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最新医学55巻4号

特集要旨

注:アルファ、ベータ等のギリシャ文字は機種依存文字のため、HP上ではアルファベット(alpha,beta,etc)で表示しております。(本誌ではギリシャ文字です)


NKT 細胞の多様性とその分化

小安重夫
慶應義塾大学医学部 微生物学教室

要旨

 NKT 細胞は V alpha 14/J alpha 281 という特定のT細胞受容体(TCR)の発現や CD1 を介した脂質抗原の認識などで注目を浴びた.NKT 細胞の分化に胸腺が必要か否かに関しては議論が分かれている.結果の食い違いの多くは,NKT 細胞の多様性に起因すると思われる.発現する TCR やさまざまな表面抗原の違いから,NKT 細胞は複数の細胞群から成る.本稿では,NKT 細胞の多様性とその分化に関して最近の研究を基に解説する.

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V alpha 14 NKT 前駆細胞の最終分化メカニズム―GM-CSF による受容体遺伝子再構成の誘導―

佐藤 宏
千葉大学大学院医学研究科高次機能系発生医学講座 免疫発生学

要旨
 V alpha 14 NKT 前駆細胞は,IL-15/GM-CSF 存在下にストロマ細胞と共培養することにより V alpha 14-J alpha 281 遺伝子再構成を行い,成熟型細胞に分化する.V alpha 14-J alpha 281 遺伝子再構成は,主に GM-CSF 受容体からのシグナルに依存する.

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NKT 細胞抗原受容体とリガンド

河野 鐵*  谷口 克**
*千葉大学大学院医学研究科 高次機能系免疫発生学 ** 同教授

要旨
 糖脂質抗原を捕捉する免疫システムとして V alpha 14 NKT 細胞 - CD1d系が発見された.V alpha 14 NKT 細胞は,V alpha 14J alpha 281 遺伝子によってコードされる均一な抗原受容体alpha鎖を持ち,CD1d分子によって提示された糖脂質抗原:alpha-ガラクトシルセラミド(alpha-GalCer)を認識する.ヒトV alpha 24NKT 細胞はマウスV alpha 14NKT 細胞に相当し,マウス同様 alpha-GalCer を認識している.分子構造的解析を通して,NKT 細胞 - CD1d 系が糖脂質抗原を認識するために特殊化された系であることが明らかになりつつある.

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ヒト V alpha 24 NKT 細胞

贄田美江*    十字猛夫**
* 日本赤十字中央血液センター研究部 ** 同所長

要旨
 マウス V alpha 14 NKT 細胞/CD1d 系は,ヒト V alpha 24 NKT/CD1d 系として保存されている.ヒト V alpha 24 NKT 細胞は,in vitro の系である種の腫瘍細胞株に対して細胞傷害活性を持つことが証明されており,樹状細胞が CD1d 抗原を顕著に発現していることから,V alpha 24 NKT 細胞/CD1d 系を介してのがん治療を目的とした樹状細胞療法が期待される.


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NKT 細胞のサイトカイン産生とその意義

荒瀬 尚
千葉大学大学院医学研究科 遺伝子制御学講座

要旨
 新たなリンパ球として知られるようになった NKT 細胞は,さまざまな刺激に対して多量の IL-4 や IFN gammaを産生する.最近,NKT の認識機構の解明が進むとともに,NKT 細胞の産生するサイトカインの免疫応答における役割が明らかになってきた.特に,NKT 細胞による IL-4 および IFN gammaの産生バランスがその機能と密接に関連している.そこで本稿では,NKT 細胞によるサイトカイン産生機構およびその意義について解説する.

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NKT 細胞による自然免疫と獲得性免疫の橋渡し

西村孝司
北海道大学遺伝子病制御研究所免疫制御分野教授

要旨
 ナチュラルキラーT(NKT)細胞は樹状細胞,マクロファージ,NK 細胞などと同様に自然免疫のエフェクターキラー細胞として重要な意義を持つばかりではなく,IFN gammaや IL-4 などのサイトカイン産生を介して,自然免疫に引き続いて誘発される獲得性免疫のイニシエーターとしての機能も有する.樹状細胞/NKT 細胞を軸とする初期免疫反応は,その後の Th1/Th2,細胞傷害性T細胞(CTL)を中心とした獲得性免疫の成立にも影響を及ぼし,がんを含む免疫病発症の制御に重要と考えられる.


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NKT 細胞によるアレルギーの誘導


善本知広*1*2  中西憲司**1**2
**1 兵庫医科大学免疫学・医動物学教室助教授 **1同 教授
*2 同先端医学研究所 生体防御部門助教授 **2 同教授

要旨
 IL-4 は Th2 細胞から産生され,B細胞からの IgE 抗体産生を誘導する因子である.また,IL-4 はナイーブT細胞(pTh)の Th2 細胞への分化にも必須である.生体内で pTh を Th2 に分化誘導させるのに必要な IL-4(primary IL-4)の起源は不明な点が多い.筆者らは,NKT 細胞が primary IL-4 産生細胞の1つであること,さらに NKT 細胞は CD1 特異的に IgE 抗体産生調節に重要な働きを有することを示してきた.一方,NKT 細胞を介さない Th2 細胞の誘導,あるいは IgE 産生誘導の報告もある.本稿では,NKT 細胞の Th2,IgE 産生誘導への関与を改めて検証した.


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活性化 V alpha 14 NKT 細胞によるアレルギー反応抑制機構

山下政克*  中山俊憲**
* 千葉大学医学部分子免疫学
** 千葉大学大学院医学研究科免疫発生学助教授

要旨
 NKT 細胞は活性化すると速やかに IFN gammaと IL-4を産生する.この2つのサイトカインは,I型アレルギー反応において抑制と促進という相反する作用を持っているため,NKT 細胞によるアレルギー反応制御については不明な点が多かった.本総説では,我々が見いだした V alpha 14 NKT 細胞を介するアレルギー反応抑制機構を中心に議論したい.


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NKT 細胞による細胞内寄生性感染制御


内記良一*   吉開泰信**
* 名古屋大学医学部病態制御研究施設 生体防御研究部門 ** 同 教授


要旨
 細菌感染防御機構は食細胞による自然免疫とリンパ球による後期適応免疫に大別される.一方,NKT 細胞は多型性に乏しい CD1 分子に結合する糖脂質を認識し,サイトカインの産生や細胞傷害活性を示す.NKT 細胞は細菌感染症において早期の防御機構として自然免疫と適応免疫の時間的ギャップを埋めるのみならず,IFN gammaや IL-4 の産生を介して,適応免疫における Th1/Th2 細胞への分化の方向づけを決定する役割を担うと考えられる.

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NKT 細胞と自己免疫疾患モデル


山村 隆
国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部部長


要旨
 実験的自己免疫性脳脊髄炎の研究から,NKT 細胞は Th1 細胞の介在する Th1 自己免疫病の発症を抑止する調節細胞として機能しうることが分かった.NKT 細胞による調節は主に IL-4 産生を介するが,NKT 細胞の IFN gamma産生が優勢となる条件下では,NKT 細胞は Th1 自己免疫病をむしろ増悪させる方向に働くようである.現在 NKT 細胞を自由に制御する方策を探って研究が進んでいる.

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自己免疫性肝炎モデル

竹田和由
順天堂大学医学部免疫学講座


要旨
 NKT 細胞を欠損する CD1 ノックアウトマウスは,自己免疫性肝炎のモデルと考えられる ConA 肝炎に対する感受性が低い.このことから ConA 肝炎の発症に NKT 細胞が関与していると考えられ,特に NKT 細胞の FasL の発現とそれによる細胞傷害活性の増強が,ConA 肝炎の発症に重要であることが明らかとなった.また肝炎の発症と並行して,活性化された NKT 細胞が肝臓から消失する.この生理的意義についても言及する.


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ヒト自己免疫疾患と NKT 細胞


住田孝之**   香城 諭*
* 筑波大学臨床医学系内科 ** 同 教授


要旨
 NKT 細胞はT細胞の抗原受容体であるT細胞受容体(TCR)と NK マーカーである NKR-P1A(CD161)分子を併せ持つ第4のリンパ球として注目されている.その TCR はユニークであり,TCR alpha鎖はインバリアントな TCRAV24AJ18 遺伝子を,TCR beta鎖は主に TCRBV11 遺伝子を使用している.幾つかの自己免疫疾患では,この NKT 細胞が選択的に減少していることから,調節性T細胞として機能している可能性が示されてきた.さらに,減少のメカニズムとして,抗原alpha-ガラクトシルセラミドの欠如や抗原に対する NKT 細胞の不応答性が明らかにされてきた.将来,抗原刺激や不応答性の解除により NKT 細胞を誘導することができれば,自己免疫疾患の特異的制御が可能となろう.

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NKT 細胞と流産のメカニズム


唐沢美香
(財)癌研究会癌研究所細胞生物部


要旨
 胚胎を支持する脱落膜中に V alpha 14 NKT 細胞が存在することを見いだした.リガンドによって母体の NKT 細胞を刺激すると,IFN gammaなどのサイトカインを産生し,流産を誘発した.またこのとき,胎児の胚胎栄養細胞が選択的に障害を受け,アポトーシスを起こしていた.種々の変異マウスを用いた実験から,このリガンド誘発性流産は NKT 細胞依存的であり,パーフォリン,IFN gamma,TNF alphaのすべてが必要であることが分かった.V alpha 14 NKT 細胞は,妊娠中の子宮内膜において病原体に対する防御機能を果たしていると考えられる.

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V alpha 14 NKT 細胞による転移性腫瘍の拒絶―ヒト NKT 細胞療法に向けて―


谷口 克***  河野 鐵*   原田通成*
鎌田憲明*   本橋新一郎*   中山俊憲**

* 千葉大学大学院医学研究科高次機能系免疫発生学
**同助教授 ***同教授


要旨
 V alpha 14 NKT 細胞は生体のあらゆる組織に数多く分布する細胞で,この細胞には固有な V alpha 14 J alpha 281 遺伝子でコードされる均一な抗原受容体(V alpha14 受容体)が発現し,その受容体で,種属に1種類しかない CD1d 分子と結合した糖脂質の1つであるalpha-ガラクトシルセラミド(alpha-GalCer)をリガンドとして認識し,活性化される.獲得免疫系のT細胞とは異なる発生分化,認識様式や機能を持つことから,自然免疫系に属する第4のリンパ球と考えられている.リガンドによって活性化された V alpha 14 NKT 細胞は,パーフォリン/グランザイムBを介した細胞傷害活性を発揮し,マウスモデルでは悪性腫瘍の肝臓転移をほぼ完全に抑制しヒトへの応用が期待された.一方,alpha-GalCer はヒト NKT 細胞も活性化するばかりか,NKT 細胞免疫系がマウスとヒトの間で極めてよく保存されていることを利用して,がん患者の NKT 細胞免疫系機能が正常に機能しているか否か調べる実験系を確立した.これによって,一段と臨床応用へ向けた準備が整ったといえる.

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