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最新医学55巻5号

特集要旨


自律神経機能を考慮した心房細動の薬物治療

山下武志
東京大学大学院医学系研究科循環器内科

要旨

 従来,発作性心房細動の治療は個人的経験や試行錯誤的投与の効果に基づいてなされてきた.最近になりこの不整脈の日内変動解析から,その発症に大きく自律神経機能が関与し,その関与の程度も加齢により変化することが明らかとなった.このような知識に基づくと,各患者ごとに異なった抗不整脈薬選択法をとることがより妥当であり,かつ治療効率も上昇するものと考えられる.

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リモデリングを考慮した心房細動の薬物治療

杉   薫
東邦大学大橋病院第三内科助教授

要旨
 心房細動の電気的リモデリングは,心房筋活動電位持続時間の短縮と有効不応期の短縮がその本質で,心房頻回興奮によるカルシウムイオン(Ca2+)の過負荷によると考えられている.このリモデリングを防ぐために,心房細動の発症を予防し,心房細動を短時間で洞調律へ戻し,Ca2+ の過負荷を抑制する作用のある抗不整脈薬を選択する.これらの条件を満たすには多剤抗不整脈薬を併用するか,Ca2+ 拮抗作用を含む多チャネル抑制作用を持つ抗不整脈薬が適している.

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心房細動の洞調律維持管理と塞栓症対策

小松 隆*1  奥村 謙*2
*1岩手県立磐井病院循環器科  *2弘前大学医学部第二内科教授

要旨
 心房細動(発作性・持続性)に対する洞調律維持を目的とした抗不整脈療法には治療的限界を認めることから,現時点における治療戦略としては,各症例毎に再発の有無を注意深く監視しつつ,より早期に適切な薬剤を選択する必要性が示唆される.また,心房細動合併症に対する血栓塞栓症の薬物予防は,危険因子の有無や各症例の適性を考慮しつつ,抗凝固療法・抗血小板療法の選択を行う必要性が示唆される.

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QT 延長症候群での薬物療法の標的因子

池主雅臣
新潟大学医学部第一内科

要旨
 近年の遺伝子および実験的検討により,先天性 QT 延長症候群(LQTS)は種々のイオンチャネルの機能異常に基づくイオンチャネル病で,torsades de pointes (TdP)発症には心筋中層に存在するM細胞が重要であることが明らかとなった.これらの病態解明は,種々の薬物療法が抗不整脈作用を発現する電気生理学的機序を明らかにするとともに,各症例または LQTS サブグループで最も適した治療薬を選択するのに役立つと期待される.


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アミオダロン研究の新展開− 作用機序の多様性 ―

児玉逸雄
名古屋大学環境医学研究所循環器分野 教授

要旨
 アミオダロンの心筋に対する電気生理学的な作用は,急性効果と慢性効果に分けて考える必要がある.急性作用としては,Na+ チャネルや Ca2+ チャネル電流を抑制するだけでなく,電位作動性とリガンド作動性の K+ チャネル電流を抑制する.慢性効果の主体は刺激頻度非依存性の活動電位持続時間(APD)延長である.APD 延長は電位依存性 K+ チャネルの電流密度減少に起因しており,薬物によるチャネルのリモデリングと考えられる.このリモデリングは甲状腺ホルモンを介して行われる可能性がある.

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アミオダロン静注薬の展望

山田さつき*    山口 巖**
* 筑波大学臨床医学系内科 ** 同教授

要旨
 アミオダロンは経口投与・静脈投与共に有効性が確認されている唯一の抗不整脈薬であり,左室機能低下症例に伴う頻脈性不整脈には第1選択薬と見なされる.アミオダロン静注薬は我が国では薬価記載されていないが,欧米では心肺蘇生中および急性期の致死性不整脈症例に対する有効性が報告されている.本稿では,欧米での大規模臨床研究と,当科における投与基準,臨床例を述べる.


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致死的不整脈治療における新規III群薬の位置づけ


松田直樹
東京女子医科大学日本心臓血圧研究所 循環器内科


要旨
 I群抗不整脈薬の限界が指摘されている中,致死的心室性不整脈の治療薬として2つの新しいIII群抗不整脈薬が発売された.ソタロールは,K+ チャネル遮断作用とbeta遮断作用を有する経口薬で,突然死予防や植込み型除細動器患者の QOL 改善が期待されるが,徐脈や心不全の増悪に留意する必要がある.ニフェカラントは K+ チャネル遮断作用のみを有する静注薬で,I群薬無効な持続性心室頻拍や心室細動に高い有効性が期待できるが,torsades de pointes の発生に十分注意する必要がある.


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21世紀の抗不整脈薬
―虚血性不整脈への抗不整脈療法の新展開―(ATP 感受性 K+ チャネル遮断薬と Na+/H+ 交換系阻害薬)

佐藤俊明
大分医科大学生理学第二

要旨
 心筋虚血時に ATP 感受性 K+(KATP)チャネルが活性化されると,細胞外 K+ 増加による伝導遅延や活動電位持続時間短縮による不応期のばらつきが生じる.一方,再灌流時に Na+/H+ 交換系(NHE)が活性化されると,細胞内 Ca2+ 濃度増加による撃発活動(triggered activity)が惹起される.すなわち KATP チャネルと NHE が虚血性不整脈の発生に深く関与しており,KATP チャネル遮断薬または NHE 阻害薬が抗不整脈作用を発揮する可能性がある.KATP チャネルと NHE は虚血心筋保護にも重要な役割を担っている.


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21世紀の抗不整脈薬
―新規 K+ チャネル遮断薬開発の現状と展望―


中谷晴昭
千葉大学医学部薬理学講座 教授


要旨
 心筋には多くの種類の K+ チャネルが存在し,活動電位再分極に関与している.その中で最も重要なものは遅延整流 K+ 電流(IK)といわれるものであり,III群を中心とした抗不整脈薬はこの速い成分(IKr)を抑制するものが多い.すでに幾つかのIII群薬は臨床応用可能となっているが,torsades de pointes 誘発という副作用も多く,未だ理想的な薬物とは言い難い.今後,より副作用が少なく有効性の高い K+ チャネル遮断薬開発と臨床への応用が望まれる.

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アブレーション療法の現状と展望


矢野 佳*   沖重 薫**
*横浜赤十字病院第二循環器科 **同副部長


要旨
 高周波カテーテルアブレーション(RFCA)は,多くの頻脈性不整脈において第1選択の治療法とされている.近年の機器や手技の発達によりその適応は拡大し,従来では第1選択とされなかった心室頻拍,心房頻拍,心房細動等に RFCA を用いた治療も積極的に行われつつある.一方,一部の不整脈においては未だその有効性には限界があるのも事実であり,侵襲的治療であることを踏まえ,適用は慎重に検討されなければならない.

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心房除細動器

熊谷浩一郎
福岡大学医学部循環器科講師


要旨
 植込み型心房除細動器は安全で確実に心房細動を停止させうる治療法の1つである.植え込み術の適応は,発作頻度が比較的少なく,1回の発作持続時間が長い薬剤抵抗性の発作性心房細動である.安全性はまず問題ないが,患者の耐容性や経済効果などの問題が今後の残された課題である.現在,心房細動専用ではなく,心房・心室両用でレート応答型のペースメーカー機能と,心室除細動の機能も併せ持った除細動器が開発されている.


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致死性不整脈治療における植込み型除細動器の位置づけ―突然死予防と全体の予後改善について―


田口敦史  栗田隆志
国立循環器病センター 内科心臓部門


要旨
 AVID をはじめとする大規模臨床研究の結果から示されたように,植込み型除細動器(ICD)には器質的心疾患の致死的不整脈に対する強力な治療効果があり,突然死の予防のみならず,死亡率全体の改善をももたらす.特発性心室細動に関する大規模臨床研究はないものの,自験例では器質的心疾患よりもさらに良好な予後改善効果が認められた.今後は予防的な使用も含めた ICD の適応が検討されていくと考えられる.

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不整脈外科の現状と展望


小坂井嘉夫
宝塚市立病院院長


要旨
 近年,カテーテルアブレーションの進歩により不整脈外科の適応になる症例は激減したが,外科治療が必要な不整脈はわずかながら存在する.外科治療の対象疾患として,Wolff-Parkinson-White 症候群,心房頻拍,心房細動,房室結節回帰性頻拍,心室頻拍,期外収縮などがある.リエントリ,自動能亢進,トリガードアクティビティなどの不整脈機序に基づいた最近の外科的治療法と手術成績を示した.手術数の減少に伴う外科医の技術低下をいかに防ぐかが今後の問題である.

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