまで ICU で治療する.

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ボツリヌス症
岡山大学医学部 細菌学  小熊 惠二 藤永 由佳子 井上 薫  横田 憲治
北海道立衛生研究所 武士 甲一

要旨
ボツリヌス菌の産生する神経毒素の分子量は約15万であるが,その抗原性の異なりからA〜G型に分類される.神経毒素は亜鉛を結合したメタロプロテアーゼであり,アセチルコリンが放出される際に必要なタンパク質を切断することによりその毒素作用を示す.食品中では,神経毒素を胃液から保護し,小腸よりの吸収の際に重要な役割を果たす無毒成分と結合し,巨大分子 (progenitor toxin) を形成する.

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百日咳
国立療養所三重病院  神谷 齊

要旨
百日咳は Bordetella pertussis の感染で発症する感染症である.同じような症状は他の病原体でも起こることがある.母からの移行抗体は,1〜2ヵ月で消失することがほとんどで役に立たない.したがって,低年齢でも感染が起こり,重篤になることがある.診断は臨床診断で見当がつく.早期の予防接種の開始が大切である.罹患した場合には,6ヵ月以下の乳幼児は原則として入院治療管理が必要である.

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結核
大阪府立羽曳野病院  露口 泉夫

要旨
結核は過去の病気ではない.毎日 100名の新規発生を見る感染症である.多剤耐性結核の増加は50年昔の結核に逆戻りである.老人層の結核とそれからの若者への集団感染が我が国の愁眉の課題である.新しい診断技術を駆使しての早期診断と適切な化学療法が第1義である.場合により直接監視下の短期化学療法 (DOTS) 政策を積極的に導入し,感染源の根絶を目指す必要がある.

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非定型抗酸菌症 (非結核性抗酸菌症)
かしま病院 呼吸器内科  宍戸 春美
Tuberculosis Laboratory, University Teaching Hospital of Zambia 御手洗 聡

要旨
非定型抗酸菌症は,肺感染症と後天性免疫不全症 (AIDS) 患者に見られる播種型に分けられる.肺非定型抗酸菌症の治療は,抗結核薬をはじめとする抗菌薬の多剤併用療法が中心で,外科的な肺切除も適応となる場合がある.AIDS 患者・HIV 感染者では,播種性非定型抗酸菌症が中心で,診断には血液中から非定型抗酸菌の分離が行われる.高度に免疫の低下した患者には予防投薬が必要となる.治療は,抗菌薬の多剤併用療法が主体である.

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梅毒
日本医科大学付属多摩永山病院 皮膚科 伊東 文行

要旨
梅毒は性感染症の代表的疾患で,Treponema pallidum subsp. pallidum の感染により起きる全身性慢性疾患である.梅毒は先天梅毒と後天梅毒に分けられ,さらに,後天梅毒は本邦では4期に分類される.感染機会など詳細な問診,臨床症状,梅毒血清反応などから正確な診断をし,ペニシリンを第1選択薬として治療する.梅毒治療の目的は梅毒血清反応を陰性化させることではないことを理解する.

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淋疾
奈良県立医科大学 細菌学  喜多 英二

要旨
淋病は世界中で年間200万人以上が感染している.近年本症は泌尿生殖器感染症の域を越えて,関節炎や心内膜炎等の血行性播種性感染症として認知され,死亡例も報告されている.本症が抗生物質で治療し得る疾患と言う認識が,一般の人々のみならず医師にも定着している.今日の性風俗産業の隆盛と,若年層の性活動の活発化は,淋病感染の増加をもたらしつつあるため,一般内科医も本症の正確な知識と治療法の修得が求められる.

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性感染症 (STD)-クラミジアや各種ウイルス-
厚生省STD全数把握動向調査研究班
(財)日本性病 (性感染症) 予防協会  熊本 悦明
札幌医科大学医学部 泌尿器科学教室 塚本 泰司
岩手医科大学医学部 産婦人科学教室 西谷 巌
筑波大学医学部 泌尿器科学教室 赤座 英之
愛知医科大学 産婦人科学教室 野口 昌良
神戸大学医学部 泌尿器科学教室 守殿 貞夫
広島大学医学部 泌尿器科学教室 碓井 亞
九州大学医学部 総合診療部 柏木 征三郎
国立公衆衛生院 疫学部 簑輪 眞澄

要旨
日本では今,性感染症 (STD) がかなりな勢いで一般の人々の間に浸透してきている.生殖年齢層の男女の国民病とも言えるほどである.その流行の実態を,厚生省 STD 動向調査や我々の研究班の行っている7モデル県における STD 全数把握動向調査の資料に基づき解説した.
 この STD 流行は,無症候性化の強いクラミジアやウイルスによる STD が日常の性生活に入り込んできたことによる.まさに"性生活環境における環境汚染問題"と表現してもよい状態になっている.今後 STD と HIV/後天性免疫不全症候群 (AIDS) とが連動して HIV/AIDS の大流行につながらねばよいがと危惧されている.

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肺炎クラミジア感染症
川崎医科大学 地域医療学  岸本 寿男

要旨
肺炎クラミジアは,ヒトからヒトに経気道的に伝播する呼吸器感染症の病原体である.肺炎などの呼吸器感染症の約1割に関与する重要な起炎菌であり,しばしば家族内感染や幼稚園・小中学校などで集団小流行を起こす.最近では動脈硬化性疾患との関連でも話題となっている.診断法としては病原体検出法と血清診断法がある.最近,本邦で特異抗体測定キットが開発され,臨床応用可能となり,今後その有用性が期待されている.治療にはテトラサイクリン系抗生物質,マクロライド系抗生物質,ニューキノロン系抗菌薬が用いられる.

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日本におけるライム病
静岡県立大学薬学部 微生物学教室  増澤 俊幸

要旨
ライム病はマダニ媒介性のスピロヘータの一種ボレリアに起因する細菌感染症である.本邦ではシュルツェマダニにより媒介される Borrelia garinii,または B. afzelii が病原体であり,北海道,長野を中心として100症例以上の報告がある.患者は遊走性紅斑,関節炎,顔面麻痺,リンパ球腫等の多様な病態を示し,病態からの診断は困難であることから,マダニ刺咬の有無,血清診断結果を総合して診断が下される.

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つつが虫病
宮崎県立看護大学 看護学部看護学科  橘 宣祥

要旨
つつが虫病は Orientia tsutsugamushi (Rickettsia tsutsugamushi) による急性感染症で,病原体を保有するツツガムシの幼虫に刺されて感染する.主要症状は発熱・発疹・刺し口で,予後は比較的良好であるが,播種性血管内凝固症候群などを起こして致命的な経過をとる場合があるので,初期に診断して治療することが重要である.テトラサイクリン系抗生物質が有効である.我が国では,年間約500名の患者が発生している.発生地域はほぼ全国にわたり,秋から冬,および春に発生する.

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Q熱
鹿児島大学医学部 細菌学教室 小田 紘

要旨
Q熱は Coxiella burnetii による人獣共通感染症である.多くは急性熱性疾患の病型をとるが,まれに心内膜炎を主体とした慢性の経過をとる場合もある.本症は我が国にも存在していることが明らかとなってきた.したがって,熱性疾患の診断に当たってはQ熱を鑑別診断の1つに挙げる必要がある.本症の臨床所見は多様で非特異的なものが多いため,診断には微生物学的検査が必須である.

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日本紅斑熱
馬原医院 馬原 文彦
大原研究所 藤田 博己

要旨
日本紅斑熱は,1984年その存在が明らかになった紅斑熱群リケッチア症に属するダニ媒介性感染症である.病原体は,1992年新種のリケッチアであることが証明され,Rickettsia japonica と命名された.媒介マダニは複数種と目されていたが,近年ようやく特定されつつある.本症は,高熱,発疹,刺し口を3徴候とする急性熱性疾患であるが,現在汎用されている抗生物質の多くが全く無効であるため,第一線の医師が注意を要する新興感染症である.

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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
東邦大学医療短期大学 辻 明良

要旨
臨床材料から分離される黄色ブドウ球菌のうち約60%がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) である.MRSA 感染症は,病院感染菌として感染抵抗性の減弱した宿主に感染しやすく,また多剤耐性を示すため難治性となり,重篤な感染症を引き起こす.MRSA 感染症の治療の第1次選択薬は,バンコマイシン (VCM),アルベカシン (ABK),テイコプラニン (TEIC) である.VCM など単独で効果が不十分な場合や混合感染を疑われるときは,併用投与が行われる.

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ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
東北大学加齢医学研究所 胸部腫瘍内科 渡辺 彰

要旨
肺炎球菌は今日でも呼吸器その他の感染症の主要な起炎菌であるが,近年,小児科と耳鼻科領域を中心にペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) が難治,遷延,重症例を惹起している.PRSP は1960年代中期に出現したが,77年の本格的な耐性菌の出現以来増加し続け,本邦の肺炎球菌の30〜50%はすでに PRSP である.本稿では,PRSP の歴史と定義,疫学と病原性,臨床上の問題点,耐性機構,薬剤感受性,診断と治療および予防について解説する.

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バンコマイシン耐性腸球菌感染症
群馬大学医学部 微生物学教室、同 薬剤耐性菌実験施設 池 康嘉

要旨
腸球菌は人間や動物の腸管常在菌で日和見感染菌である.腸球菌の中でバンコマイシン耐性腸球菌 (VRE) は,現存するすべての抗生物質に耐性の多剤耐性であることが多く,その感染症に有効な抗生物質が存在しないことが起こり得るために問題となる.VRE は尿路感染,腹部術後感染,さらに重篤な敗血症等を起こす.VRE 感染症の最初の報告は1988年にイギリスで,89年にはフランスで報告されている.以後,欧米を中心に VRE による重症感染症が報告されている.日本では96年,尿路感染症の尿から初めて VRE が分離され,現在までに数ヵ所の病院の複数患者の感染病巣から個別に分離されているが,院内感染は報告されていない.VRE の感染源は患者の便の VRE であることが多く,また尿路感染症の尿からも分離される.このため便や尿から VRE が繰り返し排出される状態が生じると,それにより病院環境が広範囲に汚染され,院内感染の危険度が高まる.VREは,腸球菌の中でバンコマイシン耐性遺伝子を獲得したあるいは保持している腸球菌である.VRE は,他の種々の薬剤耐性菌と同じく,VRE でない腸球菌から薬を使うことにより突然変異などで生まれたものではない.地球上のわずかなヒトや動物のうちたまたま VRE を保菌していたものが,バンコマイシンなどの使用に耐えて長期の間に選択的に生き残ることにより,増加したものである.そして気づいた時には,私たちの生活環境特に医療環境の中に拡がっていたのである.欧米では人口の十数%の人が VRE を保菌しているとされているが,日本では VRE の保菌者はほとんど見つかっていない.現在までのところ,VRE のようなバンコマイシン耐性遺伝子を保持したバンコマイシン耐性菌は腸球菌にのみ存在しており,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) を含め黄色ブドウ球菌にはそのような耐性菌は存在しない.

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肺炎桿菌感染症
川崎医科大学 呼吸器内科 二木 芳人

要旨
現在 Klebsiella pneumoniae 感染症は,優れた抗菌活性を有する各種抗菌薬の幅広い臨床使用によって,比較的容易に治癒せしめることが可能である.したがって,臨床的に重大な問題としてとらえられる機会も明らかに減少している.しかし,院内感染の原因菌として,あるいは保菌状態として喀痰や血液などの検体から分離される率は現在でも低くない.近年,新しいセフェム系抗生物質耐性株の出現・増加が問題視されており,その動向に注意すると同時に,適正な抗菌薬療法を心掛けるべきと考えられる.

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