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最新医学54巻9月増刊号

要旨


リンパ球の発生・分化:
プレ B 細胞受容体による免疫グロブリン遺伝子再構成の制御

真木 一茂*  永田喜三郎* 烏山 一** 

* (財)東京都臨床医学総合研究所 ** 免疫研究部門

要旨
 プレ B 細胞受容体は B 細胞の分化において重要な役割を担っており,受容体の欠損あるいはシグナル伝達の異常は先天性免疫不全症を引き起こすことになる.我々の体では無数の病原体から自身を守るために,免疫グロブリン遺伝子の再構成という仕組みによって多種多様な抗体が産生されているが,最近の研究によりプレ B 細胞受容体は Ig 遺伝子再構成の制御にも関与することが明らかになった.

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リンパ球の発生・分化:
IL-7 受容体による TCRγ遺伝子組換えの調節

生 田 宏 一

京都大学大学院医学研究科 分子生体統御学(分子生物学)講座 助教授

要旨

 IL-7 受容体(IL-7R)ノックアウトマウスでは TCRγ遺伝子の V-J 組換えが強く障害されている.IL-7R シグナルにより活性化された STAT 5 が,5' Jγ領域の STAT モチーフに結合し germline(生殖細胞系)転写を誘導した.活性型 STAT 5 を IL-7R ノックアウトマウスの T 前駆細胞に導入すると,TCRγ遺伝子の germline 転写と V-J 組換えが誘導され,γδT 細胞の分化が回復した.したがって,STAT 5 は germline 転写の誘導を介して,TCRγ遺伝子の V-J 組換えを調節している.

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リンパ球の発生・分化:胸腺細胞の選択シグナル

高 浜 洋 介
徳島大学ゲノム機能研究センター 遺伝子実験施設 教授

要旨
 免疫応答の司令塔として自己・非自己の識別を担う T 細胞は,胸腺における分化途上で,抗原受容体を介して細胞生死や分化系譜の選択・選別を受ける.抗原受容体という 1 つの受容体から惹起される分化制御であるにもかかわらず,認識特異性に従ってどのように全く正反対の生死運命が決定されるのだろうか. T 細胞のクローン選択を運命づける分子シグナルの解析は,さまざまな免疫病の克服に向けて必須の課題であるばかりでなく,細胞分化過程における生死運命決定や分化方向決定といった,高次生命現象の基礎をつかさどる分子機構に直接問いかける大変興味深い科学である.

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リンパ球の発生・分化:
B 細胞分化における PI3-キナーゼの役割

鈴 木 春 巳
慶應義塾大学医学部 微生物学 講師

要旨
 PI3-キナーゼ(PI3K)は,リン脂質セカンドメッセンジャーの生成を介して,多様なシグナル伝達系に関与していることが明らかになっている.しかしながら,PI3K が免疫担当細胞の分化に関与しているかどうかは,未だよく分かっていない.本稿では,最近作製された PI3K の調節サブユニット(p85α)遺伝子のノックアウトマウスの解析結果を中心に,B 細胞の分化および活性化における PI3K の役割について概説する.

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リンパ球の発生・分化:
腸管上皮細胞間リンパ球(IEL)の発達分化

南 野 昌 信*1  鈴 木 健 司*2  石 川 博 通**2

*1 (株)ヤクルト本社 中央研究所 *2 慶應義塾大学医学部 微生物学 **2 同 助教授

要旨
 腸管粘膜には腸管腔に侵入するさまざまな外来抗原から生体を防御する腸管付属リンパ組織が発達分化している.腸管上皮細胞間に分布する T 細胞(IEL)は,粘膜最前線で免疫防御を担うと考えられる.近年になってマウス IEL の大多数は,腸管粘膜内で発達分化することが明らかにされ,粘膜固有層に位置するクリプトパッチが IEL 前駆細胞を産み出す解剖学的局所として提示された.また,各種サイトカイン欠損ミュータントマウスの検索から,SCF,IL-7,IL-15 などのサイトカインが IEL の発達分化に重要であることが明らかにされている.

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リンパ球の発生・分化:
胚中心 B 細胞における免疫グロブリン遺伝子の再構成

大 森  斉**  疋 田 正 喜*
* 岡山大学工学部 生物機能工学科 講師 **同 教授

要旨
 免疫グロブリンの遺伝子は,骨髄中での B 細胞の初期分化の過程で再構成〔V(D)J 再構成〕され,多様な B 細胞抗原受容体(BCR)が産み出される.もし BCR が自己反応性である場合には,未熟 B 細胞の段階でアポトーシスにより除去されるか,2 次的な V(D)J 再構成(レセプター エディティング : receptor editing)が起こり,自己反応性が解消されることが報告されている.しかし最近,末梢の成熟 B 細胞も抗原刺激後に形成される胚中心において,レセプターエディティングを行うことが見いだされた.本稿ではこの新しい知見について解説し,その生理的意義を考察する.

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リンパ組織の構築機構:Peyer 板の形成機構について

吉 田 尚 弘

京都大学大学院医学研究科 分子遺伝学

要旨
 腸管特異的末梢リンパ器官である Peyer 板の発生過程について研究した.ホールマウント免疫染色による解析で,Peyer 板原基は VCAM-1 などの接着分子の発現から始まり,さまざまな系列の血球細胞の段階を追った集積によって多段階に発生していくことが分かった.この発生過程は,これまで未報告の系列に属する IL-7 受容体α+ 細胞が Peyer 板原基でリンホトキシンを産生することによって誘導されることも明らかとなった.


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リンパ組織の構築機構:リンホトキシンとリンパ組織形成


松 本  満
徳島大学分子酵素学研究センター 情報細胞学部門


要旨
 ノックアウトマウスを用いた研究から,炎症性サイトカインと考えられてきたリンホトキシン(LT)が,リンパ節や Peyer 板の発生ならびに脾臓の細胞構築化に必須の因子であることが明らかになった.LT を介するシグナル伝達機構に障害をもつ突然変異マウスも見つかり,これらのマウスの解析に骨髄移植やキメラマウス作製技術などが導入され,リンパ組織の形成にかかわる分子機構が次第に明らかになりつつある.

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リンパ組織の構築機構:胚中心形成と BCL-6

徳 久 剛 史
千葉大学大学院医学研究科 分化制御学 教授

要旨
 成熟 B 細胞が抗原刺激を受けた後,germinal center(胚中心)を形成してメモリー B 細胞へ分化する.しかし,その分化の分子機構の詳細は未だ明らかにされていない.最近ヒトの B 細胞リンパ腫の染色体転座部位から単離された BCL-6 が,胚中心B細胞に特異的に発現誘導され,かつそのノックアウトマウスで胚中心B細胞分化が阻害されたことから,BCL-6 はメモリー B 細胞分化に必須であることが明らかとなった.

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免疫応答における細胞内情報伝達機構
免疫系における IRF の役割


小笠原 康悦
東京大学大学院医学系研究科 免疫学講座

要旨
 インターフェロン(IFN)系を制御する転写因子として知られる IRF ファミリーが,生体内でさまざまな働きを持つことが明らかとなってきた.IRF-1 は,Th1 細胞の分化および免疫応答に重要であり,また NK 細胞や CD8+ T 細胞の分化に必須の転写因子である.IRF-2 や IRF-4,ICSBP もまた,免疫細胞の分化や機能を制御していることが明らかとなってきた.

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免疫応答における細胞内情報伝達機構:
リンパ球活性化に関与するアダプター分子


石 合 正 道*  黒 崎 知 博**
*関西医科大学附属肝臓研究所 分子遺伝学部門 **同 教授


要旨
 アダプター分子は,それ自体は何ら酵素活性を有さないが,他のタンパク質/因子との相互作用によりシグナル伝達上重要な役割を担っている.最近,リンパ球特異的に発現している新たなアダプター分子が次々と報告されている.本総説では,中でも進展の著しい B 細胞,T 細胞の活性化の中心的なアダプター分子 BLNK,SLP-76,LAT を中心に議論したい.

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免疫応答における細胞内情報伝達機構:
抗原受容体を介したリンパ球活性化の負の制御

末松 佐知子* 渡 邊   武**
* 九州大学 生体防御医学研究所 感染防御学 ** 同 教授


要旨
 抗原と抗原受容体との結合に始まるリンパ球の抗原特異的な活性化は,シグナル伝達関連分子のリン酸化と脱リン酸化によって正負両方向に調節されている.この可逆的な制御反応を担う主な分子は,チロシンキナーゼとチロシンホスファターゼである.リンパ球表面に存在するコレセプター(補助受容体)も,抗原受容体を介した活性化シグナルの正負の調節にかかわっている.コレセプターを介した抑制シグナル機構には幾つかのホスファターゼが関与する.


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免疫応答における細胞内情報伝達機構:
T 細胞抗原受容体を介するシグナル伝達の制御機構


山 崎   晶*  斉 藤   隆**
* 千葉大学大学院医学研究科 遺伝子制御学 助手 ** 同 教授


要旨
 我々の生体を防御する免疫系をつかさどる T 細胞は,多種多様な抗原を認識して,特異的かつ効率的に応答し,宿主の防御に貢献する.近年,さまざまな新しい細胞内シグナル分子やターゲットの同定のみならず,その局在や kinetics に関する解析が進み,T 細胞抗原受容体を介するシグナル伝達の制御機構が分子レベルで解明されつつある.

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免疫応答における細胞内情報伝達機構:
GEM/Raft を介するリンパ球活性化機構


小 杉   厚
大阪大学医学部保健学科 病態生体情報学講座 助教授

要旨
 細胞膜にはスフィンゴ脂質・コレステロールを主要構成成分とする脂質マイクロドメイン(GEM/Raft)が存在し,これは“情報伝達の場”として機能している.T 細胞においても,T 細胞抗原受容体(TCR)シグナル伝達に必須のアダプター分子である LAT や Src 型チロシンキナーゼが,脂質修飾によって GEM/Raft に会合している.TCR 刺激後,さまざまなシグナル伝達分子が GEM/Raft に集積し,この部分が TCR シグナル伝達反応の起点として働いていることが明らかにされつつある.

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免疫応答における細胞内情報伝達機構:
Ras/MAP キナーゼカスケードによるTh1 /Th2 細胞の分化制御


山 下 政 克*  中 山 俊 憲**
* 千葉大学大学院医学研究科 免疫発生学教室 ** 同 助教授

要旨
 ヘルパー T(Th)細胞は,分泌するサイトカインによって Th1,Th2 の 2 種類に大別される.これまで研究によって,Th1 細胞と Th2 細胞のバランスの崩れが,種々の免疫性疾患の発症や増悪に深い関係があることが明らかになった.Th1 やTh2 細胞の分化は,従来サイトカインの作用を中心に議論されてきたが,T 細胞抗原受容体(TCR)からの細胞内シグナル伝達の関与についてはあまり研究されてはいなかった.しかし最近の研究により,TCR からのシグナルもまた分化の方向性の決定に重要であることが明らかになった.


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免疫応答における細胞内情報伝達機構:

CD40 シグナルと免疫応答

安 居 輝 人
大阪大学微生物病研究所 分子免疫制御分野

要旨
 TNF 受容体(TNFR)ファミリーの 1 つである CD40 のシグナルが強力な B 細胞増殖,分化誘導を引き起こすことが見いだされて以来,免疫学的および分子生物学的な研究成果により CD40 の免疫応答における必要性が明らかとなってきた.さらに近年,CD40 の細胞内シグナル伝達機構において TNF,IL-1 およびリポ多糖(LPS)受容体とのシグナル共有分子,TRAF ファミリーを利用することが示唆され,これら受容体も含めて CD40 特異的作用を説明するシグナルが問題視されてきている.


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免疫応答における細胞内情報伝達機構:

gp130 を介するシグナル伝達と免疫応答


石 原 克 彦*   日 比 正 彦*  平 野 俊 夫**
*大阪大学大学院医学系研究科 バイオメディカル教育センター 腫瘍病理学 助教授  ** 同 教授

要旨
 IL-6 ファミリーサイトカインに共通する受容体である gp130 の細胞質部分には,JAK,SHP-2,STAT 3 の 3 つの情報伝達経路に連結する機能領域が存在する.最近 SHP-2 の下流で,アダプター分子 Gab 1/Gab 2 が機能していることが明らかとなった.これらの分子を介した情報伝達機構により, gp130 は個体の免疫応答を制御している.

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免疫応答における細胞内情報伝達機構:

サイトカインシグナルの制御機構
CIS/SOCS/SSIファミリーを中心に―

吉 村 昭 彦**1   小 宮 節 郎*2 佐々木敦郎*1    金 城 市 子*1 神園慎太郎*1  鈴 木 飛 鳥*1 
*1 久留米大学分子生命科学研究所 遺伝情報部門 **1 同 教授 *2 同 整形外科 助教授

要旨
 サイトカインのシグナル伝達機構は,JAK-STAT 経路をはじめとしてその大筋が理解されようとしている.しかし,より病態との関連が深いと考えられるシグナルの負の制御機構や複数のサイトカイン間のクロストークの研究は,始まったばかりである.チロシンホスファターゼやタンパク質分解のほか我々がクローニングした CIS ファミリーも,サイトカインシグナルの負の制御因子である. CIS 1 は受容体に結合することで STAT 5 を抑制し,JAB および CIS 3 は直接 JAK のチロシンキナーゼドメインに会合し,その活性を抑制しうる.トランスジェニックマウスやノックアウトマウスの作製によって CIS ファミリーの生理機能が理解されつつある.


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免疫応答における細胞内情報伝達機構

T 細胞抗原受容体下流の新たな Grb 2 ファミリー分子


浅 田 洋 司*  菅 村 和 夫** 
* 東北大学大学院医学系研究科 生体防御学講座免疫学分野 ** 同 教授

要旨
 T 細胞抗原受容体(TCR)により抗原が認識されると,TCR/CD3 複合体近傍のさまざまなシグナル伝達分子がリン酸化され,下流へシグナルを伝える.最近,TCR/CD3 複合体近傍の細胞膜直下に存在するシグナル伝達分子が次々とクローニングされ,その機能が明らかになりつつある.その 1 つとして,新たな Grb 2 ファミリー分子がクローニングされ,TCR シグナル伝達に重要な分子であることが明らかとなった.

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免疫応答における細胞内情報伝達機構:

自然免疫と Toll シグナル


審 良 静 男

大阪大学微生物病研究所 癌抑制遺伝子研究分野 教授

要旨
 ショウジョウバエの Toll は,初期発生において形態形成にかかわるだけでなく,感染防御に極めて重要な役割を果たしている.最近,ヒトでも Toll のホモログが発見された.Toll シグナル伝達経路は,IL-1 シグナル伝達経路と極めて類似している.Toll-like receptor 2(TLR 2)がリポ多糖(LPS)結合受容体であること,TLR 4 が LPS 低応答性マウス C3H/HeJ における LPS 低応答性の原因遺伝子であり,C3H/HeJ マウスでは TLR 4 の細胞質内ドメインに点変異が存在することが判明した.さらに,ノックアウトマウスの解析から IL-1 シグナル伝達にかかわるアダプター分子 MyD 88 が,LPS シグナル伝達に必須であることが明らかとなった.

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免疫系におけるアポトーシスの制御とその異常

Fas 誘導アポトーシスにおいてカスパーゼ 8 の活性化を制御する新規分子 FLASH


米 原   伸
京都大学ウイルス研究所 教授

要旨
 アポトーシスの分子機構に対する理解をヒトやマウスの系で発展させてきた 1 つの要因は Fas の発見である.Fas とは,Fas リガンドが細胞外から結合することによってアポトーシス誘導シグナルを細胞内に特異的に伝達する細胞表層受容体分子である.ここでは,この数年で飛躍的に理解が進んだアポトーシス誘導の分子機構,特に Fas を介する分子機構について,最近我々が見いだした新規分子 FLASH を中心に解説したい.

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免疫系におけるアポトーシスの制御とその異常

アポトーシスにおけるキナーゼ ASK 1 の役割


井 下 聖 司*1*2  一 條 秀 憲*2
*1東京医科歯科大学医学部 第二内科学講座 *2 同 歯学部 歯科理工学第二講座

要旨
 さまざまな刺激を受けた細胞は,細胞の状態や周囲の環境に応じて,増殖,分化,アポトーシスなどの反応を示す.MAP キナーゼカスケードは,これらのシグナルの伝達に重要な役割を果たしている.MAPKKK の 1 つである ASK 1 は,ストレス刺激により活性化されアポトーシスを引き起こすことが明らかになった.本稿では,さまざまな ASK 1 の活性化機構について紹介する.


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抗原プロセシング・認識と腫瘍免疫:

免疫プロテアソームとハイブリッド型プロテアソーム
―内在性抗原のプロセシング酵素―


田 中 啓 二
(財)東京都臨床医学総合研究所 分子腫瘍学研究部門研究部長

要旨
 プロテアソームは内在性抗原のプロセシング酵素である.この酵素による抗原処理反応は,IFNγのようなサイトカインに応答して巧妙に調節されている.その主役を演じているのは,筆者らが発見した「免疫プロテアソーム」と「ハイブリッド型プロテアソーム」である.これらの免疫特異的なプロテアソームは,IFNγ等の外界シグナルに応答して即時的に誘導され,厳格かつ効果的な MHC クラス I-結合ペプチドの生成に大きく寄与していると推定される.本稿では,「免疫プロテアソーム」と「ハイブリッド型プロテアソーム」に焦点を当て,内在性抗原のプロセシング機構の最新の研究動向について考察する.

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抗原プロセシング・認識と腫瘍免疫

腫瘍抗原ペプチドと免疫応答


中 山 睿 一**  松 尾 光 敏* 
* 岡山大学医学部 生体防御医学講座 ** 同 教授

要旨
 自然発生がんのかなりのものに抗原が存在する.しかし,それらのほとんどは,宿主に有効な免疫反応を起こすには至らない.腫瘍抗原の研究によって,宿主免疫系の抗腫瘍効果の詳細な解析が可能となってきた.T 細胞認識腫瘍抗原の研究は CD8+ T 細胞に認識される抗原にほぼ限られてきたが,最近研究は,CD4+ T 細胞認識抗原に及んでいる.ヘルパー T 細胞エピトープと細胞傷害性 T 細胞エピトープを同時に用いた免疫療法が期待される.


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抗原プロセシング・認識と腫瘍免疫:

NK 細胞の標的認識機構


荒 瀬   尚
千葉大学大学院医学研究科 遺伝子制御学
 

要旨
 NK 細胞は腫瘍細胞やウイルス感染細胞に対して強い細胞傷害性を示すが,近年さまざまな受容体が NK 細胞の抗原認識に関与していることが明らかになってきた.それらは,活性化受容体と抑制化受容体からなり,それらの発現が NK 細胞の抗原認識に重要な機能を担っている.したがって,これらの受容体を明らかにすることは,NK 細胞の細胞傷害性機構を明らかにするうえで,また抗腫瘍免疫応答の制御法を確立するうえでも重要である.


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抗原プロセシング・認識と腫瘍免疫

第4のリンパ球系列 - NKT細胞の機能


河 野  鐵* 谷 口  克**
* 千葉大学大学院医学研究科 高次機能系免疫発生学 ** 同教授

要旨
 糖脂質抗原を捕捉する免疫システムとして NKT 細胞 - CD1d 系が発見された.NKT 細胞は,均一な抗原受容体α鎖を持つ T 細胞,B 細胞,NK 細胞とは系列を異にする細胞集団で,抗原提示分子 CD1d は多様性を欠如したクラス I 様分子である.α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)は,この免疫システムによって認識される抗原として初めて同定された.α-GalCer によって活性化された NKT 細胞は,Th2 細胞の分化抑制や強力な抗腫瘍活性を持つことが判明してきた.


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抗原プロセシング・認識と腫瘍免疫

抗腫瘍免疫療法における樹状細胞


高 原 和 彦*1  玉 城 征 郎*2  稲 葉 カ ヨ**1
*1 京都大学大学院生命科学研究科 高次生命科学専攻体制統御学講座生体応答学分野 **1 同 教授
*2 京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻動物系動物科学講座

要旨
 樹状細胞は体内に広く分布し,外部からの異物の侵入に対して抗原特異的免疫応答を開始させる免疫の要として働く細胞である.これを抗原提示細胞として用いることは,より効果的で強力な腫瘍特異的免疫応答を誘導するうえで有効であり,臨床応用も急速に進みつつある.また,樹状細胞の作用を考慮した DNA ワクチンやサイトカイン療法も検討され,一方で特異的免疫応答の誘導だけでなく,自然免疫応答における樹状細胞の作用も注目されはじめている.

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免疫疾患の最近の話題
Btk と免疫不全


山 鳥 大 材  塚 田   聡
大阪大学大学院医学系研究科 分子病態内科学

要旨
 Bruton 型チロシンキナーゼ(Btk)の欠損により X 連鎖無γ-グロブリン血症(XLA)が発症する.B 細胞抗原受容体(BCR)および Btk を介するシグナル伝達経路は,B 細胞の分化に必須であることが知られており,Btk 欠損による B 細胞の分化障害で XLA が発症すると考えられる.最近ではこのシグナル伝達を担う新たな分子,B 細胞リンカータンパク質(BLNK)が報告されるなど,シグナル伝達経路を明らかにする研究が進んでいる.

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免疫疾患の最近の話題:自己免疫性関節炎自然発症マウス


坂 口 志 文 
京都大学再生医科学研究所 生体機能調節学分野 教授

要旨
 免疫病理学的にヒトの慢性関節リウマチ(RA)と酷似した関節炎を自然発症するマウス系統を確立した.この関節炎は常染色体劣性遺伝を示し,単一遺伝子の異常によるものである.また関節炎を発症したマウスの CD4+ T 細胞の移入により,同系正常ヌードマウスに病変を惹起できる.したがって,この関節炎は自己免疫性関節炎である.このモデルはヒトの RA の原因・発症機構を解明するうえで有用であろう.


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免疫疾患の最近の話題
アトピーモデルマウス NC/Nga


千葉理恵子*  松 田 浩 珍**
* 東京農工大学 附属家畜病院 ** 同 助教授

要旨
 アトピー性皮膚炎は近年増加傾向にあり,遺伝的要因やさまざまな環境因子の関与が指摘されているが,病態の解析と発症メカニズムの解明は未だ十分になされてはいない.そのため治療法についても,対処療法のみとなっているのが現状である.ここでは,アトピー性皮膚炎モデルマウスとして認知されつつある NC/Nga マウスの特徴と,自然発症モデルとしての有用性,また NC/Nga マウスを用いることによって得られた研究成果の概略を紹介させていただく.NC/Nga マウスの登場により,アトピー性皮膚炎の研究はその解明に向けて大きな一歩を踏み出した.


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免疫疾患の最近の話題
サイトカインと自己免疫


宮 坂 信 之
東京医科歯科大学 第一内科 教授

要旨
 自己免疫疾患では,過剰な自己抗体の産生や自己感作リンパ球などによる組織障害が起こっているが,その病態形成にサイトカインが関与していることが推測されている.本稿では,自己免疫疾患におけるサイトカインバランスの乱れ,過剰産生などについて述べ,その人為的制御が自己免疫疾患の新たな治療法となる可能性についても言及する.

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免疫疾患の最近の話題
ケモカイン受容体とHIV感染


長 澤 丘 司
大阪府立母子保健総合医療センター研究所 免疫部門

要旨
 HIV-1 の宿主細胞への感染に必要な第 2 の受容体(コレセプター)が同定され,これがケモカインというサイトカインファミリーの分子の受容体であることが明らかとなった.現在までコレセプターとして機能するケモカイン受容体が幾つか報告されているが,HIV-1 感染における主要なコレセプターは CCR 5 と CXCR 4 であると考えられ,それぞれの生体における役割は大きく異なる.最近,コレセプターの機能を制御し,HIV 感染症の治療薬となる可能性を持った分子が同定された.

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免疫疾患の最近の話題:

ヒトヘルペスウイルス 8 感染とB リンパ球増殖性疾患

西 本 憲 弘* 吉 崎 和 幸**
* 大阪大学健康体育部 健康医学第一部門 助教授 ** 同 教授

要旨
 後天性免疫不全症候群(AIDS)に合併した Kaposi 肉腫の病変部位から分子生物学的手法により単離された 8 番目のヒトのヘルペスウイルスは, Kaposi’s sarcoma-associated herpesvirus(KSHV)または human herpes virus-8(HHV-8)と名づけられた.ガンマヘルペスウイルス属に分類されるこのウイルス遺伝子は,ヒト IL-6 をはじめとする,細胞の増殖や分化あるいはアポトーシスの制御にかかわる幾つかの分子の相同遺伝子を有している.HHV-8 は,IL-6 が関連する body-cavity-based lymphoma,Castleman 病,多発性骨髄腫などの B 細胞増殖性疾患の病因として注目されている.


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