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最新医学55巻12号

特集要旨



アプローチ:血管炎症候群− オーバービュー −


橋本博史
順天堂大学医学部膠原病内科教授

要旨
 血管炎は病理学的に血管壁の炎症として定義される.血管炎を基盤としてもたらされる多種多様の臨床病態ないし疾患群は血管炎症候群と総称されるが,それには原発性,続発性を含め数多く含まれる.その多くはいまだ原因不明であるが,分子生物学や遺伝子工学などの手法の導入により,病因・病態の発症機序が次第に明らかにされてきている.本特集では血管炎の基礎と臨床について論述されているが,ここではそれらを含めて概説する.


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血管炎のモデル動物


石津明洋*    吉木 敬**
*北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻 病態解析学講座分子病理学分野 ** 同教授

要旨
 血管炎を自然発症するモデル動物として,(NZB×NZW)F1 マウス,SL/Ni マウス,MRL/lpr マウス,HTLV- Iトランスジェニックラットなどが解析されてきた.これら動物モデルに共通する病因は,遺伝子に内在化したレトロウイルスである.内在性レトロウイルスは自己免疫の標的としてふるまうのみならず,宿主遺伝子の欠失や活性化を誘導することにより,ヒト血管炎の発症に関与している可能性がある.

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血管炎と疾患感受性遺伝子


土屋尚之*    徳永勝士**
* 東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学教室 助教授 ** 同教授

要旨
 血管炎の遺伝素因の分子レベルでの解析は,まだ始められたばかりである.HLA との関連では,高安動脈炎と HLA-B52,B39 との関連は確立している.抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎では,今後の確認が必要であるが,各集団を通じて DR9,DR4 が関連する傾向が認められる.今後,HLA 領域内に存在する別の遺伝子を含めた検討が必要である.HLA 領域以外の遺伝子については,ほとんどが今後の課題として残されている.

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血管炎としての再狭窄病変


岡本栄一*1    Josiah N. Wilcox*2    倉林正彦**1
*1 群馬大学医学部第二内科 **1 同教授
*2 Emory 大学医学部内科


要旨
 血管傷害後再狭窄に関する従来の研究は,傷害内膜/中膜のマクロファージを中心とする炎症反応と新生内膜増殖に焦点が置かれていた.しかし,血管傷害後の炎症反応はむしろ外膜において顕著で,しかも好中球浸潤がマクロファージ集積に先行する.外膜の急性炎症により線維芽細胞が血管周囲で増殖し,“新生外膜”を形成後に筋線維芽細胞へと形質変換することが,慢性期の収縮性リモデリング,内腔狭小化の原因として考えられる.

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血管炎とサイトカイン,接着分子


竹内 勤

埼玉医科大学総合医療センター第二内科教授

要旨
 血管炎の病態には,免疫複合体が中心的役割を果たすと考えられてきた.最近,それ以外の機序も血管炎に関与していることが明らかとなってきた.そのモデルの1つが Shwartzman 反応で,細胞成分が炎症に深くかかわっている.特に,炎症性細胞 - 血管内皮接着が重要であり,その調節はサイトカインによってなされている.このようなモデルを通して,サイトカイン,接着分子の役割を考えたい.

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血管炎と自己抗体− 抗好中球細胞質抗体を中心に −


鈴木和男
国立感染症研究所生物活性物質部室長

要旨
 血管炎患者血清中に,抗好中球細胞質抗体(ANCA)が上昇し,好中球が ANCA とともに血管炎の病態形成に関与していることが予想されている.その対応分子としては,好中球顆粒成分でミエロペルオキシダーゼ(MPO)とプロテイナーゼ3(PR3)が注目される.しかし,抗体価の陽性度は必ずしも病態と連動せず,反応部位(エピトープ)の特定や好中球の活性化を調べることが重要である.MPO-ANCA エピトープ解析から,結節性多発動脈炎(PN)および顕微鏡的多発血管炎(MPA)患者の血清においては,MPO の重鎖のNおよびC末端に単独で反応するモノクローナルあるいはオリゴクローナルな抗体がその重症度と関連していた.一方,グロブリン製剤や健常者血中に含まれる MPO-ANCA はポリクローナルである.今後は,グロブリン製剤などの新規の治療法の検討や,モデルマウスを用いた病因解析研究が必須となってくる.

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血管炎における血管閉塞の機序


米満吉和*  居石克夫**
* 九州大学大学院医学研究院病態医学専攻病理学講座病理病態学領域 **同教授

要旨
 血管の「閉塞」と「炎症」は密接に関連している.その中で,血管炎症候群における内膜肥厚性病変とその帰結としての閉塞性病変は,少なくともその一部の機序において動脈硬化性病変のそれを共有していることが示唆されている.一方で血管炎と動脈硬化は,いずれも炎症性疾患であるにもかかわらず,その好発年齢,性差,好発血管,臨床症候は明らかに異なる.血管炎の病因解明には,炎症の質の差を検討することに加え,炎症に関する新たなパラダイムの構築が必要かもしれない.

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血管炎からみた動脈硬化


渡辺照男
佐賀医科大学 副学長

要旨
 最近,動脈硬化が慢性炎症,言い換えれば血管炎の1つとしてとらえられる疾患であるとの認識が高まっている.ここではまず動脈硬化病変の細胞構成からみた特徴,マクロファージとT細胞の存在様式,発生・進展の過程を概観し,次に病変の成り立ちに占める炎症・免疫機序の役割,特に細胞と細胞の接着を介する相互作用 cognate cell-to-cell interaction や,動脈硬化関連抗原に関する最近の知見を概説した.また,臨床的に重要なプラーク破綻における炎症反応の重要性についての考察を加えた.

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血管炎の分類と組織学的特徴


澤井高志
岩手医科大学医学部病理学第一講座教授

要旨
 原発性の血管炎の概念や分類については,PN 型血管炎が提唱されて以来いろいろ変化してきたが,1994 年 Chapel Hill での Conference で,病変を形成する血管の太さと臨床的な特徴を考慮に入れた新しい分類が提唱され合意をみた.注目されるのは,抗好中球細胞質抗体(ANCA)の発見による血管炎に対する考え方と,これに関連して結節性多発動脈炎が古典的多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎とに分類されたことである.ここでは,新しい血管炎の分類に基づいてその組織学的特徴を述べる.

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高安動脈炎の診断と治療


小林 靖*  沼野藤夫**
* 東京医科歯科大学医学部第三内科 ** 同教授

要旨
 高安動脈炎(大動脈炎症候群)は,大動脈とその主要分枝に生じる非特異的大型血管炎であり,若い女性に好発する.頭部乏血症状や上肢乏血症状,高血圧を高頻度に認める.
 大動脈弁閉鎖不全,虚血性心疾患,腎血管性高血圧などの合併症が,本症の予後に大きな影響を与える.
 ステロイド薬による炎症の制御が中心となり,また血栓予防のため抗血小板薬が用いられる.重篤な臓器障害を合併する場合は外科治療の適応となる.

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結節性多発動脈炎の診断と治療


中林公正
杏林大学医学部第一内科学教室教授

要旨
 結節性多発動脈炎は,中・小型の筋性動脈および毛細血管に壊死性血管炎を生じ,多彩な臨床症状を呈する.古典的多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎の2病型がある.古典的多発動脈炎は中型の筋性動脈に病変を生じ,肉眼的に観察可能な動脈瘤を形成する.一方,顕微鏡的多発血管炎は小型の筋性動脈,毛細血管,細動脈に病変を生じ,顕微鏡にて初めて壊死性病変を確認できる.前者は病因が不明であるが,後者は MPO-ANCA が関与して生じる疾患である.両病型の診断基準と治療指針について述べた.

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抗好中球細胞質抗体関連血管炎の診断と治療


吉田雅治
東京医科大学八王子医療センター腎臓科 助教授

要旨
抗好中球細胞質抗体(ANCA)は,ヒト好中球細胞質に対する IgG 型の自己抗体で,ANCA のサブセットにより c(PR3)-ANCA 関連血管炎(Wegener 肉芽腫症)と p(MPO)-ANCA 関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎,アレルギー性肉芽腫性血管炎,腎限局型血管炎)に大別される.腎および肺を中心とする細小・毛細血管炎による血管炎症候を示し,ANCA 力価は診断および免疫抑制療法施行時に疾患活動性の推定に有用で,感染症の予防・対策が重要である.

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皮膚白血球破砕性血管炎の診断と治療


竹原和彦
金沢大学医学部皮膚科教授

要旨
 皮膚白血球破砕性血管炎(cutaneous leukocytoclastic vasculitis)は,病理組織学的に1.核塵,2.フィブリノイド変性,3.赤血球の遊出,4.血管内皮細胞の膨化,内腔の狭小化を示す皮膚血管炎群を総称した各称である.臨床的には,アナフィラクトイド紫斑病,蕁麻疹様血管炎,皮膚アレルギー性血管炎,過敏性血管炎,皮膚型および全身型結節性多発動脈炎などが代表的なものであり,それぞれ罹患する動脈のレベルが異なる.治療は,症状の程度,病勢,罹患動脈のレベル,内臓病変の有無とその程度によって決定される.

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Buerger 病の診断と治療− 最近の変遷 −


中島伸之
千葉大学医学部第一外科 教授

要旨
 Buerger 病は成人男子に優位に発症し,難病血管炎のうちで最も頻度が高い疾患である.本疾患に関しては,臨床面ではほぼ確立した診断基準がある.治療に関しては,最近変遷がみられるものの QOL を重視した新しい重症度分類と治療指針が提示された.

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他の膠原病の伴う血管炎の病態と治療


小林茂人
順天堂大学医学部膠原病内科 講師

要旨
 さまざまな膠原病に見られる血管炎の病態と治療について解説した.膠原病に見られる血管炎は,原発性の血管炎に類似した病理所見や臨床症状を有することが多く,原発性血管炎の各疾患と照らし合わせて,類似性や相違点を比較してその病態を考えることが重要である.また,膠原病の血管炎においては,共通した血管炎の病態や個々の膠原病に特徴的な血管炎の病態などを,原疾患の病態から考えることが重要である.

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ウイルス関連血管炎の診断と治療


細野 治
東京大学医科学研究所先端医療研究センター 免疫病態分野

要旨
 ウイルス関連血管炎は,HIV や HCV の発見,さらに感度や精度の高い分子生物学的手法によるウイルスの検出により注目されるようになった.関与するウイルスは数多く知られ,あらゆるサイズの血管が傷害されるが,小〜中血管であることが多い.有効な抗ウイルス薬の登場により,迅速かつ的確な診断と活動性の評価をもとに適切な治療戦略を立てることが可能となり,その治療効果および予後の改善が見られている.


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