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最新医学 別冊「再生医学−21世紀の医学を展望する−」

要旨

注:アルファ、ベータ等のギリシャ文字は機種依存文字のため、HP上ではアルファベット(alpha ,beta ,etc)で表示しております。(本誌ではギリシャ文字です)



両生類の初期胚を用いた試験管内での臓器形成

長田 さやか*1 有泉 高史*2 浅島 誠**1*2
*1 東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系 **1 同 教授
*2 科学技術振興事業団(CREST プロジェクト)

要旨
 両生類の初期胚は,試験管の中で臓器形成を試みるうえでの優れた研究材料である.組織や臓器が形づくられる過程では,細胞間の誘導現象が重要な役割を果たす.筆者らは誘導を担う因子としてアクチビンを同定し,両生類の初期胚に由来する未分化細胞からさまざまな組織や臓器を分化させることに成功している.試験管内で作られた心臓,腎臓,膵臓は,生体の臓器と同様の構造を持ち,正常に機能することも確認されつつある.

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核移植と再生医学


角田 幸雄*  加藤 容子
近畿大学農学部 畜産学教室 講師 * 同 教授

要旨
 分化した成体の体細胞を未受精卵へ核移植すると,核は初期化されて,個体を形成する能力を獲得することが明らかになっている.現在の核移植技術は技術的に不完全であり,核の初期化に伴って必ずしも正常な個体が得られるとは限らず,また核が初期化される機構も明らかになっていない.我が国では,現時点ではいかなる目的であっても,ヒトにおける核移植は一切禁止されている.本稿では,動物における核移植の現状を紹介するとともに,ヒトの再生医療への応用の可能性について議論してみたい.

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ヒト ES 細胞とガイドライン


中辻 憲夫*  末盛 博文
京都大学再生医科学研究所 発生分化研究分野 *同教授

要旨
 すべての細胞種に分化できる多能性幹細胞である ES 細胞(胚性幹細胞)株がヒト胚から樹立されたことは,細胞医療や再生医療の大きな可能性を示した.移植治療に役立つ機能細胞を分化させる研究が進んでいる.移植医療のためのドナーを確保することは不可能であり,ヒト ES 細胞の研究は倫理的側面に配慮しながらも積極的に進めるべきである.臨床応用までに解決すべき点は多く,ES 細胞と組織幹細胞の両方の研究が必要である.

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老化は再生医学のターゲットか


鍋島 陽一
京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学教授

要旨
「人の老化は生命の機能を維持する統合機能の破綻による機能減退によってもたらされる」と考えられている.ところが,老化の進行は個人により違いがあり,時には特定の組織の機能破綻が起こり,健康な生活を奪い,生命の維持を困難にすることは大いにあり得ることであり,このような組織,臓器の機能再生が検討されてしかるべきである.しかし,全身の老化の克服を考えると,現在の再生医学の果たす役割は限定されたものとなろう.幸いなことに,再生医学の発展が生物学に新たな視点を与え始めており,それが老化の理解をもたらすものと期待している.klotho 遺伝子の機能解析からも新しい生命現象の統合的制御システムの理解がもたらされ,老化疾患を克服する方途を与えるであろう.

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再生生物学から再生医学へ


野地 澄晴
徳島大学工学部 生物工学科 教授

要旨
 再生能力を持つさまざまな生物,例えばプラナリヤ,ヒドラ,コオロギ,イモリなどの再生メカニズムを解明する再生生物学は,医学の観点からはこれまであまり注目されてこなかった.しかし,再生生物学は,再生医学に直接寄与しないが,生物の再生の基本メカニズムを解明することにより,間接的に大きな寄与をするであろう.最近の肢の再生のメカニズムの研究を例にとってその可能性を紹介する.

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器官の再構築と再生医学


吉里 勝利
広島大学大学院理学研究科生物科学専攻 教授

要旨
 生命科学はポストゲノム時代を視野に入れつつ新しい研究方向を模索している.これまでの還元論的生命科学の研究手法に加えて,構成論的手法を取り入れながら,生物学は構成論的生物学として“生命とは何か”という生命科学の根元的な問いに向けて新しい出発をしようとしている.この動きに医学領域で対応しようとするものが再生医学である.構成的生物学と再生医学は生きている人工器官の再構築技術の開発を課題として共有し,お互いに影響しあいながら,ポストゲノム時代の新しい生命観の構築に向かうであろう.

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再生医療と組織工学


岩田 博夫
京都大学再生医科学研究所教授

要旨
 再生医療は,臓器移植に伴うドナー不足の問題もなく,また,人工臓器のように機械を埋め込むわけでもないので,一般国民には非常に受け入れやすいイメージである.この再生医療研究を,再生医学,胚性幹細胞(ES 細胞)工学と組織工学の3つの研究分野に分けて,まず,再生医学と ES 細胞工学について再生医療での現在における役割を簡単に述べ,その後,組織工学の実例を示し,その有効性と限界を述べる.

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胚性幹細胞からの分化誘導と再生医学


仲野 徹
大阪大学微生物病研究所 遺伝子動態研究分野教授

要旨
 胚性幹細胞は,初期胚あるいは始原生殖細胞から樹立された分化における多能性を持った幹細胞である.1998 年にヒト胚幹細胞の樹立が報告され,その医学的利用,とりわけ,近い将来に大きな発展を遂げると期待されている再生医学分野における細胞療法の材料としての有用性が喧伝されている.何ができそうなの
か?また,どのような限界があるのだろうか?マウス胚性幹細胞の 20 年にわたる研究とヒト胚性幹細胞の現状を紹介する.

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造血幹細胞の遺伝子制御


松村 到  金倉 譲*
大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 * 同 教授

要旨
 生体内のすべての血液細胞は多能性造血幹細胞に由来する.多能性造血幹細胞は個体の生存期間中,自己複製能によって自己の集団を維持するとともに,多分化能によって各系統の血球を供給する.ノックアウトマウスを用いた解析により,造血細胞の発生には AML1,PEBP2 beta,GATA-1,2,SCL,c-myb などの分子が必須であることが示されている.また,Notch シグナルや Hox 遺伝子群も造血幹細胞の増殖・分化を制御すると考えられている.

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造血幹細胞の体外増幅


中畑 龍俊
京都大学大学院医学研究科発生発達医学講座発達小児科学教授

要旨
 ヒト未分化造血前駆細胞上には gp130,c-Kit,Flk2/Flt3,mpl 受容体が発現していた.ヒト CD34+ 細胞を IL-6/sIL-6R 複合体,SCF,FL,TPO 存在下に液体培養すると,NOD/SCID マウスの骨髄再構築能を持った幹細胞を増幅できることが明らかとなった.7日間の培養でヒト造血幹細胞を約4倍増幅できることが,限界希釈法により確認された.本培養法は ex vivo 増幅造血幹細胞を用いた新しい臨床応用の可能性を示している.

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ES 細胞由来血管前駆細胞と血管再生医学


伊藤 裕*1  山下 潤*1 万木 貴美*1 小川 峰太郎*2 西川 伸一**2 中尾 一和**1
*1 京都大学大学院医学研究科 臨床病態医科学 **1 同 教授
*2 分子遺伝学 **2 同 教授

要旨
 self-renewality(無限の増殖性)と totipotency(全能性)を有する胚性幹細胞(ES 細胞)は,再生医学において魅力的なマティアルとなっている.最近我々は,ES 細胞由来の Flk-1(VEGFR-2)陽性細胞が血管を構成する内皮細胞と壁細胞(血管平滑筋細胞,周皮細胞)の双方に分化し得ることを示し,この ES 細胞由来の“血管前駆細胞”が in vitro および in vivo で血管構築を再構成できることを明らかにした.現在“血管前駆細胞”の血管再生医療への応用を検討中である.

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造血幹細胞と血管新生


高倉 伸幸
熊本大学発生医学研究センター器官形成部門・造血発生分野助教授

要旨
 造血幹細胞は多分化能を持ち,成熟したさまざまな血液細胞を産生する能力や,自己と同じ機能を持つ細胞を産生する自己複製能を持ち合わせていることは以前より周知である.最近我々は,造血幹細胞が血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼ TIE2のリガンドであるアンジオポエチン-1を分泌し,遠隔的に血管内皮細胞の遊走を促すことで血管網の形成を誘導するという,新しい機能を発見した.この造血幹細胞の血管新生における機能解析を中心に TIE2-アンジオポエチンの血管新生における役割を概説する.

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血管再生のための血管内皮前駆細胞


浅原 孝之
タフツ大学医学部セント・エリザベスメディカルセンター心血管部門 助教授

要旨
 再生医学の発展に伴い,成体の幹細胞の存在についても明らかになりつつある中,血管内皮前駆細胞が血液中に存在し,重症虚血部位の血管形成に貢献することが判明した.この機序は,胎児期のみに存在するとされた,血管発生(Vasculogenesis),つまり血管内皮前駆細胞が目的部位にて増殖,分化し血管を構成する過程に一致する.この血管内皮前駆細胞を応用した細胞治療,さらには遺伝子治療が将来の再生医療に貢献するものと考えられる.

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骨髄細胞による心筋細胞分化療法


福田 恵一
慶應義塾大学医学部心臓病先進治療学講師

要旨
 骨髄間葉系幹細胞を分化誘導することにより心筋細胞が得られることが明らかとなった.再生心筋細胞は胎児期心室筋型の表現型を示し自己拍動能を有していた.近年,骨格筋細胞,平滑筋細胞,線維芽細胞等の移植による心筋梗塞後の心不全治療が試みられているが,再生心筋細胞の移植により新たな移植治療法につながるものと期待される.

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心不全に対する細胞移植治療


榊原 裕* 西村 和修**  丹原 圭一* 陸 方林* 米田 正始***
* 京都大学医学部心臓血管外科 ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 近年,さまざまな分野で再生医学の研究が盛んである.将来,今日まで再生不能,修復困難であった臓器の再生が可能となるかもしれない.心臓には再生能がないため,現時点では心臓移植が重症心不全症例に対する唯一の治療法であるが,深刻なドナー不足のため新たな治療法が切望されている.そこで,障害心筋を新たに正常心筋細胞で置換し,心臓を再生させようとする細胞移植の研究が始まり,動物モデルではその有効性が確認されている.

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神経幹細胞の遺伝子制御


廣田 ゆき  岡野 栄之*
大阪大学大学院医学系研究科 神経機能解剖学 * 同教授

要旨
 脊椎動物の中枢神経系はニューロン,アストロサイト,オリゴデンドロサイトから成り立っており,これらの多様な細胞群は自己複製能と多分化能を有する神経幹細胞から生み出される.この多様性獲得の機構には細胞間相互作用,対称/非対称性分裂が重要な役割を担っており,これらの現象にかかわる遺伝子の機能解析が進められている.ここでは Notch シグナリングと RNA 結合タンパク質による神経幹細胞の制御機構について述べる.

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神経幹細胞移植による神経再生


高橋 淳
京都大学大学院医学研究科脳神経外科

要旨
 中枢神経機能はいったん破壊されてしまうと再生しないとされているが,細胞移植によって新たな神経回路を構築することにより,神経機能を再生させようとする研究が続けられている.特に近年,神経幹細胞や胚性幹細胞の性質が次々と明らかとなっている.脳に移植されるとニューロンやグリアに分化することも分かってきた.本稿では,主に神経幹細胞移植の現状を今後の課題も含めて概説する.

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多能性肝幹細胞の分化と自己複製


谷口 英樹
筑波大学臨床医学系外科(消化器) 講師

要旨
 細胞生物学の進歩に伴い,臓器の「種子」ともいえる幹細胞(stem cell)が各臓器において次々と同定され,その機能解析が着実に進展しつつある.この幹細胞の分化・増殖機構を人為的に制御し,いわば「種子」から再び健全な臓器を育成することを目指すのが「臓器再生」という新しい治療概念である.21 世紀における臨床医学の1つの目標は,このような「臓器再生」を肝臓などのような実質臓器において実現させることである.そのためには,各器官における幹細胞システムの解明が最重要課題である.

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HGF による肝臓再生


高橋 知之  中村 敏一*
大阪大学大学院医学系研究科 バイオメディカル教育研究センター腫瘍生化学研究部 * 同教授

要旨
 旺盛な再生能を有する肝臓は肝細胞の速やかな増殖により本来の容量,機能を回復する.肝細胞増殖因子(HGF)は肝細胞の増殖・再生を担う肝再生因子の本体であり,肝傷害に伴う HGF の発現誘導は傷害肝臓に加え,遠隔の無傷臓器にも及び,HGF はダイナミックな臓器間相互作用を介して肝再生を駆動する.内因性再生修復因子として働く HGF の補充療法は生体に備わった再生力を増強する理に適った再生医学療法と考えられ,臨床応用への期待が高まっている.

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フォリスタチンと再生医学


和田 渉*1 前嶋 明人*2 小島 至*3
*1 群馬大学医学部 第一外科 *2 同第三内科
*3 同生体調節研究所調節機構部門細胞調節分野教授

要旨
 フォリスタチンは,アクチビンと結合しその作用を抑制する.肝再生の過程ではアクチビンが再生にブレーキをかけているため,フォリスタチンを投与してこのアクチビンの作用をブロックすると DNA 合成が加速し,肝再生が促進されて肝重量も増加する.腎尿細管再生過程においても,アクチビンは尿細管細胞の再生を抑制しているため,フォリスタチン投与により再生が促進される.

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再生医学と内分泌−下垂体細胞の機能分化−


長村 義之**1  黒谷 玲子*1  山王 なほ子*2  寺本 明**2  松野 彰*3
*1 東海大学医学部 病態診断系病理学 **1 同 教授
*2 日本医科大学 脳神経外科 **2 同 教授
*3 帝京大学市原病院 脳外科 助教授

要旨
 下垂体前葉細胞は,これまでの研究により GH-PRL-TSH,POMC(ACTH),および Gonadotropin(Gn)の3つの細胞系譜に分化することが明らかとなり,その機能発現における転写因子も明らかにされてきている.また,最近の我々の結果では転写因子を培養細胞に導入することにより新たなホルモン産生能が誘発されることを見出している.本稿では,下垂体細胞の転写因子と機能分化,遺伝子工学的なホルモン産生という視点から,再生医学における下垂体内分泌学を論じた.

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膵 beta細胞の分化誘導


宮崎 純一*** 丹羽 仁史* 倭 英司** 
*大阪大学大学院医学系研究科分子防御医学講座 **同助教授 ***同教授

要旨
 糖尿病の抜本的な治療法として Langerhans 島移植があるが,ヒト1人の治療に必要な数のヒトの Langerhans 島を得ることは実際上,多くの困難が伴う.胚性幹細胞(ES 細胞)は in vitro でさまざまな細胞に分化できることが知られているが,最近,ヒト由来の ES 細胞が報告されたことから,ES 細胞の in vitro 分化系に遺伝子工学的操作を組み合わせ,膵 beta細胞を作り出そうという試みもなされており,大きな期待がもたれている.

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皮膚再生の制御と臨床応用


猪口 貞樹
東海大学医学部総合診療学 助教授

要旨
 皮膚組織が長期間にわたって維持されるには,表皮幹細胞が存在して基底細胞の供給が維持されると同時に,表皮細胞の分化・増殖の適正なバランスが必要である.これには表皮と真皮の相互作用が重要な役割を果たしている.皮膚再生の制御機構はまだ十分解明されてはいないが,サイトカイン投与による創傷治癒,表皮再生の制御や,増殖培養した皮膚細胞による皮膚の再生が試みられ,臨床応用され始めている.

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筋再生と筋衛星細胞


埜中 征哉**  神 裕子*
* 国立精神・神経センター武蔵病院 ** 同 院長

要旨
 骨格筋細胞は諸臓器の中で最も再生能が強い.筋再生に重要な役割を果たすのが筋細胞膜と基底膜の間に介在する単核の筋衛星細胞である.筋細胞が壊死した後にはマクロファージが侵入する.それと同時に筋衛星細胞は分裂増殖し,壊死部を埋め尽くす.次に衛星細胞は互いに融合して多核の細胞となり,筋原線維が出現して再生線維となる.再生には少量であるが骨髄由来の幹細胞も関与していることが注目を集めている.

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軟骨幹細胞の分化制御と臨床応用


開 祐司
京都大学再生医科学研究所教授

要旨
 急速な高齢化社会の到来によって,高齢者の運動機能を保持することはますます重要な医療課題となっている.そこで,損傷や欠失によって生じた骨・軟骨機能を物理的に代償させるだけでなく,軟骨再生のための組織修復技術の開発に期待がかかっている.組織幹細胞システムの解析に基づいて,わずかに残された自己再生能を活性化する試みは,来る新世紀医療の可能性を拓くものとして注目されている.

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骨髄間葉系幹細胞による骨再生


野田 政樹* 辻 邦和 川口 奈奈子  麻生 義則  根本 啓行  伊原 英世 二藤 彰**
東京医科歯科大学難治疾患研究所 分子薬理学 * 同 教授 ** 同 助教授

要旨 骨髄由来の幹細胞を用いた骨の再生の研究としては,以前の幼若な動物由来の細胞ではなく,ヒトの細胞,特に成体に由来する細胞を用いて分化能の検討や,実際に足場となる担体と組み合わせた大動物での検討,また3次元的なシグナルの検討などが進行している.骨髄の幹細胞は,骨のみならず,神経を含めて多数の組織の細胞に分化が誘導できることが報告されている.本稿では,骨の再生の立場から骨髄由来の幹細胞に着目した骨形成の研究の現状を紹介する.

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