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最新医学55巻10号

特集要旨

注:アルファ、ベータ等のギリシャ文字は機種依存文字のため、HP上ではアルファベット(alpha ,beta ,etc)で表示しております。(本誌ではギリシャ文字です)




アプローチ:Fc 受容体の基礎研究はどこまで臨床に生かされているか


高井俊行*1*2
*1 東北大学加齢医学研究所遺伝子導入研究分野教授
*2 科学技術振興事業団 CREST

要旨
 Fc 受容体(FcR)は,抗体(免疫グロブリン)のエフェクター機能の一翼を担う,多様な構造を持った分子群である.IgE の高親和性 FcR である Fc epsilon RIが即時型アレルギー発症の初発段階となることや,IgG の FcR である Fc gamma R 群とアレルギー,炎症,自己免疫,がん免疫との関連が追究され,免疫応答の重要な調節システムを形成していることが明らかになりつつある.FcR の多様な機能に着目した治療への応用研究も,欧米で始まっている.

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Fc 受容体遺伝子の発現制御とその臨床的意義


西山千春*  下川敏文*  羅 智靖**
* 順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター ** 同 助教授

要旨
 IgE の受容体である Fc epsilon RIのエフェクター細胞表面への発現が IgE 分子や IL-4 によって増強されることから,アレルギー増悪化の悪循環が Fc epsilon RIを介して引き起こされる可能性が示唆される.IgA 受容体(Fc alpha R)についても,その発現量が幾つかの疾患の発症と相関があるとの報告がある.これら Fc 受容体の発現調節機構の解明により,関連疾患の発症制御に関する分子的な情報がもたらされることが大いに期待される.

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Fc 受容体シグナル伝達に関与するアダプター分子


後飯塚 僚*1*2
*1 東京理科大学生命科学研究所 分子生物学研究部門 助教授
*2 科学技術振興事業団 PRESTO 研究員

要旨
 Fc 受容体(FcR)を介したシグナル伝達に SLP-76 や LAT などのアダプター分子が重要な役割を果たしていることが,遺伝子欠損マウス由来のマスト細胞,血小板,マクロファージおよび NK 細胞を用いた解析から明らかになってきた.さらに,それぞれの細胞において発現しているアダプター分子の構成により,細胞機能発現に至るシグナル伝達経路が異なっていることが示唆されている.本稿では,最近急速に進展しつつあるアダプター分子の FcR を介したシグナル伝達における役割について概説する.

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IgM と IgA に対する新しい Fc 受容体の発見


坂本典久*1*2   渋谷 彰**1
*1 筑波大学基礎医学系免疫学 **1 同助教授
*2 岡山大学医学部第一内科


要旨
 Fc 受容体(FcR)は,アレルギー,自己免疫,炎症など種々の免疫反応に深く関与している. これまで IgG,IgE に対する FcR が同定されていたが,IgM に対する FcR は同定されていなかった.今回我々は,IgM および IgA の両者をともに結合する新規のマウス FcR である Fc alpha / mu R を同定した.この FcR は1個の免疫グロブリンドメイン構造を有し,分子量約 70kD の1型の膜タンパク質であった.免疫グロブリンドメインの部分に,IgM,IgA の Fc 部分との結合部位があるものと考えられた.RT-PCR により,Fc alpha / mu R はB細胞やマクロファージの血球細胞のほか,腎臓,小腸,肺,精巣,脾臓などの臓器に発現を認めた.Fc alpha / mu R を導入したB細胞株 Ba/F3 細胞は IgM を結合したビーズを取り込んだことから,Fc alpha / mu R は IgM との免疫複合体の細胞内取り込みに関与していることが示唆された.

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自己免疫と Fc gamma RIIB 制御領域多型


広瀬幸子**  姜   奕*
* 順天堂大学医学部 第二病理 ** 同助教授

要旨
 自己免疫疾患は多遺伝子疾患で,重要な免疫機能分子の作用に影響を与える複数の遺伝要因の組み合わせにより発症すると考えられる.単一遺伝子変異で起こる疾患とは異なり,多遺伝子疾患の遺伝的解析は,ヒト遺伝子の多様性も相まって膨大な症例数を必要とする.マウスモデルでの解析は,疾患感受性を規定する候補遺伝子を推定するうえで極めて有用な情報を与えてくれる.全身性エリテマトーデス(SLE)自然発症モデルマウス系を用いてゲノムワイドに解析を行った結果,MHC 連鎖遺伝子に加えて,B細胞活性化の抑制分子 Fc gamma RIIB1 をコードする遺伝子の制御領域多型が, SLE 感受性を規定する一要因となっている可能性が示された.

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Fc 受容体と自己免疫疾患モデルマウス


中村 晃*1*2*3 小野栄夫**1*3 貫和敏博**2 高井俊行***1*3

*1 東北大学加齢医学研究所 遺伝子導入研究分野 **1 同 助教授 ***1 同 教授
*2 同 呼吸器腫瘍研究分野 **2 同 教授
*3 科学技術振興事業団 CREST


要旨
 複雑な病態を示す自己免疫疾患の研究上,その疾患モデル動物は必要不可欠な存在である.代表的な自己免疫疾患モデルである糸球体腎炎やコラーゲン誘発性関節炎モデルにおいて,Fc 受容体(FcR)の遺伝子欠損マウスを用いた研究から,FcR が果たす重要な機能が明らかになった.ヒト自己免疫疾患においても FcR の多様性が認められており,疾患モデルによる FcR の機能解析は今後も重要な研究課題であろう.

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Fc 受容体と腫瘍免疫


小野栄夫**1*3 海老原伸*1 秋山健一*1*2
貫和敏博**2 高井俊行***1*3
*1 東北大学加齢医学研究所 遺伝子導入研究分野 **1 同 助教授 ***1 同 教授
*2 同 呼吸器腫瘍研究分野 **2 同 教授
*3 科学技術振興事業団 CREST


要旨
 Fc 受容体(FcR)は,広く免疫・炎症性細胞に発現して,抗体依存性にさまざまな機能を免疫・炎症性細胞に発揮させる実効分子である.FcR と腫瘍免疫の接点は,抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)活性と抗原提示過程にある.これまでの研究で,抗腫瘍活性としての ADCC では,Fc gamma RIIB の抑制作用がその減弱因子として働いてしまう問題点が指摘されている.また抗原提示細胞では,FcR 群が抗原提示機能に促進的に働くことが明らかにされている.こうした FcR の機能的側面が,新たな腫瘍免疫法を創出するための視点を与えることになるであろう.

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ヒト Fc gamma 受容体の多型と自己免疫疾患


土屋尚之
東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学教室 助教授

要旨
 Fc gamma 受容体(Fc gamma R)は免疫複合体のクリアランス,単球や好中球の活性化,TNF alpha 産生誘導などの機序を介して,自己免疫疾患,特にリウマチ性疾患の病態形成における役割が検討されてきた.これまでに,諸集団において全身性エリテマトーデス(SLE)と Fc gamma RIIA,IIIA,IIIB 多型との関連が報告されてきたが,その結果は集団あるいは報告者によりさまざまである.慢性関節リウマチ(RA),抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎との関連も,最近少数であるが報告されている.本稿ではそれらについて概説する.

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Fc gamma 受容体遺伝子多型と歯周炎感受性


小林哲夫*    吉江弘正**
* 新潟大学歯学部 歯科保存学第二講座 ** 同 主任教授


要旨
 歯周炎は歯周病原菌による感染症であり,遺伝因子と環境因子が重なって発症・進行する多因子病でもある.歯周炎感受性の診断は細菌検査のみでは不十分で,生体防御能に関連した遺伝因子の解析が必要となる.その候補として,炎症性サイトカインや抗体受容体が報告されている.我が国でも,IgG 受容体遺伝子型が歯周炎の再発や早期発症性と関連することが示唆され,機能的解析も進められている.

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自己免疫疾患の発症における Fc 受容体の役割


浜野有記*    斉藤 隆**
* 千葉大学大学院医学研究科遺伝子制御学 ** 同教授


要旨
 Fc 受容体(FcR)ノックアウトマウスにおいて,血管炎,馬杉腎炎の発症が劇的に抑制された.これまで補体依存性と考えられてきた免疫複合体による自己免疫疾患の発症に,FcR が必須であることが明らかとなった.さらに抗好中球細胞質抗体(ANCA)を介した血管炎の発症にも,FcR が重要であることが最近明らかとなっている.これらの知見は,今後 FcR が自己免疫疾患の特異的な治療の戦略となりうる可能性を示唆している.

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糸球体腎炎における Fc 受容体の役割


鈴木祐介*1  羅 智靖*2
*1 順天堂大学医学部腎臓内科
*2 同 アトピー疾患研究センター助教授


要旨
 免疫グロブリンとエフェクター細胞を結ぶ鍵となる Fc 受容体(FcR)の分子的解析が急速に進み,炎症のカスケードの再定義がなされつつある.免疫複合体型腎炎においてもその役割が注目されている.本稿では,腎臓での FcR の生理的役割,および糸球体腎炎発症におけるその役割と機序に関して,FcR 関連ノックアウトマウスの検討から得られた我々の知見を中心に概説した.機能的 FcR は腎臓の恒常性維持に重要であるばかりでなく,古典的実験腎炎である馬杉腎炎や,ループス腎炎の自然発症モデルなどでは,発症に必須であることが判明した.同時に,免疫複合体の沈着する場所や量,およびその性状による FcR の活性化の違い,FcR 自身の量的・質的な表現型の違いなどが,糸球体腎炎の発症および予後などを決定している可能性が示された.

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肺のアレルギー・免疫疾患における Fc 受容体の役割


長谷川好規
名古屋大学医学部 第一内科

要旨
 さまざまな免疫グロブリンの Fc 受容体(FcR)遺伝子ノックアウトマウス作製の成功により,FcR 機能の解明が急速に進められた.本稿では,肺のアレルギー・免疫疾患を取り上げ,FcR 機能からみた病態解明と治療の可能性について,免疫複合体による急性肺傷害モデルと Goodpasture 症候群,気管支喘息を取り上げて紹介する.今後,さまざまな呼吸器免疫疾患の発症メカニズムを考えるうえばかりでなく,肺の生体防御機能を含めた肺のアレルギー・免疫疾患の制御においても,FcR という分子はますます重要な役割を果たすと考えられる.

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ヒト好塩基球の Fc 受容体による制御


谷本 安*   高尾和志*   原田実根**
* 岡山大学医学部第二内科 ** 同教授


要旨
 ヒト好塩基球には,高親和性 IgE 受容体(Fc epsilon RI)のみならず低親和性 IgG 受容体である Fc gamma RIIが発現しており,その機能が注目されている.マウスでは Fc gamma RIIb が,Fc epsilon RIからのシグナル伝達を負に制御していることが明らかにされている.しかし,ヒト好塩基球においては,Fc gamma RIIは Fc epsilon RIを介する細胞内カルシウム濃度の上昇やヒスタミン遊離を抑制し得ず,IgG による IgE 依存性反応の抑制は困難と考えられる.

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ヒトマスト細胞の大量培養と Fc epsilon RIの発現調節


中畑龍俊
京都大学大学院医学研究科発生発達医学講座 発達小児科学 教授

要旨
 ヒトC帯血単核球あるいは CD34+ 細胞から,マスト細胞の大量純培養の系を確立した.CD34+ 細胞から SCF,IL-6 存在下で増殖してくる細胞中に占めるマスト細胞の比率は,培養 60 日後にはほぼ 80%,培養 100 日目にほぼ 100% となる.培養初期に見られるマスト細胞はT型マスト細胞であるが,培養 100 日以上経過すると TC 型マスト細胞も多数見られるようになる.この培養系で得られるヒトマスト細胞上の Fc epsilon RIの発現は弱く,IL-4 添加により Fc epsilon RIが発現誘導された. beta 鎖, gamma 鎖の mRNA 発現量には変化が認められなかったが,IL-4 が Fc epsilon RI alpha 鎖 mRNA の発現を増強していることが明らかとなった.

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