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最新医学55巻11号

特集要旨

注:アルファ、ベータ等のギリシャ文字は機種依存文字のため、HP上ではアルファベット(alpha ,beta ,etc)で表示しております。(本誌ではギリシャ文字です)



高血圧症の病因遺伝子


勝谷友宏*  檜垣實男**  荻原俊男***

*大阪大学大学院医学系研究科加齢医学 ** 同助教授 *** 同教授

要旨
 高血圧の9割以上を占める本態性高血圧症の原因はいまだ不明である.遺伝子から病態に迫ろうとする試みがなされ,少しずつ成果が上がってきている.量的形質である血圧の遺伝の特徴,遺伝子解析の方法論とこれまでの研究成果を検討することにより,遺伝子解析で何が分かるのか,解析をするためには何が必要か,今後の臨床にどのように役立てられていくのかについて述べる.

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高血圧とレニン・アンジオテンシン系


堀内正嗣
愛媛大学医学部第一医化学 教授

要旨
 レニン・アンジオテンシン(R-A)系は循環 R-A 系,組織 R-A 系として血圧・電解質調節,心・腎・血管病変の発症,リモデリングなどに重要な役割を担っている.アンジオテンシンII(AII)受容体拮抗薬が開発され,現在その一部が我が国でも使用され始めている.今後,AII受容体サブタイプの作用を含めたヒトにおける R-A 系の病態生理学的意義が,さらに明確にされていくものと期待される.

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女性ホルモンと血管機能


柴田洋孝*1*2  猿田享男**2
*1 慶應義塾大学保健管理センター専任講師
*2 同医学部内科兼担講師 **2 同教授,医学部長


要旨
 エストロゲンは,血清脂質,凝固・線溶系に作用するのみならず,血管に直接作用して抗動脈硬化作用を示す.そのために,閉経前女性では男性と比べて冠動脈疾患が有意に少なく,閉経後女性では女性ホルモン補充療法により冠動脈疾患の予防に有用であることが提唱されているが,血栓症や乳癌・子宮癌発生の危険が問題点である.低用量の女性ホルモンの使用や,乳腺や子宮に対してはアンタゴニスト,心血管系に対してアゴニストとして作用する SERM と呼ばれる薬物は,癌発生の危険を抑制しつつ動脈硬化抑制作用を示すことから,その臨床応用が待たれる.

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カルシウム感受性の分子機構と高血圧症およびその血管合併症治療への応用−Rho/Rho キナーゼ系の意義−


澤田直樹*  伊藤 裕*  中尾一和**
* 京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学 ** 同教授

要旨
 低分子量Gタンパク質 Rho およびそのエフェクターである Rho キナーゼは,血管平滑筋細胞のカルシウム感受性亢進を介して血管トーヌスを上昇させ,高血圧症の病態生理において重要な役割を果たす.最近我々は,Rho/Rho キナーゼ経路が増殖性血管病変形成に深く関与することを見いだした.血管トーヌス,リモデリング制御に共通するシグナル系としての Rho/Rho キナーゼ系の意義が注目される.

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糖尿病の病因遺伝子


堀川幸男*  武田 純**
* 群馬大学生体調節研究所 ** 同教授

要旨
 遺伝傾向の濃厚な家系で認められる若年発症型の2型糖尿病(MODY)は単一遺伝子疾患と考えられ,発症の 95% が遺伝因子により規定されるが,その原因遺伝子は現在までに5種類(MODY1〜5)が明らかになっている.しかし残りの大部分の2型糖尿病は,環境因子を含めた多因子遺伝疾患といわれながら,その遺伝形式,浸透率もはっきりせず,主要な原因遺伝子は現在まで同定はされていなかった.今回罹患同胞対法により初めて,メキシコ系アメリカ人において2型糖尿病の主要原因遺伝子を同定することに成功したので,ここで含めて概説をする.

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インスリンのシグナル伝達経路とインスリン抵抗性


三宅一彰*  小川 渉*  春日雅人**
* 神戸大学医学部 第二内科 ** 同 教授

要旨
 インスリンは代謝恒常性の維持に最も重要な役割を果たすホルモンである.その代謝調節作用が十分に発揮されない状態をインスリン抵抗性と呼ぶが,2型糖尿病の発症,病態を理解するうえでインスリン抵抗性を理解することは非常に重要である.2型糖尿病のインスリン抵抗性には,遺伝的因子に規定されるものと後天的因子によるものがある.後天的因子には肥満や運動不足,高遊離脂肪酸血症,高血糖などが挙げられる.

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糖尿病の発生工学的アプローチ


寺内康夫
東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科

要旨
 糖尿病の中でも2型糖尿病は,インスリン分泌不全,インスリン抵抗性に関与する遺伝因子と,肥満,過食,運動不足などの環境因子(生活習慣)が重なって発症する多因子遺伝病と考えられる.糖尿病の分子機構の解明には,個々の遺伝子の異常やその組み合わせが形成する遺伝的感受性と環境要因との相互作用を明らかにすることが大切である.発生工学を用いて個々の糖尿病候補遺伝子の欠損マウスを作製し,その掛け合わせや環境因子の負荷により多因子病としての糖尿病を再構成することにより,個体レベルでの糖尿病の発症過程や分子機構の解明が可能となる.

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肥満症の病因遺伝子


佐藤哲子*1*2   小川佳宏*2  中尾一和**2
*1 大阪府済生会野江病院一般内科
*2 京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学・第二内科 **2 同教授

要旨
 肥満は糖尿病,高血圧症,高脂血症などの生活習慣病の主要な危険因子である.脂肪細胞が過剰に蓄積した状態である肥満は,エネルギー摂取と消費のアンバランスにより発症する.最近の分子遺伝学の進歩により,従来受動的なエネルギー貯蔵臓器としてとらえられてきた脂肪組織が,サイトカインやホルモンなどの生理活性物質を分泌しエネルギー代謝に積極的にかかわっていることが明らかになった.その代表的なホルモン“肥満遺伝子産物(レプチン)”の発見を契機として,種々の遺伝性肥満モデル動物の原因遺伝子や摂食およびエネルギー代謝調節にかかわる肥満関連遺伝子が相次いで同定され,肥満発症のメカニズムの解明が急速に進展してきている.

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肥満症の分子機構


船橋 徹*  松澤佑次**
* 大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学 ** 同教授

要旨
 糖尿病,高脂血症,高血圧や動脈硬化疾患は,近年極めて頻度の高い疾患(common disease)となっており,発症の共通基盤として過栄養による脂肪組織過剰蓄積,肥満が大きな位置を占めることが再認識され,生活習慣病と呼ばれるようになった.脂肪組織はエネルギー貯蔵のみでなく,多彩な生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌している.その分泌異常が,肥満に伴う病態の分子基盤となる可能性が生まれてきた.

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高脂血症のモデル動物


山田信博
筑波大学臨床医学系内科教授

要旨
 発生工学的手法は高脂血症や動脈硬化の病態解析にも応用され,現在多くの関連する遺伝子のモデル動物が報告されている.中でも LDL 受容体あるいはアポEノックアウトマウスは粥状動脈硬化症を容易に形成することから,粥状動脈硬化症のモデル動物として広く利用されている.本稿では,我々の開発したリポタンパク質リパーゼ(LPL)やアポEを過剰発現するトランスジェニックマウスの系などの幾つかの動物モデルを紹介する.

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酸化 LDL と粥状動脈硬化


久米典昭
京都大学大学院医学研究科加齢医学講師

要旨
 酸化 LDL およびその構成脂質は,細胞内に取り込まれ脂質の蓄積を来すとともに,さまざまな炎症性変化を引き起こし,動脈硬化の進展,プラークの破綻を促進すると考えられる.この過程にかかわると思われる,酸化 LDL に対する受容体群が同定されているが,これらの分子の病態における意義,さらに臨床応用へと研究が進められている.

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生活習慣病の遺伝子治療


小池弘美*1  石田昭彦*2  森下竜一**1  金田安史***1
*1 大阪大学大学院医学系研究科 遺伝子治療学**1 同 助教授 ***1 同 教授
*2 琉球大学医学部 解剖学第二講座

要旨
 単一遺伝子欠損症から始まった遺伝子治療は,現在ではその対象を動脈硬化や高血圧,糖尿病などの生活習慣病にまで広げている.特に内皮細胞増殖因子 VEGF を用いた閉塞性動脈硬化症に対する遺伝子治療の効果は目をみはるものがある.大阪大学ではすでに E2F デコイを用いた遺伝子治療が始まっており,HGF を用いた遺伝子治療も申請中であり,その効果に大きな期待が寄せられている.

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生活習慣病の運動療法とインスリン感受性亢進の分子機構


林 達也
京都大学大学院医学研究科 臨床病態医科学講座

要旨
 生活習慣病治療における運動療法の位置づけは,薬物治療の進歩,運動指導にかかる負担,患者の QOL,医療経済効果などを考慮しつつ柔軟に考えるべき問題である.しかしながら,近年の疫学的研究は「運動不足」自体が心血管死や総死亡の独立危険因子であることを示しており,習慣的運動の持つ医学的意義は極めて大きい.今後,インスリン感受性の改善をはじめとする運動の医学的効果が分子レベルで解明される可能性が高く,その臨床応用が期待される.

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心血管病と eNOS 遺伝子


宮本恵宏*  斉藤能彦**  中尾一和***
* 京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学 ** 同助教授 *** 同教授

要旨
 高血圧症や冠動脈疾患などの心血管病の発症には環境因子が重要であることは言うまでもないが,遺伝因子が関与していることも明らかであり,近年幾つかの遺伝子と心血管疾患との連関が報告されてきている.最近我々は,血管内皮における一酸化窒素合成酵素である eNOS 遺伝子にエキソン7の Glu298Asp 変異と転写調節領域の T-786-C 変異とが存在し,それぞれ別々に心血管病と連関することを明らかにした.ここでは,それらの変異の機能解析の結果も含めて報告する.

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グレリンの発見とその意義


児島将康*  寒川賢治**
* 国立循環器病センター研究所生化学部 ** 同部長

要旨
 オーファン受容体である成長ホルモン放出促進因子受容体(GHS-R)の内因性リガンドとして,グレリンが胃のペプチド抽出物から精製された.グレリンはアミノ酸残基 28 個から成るペプチドで,その第3番目のセリン残基が脂肪酸のオクタン酸によって修飾されている.この修飾基は活性発現に必要で,このような構造は生理活性ペプチドではこれまで知られていない.グレリンの発見により,成長ホルモン分泌の調節器官としての胃の役割が示唆される.

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