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最新医学54巻5号

特集要旨


本態性高血圧症と遺伝子異常

勝 谷 友 宏*   檜 垣 實 男**  荻 原 俊 男***

*大阪大学医学部 加齢医学 ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 本態性高血圧症の発症には,複数の環境因子と遺伝因子が複雑に絡み合って作用していると考えられる.すなわち単一の遺伝因子の相対的な影響は少ないと考えられ,現在までの研究では高血圧の発症を直接規定するような遺伝子異常は同定されていない.ラットとヒトを用いた方法には一長一短があり,両者で共通した領域の解析が,遺伝子単離に向けて焦点になると考えられる.今後の展開としては,薬剤の効果や環境因子との相互作用に遺伝子解析の成果を生かすことが求められており,薬剤の選択,効果的な生活指導などにも役立つものと期待される.

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本態性高血圧とカルシウム代謝異常

大 島 哲 也

広島大学医学部 臨床検査医学 助教授

要旨

 カルシウム (Ca) 摂取量と血圧値が逆相関するとの疫学的研究や,本態性高血圧における血清 Ca 低下,副甲状腺ホルモン増加などの報告により,Ca 不足が高血圧の病因として考えられている.事実,Ca 補充によって血圧が低下し,非薬物療法として推奨されている.その機序として,交感神経系の抑制,ナトリウム (Na) 利尿の促進,Ca 調節ホルモンの心血管への修飾,Ca 受容体を介する血管拡張などが提唱されているが,未だに一致した見解は得られていない.

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イオンチャネルと高血圧

高 野 幸 路*   藤 田 敏 郎**
*東京大学医学部附属病院分院 第四内科   **同 教授

要旨
 イオンチャネルは,その遺伝子異常による変異が高血圧の成因となったり,高血圧の成因となる調節因子異常の作用点として働くことで,高血圧の発症に深く関与している.Liddle 症候群は,上皮型 Na+ チャネルの活性化変異が原因で高血圧と低カリウム血症を呈する症候群である.イオンチャネルの異常が高血圧を引き起こすことを,チャネルの基礎研究のレベルから病態生理に至るまで究明できた.

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血管内皮異常と高血圧

廣 岡 良 隆*   竹 下 彰**
**九州大学医学部 循環器内科 ** 同 教授

要旨
 血管内皮細胞は,一酸化窒素 (NO),プロスタグランジン I2 (PGI2),内皮由来過分極因子 (EDHF),エンドセリン (ET) などさまざまな血管収縮物質や拡張物質を産生・遊離して,血圧調節に重要な役割を果たしている.高血圧では一般的に血管内皮機能が低下しており,そのため血管過収縮が生じている可能性がある.高血圧における内皮依存性血管拡張反応の低下は,血管拡張物質である NO の産生低下,活性酸素種による NO 破壊の亢進,PGH2 や ET などの血管収縮物質の増加などの機序が考えられる.内皮機能異常は単に血管拡張反応低下のみならず血管リモデリングを生じ,その進行によって動脈硬化,臓器障害へとつながる.

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新しい脈管作動物質アドレノメデュリンの役割

江 藤 胤 尚***  北 村 和 雄**  加 藤 丈 司*

*宮崎医科大学 第一内科 ** 同 講師    *** 同 教授

要旨
 アドレノメデュリン (AM) は降圧作用を有するペプチドで,高用量の急性投与によって血管拡張性降圧,心変力作用,利尿およびアルドステロン分泌抑制が生じる.長期に低用量を投与すると,生理的血中濃度で降圧が維持される.血漿 AM は高血圧性疾患で上昇する.体液量増加,血圧上昇や昇圧性体液性因子の刺激によって血管壁や心筋細胞で AM は産生され,循環や体液調節の偏位を代償し,心血管系の機能を保全する.

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本態性高血圧症の成因としての内因性ジギタリスの役割

高 橋 伯 夫**1  小宮山  豊*1  吉 村   学*2
*1 関西医科大学 病態検査科 講師 **1 同 教授   *2 京都府立医科大学 臨床検査医学 教授

要旨
 体内へのナトリウム (Na) 貯留を是正するために,腎尿細管での Na 再吸収を抑制し,末梢血管抵抗を高めて血圧を上昇し,腎の限外濾過圧を高める内因性ジギタリス様物質の存在が示唆されている.その本体は,ウアバインあるいはその異性体の可能性が高い.中枢神経系と副腎で産生されるジギタリス様免疫活性物質は,本態性高血圧症のみならず2次性高血圧でも血中濃度が高く,高血圧症の直接的な要因である可能性が考えられる.

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胎児期・分娩期異常と高血圧

鈴 木 洋 通

埼玉医科大学 腎臓内科 教授

要旨
 成人病と考えられている高血圧は,決して成人してから生じてくるのではなく,遺伝,妊娠中の環境,さらには生下時の状態などが複雑に関与している.出生時の低体重は将来の高血圧と密接に関連しており,また,これらにはネフロン数の減少も関与しているとも言われている.

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食塩感受性高血圧


木村 玄次郎
名古屋市立大学 第3内科・臨床病態内科学 教授

要旨
 食塩感受性高血圧は,1. 糸球体の限外濾過係数が低下するか,2. 腎尿細管における Na+ 再吸収が亢進するか,のいずれかの機序によって発症する.一方,食塩感受性の高い病態は,血圧や喫煙などの従来の危険因子とは独立した予後規定因子であることが明らかになった.このように,食塩感受性は従来,病因・病態の特異性から注目されてきたが,予後に対しても大きく関与していることが最近明らかにされ,注目されている.

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インスリン抵抗性と高血圧


大 西 浩 文*   斉 藤 重 幸*   島 本 和 明**
*札幌医科大学 第二内科 ** 同 教授

要旨
 高血圧には糖尿病,高脂血症などの代謝疾患が互いに合併することが知られ,これらの共通の背景因子としてインスリン抵抗性が注目されるようになった.欧米をはじめ本邦においても疫学的成績が集積され,高血圧とインスリン抵抗性との関連が明らかにされてきている.しかし,その昇圧機序や抵抗性の機転については未だ多くの課題が残されており,今後の研究が期待される.

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白 衣 高 血 圧


齊 藤 郁 夫
慶應義塾大学保健管理センター 教授

要旨
 高血圧患者の20%以上が白衣高血圧である.白衣高血圧の心血管系合併症の発症頻度は持続性高血圧より低く,予後は比較的良い.白衣高血圧を降圧薬で治療しても,自由行動下血圧は低下しにくい.また,降圧薬治療によって心血管系合併症の予後が改善するとするエビデンスもない.白衣高血圧を長期に観察すると,持続性高血圧に進展したり,また代謝異常を併発することもあるので,非薬物的治療で経過を見ることが推奨される.

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Dipper 型・Non-Dipper 型高血圧


北 條 行 弘*   島 田 和 幸**
*自治医科大学 循環器内科 ** 同 教授

要旨
 1日血圧測定により,本態性高血圧患者の中には夜間に血圧の上昇が持続するnon-dipper が存在することが明らかになった.non-dipper 型高血圧では,高血圧臓器合併症を合併する頻度が高い.non-dipper 型高血圧を示す原因は未だ明らかではない.夜間血圧を過剰に低下させると,虚血性臓器障害を増悪させる可能性があり,血圧日内変動を考慮した降圧療法を行うことが重要である.

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降圧薬の開始時期と降圧目標


山 里 正 演*   村 谷 博 美**  柊山 幸志郎***
*琉球大学医学部 第三内科 ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 降圧治療は,心血管系合併症の発症や進展を防止するために行われる.非薬物療法,すなわち生活習慣の改善はすべての患者に対して指導するが,薬物療法の開始は,血圧値とともに高血圧以外の危険因子の有無や標的臓器障害の程度を勘案して決める.どこまで降圧するかについては一般に 140/90mmHg 未満とされてきたが,糖尿病や腎障害を有する患者ではより厳しくし,すでに虚血性心臓病や脳卒中を発症した患者では,下げ過ぎないように注意する.

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高齢者高血圧の治療


大 屋 祐 輔*   藤 島 正 敏**
*九州大学医学部 第二内科 ** 同 教授

要旨
 高齢者高血圧の治療に関する複数の大規模介入研究の結果が発表され,降圧治療の重要性が再認識されている.しかし,何歳まで治療するか,どのレベルの血圧をどのレベルまで降圧するか,どの薬物がより有効であるかなど,必ずしも解決していない問題も多い.高齢者高血圧においては,その病態的特徴を考慮するのみならず,患者間の不均一性を考慮に入れた治療を行う必要がある.


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高血圧治療におけるカルシウム拮抗薬の意義


前 川 寛 充*   栗 原 裕 基*   矢 崎 義 雄**
*東京大学大学院医学系研究科 器官病態内科学 循環器内科 ** 同 教授

要旨
 カルシウム拮抗薬は,安定した降圧効果と禁忌の少ないことから頻用されているが,心筋梗塞発症,出血,悪性腫瘍発症の危険性を高めるとの指摘がなされ,安全性に関する議論を呼んだ.その後の研究で,長時間作用型カルシウム拮抗薬では安全性が高いことが明らかになりつつある.また大規模介入試験の結果から,長時間作用型カルシウム拮抗薬が予後を改善するとの報告もあり,これらについて概説を試みる.

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レニン・アンジオテンシン系抑制薬の将来性


日和田 邦男
愛媛大学医学部 第二内科 教授

要旨
 レニン・アンジオテンシン (R-A) 系の抑制薬であるアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬を,他のいわゆる第1選択薬である利尿薬,β 遮断薬,カルシウム拮抗薬と,降圧効果,QOL および臓器保護作用の観点から比較した.さらに,同じ R-A 系抑制薬の ACE 阻害薬とアンジオテンシンII (AII) 受容体拮抗薬を比較した.これらの比較から,21世紀初頭においてはカルシウム拮抗薬と AII受容体拮抗薬が第1選択薬として残り,利尿薬やβ 遮断薬は第2選択薬になるのではなかろうかと推論された.


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利尿薬, β遮断薬,α1 遮断薬の最近の話題


羽根田  俊**  平 山 智 也*   菊池 健次郎***
*旭川医科大学 第一内科 ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 少量の利尿薬は代謝面に対する悪影響も少なく,突然死の減少効果も期待できるため,たとえ高脂血症や耐糖能低下を有する患者においても有用である.β 遮断薬は,アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬投与下の非虚血性心不全のみならず,虚血性心不全の生命予後改善ならびに突然死の減少をもたらすことが明らかにされている.α1 遮断薬は,早朝の血圧上昇の抑制,インスリン抵抗性・脂質代謝の改善,QOL 改善,特に男性患者における勃起障害改善作用など,臨床上有用な付加作用が指摘されている.

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レニン・アンジオテンシン系の遺伝子多型と高血圧の予後


石 上 友 章*   梅 村   敏**
*横浜市立大学医学部 第二内科 ** 同 教授

要旨
 本態性高血圧症は原因不明の疾患であるが,家族性に発症することが分かっており,遺伝的素因がその発症に関与すると考えられてきていた.しかし,単純なメンデル遺伝の形式をとらないことが多く,環境因子と遺伝的因子とが相互にかかわりあって発症する典型的な多因子疾患であるとされている.レニン・アンジオテンシン (R-A) 系の基質であるアンジオテンシノーゲン遺伝子は,本態性高血圧症の原因遺伝子として最も有力な候補遺伝子であり,ゲノム解析が進んでいる.関連遺伝子の遺伝子解析と合わせて,R-A 系遺伝子と本態性高血圧症の関連について概説したい.

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