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最新医学54巻4号

特集要旨

アプローチ:アポトーシスの基礎研究と疾患との関連
京都大学ウイルス研究所 がんウイルス部門 米原 伸

要旨
アポトーシスの分子機構の研究が目覚ましい勢いで進んでいる.この成果を基に,さまざまな疾患の原因究明や治療法の開発がなされていくことが今後期待される.このようなことを考え,この特集の企画をさせて頂いた.ここでは,アポトーシス分子機構の研究成果を整理し,この成果がさまざまな疾患の原因究明や治療法の開発にどのようにつながるかを,特集記事を書いて頂いたかたがたの紹介を兼ねて,考えてみたい.

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ノックアウトマウスによるミトコンドリア依存性アポトーシス誘導分子機構の解析
トロント大学 オンタリオ癌研究所
九州大学生体防御医学研究所 免疫学部門 吉田 裕樹


要旨

アポトーシスと呼ばれる細胞死は,個体発生や生体のホメオスタシスに重要な役割を果たしている.アポトーシスに関与する分子の多くは線虫から哺乳類まで保存されており,基本的なアポトーシスの機構は種を越えて共通に存在する.この系にかかわる分子の1つ Apaf-1 遺伝子変異マウスの解析により,Apaf-1 が神経細胞をはじめとするさまざまな細胞のアポトーシスにおいて,中心的な役割を果たしていることが示された.

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Fas を介したアポトーシスシグナル伝達機構の新展開
京都大学ウイルス研究所 がんウイルス部門 今居 譲 米原 伸

要旨
線虫 (C. elegans) のプログラム細胞死に関与する分子の遺伝的および生化学的解析の研究成果と相まって,Fas を介したアポトーシスにかかわる分子の解明はここ数年で大きく進展した.その結果,Fas を含めた哺乳類細胞のアポトーシスシグナル伝達には,ミトコンドリアとカスパーゼと呼ばれるプロテアーゼが複雑に関係しあってシグナルを増幅し,死を実行させることが明らかになりつつある.

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アポトーシスの実行分子カスパーゼ
京都大学医学部 第一内科
同 大学院医学研究科 血液病態学 山下 浩平 高橋 淳

要旨
カスパーゼは,死の受容体 (death receptor) を経由したシグナルやミトコンドリアから放出されるシトクロムcによって活性化され,種々の基質を限定分解し,アポトーシスに特徴的な形態学的・生化学的変化を引き起こす.最近,臨床的に病態形成や疾患への関与が注目され,実験動物レベルではがん,脳卒中,心筋梗塞などに対する治療応用を目指した研究が進んでいる.

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アポトーシスにおけるミトコンドリアの新たな役割
日本医科大学老人病研究所 生化学部門 太田 成男

要旨
エネルギー産生をつかさどるオルガネラであるミトコンドリアに,新たな機能が付け加えられた.アポトーシス誘導因子の貯蔵という役割である.ミトコンドリアから放出されたシトクロム c はカスパーゼを活性化し,アポトーシスを誘起するシグナルとなる.ミトコンドリアの膜間腔から放出されるアポトーシス誘導因子 (AIF) の遺伝子がついにクローニングされ,核を凝集させる因子の実体がついに明らかとなった.

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内因性のカスパーゼ阻害因子IAP
東京都神経科学総合研究所 神経学研究部門 高橋 良輔  鈴木 泰行

要旨
アポトーシス阻害タンパク質 (IAP) は昆虫ウイルスからショウジョウバエやヒトに至るまで,非常によくその構造と機能が保存されているタンパク質である.BIR とリングフィンガーという2つのモチーフで特徴づけられ,どの種の IAP もさまざまな刺激によるアポトーシスをブロックする.最近の研究により,IAP の一部の分子がアポトーシスの実行分子であるカスパーゼの直接の阻害因子として働いていることが明らかになった.

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小脳顆粒細胞のアポトーシス
大阪大学蛋白質研究所 生合成部門  荒木 敏行  畠中 寛

要旨
近年,神経細胞の長期生存を保証するうえで p53 が注目を集め,中枢神経系のさまざまなアポトーシスに関与していることが明らかとなってきた.小脳顆粒細胞の DNA 傷害によるアポトーシスにおいても p53 が中心的な役割を果たしており,その下流で働く分子として c-Jun が考えられている.また,カスパーゼの関与も示唆され,その機構が徐々に解明されてきている.今後これらの系を用いて,DNA 傷害のみならず他の刺激によるアポトーシスの機構も分子レベルで明らかになることが予想される.

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がんにおけるアポトーシス
東京大学分子細胞生物学研究所  藤田 直也  鶴 尾 隆

要旨
近年のアポトーシス研究の進展に伴い,がん化とアポトーシス制御異常との関連性が明らかになりつつある.抗がん薬はがん細胞にアポトーシスを誘導してがん細胞を死滅させるが,抗がん薬に耐性を示す多くの固形がんではアポトーシス耐性形質を示す.これらアポトーシス耐性を示すがん細胞は,アポトーシス制御にかかわる がん遺伝子・がん抑制遺伝子に異常が生じているものと思われる.

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酸化ストレスとアポトーシス
京都大学ウイルス研究所 生体応答学研究部門 上田 修吾* 淀井 淳司
*同 大学院医学研究科 消化器外科

要旨
酸化ストレスによるアポトーシス誘導メカニズムには,ミトコンドリアからのシトクロムc放出を介したカスパーゼ3活性化経路などが関与する.さらに,細胞内還元タンパク質による細胞内レドックス制御機構が,アポトーシス誘導に影響を及ぼす.

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胸腺ナース細胞とアポトーシス
香川医科大学看護学科健康科学 平峯 千春

要旨
胸腺ナース細胞 (ナーシング胸腺上皮細胞) は未熟な胸腺T細胞に対して,分化・増殖・成熟という従来のナーシング機能のほかにアポトーシス生成の場を提供し,さらにアポトーシス誘導能とアポトーシス細胞の貪食・消化能を有していた.胸腺ナース細胞によるアポトーシス細胞の認識には HDL 受容体 CLA-1 が関与しており,CLA-1 はアポトーシス細胞表面のホスファチジルセリンを認識している可能性が示唆された.

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アポトーシスと自己免疫病モデルマウス
愛媛大学医学部第二病理  西原 美由紀  能勢 眞人

要旨
Fas 介在性アポトーシスは,自己免疫病の発症において重要な役割を担っている.Fas/FasL 系の異常は自己免疫現象を誘導するが,MRL 系モデルマウスの解析により,自己免疫病の発症には,Fas 介在性アポトーシスの異常のほかに,宿主の背景遺伝子群が必要であることが分かった.

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慢性関節リウマチとアポトーシス
富山医科薬科大学 整形外科    松野 博明

要旨
慢性関節リウマチ (RA) の炎症性滑膜にはアポトーシスの発現が見られる.しかし通常このアポトーシスの発現は,種々のアポトーシス抑制物質の働きで抑制されている可能性が高く,このことが漸次進行性の RA 滑膜炎を作り出す一因と考えることができる.したがって,この RA 滑膜に対してモノクローナル抗体などによりアポトーシスを誘導してやることができれば,この治療法は新しい RA の治療となり得る可能性が高いものと考えられる.

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新しい抗 Fas モノクローナル抗体による治療薬開発への試み
三共(株)バイオメディカル研究所研究第三室   芹澤 伸記

要旨
細胞障害活性を有する抗ヒト Fas 抗体は,活性化T細胞や慢性関節リウマチ由来の異常増殖滑膜細胞の除去作用を有する自己免疫疾患に対する根本的な治療薬として期待されている.しかし,今まで知られている抗 Fas 抗体は,肝細胞に対してもアポトーシスを有するため治療薬としての開発は難しい.我々は,肝毒性を示さない新規抗 Fas 抗体の取得を試み,その取得に成功した.さらに,遺伝子工学的手法により抗体のヒト化に成功し,抗体医薬としての可能性を見いだした.

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AIDS とアポトーシス−HIV 感染とT細胞死誘導についての最近の話題と課題−
東京医科歯科大学大学院医学系研究科 感染分子制御学講座  小柳津 直樹

要旨
HIV は CD4+T細胞にアポトーシスの機序を介した直接の細胞死を誘導する.しかしながら患者材料での解析では,CD8+T細胞を含め非感染細胞のアポトーシスが主体を占める.個体レベルでは,その直接障害に加えて間接性アポトーシス誘導機序が作動していると考えられる.間接機序の主体は,感染の遷延化に伴う活性化誘導細胞死の反復であり,T細胞クローンの枯渇を導いている.多剤併用療法導入後の免疫回復については個体差があり,免疫再構築制御が新たな課題となっている.

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